仏教的学びと愉快な生き方

仏教:Buddhism

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サマリー

曹洞宗の僧侶である藤田一照氏による「学びのきほん ブッダが教える愉快な生き方」より。

愉快な生き方とは

「愉快な生き方」とは一体どんなものなのか?それとブッダの教えとの関係は?、本書ではそれらに対する答えとして、仏教の基礎知識ではなく「仏教的学び方」にフォーカスし「学ぶ」ことは人間にとっての大きな喜びであり、それが「愉快な人生」に近づくと述べている。

この「仏教的学び方」とは具体的には「修行」を指し、「修行」とは、難しい何かをして悟りやら解脱といった特別な体験をすることを目指すものでは無く、心身丸ごとで行う日常生活すべての行為に対して、生きることそのものから「学ぶ」ことであるとしている。この「修行」を仏教用語では「行」と呼び、仏教は「行の宗教」であるとも定義している。

修行の中で行われる「学び」は、興味も湧かない勉強に無理やり取り組み、目標達成の時に得られる未来の喜びを空想しながら、今の苦痛や退屈に耐えるという「学校の学び」では無く、生まれたばかりの赤ちゃんや子供が、本人に学ぶと言う意識がなく、周りも何かを教えようとしなくとも、自然に行っているような深い学びを指し、それを筆者は「オーガニック・ラーニング」と名付けている。

このオーガニック・ラーニングは知識の蓄積では無く、学ぶことで自分自身が変わり、変わることで成長し、成長することで更なる未知の世界に出会いを学び、それらの蓄積により豊かになり喜びと繋がっていくものとなる。赤ちゃんや子供の持つ驚異的なこの学ぶ力の源泉は、学ぶことによる純粋な喜びを得るためともしている。

歳を取ることで様々な知識や概念によって思考や感情で悩む「自我」が作り上げられ、それらが障壁となってこの喜びを忘れさせ、学ぶ事がいつの間にか苦役になってしまい、成長が止まってしまう。修行とはこの「学ぶ」行為を取り戻す作業となる。

この修行とは、生活を耕して善きものをはくぐみ育てることで、例えると苗を丁寧に見守り、大きな木になるように大切に育てるようなものになるようなイメージとしている。「豊かな生活」ではなく「豊かな人生」に視点をおき、人生そのものが豊かになるように育んでいく。その行為が「愉快」となる。

この修行のために必要なものは、まずは「頑張らない」ことであると挙げられている。修行は手段、悟りは目的として分けて、悟りに至るまでご褒美はお預けにして修行は我慢して頑張るのではなく、修行と悟りは不可分一帯のものとして、修行の時にもご褒美(喜びであったり平安であったり)を感じながら行うべきものである。

次に必要なことは「触れてよく観る」ことにあると挙げられている。世界を学ぶ際に、自分自身が作り上げてきたこだわりや感情がどのようなものであったかについてよく観察することで気づき、それにより世界の見方を変えていく。

この「触れてよく観る」には「解像度の高い眼」が必要となる。解像度には、空間的解像度と時間的解像度がある。空間的解像度とは、たとえば解像度の低い眼ではピンク色に見える一本の系が、実際は赤と白の2本の系がより合わさっていたものだと認識するもので、時間的解像度とは、いわば動体視力のようなもので、解像度の低い時には同時に起きているように見える現象が、実は時間的に前後する二つの別な現象であると認識できる力となる。

例えば仏教でよくテーマになる「苦しみ=痛みx抵抗」について、一般的には「苦しみ=痛み」と思われているが、身体的な痛みが生じた時、その瞬間に感じるのは「痛い」と言う感覚だけだが、時間的解像度を上げて観察すると「痛い」という感覚に体が抵抗することで筋肉の緊張が増したり、「あ、嫌だなぁ」という思いが出てきた途端に苦しみが倍増するという一連のプロセスが「苦しみ=痛みx抵抗」の式の意味となる。

またこの図式は「苦しみの式」だけでなく「幸せの式」にも適用できる。これは「幸せ=快感÷執着」という式で表され、快感に対して執着の度合いを上げると(もっと欲しいと思ったり、独り占めしようとする)幸せの度合いは割り算で減っていく。

これら解像度を上げるアプローチにより、本来避けられない「痛み」や「快感」とその後付随して現れる「抵抗」や「執着」をよく観察して区別する事で愉快な世界に生きる事ができると本書では結論づけられている。仏教本によく出てくる「あるがまま生きる」とは人生の中で不可避に出会ってしまう痛みや快感はそのまま受け取り、「執着を捨てる」とはそれらとは本来別物である抵抗や執着を認識して減らしていくということになるのである。

このような解像度を上げる話は、生き方の話だけではなく、仕事を行うシーンでも現れる重要な考え方ではないかと思う。

 

コメント

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