デジタルゲームAIの歴史(2)(人との機械のインタラクションの知能化)

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デジタルゲームAIの歴史(2)(人との機械のインタラクションの知能化)

前回述べた続きで、今回は最後の世代(00年度以降)に現れた自律型エージェントについて述べたいと思う。

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最後の世代(00年度以降)には、AIのアーキテクチャ化が多く行われた。まず80年代から90年代にかけて次第に形成されてきたものとして「エージェント(Agent)」アーキテクチャがある。これは何かの役目を与えて目的を果たすAIのことで、ゲームの世界ではキャラクタと同義になる。

この中で「自律型エージェント」とは、エージェント自身が、周囲の環境と状況を判断しながら、目的を推敲する能力をもったもので、さらにこれらエージェントを複数連携させて小さな目標の推敲を重ねて大きな目標を達成するものをマルチエージェント(Multi-Agent)と呼ぶ。

これらエージェント技術の中で著名なものとしてMITのC4アーキテクチャがある。「C4アーキテクチャ」は、MITのSynthetic Characters Groupが2001年に発表した仮想空間における仮想動物の知能を実現する為に提案したアーキテクチャで、以下に示すようにブラックボードアーキテクチャを中心に各モジュール(知識元、knowledge Source、KS)が接続されている形となる。

このシステムの目標は、「学習する」「人間とインタラクションする」「自立性を持つ」ペット型エージェントをつくることで、「AlfaWolf(狼)」「Duncan(犬)」等の仮想生物を生成し、人間とのインタラクションでてなづけられていくと共に、知能を学習していくアーキテクチャを探求することが目的のプロジェクトとなっている。このフレームワークがゲームの世界ではFPSの基本フレームとして適用され00年代を貫く流れとなった。

エージェントアーキテクチャの基本的な考え方は、まず外界(ゲームの世界)とAIを明確に区別し、外界からの情報を集める機能を持つセンサー(受容体)と、外界に影響を及ぼすエフェクター(効果器)を定義する。

次にセンサーから得られた情報を基に、認織世界を構築する(モデル化を行う)。AIはこのモデルの上で思考し、意思決定し、その意思決定に基づいて行動をデザインし、行動指令(あるいは行動シーケンス)を出力する。それらが最終的にエフェクターに伝えられてアクションとなる。

C4の場合はこの行動指令は、一旦ブラックボードに書き込まれ、エフェクタ(ボディ)がそれを読み取るというアーキテクチャになっている。

このようなモジュール構成とすることで、たとえば思考の部分には条件反射、プランニング技術、有限状態機械などの各種アルゴリズムを適用することができる。

これをFPSに適用する際には、銃撃による戦闘に対応する為、高速な状況判断と行動を行えるように階層型FSM(HFSM)やゴール指向アクションプランニングの導入等の工夫がなされている。(著名なゲーム例ではHALOシリーズやF.E.A.R.やKillzone等がある)

またFPS以外の適用例として「The Sims」シリーズ等の日常生活を営むエージェントへの適用も行われている。これは複数の家からなる箱庭的世界の中でAIを生活させ、AI同志のインタラクションを時々ユーザーが干渉しながら楽しむもので、FPSとは異なりゆっくりとした日常生活の時間をできるだけ自然に面白く過ごすインテリジェンスを持つという異なった難しさがある。

特にFPSと異なるのは、Aiが内面的に豊かであるという特徴がある。これはFPSの「敵を倒す」という極限状態と違って、「人と話したい」「寂しい」「お腹がすいた」「部屋をきれいにしたい」などの欲求を持ち、それが時間と共に変化する中で、行動も「誰かと話す」「TVをみる」「掃除する」「眠る」等多様なものがある。

このような日常系のエージェントは「オブジェクト」「それに対するエージェントの行為」「行為によって満たされる感情」の関係を緻密に作り上げることで形成される。「The Sims」では各オブジェクトに、エージェントがそのオブジェクトを用いる「行為」と「行為を行った時の感情の変化」のリストが付属されて、エージェントは、自分の現在の状態から計算される総合点(欲求の満たされ具合のパラメータ)を最も大きくするオブジェクトを選択して行動する。

このようなしくみにより、エージェントは内的状態の変化に応じて自律的に動き回ることとなる。

コメント

  1. […] 前回まで述べたデジタルゲームAIの基本技術についてまとめる。参考とする図書は「デジタルゲームの教科書」より。 […]

  2. […] 内容としては本稿で、2000年代までの初期の古典的ゲームAIについて、次項で2000年以降の自律型AIを含むゲームAIについて、更に個別技術の解説として空間認識タイプのゲームAI、最後に時間認識タイプのゲームAIについて述べる。 […]

  3. […] 自律型エージェントC4アーキテクチャ   […]

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