WoT(Web of Things)技術概要
人工知能技術、IOT技術で用いられるWoT(Web of Things)技術について述べる。尚、WoTの具体的な実装に関しては”WoTの具体的な実装例について“を参照のこと。
WoTとは、既存のIoTの課題を解決するためにインターネットの規格団体であるW3Cが定めたもので、Web of Thingsの略で、「モノのWeb」という意味となる。
IoT(Internet of Things;モノのインターネット)は、インターネットを介して、モノ同士がIP(インターネットプロトコル)で通信し合うため、接続されるモノ自体がIPアドレスを持っていたり、IPアドレスのある機器に接続され、それらがサーバー等を介してつながることで機能するものとなる。
IoT は AI(Artificial Intelligence=人工知能)と組み合 わされて生活や産業の効率・安全・利便性を飛躍的に高め ると期待されており、生活分野では,家電・住宅・自動車・ 衣服・リストバンドなどにセンサーと通信機能を持たせて 暮らしの利便性・快適性・安全性・健康を高めるサービス が開発・提供され,特にヘルスケアの市場規模が大きくな ると予想されている。
また、産業分野では,製造・建設・運輸・小売・保険・金融・ 防犯・医療などの分野で,利用者が使う装置に IoT 機能を 付けて,設備保全・異常検知・安全管理・健康診断・課金 決済・交通管制・防犯防災などの業務を効率化する試みが 進んでいるものとなる。
IoTの歴史は、1990年に米国のソフトウェアおよびネットワーク専門家であるジョンロムスキー氏とオーストラリアのコンピューターサイエンティストサイモンハケット氏が会議中にトースターををインターネットに接続し、オンラインでスイッチをオン/オフしたものが始まりとされている。
また「IoT」という言葉は、MITのケビンアシュトン氏が1991年に作った言葉で、パッシブRFIDタグを説明するのに作ったもので、RDFID(無線周波数識別器)は、機器が非接触でタグのデータを読み書きできる技術となる。
このIoTに関して課題として(1)IoTが生成した大量データのセキュリティとデータ保護、(2)互換性の欠如および消費電力低減等の性能要件のミスマッチ等が存在しており、そのため当初の予測より普及が遅れている状況となっている。
WoTはこれらの課題のうち、互換性の欠如(現時点では、多くの場合、センサー、プラットフォームまたはオペレーティングシステムは、特定のシステムだけで動作する)に対して、既に広く普及している既存のWeb技術(HTMLやJavascript、JSONなど)やプロトコルを利用して、IoTのサービスやアプリケーションの提供を行うことで、デバイスの相互運用性を上げると共に、アプリケーションレベルでのセキュリティやアクセスコントロール、またSemantic Web技術と組み合わせたデータの意味的な使い回しなどの機能を付与することで、多種多様なサービスが創出できるようにすることを目指すものとなる。
これらにより、WoTを提唱しているWebの標準化団体「W3C」では、世界的に浸透しているWebのオープン標準技術を利用するため、新たな標準化を待たずして開発者を多数確保でき、ベンチャー企業なども多種多様なサービスを創出できることがメリットであると述べている。
以下に既存のIOT技術とWOT技術の違いを図示する。
WoTでは主に最上位のアプリケーション層に対する標準化を行ない、具体的にはHTML5/JavaScriptという広く普及した言語でOS/ハードウェアに依存しない形でデバイスをネットワークに繋げようとするものとなる。
WoTシステムの基本イメージは以下のようになり(基本的にはハードウェア構成は現状のwebベースのネットワークデバイスそのものとなる)(参照総務省WoT資料)
W3Cでの標準化対象の詳細は以下のようになる。(参照総務省WoT資料)
デバイスを記述するhttpで扱われるThing Descriptionの例としては以下のようになる。(2018年10月21日創案の例より引用)
//例1
{
"@context":["http://www.w3.org/ns/td",{"iot":"http://iotschema.org/"}],
"@type":"Thing",
"id":"urn:dev:wot:com:example:servient:lamp",
"name":"MyLampThing",
"description":"MyLampThing uses JSON-LD1.1 serilization",
"security":[{"scheme":"psk"}],
//例2
"properities":{
"status":{
"@type": "iotSwitchStatus",
"description":"Shows the current status of the lamp",
"writable":flase,
"observable":false,
"type":"string",
"forms":[{
"href":"coaps://mylamp.example.com/status",
"mediaType":"application/json"
}]
}
},
//例3
"actions":{
"toggle":{
"@type":"iot:SwitchStatus",
"description":"Turn on or off the lamp",
"forms":[{
"href":"coaps://mylamp.example.com/toggle",
"mediatype":"application/json"
}]
}
},
//例4
"events":{
"overheating":{
"@type":"iot:TemperatureAlarm",
"description":"Lamp reaches a critical temperatue(overheating)",
"type":"string",
"forms":[{
"href":"coaps://mylamp.example.com/oh",
"mediatype":"application"
}]
}
}
WoTの技術課題
技術的課題としては以下のものがある。
- 記述する語彙のschemaの統一
Thing Descriptionでは、外部の統一的語彙定義を「schema」として参照している。このときの「共通語彙」と「産業ごとに異なる語彙」の体系化と組み合わせが実現の課題となる。
- Security、Privacy、Safety
プライバシーマネジメントや、Safetyの費用対効果の基準の策定
- 膨大な状態管理処理の効率化
WoTの適用事例
以下に、WoTの具体的な応用事例について述べる。
- スマートホーム: WoTを使用することで、スマートホームの制御をより簡単に行うことができる。家庭内の異なるデバイスやセンサーをWebに接続し、Webアプリケーションを通じて一元的に制御することができる。
- スマートグリッド: WoTは、エネルギーマネジメントの一環として、スマートグリッドの構築にも応用される。スマートグリッドでは、エネルギー需要と供給を調整し、効率的にエネルギーを配分することができる。
- 工場のオートメーション: WoTは、工場の自動化にも使用される。異なる製造装置をWebに接続し、製造プロセスをモニターし、必要に応じて自動的に制御することができる。
- スマートシティ: WoTは、都市のインフラストラクチャーの制御とモニタリングにも応用される。公共交通機関、照明、交通システム、ゴミ収集などの異なるシステムをWebに接続し、自動化および最適化を行うことができる。
- 車両制御: WoTは、自動車の制御にも使用される。車両に搭載されたセンサーやアクチュエーターをWebに接続し、車両の制御をより柔軟に行うことができる。
またWoTを介して、様々な企業のアプリケーションを様々なデバイスに繋げるPoCも実施されている。(参照総務省WoT資料)
WoTを用いて、実際にこれまでのIoTではサイロ化が起こっていたものが(参照総務省WoT資料)
以下のような統合されたシステムとなる。
WoTのための団体
以下にWoTのためのいくつかの団体の情報を共有する。
Web of Things (WoT)は、既存の標準化されたWeb技術を使用し拡張することで、IoTの断片化に対抗しようとしています。標準化されたメタデータとその他の再利用可能な技術的ビルディングブロックを提供することにより、W3C WoTはIoTプラットフォームとアプリケーションドメイン間の容易な統合を可能にします。
W3C Web of Things(WoT)は、Web技術を用いてIoTプラットフォーム間の相互運用を実現するための標準です。 WoTの特長は、実装すべき新たなプラットフォームを定義するのではなく、既存のIoTプラットフォームをThing Descriptionと呼ばれる機械可読な文書で記述することで相互接続できるようにするところです。
本サイトでは下記の情報を提供します:
・WoTに関するイベントの開催案内・報告
・各種IoTシステムの実現にWoTを適用しようと考えている開発者の方を対象とした技術資料の提供
モノのインターネットは、センシングまたは作動を提供する物理デバイスをその周辺に接続します。デバイスの成長し続ける機能により、デバイスを第一級市民として含む新しいアーキテクチャを想像することができます。次に、スマート農業、スマートビルディング、スマートシティ、エネルギーと水管理、e-ヘルス、および高齢化に対応する新しい付加価値アプリケーションを想定できます。Web of Things(WoT)を使用すると、デバイスのセマンティクスを記述して、さまざまなドメインとサービスの記述の間のギャップを埋めることができます。今日のWoTアーキテクチャでは、物理デバイスは、推論を実行するシステムから離れた場所に配置できます。一元化されたアプローチは、デバイスの機能を利用せず、サーバーの過負荷だけでなく、次善のデータ転送を引き起こします。その上、多くのデバイスは現在、お互いを発見し、データを交換し、集合的に決定を下します。CoSWoTの目的は、制約のあるデバイスに組み込まれた分散型WoT対応ソフトウェアアーキテクチャを提案することです。これには、次の2つの主な特徴があります。
-
- オントロジーを使用して、デバイスのアプリケーションロジックと交換されるメッセージのセマンティクスを宣言的に指定します。
- デバイス間で処理タスクを分散するために、デバイスに推論機能を追加します。そうすることで、WoTのデバイスを含むアプリケーションの開発が大幅に簡素化されます。私たちのプラットフォームは、デバイスの異質性にもかかわらず、インテリジェントで分散型のスマートWoTアプリケーションの開発と実行を可能にします。
CoSWoTでは、WoTアプリケーションは基本サービスをホストするプラットフォームに依存します。従来のサービスに加えて、2つの科学的障壁に対応する拡張機能をホストします。
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- 異種デバイス間の交換のための一般化モデルとしてのオントロジーの使用。AIOTI WG3、IEEE P2413、oneM2M、W3Cの共同声明は、オントロジーをWoTでのセマンティック相互運用性の主要なイネーブラーとして位置付けています。ただし、(i)ターゲットアプリケーションドメインへの既存のオントロジーの適切化に関する研究の質問が残っています。(ii)データストリームのコンテキストで、さまざまなプロトコルおよび標準で開発された理論的原理の適用可能性。(iii)異種デバイスの発見、それらのサービス、およびそれらを求める方法。
- 分散型および埋め込み型の増分推論。デバイスは、ストレージと処理を提供するのに十分強力になります。センサーやアクチュエーターなどのデバイスを含むエッジコンピューティングに基づいた新しいアーキテクチャが登場します。センサーによって提供されるデータストリームは、増分推論タスクを実行する必要があります。研究の質問は次のとおりです。(i)さまざまな容量のデバイスに推論を組み込む方法。特定の最適化が必要です。(ii)推論タスクをデバイス間で効率的に分散する方法。スマート農業は、このようなWoTアーキテクチャの典型的なアプリケーションドメインであり、耕作地の監視には、ストリーミングデータをプッシュするさまざまなセンサーが必要です。このセンサーは、アクチュエーターによって実行される決定を行うために収集および推論する必要があります。スマートビルディングは、付加価値アプリケーションサービスがエネルギー管理、e-ヘルス、または老朽化などの他の分野を含む、もう1つの典型的なアプリケーションドメインです。スマート農業とスマートビルディングのユースケースと要件を定義し、シミュレーションを実行してから、実際の実験を主導します。
CoSWoTプラットフォームは、ソフトウェアの開発とハードウェアの開発の分離を促進し、スマートデバイス自体の開発から切り離されたWoTアプリケーション開発を中心としたデジタル業界での新しい経済セクターの出現を容易にします。
プロジェクトCoSWoTは、参照ANR-19-CE23-0012の下でANRによって資金提供されています
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