光コンピュータを実現するための様々なアプローチ

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光コンピュータを実現するための様々なアプローチ

光コンピュータは、従来の電子ではなく、光を用いた計算を行うコンピュータのことを指す。これまでのコンピュータと比較した利点としては、熱を発生し膨大な電力を消費する原因となる電子での処理と比べて光での処理は圧倒的に低消費電力な点となる。また空間的な並列処理が可能で大幅な処理速度の向上が見込まれるという利点がある。

その反面、電子情報のように論理回路を大規模に組むことが困難なため、実用的な光コンピューターは実現されていないという課題もある。

SFの世界でこの光コンピューターが実現されている著名なものとしては、スーパーマンの母星であるクリプトン星人の持つ光コンピューター技術となる。これは情報処理、画像表示、音声入出力から自己増幅機能まで持ったクリスタルを使うというもので、スーパーマンの北極の孤独の基地を作るシーンでは、それらの技術をベースにクリスタルが自己増殖し基地を作り上げるシーンが描かれている。これらの技術は、理論的には現実に存在する。以下にそれの個々の要素技術について述べてみたい。

まずシンプルにイメージしやすい記憶機能について。その名も”スーパーマン・メモリークリスタル“。イギリス、サウサンプトン大学の研究チームはレーザーエッチングという技法を利用して、上記の文書ならびにアイザック・ニュートンの『光学』をコイン大のガラスに保存することに成功した。このガラスディスクは、摂氏190度の温度条件で数十億年間状態を保つことができる。さらに常温であれば、実質的に永遠に情報を保持しておけるという。

カザンスキー教授らによって”5次元データストレージ”が初めて発表されたのは2013年のことだ。これはフェムト秒レーザーという極めて短いパルスを生み出すレーザーによって、ナノ構造化されたドットに情報を刻み込む。

ナノサイズのエッチングは、ガラス内を通過する光を偏光する。記録された情報を読み取るために必要なのは、偏光レンズと光学顕微鏡を組み合わせた装置だけだ。5次元という名称は、ナノ構造における3次元、ならびに大きさと方向性を指し示したものだという。

次に演算機能について。”電子ではなく光子を使う「光コンピュータ」を実現可能にする技術が登場!”光子機器”の開発へ前進か“より。

光子は電気的に中性でありながら指向性を持つといった、電子よりも優れた特性を持っており、回路内を伝達する粒子(あるいは波)として適している。しかしながら、光子を微細な回路内で通過させるためには、回路の内部が鏡のように光を反射する性質がなければない。光ファイバーがそのような性質を持ち合わせているが、現在の市販コンピュータでも回路の精密度が数ナノメートルに達しており、光ファイバーそこまでの細かい加工をすることは困難となる。光の伝わり方をナノ単位で制御できる技術として「フォトニック結晶」がある。

フォトニック結晶は特定の光の波長のみを反射する性質があり、内部に空間を作ることで光を通す微細な回路として加工可能となる。しかしこれまで、人類の科学力では理想的なフォトニック結晶を作ることは困難とされていた。それに対して2020年9月23日に『Nature』に掲載された論文によると、ニューヨーク大学の研究者たちによって自己組織化(勝手に組み上がってくれる)フォトニック結晶が開発されたとある。

フォトニック結晶は、基本単位となる4つのプラスチック粒子の塊(コロイド)が、ダイヤモンド型の格子構造をとることで作られる。ダイヤモンド型の格子結晶は光を反射する優れた能力をもっており、構成単位となる粒子の設計を変更することで、反射させる光の波長を広くコントロールすることも可能となる。しかし既存の技術では、プラスチック粒子をピラミッド型に組み上げることはできても、それらを寄せ集めて巨大なフォトニック結晶とする方法がわからなかった。

これに対して”Colloidal diamond“で発表された手法では、下の図のように、まず4つのプラスチック粒子を油滴で一つに凝集させ、次いで中央部の油を表面に押し出しそして最後、押し出された油滴の表面に1本鎖のDNAを張り付けることで、時間の経過とともに結晶は自律的に成長し、下図のような巨大なフォトニック結晶を作り上げた。

スーパーマンのクリスタルの自己増殖のシーンでは固体結晶を空気中で成長させているが、現実的な解としては、上記のよな有機系結晶を液体中で成長させるものになるのだろう。

画像情報を入力して、処理して出力するものとしては古くからあるものとして、空間光変調器(Spatial Light Modulator, SLM)がある。これは、光源からの光の空間的な分布(振幅、位相、偏光など)を、電気的に制御することにより、光を変化(変調)させるデバイスであり、照射光が、液晶などの素子で変調され、その波面形状を自由に制御するものとなる。

これらを用いることで、例えばNHKで発表されている”超高精細空間光変調素子“では立体像の表示もできる高精細で高速な表示デバイスを開発している。

このように個々の要素技術に関しては、ハード的には原理的には様々な実現手段がある。最後の壁は”自己増殖する”ソフトウェアをいかにして構築していくかという点となる。

再起的なアルゴリズムを用いることで、”インターネットと毘盧遮那仏 – 華厳経・密教“等で述べているようなフラクタルなパターンを形成することは容易にできる。

しかしながら、それらは複雑な形態であるというだけで、その中に何等かの意味や意思を持たせることはできない。そこには”具象と抽象 – 自然言語のセマティクスと説明“や”オントロジー技術“で述べたような何等かのメタ情報構造を載せる必要がある。

それらソフトウェア的なアプローチに関しては別途述べたいと思う。

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