コンピューターを構成する計算要素と半導体チップについて

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コンピューターを構成する計算要素と半導体チップについて

コンピューターの基本となるデジタル処理は、”0″,”1″の2つの数値(2進数)で表すものとなる。ここでこの”0″と”1″の2の状態を表現したものを1ビット(Binary Digitが語源)、また8ビットをひとつにまとめた情報単位をバイトと呼ぶ。1ビットが”0″と”1″の2通りの状態しか表せないのに対して、1バイトは256通りの状態を表現できる(1バイト=28=256)。

この”0″と”1″のみを扱う代数学(数の代わりに文字を用いて方程式の解法などを研究する学問)はブール代数と呼ばれる。このブール代数は、ジョージ・ブールが考案した数学体系となり、”1″を真、”0″を偽とした論理を計算する論理数学と見なすこともできる。

数学において、「二つの数から新たな数を決定する規則」を「2項演算」と呼ぶ。この2項演算の例として数の四則演算(加減乗除)がある。ブール代数における2項演算は∨(結び(join))と∧(交わり(meet))となり、これに単項演算である¬(〜でない(not))を加えて、交換則(xy=yx, xy =yx)、結合則((xy)∧z=x∧(yz), (xy)∨z =x∨(yz))、吸収則((xy)∨x =x, (xy)∧x=x)、分配則((xy)∧z=(xz)∨(yz), (xy)∨z =(xz)∧(yz))、補元則(x∨¬x =1, x∧¬x=0)という規則が成り立つ世界(公理系)を考えると、と全ての演算を全ての計算を表現することができる。

これらの公理系に関しては”論理学をつくる 第一部論理学をはじめる 読書メモ“や”形式言語と数理論理学“等で述べられている数理論理学で数学的に構築できる。また数学的ベースとなる集合論に関しては”コンピューターの数学の基礎“や”集合とは何か 初めて学ぶ人のために 読書メモ“等を参照のこと。

上述のようにすべてのブール代数(コンピューター上で実行できる計算)は、∨(結び(join))と∧(交わり(meet))と¬(〜でない(not))の組み合わせで表現できる。ということは、コンピューターの計算機能を実現するための基本要素は∨(結び(join))と∧(交わり(meet))と¬(〜でない(not))だけでよいといこととなる。

このうち∧(交わり(meet))は、論理の世界では論理積(AND)とも呼ばれ、以下の図で示すように直列の2つのスイッチを用いて機能として表すことができる。(AとBのスイッチ両方がオンになることで初めて全体がオンになる)

この機能の入出力関係は以下のように表される。

また∨(結び(join))は、論理の世界では論理和(OR)と呼ばれ、以下の図で示されるように並列のスイッチングでその機能が表される。(AとBのいずれかがオンになると、全体もオンになる)

この機能の入出力関係は以下のように表される。

最後に¬(〜でない(not))は、論理学世界では否定(NOT)と呼ばれ、以下の図のような概念で顕干される。

この機能の入出力関係は以下のように表される。

上記よりコンピューターで計算を行うための基本要素である∨(結び(join))と∧(交わり(meet))と¬(〜でない(not))を構成するためには、内部にスイッチ機能があれば良いことがわかる。このスイッチングを実現しているのが、MOSトランジスタであり、MOSトランジスタを大量に集積しているものがIC(Integrate Circuit)チップと呼ばれる半導体チップとなる。

半導体チップに用いられる半導体(Semiconductor)は、文字通り半分導体(電気を通す)材料で、電気を通す導体(アルミなどの金属等)と電気を通さない絶縁体(ガラスセラミックと大部分のプラスティック)の中間の電気抵抗を持つ材料を指し、代表的な半導体としてはSi(シリコン)やSe(セレン)などがある。周期律表だと非金属材料は以下の図の右上部分の水色のものに当たる。

ただし、単純に抵抗が金属と絶縁物の中間であるだけでは半導体とは言えず、外からの電気的な刺激によりその特性が絶縁体になったり、導体になったりと変化するものが「半導体」と呼ばれるものになる。また、SiやSeなどは単体の元素で半導体となるが、GaCdなどはAs等の他の元素と組み合わされることにより半導体となる。

ここでの導性は、それぞの原子が持つ電子(と電子の不足領域である正孔)により実現される。電子は原子核の周りに特定の確率分布を持って存在しており、”統計物理学と人工知能技術への応用“で述べている統計物理学という統計的な手法を使って計算することができる(その手法を機械学習に適用したものが”確率的生成モデルについて“で述べているベイズ推定等の確率的生成モデルとなる)。その分布を図示したものが下図の高校の物理(化学)で学ぶs軌道、p軌道、d軌道であり、個々の原始の電子状態はそれらの組み合わせ(例えばsp3状態)で表される

Siは、この軌道に強くは束縛されない電子を持ち、それが自由に動いて”半導性”を示したり、Si構造体の中に微小のドーパント(Siより電子が一つ多い(周期率表で右隣)Pや、一つ電子が少ない(周期律表で左隣)B)を導入することで、内部で動かすことのできる電子を制御する。

MOSトランジスタ(MOSFET)はMetal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor の略で、以下のような構成となる。

基本的な動作としては、ドレインソースの中央にチャネル領域と呼ばれる電子の移動領域があり、その上部に酸化膜(絶縁層)を介して形成されたゲート電極から電流を流してスイッチ機能を実現している。

このスイッチング機能を利用して、前述した∨(結び(join))と∧(交わり(meet))と¬(〜でない(not))を構成し、あらゆる計算を実現したものがコンピューターの原理となる。最新のCPUではこのトランジスタが数億個実装されるものとなる。

次回は半導体設計プロセスとAIアプリケーション用半導体チップについて述べる。

コメント

  1. […] コンピューターを構成する計算要素と半導体チップについて […]

  2. […] この半導体は”コンピューターを構成する計算要素と半導体チップについて“で述べているように、膜中の電子(と正孔)を制御することができる材料であり、特定の波長の光を当て […]

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