ベイズ推定技術の概要
ベイズ推定は、確率論的なフレームワークに基づいた統計的推論の手法の一つであり、不確実性を取り扱う機械学習技術となる。ベイズ推定の目的は、データと事前知識(事前分布)を組み合わせて、未知のパラメータの確率分布を推定することとなる。以下にベイズ推定の手順の概要について述べる。
- 事前分布の設定: ベイズ推定では、まず未知のパラメータの事前分布を設定する。事前分布は、データが得られる前のパラメータの確率分布であり、既存の知識や仮定に基づいて設定される。
- データの観測: ベイズ推定の次のステップは、データを観測するステップとなる。ここで得られたデータは、パラメータの推定に使用される。
- 尤度の計算: 尤度は、データが与えられた下でのパラメータの条件付き確率であり、ベイズ推定では、尤度を計算するためにデータとパラメータの関係をモデル化するステップを取る。
- パラメータの事後分布の計算: ベイズの定理を使用して、事前分布と尤度を組み合わせて、パラメータの事後分布を計算する。事後分布は、データを考慮した後のパラメータの確率分布となる。
- 推論や予測の実施: パラメータの事後分布を使用して、さまざまな推論や予測を実施する。これは具体的には、パラメータの平均値や信頼区間を計算したり、新しいデータの予測を行ったりするものとなる。
ベイズ推定を使用することで、不確実性を考慮しながらデータ解析や意思決定を行うことができ、また、逐次的な学習や情報の追加に対して柔軟に対応することができるという利点もある。
ベイズ推定に用いられるアルゴリズムについて
ベイズ推定には、さまざまなアルゴリズムや手法が存在している。以下に代表的ないくつかのアルゴリズムについて述べる。
- マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC): MCMCは、ベイズ推定における主要な手法の一つであり、パラメータの事後分布をサンプリングするために使用される。代表的なMCMCアルゴリズムとしては、Metropolis-HastingsアルゴリズムやGibbsサンプリングがある。これらのアルゴリズムは、パラメータ空間を効率的に探索し、事後分布からのサンプルを生成することができる。MCMCの詳細に関しては”マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法とベイズ推定“を参照のこと。
- 変分ベイズ法(VB): VBは、事後分布を近似するための変分推論の手法となる。VBでは、事後分布を事前に定めた近似分布の中から選ぶことで、推定を行う原理となる。変分ベイズ法は、計算の効率性や解析的な近似解の得られる可能性などの利点を持っている。変分ベイズ法の詳細に関しては”変分ベイズ学習について“を参照のこと。
- パーティクルフィルタ(PF): PFは、非線形な状態空間モデルにおけるベイズ推定の手法となる。PFでは、状態空間内の粒子を使用して事後分布を近似し、一連の時間ステップで粒子をリサンプリングし、重み付けされた粒子を用いて事後分布を表現する。パーティクルフィルタに関しては”動く地理空間情報 -シミュレーションとデータの同化“を参照のこと。
- ベイジアン最適化: ベイジアン最適化は、目的関数の最適化問題におけるベイズ推定の手法となる。ベイジアン最適化では、事前知識(事前分布)と観測データを組み合わせて、目的関数の最適解を推定し、”機械学習におけるアクティブラーニング技術について“で述べているアクティブラーニングやハイパーパラメータの最適化など、実験的な評価や計算コストの高い最適化問題に利用する。ベイズ最適化に関しては”ノンパラメトリックベイズとガウス過程について“を参照のこと。
ベイズ推定に用いられるライブラリとプラットフォームについて
ベイズ推定を実装するために、以下に示すようなライブラリやプラットフォームが一般的に利用されている。
- PyMC3: PyMC3はPythonでベイズ統計モデルを構築するための強力なライブラリとなる。PyMC3はMCMCサンプリングと変分推論をサポートしており、柔軟で使いやすいAPIも提供されている。PyMC3は、確率モデルの記述や事後分布の推定に必要な機能を提供し、幅広いベイズモデリングの問題に対応している。
- Stan: Stanは、ベイズ統計モデリングと高性能なMCMCサンプリングを行うためのプラットフォームとなる。StanはC++, Python、Rなどのインターフェースを提供しており、確率モデルを記述するための専用の言語(Stan言語)を使用し、効率的な推定とモデルの拡張性に焦点を当てており、大規模で複雑なモデルにも対応している。
- Edward: Edwardは、TensorFlow上で動作するベイズ推定のライブラリとなる。Edwardは、変分推論や確率的勾配法(SGHMC、SGNHTなど)など、さまざまな推定手法を提供しており、TensorFlowの機能を活用して、ベイズニューラルネットワークなどの複雑なモデルを構築することも可能となる。
- Pyro: Pyroは、PyTorchをベースとしたベイズ推定のライブラリで、確率的プログラミングの枠組みを提供し、変分推論や重要度サンプリングなどの推定手法をサポートするものとなる。Pyroは柔軟で拡張性があり、確率モデルとニューラルネットワークを組み合わせたベイズ的なモデルの構築に適している。
- Anglican: AnglicanはClojureをベースとした確率的プログラミングのプラっフォームであり、Clojureの関数言語プログラミングの機能と確率的プログラミングを組み合わせて利用することができるものとなる。Anglicanを用いることで、様々なベイズ推定のモデルの構築と推論が行えるようになる。
ベイズ推定の適用事例について
ベイズ推定は、さまざまな領域で幅広く適用されており、以下にいくつかのベイズ推定の適用事例について述べる。
- 機械学習とパターン認識: ベイズ推定は、機械学習やパターン認識の領域でよく使用される。例えば、ベイズ推定を用いたベイズ線形回帰やベイズニューラルネットワークは、パラメータの不確実性を考慮した予測や分類を行うことができる。
- 医療研究: ベイズ推定は、医療研究のデータ解析や評価にも活用されている。これは具体的には、臨床試験の結果を解析して治療効果を推定したり、医療データを使用して疾患の進行予測やリスク評価を行ったりする際に利用される。
- フィナンスとリスク管理: ベイズ推定は、金融市場のモデリングやリスク管理にも応用される。これは具体的には、株価の予測やポートフォリオ最適化において、ベイズ推定を使用することでリスクを考慮した意思決定のような利用ができる。
- 経済学と社会科学: ベイズ推定は、経済学や社会科学の分野でも広く利用されている。これは具体的には、需要予測やマーケットモデリング、社会現象のモデリングなど、さまざまな経済・社会現象の解明や予測に応用されている。
- 自然科学と工学: ベイズ推定は、物理学や化学、環境科学、エンジニアリングなどの自然科学や工学の領域でも使用されている。これは具体的には、実験データの解析や信号処理、センサーデータのフィルタリング、モデルパラメータの推定などに応用されている。
ベイズ推定は、不確実性を扱うことができるため、実データに基づく推定や予測において強力なツールとなっており、さまざまな領域で活用されている。以下にそれぞれの応用事例の詳細について述べる。
ベイズ推定を用いた機械学習とパターン認識について
<概要>
ベイズ推定は機械学習とパターン認識の領域で広く活用されている。以下に、それらのベイズ推定を用いた機械学習とパターン認識の具体的な応用例について述べる。
- ベイズ線形回帰: ベイズ線形回帰は、線形回帰モデルにおけるパラメータの推定と予測をベイズ推定によって行う手法となる。ベイズ線形回帰では、事前分布として正規分布を仮定し、観測データに基づいてパラメータの事後分布を推定する。これにより、パラメータの不確実性を考慮した予測や推定が可能になる。ベイズ線形回帰に関しては”機械学習プロフェッショナルシリーズ ベイズ深層学習 読書メモ“を参照のこと。
- ベイズニューラルネットワーク: ベイズニューラルネットワークは、ニューラルネットワークにベイズ推定を組み合わせた手法となる。通常のニューラルネットワークではパラメータは点推定されるが、ベイズニューラルネットワークではパラメータの事後分布を推定することで、モデルの不確実性を反映した予測や信頼区間の計算が可能となる。ベイズニューラルネットワークに関しては”機械学習プロフェッショナルシリーズ ベイズ深層学習 読書メモ“等を参照のこと。
- ベイズ非負値行列因子分解: ベイズ非負値行列因子分解は、行列データの次元削減や特徴抽出に利用される手法となる。データ行列を非負の行列因子に分解することで、データの構造やパターンを抽出し、ベイズ推定を組み合わせることで、因子行列の推定とモデルの適応的な次元選択が行われる。確率的行列分解に関しては”非対称関係データのクラスタリング技術 – 確率的ブロックモデルと無限関係モデル“を参照のこと。NMFの詳細は”非負値行列因子分解(NMF)の概要とアルゴリズム及び実装例について“を参照のこと。
- ガウス過程: ガウス過程は、ベイズ推定を基にした非線形回帰や分類の手法となる。ガウス過程では、データをガウス過程によってモデル化し、事後分布を推定している。ガウス過程は柔軟なモデルであり、モデルの不確実性を考慮した予測や信頼区間の計算が可能となる。ガウス過程の詳細に関しては”ノンパラメトリックベイズとガウス過程について“を参照のこと。
このようにベイズ推定を機械学習とパターン認識に応用することで、不確実性のモデリングや予測の信頼性の向上が可能となる。また、ベイズ推定の利点の一つは、事前知識の組み込みや小規模データの問題においても有効な推定ができる点となる。以下にこれらの中からベイズ線形回帰に対する実装例について述べる。
<ベイズ線形回帰のpythonによる実装>
import pymc3 as pm
import numpy as np
# トレーニングデータ
X_train = np.array([1, 2, 3, 4, 5])
y_train = np.array([2, 4, 6, 8, 10])
# モデルの構築
with pm.Model() as model:
# 事前分布
intercept = pm.Normal('intercept', mu=0, sd=10)
slope = pm.Normal('slope', mu=0, sd=10)
sigma = pm.HalfNormal('sigma', sd=1)
# 線形モデル
y_pred = intercept + slope * X_train
# 尤度関数
likelihood = pm.Normal('y', mu=y_pred, sd=sigma, observed=y_train)
# サンプリング
trace = pm.sample(2000, tune=1000, cores=1) # MCMCサンプリング
# 結果の確認
pm.summary(trace)
pm.traceplot(trace)
この例では、トレーニングデータ X_train
と y_train
を用いてベイズ線形回帰モデルを構築し、モデルのパラメータとして、切片 (intercept
)、傾き (slope
)、および観測誤差の標準偏差 (sigma
) を事前分布として設定している。線形モデルの予測値 y_pred
は、切片と傾きを用いて計算され、観測データ y_train
を正規分布の尤度関数としてモデルに組み込んでいる。
サンプリングは、pm.sample()
メソッドを使用して行われ、2000
回のサンプルを取得し、最初の1000
回はバーンイン(調整期間)として無視される。サンプリングの結果は、trace
オブジェクトに格納されている。最後に、pm.summary()
と pm.traceplot()
を使用して、サンプリング結果の要約統計量やトレースプロットを表示している。
ベイズ推定を用いた医療研究について
<概要>
ベイズ推定は医療研究のさまざまな領域で活用されている。具体的な例としては”個人差・地域差をとりこむ統計科学 医学分野での事例 “でのべているような薬の投与の効果の推定などがある。以下にそれら以外の実用例について述べる。
- 臨床試験の解析: ベイズ推定は、臨床試験のデータ解析において有用となる。これは具体的には、新しい治療法の効果を評価するためのランダム化比較試験のデータを解析する際に、ベイズ推定を用いるようなものがある。ベイズ推定を用いると、結果の確率分布や治療効果の信頼区間を推定することができる。
- ドーズファインディング: ベイズ推定は、薬物の効果や安全性の評価においても役立つ。特に、ドーズファインディング(dose-finding)では、患者への最適な投与量を見つけるためにベイズ推定を使用することがある。これにベイズ推定を適用すると、投与量と応答の関係をモデル化し、最適な投与量の推定や副作用のリスク評価を行うことができる。
- 生存解析: 生存解析は、医療研究において重要な領域となる。ベイズ推定は、生存解析におけるハザード比や生存曲線の推定に利用される。ベイズ推定を用いることで、生存解析のモデルパラメータや生存確率の信頼区間を推定することができる。
- 個別化治療の予測: ベイズ推定は、個別化治療(precision medicine)の研究においても応用されている。個別化治療では、患者の特性や病態に基づいて最適な治療戦略を決定することを目指し、ベイズ推定を用いることで、患者の特性や治療効果の関係をモデル化し、個別の予測や意思決定を行うことができるようになる。
これらに述べられたように、ベイズ推定は、医療データの不確実性を考慮し、予測や意思決定の基礎となる統計的な推定を行うために有用な手法となっている。以下にこれらの中から臨床試験の解析の時差壮麗について述べる。
<pythonによる臨床試験の解析の実装例>
ベイズ推定による臨床試験の解析をPythonで実装するためには、いくつかのライブラリが必要となる。以下の例では、NumPy、SciPy、PyMC3というライブラリを使用している。まず、これらのライブラリをインストールする。
$ pip install numpy scipy pymc3
次に、以下のような形でPythonでのベイズ推定による臨床試験の解析を行う。
import numpy as np
import pymc3 as pm
# データの準備
# グループ1の被験者数と成功数
n1 = 50
k1 = 35
# グループ2の被験者数と成功数
n2 = 50
k2 = 40
# 事前分布の設定
alpha = 1 # グループ1の事前分布のハイパーパラメータ
beta = 1 # グループ2の事前分布のハイパーパラメータ
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# 事前分布の設定
theta1 = pm.Beta('theta1', alpha, beta)
theta2 = pm.Beta('theta2', alpha, beta)
# 尤度の設定
y1 = pm.Binomial('y1', n=n1, p=theta1, observed=k1)
y2 = pm.Binomial('y2', n=n2, p=theta2, observed=k2)
# 推定の実行
trace = pm.sample(1000, tune=1000, cores=1) # サンプリング
# 推定結果の出力
pm.summary(trace, hdi_prob=0.95)
この例では、2つのグループの成功率(θ1とθ2)を推定しており、事前分布としてベータ分布を使用し、Binomial分布を尤度として設定している。推定結果は、ベイズ信頼区間(95% HDI)を表示するためにpm.summary
関数を使用して出力される。
ベイズ推定を用いたフィナンスとリスク管理について
<概要>
ベイズ推定は、フィナンスとリスク管理の領域で幅広く応用されている。以下に、ベイズ推定を用いたフィナンスとリスク管理の応用例について述べる。
- ポートフォリオ最適化: ポートフォリオ最適化は、複数の資産を組み合わせて投資ポートフォリオを構築する問題となる。この問題にベイズ推定を適用することで、各資産の期待収益率やリスクを推定し、最適なポートフォリオの割合を決定することができる。また、過去のデータだけでなく、事前の知識や予測モデルを組み込むことも可能となる。
- バリュエーションと価格設定: ベイズ推定は、オプション価格の評価や金融商品のバリュエーションにも応用される。これは具体的には、ブラック・ショールズ・モデルやその派生モデルにおいて、ベイズ推定を用いることでボラティリティの推定や価格の確率分布を求めるようなことが可能となる。ブラック・ショールズ・モデルに関しては”経済数学の直感的方法 確率・統計編 読書メモ“も参照のこと。
- リスク管理: ベイズ推定は、リスク管理の手法としても活用されている。例えば、VaR(Value at Risk)やCVaR(Conditional Value at Risk)などのリスク尺度の推定において、ベイズ推定を利用することがあり、また、ベイズ推定を用いることで、異常値の検出やイベントの発生確率の推定、ストレステストの実施など、リスク管理の幅広い側面に対応することもできる。
- デリバティブの評価: ベイズ推定は、デリバティブの評価においても有用となる。例えば、ベイズ推定を用いてオプションの隠れた変数(例えば、ボラティリティの変化率)を推定することができ、これにより、オプションの評価やヘッジ戦略の決定に役立てることが可能となる。。
ベイズ推定は、フィナンスとリスク管理の領域において、情報の不確実性を考慮し、リスク評価や意思決定をより信頼性の高いものにするための強力な手法となる。以下にこれらの中からリスク管理に対する実装について述べる。
<ベイズ推定を用いたリスク管理のpythonによる実装>
ベイズ推定を用いたリスク管理の実装例を以下に示す。
import numpy as np
import pymc3 as pm
# データの準備
data = np.array([0, 1, 0, 0, 1, 1, 0, 1, 1, 1]) # 0: イベントなし, 1: イベントあり
# 事前分布の設定
alpha = 1 # 事前分布のハイパーパラメータ
beta = 1
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# 事前分布の設定
theta = pm.Beta('theta', alpha, beta)
# 尤度の設定
y = pm.Bernoulli('y', p=theta, observed=data)
# 推定の実行
trace = pm.sample(1000, tune=1000, cores=1) # サンプリング
# 推定結果の出力
pm.summary(trace, hdi_prob=0.95)
この例では、リスクの発生(イベントの発生)の確率をベイズ推定し、データは0と1のシーケンスで、0はイベントが発生しなかったことを示し、1はイベントが発生したことを示している。モデルでは、θをリスクの発生確率として、事前分布としてベータ分布を使用し、尤度としてベルヌーイ分布を設定している。
推定結果は、ベイズ信頼区間(95% HDI)を表示するためにpm.summary関数を使用して出力され、ベイズ推定により、リスクの発生確率の事後分布を推定することができる。
ベイズ推定を用いた経済学と社会科学について
<概要>
ベイズ推定は、経済学や社会科学の研究においても幅広く応用されている。以下に、ベイズ推定を用いた経済学と社会科学の応用例について述べる。
- 経済予測: ベイズ推定は、経済予測モデルの構築において有用となる。これには具体的には、経済成長率、インフレーション率、失業率などの経済指標を予測するためのモデルを構築する際に、ベイズ推定を利用し、経済変数の確率分布や予測区間を推定するものなどがある。
- マーケティング分析: ベイズ推定は、マーケティング分析においても応用される。これは具体的には、顧客の購買行動や需要予測をモデリングする際に、ベイズ推定を利用することで、顧客の特性や需要の分布を推定し、効果的なマーケティング戦略の策定に役立てるようなものがある。
- 社会ネットワーク分析: ベイズ推定は、社会ネットワーク分析においても有用となる。これは具体的には、人々の関係やつながりをネットワークとしてモデル化し、ネットワーク上での情報伝播や影響力の推定を行う際に、ベイズ推定を利用し、ネットワーク構造や個々のノードの特性を推定し、社会ネットワークの理解や予測に貢献するようなものがある。
- 教育評価: ベイズ推定は、教育評価においても応用される。これは具体的には、学習効果や教育政策の効果を評価するためのモデルを構築する際に、ベイズ推定を利用し、個別の学習者や学校の特性を考慮した評価や予測を行うようなものがある。
これらのようにベイズ推定は、経済学や社会科学の研究において、不確実性の高いデータや複雑な関係を考慮して推定や予測を行うための有力な手法となる。以下に上記の中から、ベイズ推定を用いた社会ネットワークの推定のpythonによる実装について述べる。
<ベイズ推定を用いた社会ネットワークの推定のpythonによる実装>
ベイズ推定を用いた社会ネットワークの推定を行うためには、いくつかのアプローチがある。ここでは、ノンパラメトリックベイズモデルの一種であるディリクレ過程を使用した、社会ネットワークの推定の実装例を示す。
import numpy as np
import pymc3 as pm
import networkx as nx
import matplotlib.pyplot as plt
# データの準備
adjacency_matrix = np.array([[0, 1, 1, 0],
[1, 0, 1, 1],
[1, 1, 0, 1],
[0, 1, 1, 0]])
n = adjacency_matrix.shape[0] # ノード数
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# ディリクレ過程のパラメータ
alpha = 1 # 事前分布のハイパーパラメータ
# ディリクレ過程による確率行列の生成
p_matrix = pm.Dirichlet('p_matrix', np.full((n, n), alpha), shape=(n, n))
# ベルヌーイ分布によるリンクの生成
adjacency_matrix_pred = pm.Bernoulli('adjacency_matrix_pred', p=p_matrix, observed=adjacency_matrix)
# 推定の実行
trace = pm.sample(1000, tune=1000, cores=1) # サンプリング
# 推定結果の出力
pm.summary(trace, hdi_prob=0.95)
# 推定された社会ネットワークの可視化
plt.figure(figsize=(6, 6))
g = nx.from_numpy_matrix(np.mean(trace['p_matrix'], axis=0))
pos = nx.circular_layout(g)
nx.draw_networkx(g, pos=pos, with_labels=True, node_color='skyblue', edge_color='gray', width=1, alpha=0.8)
plt.axis('off')
plt.show()
この例では、与えられた隣接行列から社会ネットワークの構造を推定し、隣接行列は0と1で構成され、ノード間のリンクの有無を表す。モデルでは、ディリクレ過程を使用して確率行列を生成し、ベルヌーイ分布を用いてリンクの存在をモデル化している。推定結果として、ベイズ信頼区間(95% HDI)を表示するためにpm.summary
関数を使用して出力される。また、推定された社会ネットワークを可視化するために、NetworkXとMatplotlibを使用してグラフを描画している。
ベイズ推定を用いた自然科学と工学について
<概要>
ベイズ推定は、自然科学や工学の様々な分野で応用されている。以下に、ベイズ推定を用いた自然科学と工学の応用例について述べる。
- 物理学: ベイズ推定は、物理学の分野で広く使用されている。これには具体的には、粒子物理学の実験データの解析において、ベイズ推定を用いて物理パラメータの推定やモデルの選択を行ったり、天文学の観測データを解析する際に、ベイズ推定を利用して宇宙モデルのパラメータを推定するようなものがある。
- 化学: 化学の分野では、ベイズ推定を用いて反応速度定数の推定や分子の構造推定などに応用されている。ベイズ推定を利用することで、実験データや事前知識を組み合わせてより信頼性の高い推定結果を得ることができる。
- 生物学: ベイズ推定は、生物学の研究においても重要な手法となる。遺伝学や進化生物学の分野では、遺伝子の進化や種の系統関係の推定にベイズ推定が利用され、また、生物学的システムのモデリングや生物反応の解析においても、ベイズ推定を活用することがある。
- エンジニアリング: ベイズ推定は、工学の分野でさまざまな応用がある。これは具体的には、信号処理や画像処理の分野では、ノイズ除去や信号の復元にベイズ推定を用いたり、また、制御システムや機械学習モデルのパラメータ推定においても、ベイズ推定が有効となる。
以下にこれらの中からベイズ推定を用いた分子の構造推定のpythonによる実装について述べる。
<ベイズ推定を用いた分子の構造推定のpythonによる実装>
ベイズ推定を用いた分子の構造推定は、分子の構造を表すパラメータ(原子の座標など)の事後分布を推定することによって行われる。以下に、実装例を示す。
import numpy as np
import pymc3 as pm
import matplotlib.pyplot as plt
from mpl_toolkits.mplot3d import Axes3D
# データの準備
observed_data = np.array([[0.0, 0.0, 0.0],
[1.0, 0.0, 0.0],
[0.0, 1.0, 0.0]])
n_atoms = observed_data.shape[0] # 原子数
n_dimensions = observed_data.shape[1] # 次元数
# 事前分布の設定
prior_mean = np.zeros((n_atoms, n_dimensions))
prior_cov = np.eye(n_atoms)
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# パラメータの事前分布の設定
params = pm.MvNormal('params', mu=prior_mean, cov=prior_cov, shape=(n_atoms, n_dimensions))
# 尤度の設定
likelihood = pm.MvNormal('likelihood', mu=params, observed=observed_data, shape=(n_atoms, n_dimensions))
# 推定の実行
trace = pm.sample(1000, tune=1000, cores=1) # サンプリング
# 推定結果の出力
pm.summary(trace, hdi_prob=0.95)
# 推定された分子の構造の可視化
fig = plt.figure()
ax = fig.add_subplot(111, projection='3d')
for i in range(n_atoms):
ax.scatter(trace['params'][:, i, 0], trace['params'][:, i, 1], trace['params'][:, i, 2], marker='o', alpha=0.2)
ax.set_xlabel('X')
ax.set_ylabel('Y')
ax.set_zlabel('Z')
plt.show()
この例では、与えられた観測データ(原子の座標)から分子の構造を推定し、モデルでは、パラメータとして原子の座標を表す変数(params)を導入し、事前分布として多変量正規分布を使用している。また、尤度としても多変量正規分布を設定し、観測データとパラメータの関係をモデル化している。推定結果は、ベイズ信頼区間(95% HDI)を表示するためにpm.summary
関数を使用して出力され、また、推定された分子の構造を可視化するために、Matplotlibの3Dプロットを使用して原子の座標をプロットしている。
参考図書と参考情報
ベイズ推定の詳細情報については”確率的生成モデルについて“、”ベイズ推論とグラフィカルモデルによる機械学習“、”ノンパラメトリックベイズとガウス過程について“等に述べているので、これらを参照のこと。
ベイズ推定の参考図書としては”異端の統計学 ベイズ“
“機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門“
“Pythonではじめるベイズ機械学習入門“等がある。
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