機械学習における変分法について
変分法(Variational Methods)は、関数や確率分布の中で最適解を求めるために用いられ、機械学習や統計学などで広く使われる最適化手法の一つであり、特に、確率的生成モデルや変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)などの機械学習モデルにおいて重要な役割を果たしている手法となる。
変分法は、真の関数や分布が解析的に求まらない場合や、計算コストが高い場合に特に有用であり、また、変分法は確率的な要素を含むモデルに対しても適用可能であり、機械学習のモデリングや推論において広く利用されているものとなる。
変分法のアイデアは、最適化したい関数や確率分布に対して、近似的な関数族や分布族を仮定し、それらの中から最も近い近似解を見つけるアプローチであり、具体的には、真の関数や分布と近い近似関数や近似分布の間の距離を表す目的関数を最小化する問題を考えるものとなる。
変分法の具体的なアプローチは、最適化したい関数や確率分布をパラメータ化し、そのパラメータに対して通常の最適化手法(”勾配法の概要とアルゴリズムおよび実装例について“でも述べている勾配法や”ニュートン法の概要とアルゴリズム及び実装について“で述べているニュートン法など)を用いて最適化を行い、近似関数や近似分布のパラメータを調整して、真の関数や分布にできるだけ近づけることを目指すものとなる。
変分法による最適化では、目的関数の最小化に加えて、近似関数や近似分布に対する制約条件(たとえば、確率分布であることや、関数の平滑性など)も考慮することがあり、この制約条件は、最適な近似解が望ましい性質を持つように保証する役割を果たしている。
変分法は、機械学習のさまざまなタスクに応用されている。これはたとえば、変分自己符号化器(VAE)では、潜在空間における事後分布を変分法を用いて近似したり、また、確率的生成モデルでは、変分法を用いて真の分布との間に”クロスエントロピーの概要と関連アルゴリズム及び実装例“で述べているクロスエントロピーなどの距離を最小化するような近似分布を求めたりする。
変分ベイズ学習について
変分ベイズ学習(Variational Bayesian Inference)は、ベイズ統計学における確率的モデリングの手法の一つであり、事後分布を解析的に求めることが難しい場合や計算コストが高い場合に利用されるものとなる。また、変分ベイズ学習はデータの規模が大きくても適用可能であり、高次元のパラメータ空間でも扱うことができる手法でもある。
通常のベイズ統計学では、パラメータやモデルの事後分布を直接計算することは困難であるのに対して、変分ベイズ学習では、事後分布をある近似分布(変分分布)で置き換えることで、解析的に扱える形に近似することで計算することを可能としている。
変分ベイズ学習では、以下の手順を通じてモデルの事後分布を近似する。
- モデルの事前分布と尤度関数を設定する。
- 近似分布の形を決める。通常は、パラメータ化された分布族(たとえば、ガウス分布や”ディリクレ分布の概要と関連アルゴリズム及び実装例について“で述べているディリクレ分布)を選択する。
- 近似分布のパラメータを最適化するための目的関数を定義する。一般的には、近似分布と真の事後分布の間の距離を最小化するような目的関数を設定し、この距離は、クロスエントロピーなどの情報理論的な尺度で表現されることが多い。
- 近似分布のパラメータを最適化するために、変分法などの最適化手法を適用する。通常は、勾配法や共役勾配法などの最適化手法が使用される。
- 近似分布のパラメータが最適化されたら、近似分布を使ってパラメータや予測値の推定を行う。
変分ベイズ学習の適用事例について
変分ベイズ学習は、確率モデルの事後分布を近似する手法であり、さまざまな分野に適用されている。以下に、変分ベイズ学習の適用事例を示す。
- トピックモデリング: 変分ベイズ学習は、トピックモデリングの一手法として広く使われている。トピックモデリングは、大規模なテキストデータセットからトピック(テーマ)を抽出するための手法であり、変分ベイズ学習を使用することで、トピックモデルのパラメータとトピックの事後分布を効率的に推定することを可能としている。トピックモデルの詳細に関しては”トピックモデルの理論と実装“を参照のこと。
- ベイジアン回帰: 変分ベイズ学習は、ベイジアン回帰の手法としても応用されている。ベイジアン回帰では、データと事前分布を組み合わせて事後分布を推定し、予測や不確かさの推定を行っている。変分ベイズ学習によって、ベイジアン回帰の事後分布を近似することができる。ベイジアン回帰の詳細に関しては”ベイズ推論とグラフィカルモデルによる機械学習“を参照のこと。
- 混合モデル: 混合モデルは、データが複数の異なる確率分布から生成されると仮定するモデルとなる。変分ベイズ学習は、混合モデルのパラメータとクラス割当ての事後分布を推定するために使用され、これにより、データのクラスタリングや異常検知などのタスクに応用することができる。混合モデルの詳細に関しては”ベイズ推論とグラフィカルモデルによる機械学習“を参照のこと。
- ベイジアンニューラルネットワーク: 変分ベイズ学習は、”ベイジアンニューラルネットワークの概要とアルゴリズム及び実装例について“で述べているベイジアンニューラルネットワーク(BNN)の学習にも適用されます。BNNは、ニューラルネットワークの重みやバイアスに確率的な事前分布を設定し、事後分布を推定することで不確かさのモデリングを行うものであり、BNNの事後分布を近似するために使用される。ベイジアンニューラルネットワークの詳細に関しては”ベイズ深層学習 概要“を参照のこと。
次に変分ベイズ学習に用いられるアルゴリズムについて述べる。
変分ベイズ学習に用いられるアルゴリズムについて
変分ベイズ学習には、いくつかのアルゴリズムが利用されている。以下に代表的なアルゴリズムについて述べる。
- 変分期待値最大化(Variational Expectation-Maximization, VEM): VEMは、変分ベイズ学習の基本的なアルゴリズムとなる。EMアルゴリズムをベースにしており、モデルのパラメータの推定と変分分布の更新を交互に行う。Eステップでは、隠れ変数の事後分布を計算し、Q関数と呼ばれる目的関数を最大化し、Mステップでは、Q関数を最大化するようにパラメータを更新する。この手順を反復的に繰り返し、近似事後分布とパラメータの最適値を求めるものとなる。
- 変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE): VAEは、生成モデルとしての変分ベイズ学習の一形態となる。VAEは、エンコーダとデコーダからなるニューラルネットワークモデルであり、潜在変数空間での事後分布を近似するために変分推論を行う。VAEでは、再パラメータ化トリック(reparameterization trick)と呼ばれるテクニックを使って、勾配の計算を可能にしている。訓練中には、再パラメータ化トリックによってサンプリングされた潜在変数を使用して、データの生成や再構築を行う。詳細は”変分オートエンコーダ (Variational Autoencoder, VAE)の概要とアルゴリズム及び実装例について“を参照のこと。
- 黒板変分推論(Black Board Variational Inference, BBVI): BBVIは、変分ベイズ学習の一つの手法であり、確率的な変分推論手法となる。この手法では、モデルの事後分布を直接推定せず、近似的な勾配情報を用いて最適化を行う。BBVIでは、モンテカルロ法に基づくサンプリングや自動微分を組み合わせて、目的関数の勾配の推定を行っており、これにより、パラメータの最適化を効率的に行うことができるようになる。
- 入力変分(Variational Inference for Input, VI for Input): VI for Inputは、変分ベイズ学習の一手法であり、データ点自体に対して変分推論を適用する手法となる。通常の変分ベイズ学習では、モデルのパラメータの事後分布を推定するが、VI for Inputでは、各データ点の変分事後分布を推定している。これにより、個々のデータ点に対して異なる近似を行うことが可能となる。
- 変分RBM(Variational Restricted Boltzmann Machine): 変分RBM(Variational Restricted Boltzmann Machine)は、変分推論と制約付きボルツマンマシン(Restricted Boltzmann Machine, RBM)を組み合わせた生成モデルとなる。RBMは、確率的なエネルギーモデルの一種であり、可視変数と隠れ変数の間の結合をモデリングすることができ、変分RBMは、このRBMを変分推論によって近似する手法となる。
以下にそれぞれのアルゴリズムの詳細について述べる。
変分期待値最大化(Variational Expectation Maximization, VEM)
変分期待値最大化(Variational Expectation Maximization, VEM)は、”EMアルゴリズムと各種応用の実装例“で述べたEM法の拡張手法となる。VEMは、変分推論とEMアルゴリズムを組み合わせた手法であり、確率モデルのパラメータ推定や隠れ変数の推定を行うものとなる。
VEMでは、真のデータ分布を表現する確率モデルと、モデルのパラメータを推定するための近似分布(変分分布)を使用し、VEMの目標は、真のデータ分布の尤度を最大化するようなパラメータを見つけることとなる。
VEMの手順は以下のようになる。
- Eステップ(Expectation Step): 初期のパラメータを使って、変分分布のパラメータを最適化する。変分分布は真のデータ分布を近似するために使用され、このステップでは、変分分布のパラメータを使って隠れ変数の事後分布を計算している。
- Mステップ(Maximization Step): Eステップで計算された隠れ変数の事後分布を使って、真のデータ分布の尤度を最大化するようなパラメータを求めている。通常は、尤度関数を最大化するための最適化手法(例:勾配法)を使用して、パラメータを更新する。
- EステップとMステップの繰り返し:上記のステップを収束条件(例:パラメータの変化量が小さいなど)が満たされるまで繰り返す。
VEMは、EMアルゴリズムの一般化と見なすこともできる。EMアルゴリズムでは、Eステップで隠れ変数の事後分布を計算し、Mステップでパラメータを最適化しており、VEMでは、Eステップで変分分布のパラメータを最適化し、Mステップでパラメータを最適化する。
VEMは、変分ベイズ推論の一部として広く使用されており、変分推論によって事後分布を近似し、その近似分布を使ってパラメータを推定することで、複雑な確率モデルの推論や学習を効率的に行うことを可能としている。
変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)
変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)は、生成モデルとしての変分推論と、”オートエンコーダー“で述べている自己符号化器(Autoencoder)の組み合わせとなる。VAEは、高次元のデータを低次元の潜在空間に写像することで、データの特徴表現や生成を実現している。
VAEは、以下の2つの主要な部分から構成される。
- エンコーダ(Encoder): エンコーダは、入力データを潜在空間の確率分布のパラメータに変換している。通常、入力データを与えると、エンコーダは平均と分散(またはその他のパラメータ)を持つ確率分布(通常はガウス分布)を出力する。
- デコーダ(Decoder): デコーダは、潜在空間のサンプルを入力として受け取り、元のデータの再構成を行う。デコーダは、潜在空間から元のデータ空間への写像を行うために必要なパラメータを持つ。
VAEは、エンコーダとデコーダの組み合わせによって、データの特徴表現を学習している。潜在空間のサンプルを生成することで、新しいデータの生成も可能となる。
VAEの学習は、“最尤推定の概要とアルゴリズムおよびその実装について“で述べている最尤推定の観点から行われている。具体的には、学習データの対数尤度を最大化するようにモデルのパラメータを調整しているが、直接的な対数尤度の最大化は困難なため、変分推論と”EMアルゴリズムと各種応用の実装例“で述べたEMアルゴリズムを用いて学習を行っている。
変分推論によって、潜在空間の事後分布を近似し、再パラメータ化トリック(reparameterization trick)と呼ばれる手法を用いて、確率的な勾配降下法に基づく最適化が可能となっている。
VAEは、データの次元削減や異常検知、生成モデルとしての応用など、さまざまなタスクに使用される手法となる。
黒板変分推論(Black Board Variational Inference, BBVI)
黒板変分推論(Black Board Variational Inference, BBVI)は、モデルのパラメータや隠れ変数の事後分布を解析的に求めることなく近似分布を求める手法で、確率モデルの事後分布を近似するために使用される手法となる。
BBVIは「黒板」と呼ばれるメタフォアを使用して説明される。ここでの「黒板」とは、モデルのパラメータや隠れ変数を書き込むための仮想的な表面を指し、BBVIでは、モデルの対数尤度の勾配情報を使用して、黒板上のパラメータの値を更新していく。
BBVIの手順は以下のようになる。
- 変分分布のパラメータの初期化: 変分分布のパラメータ(例:平均と分散)を初期化する。
- 黒板の生成: 黒板上に、モデルのパラメータや隠れ変数の値を書き込む。
- サンプリング: 黒板上のパラメータや隠れ変数をサンプリングする。この際、変分分布からのサンプルやランダムノイズを使用する。
- 対数尤度の評価: サンプルされたパラメータや隠れ変数を使用して、モデルの対数尤度を計算する。
- 勾配の計算: 対数尤度の勾配を計算する。この勾配は、黒板上のパラメータに関してのみ計算される。
- 黒板の更新: 黒板上のパラメータを、勾配の情報を使用して更新する。
- ステップ3からステップ6までを繰り返し、黒板上のパラメータを反復的に更新する。
BBVIでは、モンテカルロ法や確率的勾配法などの手法を使用して、勾配の近似や最適化を行う。これにより、変分推論において解析的な計算が困難な場合でも、効率的に近似分布を求めることができるようになる。
BBVIは、非常に柔軟な手法であり、さまざまな確率モデルやベイジアンネットワークに適用でき、また、大規模なデータセットや高次元のパラメータ空間においても有用な手法となる。
入力変分法(Variational Inference for Input, VI for Input)
入力変分法(Variational Inference for Input, VI for Input)は、変分推論の一種であり、データ(入力)に関する事後分布を近似する手法となる。通常の変分推論では、モデルのパラメータの事後分布を求めることが目的だが、入力変分法ではデータ自体の事後分布を近似することを目指す。
入力変分法は、データの生成モデルとしてのモデルパラメータと、データの事後分布を表現するための近似分布を組み合わせて使用している。入力変分法は、以下の手順で実行される。
- エンコーダ(Encoder)の設計: データの事後分布を近似するためのエンコーダを設計する。エンコーダは、データを入力として受け取り、近似分布のパラメータを出力する。
- エンコーダの学習: エンコーダのパラメータを最適化するために、尤度関数やKLダイバージェンスなどの目的関数を定義する。一般的には、確率的勾配降下法などの最適化手法を使用して、エンコーダのパラメータを更新する。
- データの事後分布の近似: 学習済みのエンコーダを使用して、データの事後分布の近似を行う。具体的には、エンコーダの出力として得られる近似分布のパラメータを使用して、事後分布を構築する。
入力変分法は、データの特徴表現や異常検知などのタスクに応用されている。これは例えば、画像やテキストなどのデータに対して入力変分法を適用することで、データの事後分布を推定し、データ生成やサンプリングを行うようなものとなる。
入力変分法は、変分オートエンコーダ(VAE)や変分RBM(Restricted Boltzmann Machine)などの手法と組み合わせて使用されることもあり、これにより、データとモデルのパラメータの双方に対する変分推論を統合的に行うことができることがある。
変分RBM(Variational Restricted Boltzmann Machine)
変分RBM(Variational Restricted Boltzmann Machine)は、変分推論と”機械学習プロフェッショナルシリーズ ベイズ深層学習 読書メモ“等で述べている制約付きボルツマンマシン(Restricted Boltzmann Machine, RBM)を組み合わせた生成モデルとなる。RBMは、確率的なエネルギーモデルの一種であり、可視変数と隠れ変数の間の結合をモデリングすることができ、変分RBMは、このRBMを変分推論によって近似する手法となる。
変分RBMでは、以下の要素が組み合わさっている。
- 制約付きボルツマンマシン(RBM): RBMは、可視変数と隠れ変数の間の結合を表現する確率的エネルギーモデルとなる。可視変数は観測データを表し、隠れ変数はデータの生成過程における潜在的な要素を表す。RBMは、可視変数と隠れ変数の間の結合の重みパラメータを学習することで、データの生成や特徴表現を行う。
- 変分推論: 変分推論は、真の事後分布を解析的に求めることが難しい場合に、近似分布を求める手法となる。変分推論によって、モデルの事後分布を近似するための変分分布を定義する。
変分RBMの学習は、変分推論と”EMアルゴリズムと各種応用の実装例“で述べたEMアルゴリズムを組み合わせて行われ、具体的な手順は以下のようになる。
- 変分分布の初期化: 変分分布のパラメータを初期化する。
- Eステップ(Expectation Step): 現在の変分分布のパラメータを使って、隠れ変数の事後分布を計算する。
- Mステップ(Maximization Step): Eステップで計算された隠れ変数の事後分布を使って、RBMの重みパラメータを最適化する。通常は、勾配降下法やコントラスト法などの最適化手法を使用する。
- EステップとMステップを繰り返し、収束条件が満たされるまで繰り返す。
変分RBMは、生成モデルとしての特徴表現やデータ生成、異常検知などのタスクに使用される。変分推論によって事後分布を近似することで、RBMにおける特徴表現やデータ生成の能力を向上させるものとなる。
これらのアルゴリズムを実装するには以下のようなツールを用いることができる。
変分ベイズ学習に適用可能なライブラリとプラットフォームについて
変分ベイズ学習は確率モデルの近似推論手法であり、様々なライブラリとプラットフォームで実装することが可能となる。以下にそれらの中から人気のあるライブラリとプラットフォームについて述べる。
- PyMC3: PyMC3はPythonで記述された確率的プログラミングライブラリで、変分推論をサポートしているものとなる。PyMC3は、変分ベイズ法によるモデルの近似推論を行うためのAPIや関数を提供している。
- Edward: Edwardは、TensorFlow上で動作する確率的プログラミングライブラリとなる。Edwardは、変分推論に特化しており、変分推論のための便利な関数やモデルクラスを提供している。
- Stan: Stanは、ベイズ統計モデリングと高速な近似推論を行うためのプログラミング言語として開発されたライブラリであり、、変分ベイズ法の実装もサポートしており、C++で記述されているが、Pythonからも使用することができるものとなる。
- TensorFlow Probability (TFP): TensorFlow Probabilityは、TensorFlowの一部として提供される確率的プログラミングライブラリとなる。TFPは、変分ベイズ法を含む様々な確率モデリングと推論手法をサポートしている。
- Pyro: Pyroは、PyTorchをベースにした確率的プログラミングライブラリで、変分ベイズ推論をサポートしている。Pyroは、柔軟なモデル記述と推論のための高レベルのAPIも提供している。
これらのライブラリは、変分ベイズ学習に適用するための豊富な機能とツールを提供しており、Jupyter Notebookなどのプラットフォームを使用して、モデルの開発、実行、視覚化を行うこともできるものとなっている。これにより、変分ベイズ学習の実験や応用を柔軟かつ効果的に行うことが可能となる。
次にこれらを用いた具体的な実装について述べる。
変分ベイズ学習を用いたトピックモデルのpythonによる実装例について
変分ベイズ学習を用いたトピックモデルの実装には、Pythonの多くのライブラリが使用されており、その中でも、以下のライブラリが人気となる。
- Gensim: Gensimは、Pythonでのトピックモデリングを容易に行うための強力なライブラリとなる。Gensimを使用すると、Latent Dirichlet Allocation(LDA)と呼ばれる変分ベイズ推定を用いたトピックモデルを実装することができる。以下は、Gensimを使用した簡単なトピックモデルの実装例となる。
from gensim import corpora
from gensim.models import LdaModel
# テキストデータの前処理とトピックモデルの入力形式への変換
documents = preprocess_text_data() # テキストデータの前処理を行う関数
dictionary = corpora.Dictionary(documents)
corpus = [dictionary.doc2bow(doc) for doc in documents]
# トピックモデルの学習
num_topics = 10
lda_model = LdaModel(corpus=corpus, id2word=dictionary, num_topics=num_topics)
# トピック分布の表示
for topic_id in range(num_topics):
print(f"Topic {topic_id}:")
words = lda_model.show_topic(topic_id)
for word, prob in words:
print(f"{word}: {prob}")
- Pyro: Pyroは、確率的プログラミングライブラリであり、変分ベイズ推論を含むさまざまなベイズ推論手法をサポートしているツールとなる。Pyroを使用することで、柔軟なトピックモデルの実装が可能となる。以下にPyroを使用したトピックモデルの実装例を示す。
import pyro
import pyro.distributions as dist
# トピックモデルのモデル定義
def topic_model(data):
num_topics = 10
num_words = len(vocab)
with pyro.plate("topics", num_topics):
topic_weights = pyro.sample("topic_weights", dist.Dirichlet(torch.ones(num_topics)))
with pyro.plate("words", num_words):
topic_words = pyro.sample("topic_words", dist.Dirichlet(torch.ones(num_topics)))
with pyro.plate("data", len(data)):
doc_topics = pyro.sample("doc_topics", dist.Dirichlet(topic_weights))
word_topics = pyro.sample("word_topics", dist.Categorical(doc_topics), obs=data)
# 推論の実行
guide = pyro.infer.autoguide.AutoDiagonalNormal(topic_model)
svi = pyro.infer.SVI(topic_model, guide, pyro.optim.Adam({"lr": 0.01}), pyro.infer.Trace_ELBO())
num_steps = 1000
for step in range(num_steps):
loss = svi.step(data)
# トピック分布の表示
topic_weights = pyro.param("topic_weights")
for topic_id, weights in enumerate(topic_weights):
print(f"Topic {topic_id}: {weights}")
変分ベイズ学習を用いたベイジアン回帰のpythonによる実装例について
変分ベイズ学習を用いたベイジアン回帰の実装には、PythonのライブラリであるPyMC3がよく使用される。PyMC3は、ベイズ統計モデリングのための強力なライブラリであり、変分推論をサポートしている。以下に、PyMC3を使用したベイジアン回帰の実装例を示す。
import pymc3 as pm
import numpy as np
# データセットの作成
np.random.seed(0)
n = 100 # データ点の数
X = np.random.randn(n, 2) # 特徴ベクトル
beta = np.array([1, 2]) # 真のパラメータ
epsilon = 0.5 * np.random.randn(n) # ノイズ
y = np.dot(X, beta) + epsilon # 目標変数
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# 事前分布
sigma = pm.HalfCauchy("sigma", beta=10, testval=1.0) # ノイズの分散
beta = pm.Normal("beta", mu=0, sd=10, shape=2) # 回帰係数
# 確率モデル
mu = pm.Deterministic("mu", pm.math.dot(X, beta))
likelihood = pm.Normal("likelihood", mu=mu, sd=sigma, observed=y)
# 変分推論
approx = pm.fit(n=10000, method=pm.ADVI())
# 推論結果の取得
trace = approx.sample(draws=5000)
# 結果の表示
pm.summary(trace)
# 予測
X_new = np.array([[1, 2], [3, 4]]) # 新しいデータ点
with model:
pm.set_data({"X": X_new})
post_pred = pm.sample_posterior_predictive(trace, samples=500)
# 予測結果の表示
print("Predictive mean:", post_pred["likelihood"].mean(axis=0))
print("Predictive std:", post_pred["likelihood"].std(axis=0))
上記のコードでは、PyMC3を使用してベイジアン回帰モデルを定義し、変分推論を実行している。事前分布としてはハーフコーシー分布と正規分布を使用し、観測データに対して正規分布の尤度を指定しており、推論結果としては、パラメータの事後分布の要約統計量が表示されている。また、新しいデータ点に対する予測も行っており、サンプリングした事後分布から予測分布を生成している。
変分ベイズ学習を用いた混合モデルのpythonによる実装例について
変分ベイズ学習を用いた混合モデルの実装には、PyMC3がよく使用されている。以下に、PyMC3を使用した混合モデルの実装例を示す。
import pymc3 as pm
import numpy as np
# データセットの作成
np.random.seed(0)
n = 1000 # データ点の数
k = 2 # コンポーネントの数
true_weights = np.array([0.4, 0.6]) # 真の混合比率
true_means = np.array([-2, 2]) # 真の平均
true_stds = np.array([0.5, 1]) # 真の標準偏差
true_assignments = np.random.choice(k, size=n, p=true_weights)
data = np.concatenate([np.random.normal(true_means[i], true_stds[i], size=sum(true_assignments == i)) for i in range(k)])
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# 事前分布
weights = pm.Dirichlet("weights", a=np.ones(k)) # 混合比率
means = pm.Normal("means", mu=0, sd=10, shape=k) # 平均
stds = pm.HalfNormal("stds", sd=10, shape=k) # 標準偏差
# 潜在変数(コンポーネント割当て)
z = pm.Categorical("z", p=weights, shape=n)
# データ生成分布
obs = pm.Normal("obs", mu=means[z], sd=stds[z], observed=data)
# 変分推論
approx = pm.fit(n=10000, method=pm.ADVI())
# 推論結果の取得
trace = approx.sample(draws=5000)
# 結果の表示
pm.summary(trace)
# コンポーネントの割当ての表示
z_pred = np.argmax(pm.sample_posterior_predictive(trace, var_names=["z"])["z"], axis=1)
print("Predicted Assignments:", z_pred)
上記のコードでは、PyMC3を使用して混合モデルを定義し、変分推論を実行している。混合比率、平均、標準偏差のパラメータには事前分布を設定し、データ生成分布にはカテゴリカル分布と正規分布を使用し、変分推論により、パラメータの事後分布を近似的に求めている。
推論結果として、パラメータの事後分布の要約統計量が表示され、また、コンポーネントの割当てを予測するために、事後分布からサンプリングした結果を用いて最も確率の高いコンポーネントを選択している。
変分ベイズ学習を用いたベイジアンニューラルネットワークのpythonによる実装例について
変分ベイズ学習を用いたベイジアンニューラルネットワーク(BNN)の実装には、PyMC3やTensorFlow Probability(TFP)がよく使用されている。以下に、PyMC3とTFPを使用したBNNの実装例を示す。
PyMC3を使用した場合:
import pymc3 as pm
import numpy as np
import theano.tensor as tt
# データセットの作成
np.random.seed(0)
n = 100 # データ点の数
X = np.random.randn(n, 1) # 特徴ベクトル
y = 2 * X.squeeze() + 1 + 0.5 * np.random.randn(n) # 目標変数
# モデルの定義
with pm.Model() as model:
# 事前分布
l = pm.Gamma("l", alpha=2, beta=1)
sigma = pm.HalfCauchy("sigma", beta=5)
# ニューラルネットワーク層
def neural_network(X):
w1 = pm.Normal("w1", mu=0, sd=1, shape=(1, 10))
b1 = pm.Normal("b1", mu=0, sd=1, shape=(10,))
h = tt.nnet.relu(pm.math.dot(X, w1) + b1)
w2 = pm.Normal("w2", mu=0, sd=1, shape=(10, 1))
b2 = pm.Normal("b2", mu=0, sd=1, shape=(1,))
output = pm.math.dot(h, w2) + b2
return output
# ニューラルネットワークの出力
y_pred = neural_network(X)
# 尤度関数
likelihood = pm.Normal("likelihood", mu=y_pred, sd=sigma, observed=y)
# 変分推論
approx = pm.fit(n=10000, method=pm.ADVI())
# 推論結果の取得
trace = approx.sample(draws=5000)
# 結果の表示
pm.summary(trace)
TensorFlow Probability(TFP)を使用した場合:
import tensorflow as tf
import tensorflow_probability as tfp
# データセットの作成
np.random.seed(0)
n = 100 # データ点の数
X = np.random.randn(n, 1).astype(np.float32) # 特徴ベクトル
y = 2 * X.squeeze() + 1 + 0.5 * np.random.randn(n).astype(np.float32) # 目標変数
# モデルの定義
model = tf.keras.Sequential([
tfp.layers.DenseVariational(10, input_shape=(1,), activation=tf.nn.relu),
tfp.layers.DenseVariational(1, activation=None)
])
# 損失関数の定義
neg_log_likelihood = lambda y, rv_y: -rv_y.log_prob(y)
kl_loss = sum(model.losses) / n
loss = neg_log_likelihood(y, model(X)) + kl_loss
# オプティマイザの定義
optimizer = tf.keras.optimizers.Adam()
# 学習の実行
@tf.function
def train_step():
with tf.GradientTape() as tape:
loss_value = loss(y, model(X))
gradients = tape.gradient(loss_value, model.trainable_variables)
optimizer.apply_gradients(zip(gradients, model.trainable_variables))
return loss_value
# モデルの学習
for _ in range(10000):
loss_value = train_step()
# 推論結果の表示
q_weights = model.trainable_variables[::2]
q_biases = model.trainable_variables[1::2]
for i in range(len(q_weights)):
print(f"Weight {i+1}: {q_weights[i].numpy()}")
print(f"Bias {i+1}: {q_biases[i].numpy()}")
上記のコードでは、PyMC3とTFPそれぞれを使用してBNNの実装を行っている。PyMC3の場合、ニューラルネットワーク層のパラメータを確率変数として定義し、変分推論を実行して事後分布を近似している。TFPの場合、DenseVariational
レイヤーを使用して確率的なニューラルネットワークを定義し、損失関数を最小化することでパラメータを学習している。
参考情報と参考図書
変分ベイズ学習の詳細な情報は”変分ベイズ学習について“に記載している。そちらも参照のこと。
参考図書としては”変分法と変分原理“
“変分ベイズ学習“等がある。
コメント
[…] 変分ベイズ学習の概要と各種実装 […]
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[…] 変分ベイズ学習の概要と各種実装 […]
[…] 変分ベイズ学習の概要と各種実装 […]
[…] 推論アルゴリズムの選択: ベイズモデルでは、事後分布を推定するための推論アルゴリズムが必要となる。それには、”マルコフ連鎖モンテカルロ法の概要と実装について“で述べられているマルコフチェインモンテカルロ(MCMC)法、”変分ベイズ学習の概要と各種実装“で述べられている変分推論、”時系列データでの粒子フィルタの実装“で述べられている粒子フィルタなどがあり、適切なアルゴリズムを選択する。 […]