サマリー
CentOS8実践ガイドより。今回はCentOSの概要と実装について述べる。Linuxについての概要は”Linuxについて“を参照のこと。
CentOS8の概要とインストール
CentoOS(Community Enterprise Operating System)は、Red Hat社の商用Linuxディストリビューション、RHEL(Red Hat Enterprise Linux)と高い互換性を維持したクローンOSとなる。Red Hatとコミュニティが協力して開発し、無償で利用できるオープンソースのOSとして、幅広い用途で使用されている。特に最近は、Hadoopなどのスケールアウト型分析基盤や、AI・機械学習、深層学習などの知識情報処理基盤、ソフトウェア定義型分散ストレージ基盤、HPC(High Performance Computing)基盤、コンテナ基盤など様々な利用分野で使われている。
以下にOSのインストール手順について述べる。
インストール前の注意点
CentOSに限らず、OSをx86サーバーにインストールする場合、目的の業務に応じたハードウェアの設定を終えておく必要がある。近年、x86サーバーに搭載できるメモリやディスクの容量が急激増加しており、これに伴い、ハードウェア側の事前準備を行わないと、購入したハードウェアの機能や性能を十分に発揮できないといった事態に陥る可能性がある。特にデータベースサーバーやインメモリ分析基盤などで巨大なメモリ空間を利用する際に注意が必要となる。
近年、BIOSとUEFIを両方搭載しているx86サーバーが増えてきているが、利用するx86サーバーに外付けストレージなどを組み合わせる場合、CentoOS8での動作確認以外に、BIOS、またはUEFIのどちらのサポートをするかなど、サポート要件の調査が必要となる。例えばファイバチャンネル(FC)ストレージをサーバーに接続する場合、サーバー側でBIOSかUEFIモードのどちらをサポートするかベンダによって決められている。
インストールメディア
物理サーバーの内蔵ハードディスクやSSDにCentoOSをインストールする場合、インストール用のisoイメージをブート可能な形で記録したDVDメディアを使ってブートする。isoイメージには、通常のサーバー用途やワークステーション用途などで利用されるDVDisoのほかにも、CentOSコミュニティのリポジトリにインターネット経由でアクセスしてパッケージをダウンロードし、OSのインストールを行うboot isoも存在する。
CentOSのインストールメディアは、CentOSコミュニティのダウンロードサイトからisoイメージで提供されている。通信経路としては、CentOSコミュニティが提供する本家サイト以外のミラーサイトを利用するのでもよい。
CentoOSのインストーラー
CentOSのインストーラーは、GUIモードのインストーラーとテキストモードでのインストーラへの両方を兼ね備えている。CentoOSのインストールの画面の最初のステップには以下の3項目が表示される。
- Install CentoOS Linux : CentoOSのインストール
- Test this media & install CentoOS Linux : DVDメディアのテストを行った上でのインストール
- Troubleshooting : VESAでのインストール、レスキューモード、メモリテストなど
メニュー画面から、通常のインストールモードのInstall CentoOS Linuxを選択後、Install CentoOS Linux in basic graphics modeに上下矢印でカーソルを合わせた状態で「TAB」キーを押すことで画面の最下行にブートパラメータが表示される。ブートパラメータが表示されているコマンドラインにキーボード入力で独自のブートパラメータを付与することができる。
GUIモードのインストール
以下にGUIモードを使ったOSのインストールについて述べる。
まずOSのインストールの概要画面に入る。概要画面では大きく分けて、地域設定、ソフトウェア、システムの設定を行う。
地域設定では、キーボード、言語、時刻と日付を選択する。キーボードでは、システムで使用するキーボードレイアウトを選択する。このとき遠隔操作などを行う想定の場合は、クライアントPCのキーボード配列に設定を変更する等の注意が必要となる。
次に言語サポートの画面で、インストールしたい言語を選び、さらに時刻と日付の設定を行う。
インストールソースの設定
インストールソースでは、どこからCentOSをインストールするかを選択する。DVD利用の場合、サーバーに接続された物理的なDVDドライブに装着されたCentOSのDVDメディアが表示されているので、DVDメディアでインストールする場合は、そのまま画面左上の完了をクリックして、インストール概要の画面に戻る。
また「確認する」をクリックすると、CentOSのメディアが適切であるかどうかをチェックできる。
CentoOSのインストールソース画面では、データのリポジトリにAppStreamが選択されている。必要に応じて、AppStreamを選択あるいは、除去できる。また車内に設置した独自のカスタムレポジトリをこの段階で登録できる。カスタムレポジトリがまだ準備できていない場合でも、情報をこの時点で入力しておき、画面追加のリポジトリにあるチェックボックスを外しておけば、リポジトリ自体は無効の状態で登録できるため、後で設定が可能となる。
すべての入力が終えたら、画面左上の「完了」をマリックして、インストール概要の画面に戻る。
ソフトウェアの選択
ソフトウェアの選択画面では、ベース環境と、それに関連するアドオンソフトウェアを選択できる。ベース環境には、以下に示す6種類が用意されている。
ソフトウェアの選択画面でも、各ベース環境に対する選択可能なアドオンは以下のようになる。
上記のアドオンの意味を以下に示す。
サーバーを構築する場合、ソフトウェアの選択項目をどれにするかは、その目的に依存する。ローカルでGUIツールによるサーバー管理を行う場合は、GNOMEデスクトップを含んだ「サーバー(GUI使用)」を選択し、追加のアドオンを選択すると良い。ただし、キーボード、マウス、ディスプレイを接続せず、コマンドラインを駆使した運用や、X Windowを含まないWebフロントエンドサーバー、仮想環境やクラウドマシンにおける仮想マシンのテンプレートとなるゲストOSイメージファイルといった利用では、ソフトウェアとして「最小限のインストール」を選択する場合もある。
実際のシステムにインストールするパッケージは、システム要件に大きく依存する為、インストーラーで選択するベース環境とアドオンパッケージだけで完結することはない。システム要件が曖昧な場合もあるが、セキュリティの観点から、不必要なパッケージをインストールしたくない場合は、最小限のインストールを行い、OSのインストール後に、必要なものだけ追加でインストールするのがよい。セキュリティ上の懸念すべき点があまりない環境で、かつグラフィックデザインやソフトウェア開発者による開発環境を整備したい場合には、ワークステーションを選択すると良い。
すべての入力が終えたら、画面左上の「完了」をクリックし、インストール概要の画面に戻る。
インストール先の設定
インストール先の設定画面では、CentOSのインストールする内蔵ディスクの選択とパーティション設定を行う。通常は、サーバーの内蔵ディスクにインストールするため、正常に内蔵ディスクが認織されれば、ローカルの標準ディスクが見える。この時点で、ローカルの標準ディスクにデバイスが見えない場合は、サーバーのRAIDコントローラー側で作成した論理デバイスの再認識が必要となる。
OSのインストールを行う内蔵ディスクをクリックすると、チェックマークがつく。チェックマークがつけば、そのローカルディスクのパーティション設定が可能と見做される。インストールを行いたくないデバイスに関しては、再度クリックを行いチェックを外す。
手動パーティション設定
ストレージ設定でカスタムを選択し、画面左上の「完了」をクリックすると、手動パーティション設定画面が表示される。手動パーティション設定画面では、以下に示す3種類のパーティション設定スキームを選択できる。
CentOS6においては、標準パーティションやLVMでのパーティション構成が見られたが、CentOS7及び8では、LVMシンプロビジョニングがサポートされ、柔軟性の高いOSの運用管理が行えるようになった。具体的にはスナップショットと呼ばれるその時点でのOSの状態を 記録した情報を複数取得できるようになり、OS側で書き込みを常に検出し、変更されている分だけ、実際のデータブロックを割り当てる動作が可能となった。
この仕組みにより、複数世代のスナップショットを保存では、そのスナップショットを取得した時点に戻すことができるため、データが消失しても、取得したスナップショットからデータの復元が可能となった。LVMシンプロビジョニングの選択は運用効率化の観点からも推奨されている。
ストレージ設定スキームにLVMシンプロビジョニングを選択したら、ディスクにパーティションを作成する。稼働させる行基システムによりパーティション設定は異なるが、以下にCentOS8において64GBの物理メモリを搭載したx86サーバー(BIOSモード)の3TBの内蔵ディスクに作成するパーティション割り当て例と用途について提示する。
まずはBIOS Bootパティションを作成する。BIOS Bootパーティションは、BIOS搭載マシンにおいて、3TBを超えるようなGPTパーティションからOSをリブートする場合に必要となる。パーティション作成は、画面左下の「+」をつクリックする。すると、マウントポイントの追加の設定画面が表示され、BIOS Bootパーティションは、 マウントポイントとしてbiosbootを選択する。BIOS Bootパーティションの容量は1MiBにする。
次に/b00tパーティションを作成する。パーティション作成は先ほどと同様に画面左下の「+」をクリックする。/bootパーティションは、マウントポイントとして/bootを入力する。/bootの容量を入力したら「マウントポイントの追加」をクリックする。
デバイスタイプは/bootの場合、標準パーティションに設定するが、/パーティション、/homeパーティションはLVMシンプロビジョニングに設定できる。
また/boot、/、/homeは今回はXFSファイルシステムを選択する。デバイスタイプのプルダウンメニューからデバイスタイプ(標準パーティションやLVMシンプロビジョニング等)を変更したら、画面右下の「設定の変更」をクリックする。標準パーティションの場合は、暗号化のチェックボックスにチェックを入れることで、暗号化が可能となる。さらに、画面右端のLIKSバージョンではluks2を選択する。
ファイルシステム(F/S)は、XFS以外にも、BISO Boot、ext2、xt3,ext4,vfatが選択可能だが、BIOS Bootとスワップパーティション以外は、ファイルシステムとしてXFSを選択する。ファイルシステムのプルダウンメニューからXFSを選択したら、画面右下の「設定を更新」をクリックする。
以上を設定し、画面左上の「完了」をクリックすると、ディスクのフォーマットに関する「変更の概要」の画面が表示され、「変更を許可する」をクリックすると「インストールの概要」の画面に戻る。
ネットワークとホスト名の設定
ネットワークとホスト名の設定では、NICに付与するIPアドレスやゲートウェイアドレス、参照するDNSのIPアドレス、そしてホスト名などを設定する。画面左下のホスト名の入力欄にドメイン名を含む形でホスト名を入力し、「適用」をクリックすると、画面では、認織されているNICが表示され、それらの中からNICを選択して、画面右下の「設定」をクリックする。
そこで認織されているNICの各パラメータを編集する画面が表されるので、ブート時におけるNICの有効化やIPアドレス、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーのIPアドレスの設定が行える。
ネットワークの設定
サーバー起動時に自動的にNICが有効になるように「優先的に自動接続する」のチェックボックスにチェックを入れる。次に「Ethetnet」タブをクリックし、デバイス欄に表示されるデバイス名を確認する。また一部のサーバー環境ではMTU(Maximum Transmission Unit)と呼ばれるIPパケットのサイズを明示的に指定する場合がある。アプリケーションによってMTUの推奨値が決められている場合はここで設定する。通常は自動に設定する。
無線LAN、有線LANの種類によらず、ネットワーク接続時の認証を有効にできる。非常に機密性の高いシステムに接続を許可する場合、802.1xによるユーザー認証を設定する場合がある。セキュリティ要件に基づいて、802.1xにおけるユーザー名とパスワードを設定できる。
DCBは、IEEEで標準化されている10GbEの拡張企画で、イーサネット上でファイバーチャネルやSCSIなどのプロトコルを使ったデータ転送を可能とする。イーサネット上でのFCぷろとこるの通信は、FCoEと呼ばれ、SCSIプロトコルの通信は、iSCSIと呼ばれる。これらを取り扱えるNICは通称DCB対応NICと呼ばれる。これらはDCBの設定画面でのチェックボックスのチェックにより設定可能となる。
さらに、プロキシの設定、IPv4、IPv6を設定することで「インストールの概要」の全項目の設定が完了し、「インストールの開始」をクリックすると、CentOSのインストールが開始する。
CentOSのインストールが行われている最中に「ユーザーの設定」としてrootユーザーパスワードや「ユーザーの作成」を行うことができる。
コメント
[…] CentOSの立ち上げと概要について […]