機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間
概要
機械学習におけるノイズ除去、データクレンジング、欠損値補間は、データの品質向上と予測モデルの性能向上に不可欠なプロセスとなる。
ノイズ除去は、センサーノイズや測定誤差などの不要な情報を取り除き、信頼性の高いデータを得ることを目的としている。
データクレンジングでは、欠損値の補完(削除、平均値・中央値による補完、予測モデルを用いた推定)、重複データの除去、外れ値の処理(統計的手法や閾値に基づく方法)、そして特徴量の尺度を統一するフィーチャースケーリング(正規化・標準化)が行われる。
これらの手法にには、以下のような様々なアルゴリズムが活用されている。
- 欠損値処理では、平均値・中央値・最頻値による補完、K近傍法(KNN)による推定、回帰モデルを使った予測などがある。
- データの重複除去では、ユニークな値の抽出やハッシュ値・識別子による重複検出が用いられる。
- 外れ値処理では、統計的手法(平均値・標準偏差、箱ひげ図)や、RANSACなどのロバストな統計モデルが活用されている。
- ノイズ除去には、移動平均や指数平滑化による平滑化、ローパスフィルタ・メディアンフィルタ・カルマンフィルタなどのフィルタリング手法が用いられる。
これらを実装するにはには、以下のライブラリやツールが利用される。
Pythonライブラリ:
- NumPy: 数値計算や欠損値処理
- pandas: データフレーム操作、データクレンジング
- scikit-learn: 欠損値処理、外れ値検出、特徴スケーリング
- TensorFlow・PyTorch: ノイズ除去やデータクレンジング用のモデル構築
Rパッケージ:
- tidyr: データ整理と欠損値処理
- dplyr: データ操作、フィルタリング
- caret: 前処理、外れ値処理
ビジュアルプログラミングツール:
- KNIME: ワークフロー型のデータ処理と可視化
- RapidMiner: グラフィカルなデータクレンジング
- OpenRefine: 大規模データセットの整形と品質向上
ここではノイズ除去とデータクレンジング(欠損値補間を含む)のpythonによる実装例について述べる。
機械学習におけるノイズ除去のpythonによる実装例について
以下に、Pythonでノイズ除去を実装する例を示す。この例では、平滑化フィルタを使用してノイズを除去している。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
def add_noise(signal, noise_level):
noise = np.random.randn(len(signal)) * noise_level
noisy_signal = signal + noise
return noisy_signal
def moving_average_filter(signal, window_size):
filtered_signal = np.zeros(len(signal))
for i in range(len(signal)):
start = max(0, i - window_size//2)
end = min(len(signal), i + window_size//2 + 1)
filtered_signal[i] = np.mean(signal[start:end])
return filtered_signal
# ノイズを含む信号の生成
t = np.linspace(0, 1, 100)
signal = np.sin(2 * np.pi * 5 * t) # 5Hzの正弦波
noise_level = 0.2
noisy_signal = add_noise(signal, noise_level)
# ノイズ除去
window_size = 5
filtered_signal = moving_average_filter(noisy_signal, window_size)
# プロット
plt.figure(figsize=(10, 6))
plt.plot(t, signal, label='Clean Signal')
plt.plot(t, noisy_signal, label='Noisy Signal')
plt.plot(t, filtered_signal, label='Filtered Signal')
plt.xlabel('Time')
plt.ylabel('Amplitude')
plt.legend()
plt.show()
この例では、add_noise
関数でノイズを生成して、moving_average_filter
関数で移動平均フィルタを適用しており、最後に、元の信号、ノイズを含んだ信号、およびフィルタリングされた信号をプロットしている。
機械学習におけるデータクレンジング、欠損値補間のpythonによる実装例について
以下に、Pythonでデータクレンジングを実装する例を示す。この例では、欠損値の処理と重複データの除去を行っている。
import pandas as pd
# サンプルデータの作成
data = {
'Name': ['John', 'Alice', 'Bob', 'John', 'Alice'],
'Age': [25, None, 30, 25, 28],
'Gender': ['Male', 'Female', None, 'Male', 'Female'],
'Salary': [50000, 60000, 70000, None, 60000]
}
df = pd.DataFrame(data)
# 欠損値処理
df['Age'] = df['Age'].fillna(df['Age'].mean())
df['Gender'] = df['Gender'].fillna(df['Gender'].mode()[0])
df['Salary'] = df['Salary'].fillna(df['Salary'].median())
# 重複データの除去
df = df.drop_duplicates()
# クレンジング後のデータ表示
print(df)
この例では、pandasライブラリを使用してデータクレンジングを行っており、まず、サンプルデータをDataFrame
オブジェクトとして作成し、次に、欠損値の処理を行っている。それらは、fillna
メソッドを使用して、Age
列の欠損値を平均値で補完し、Gender
列の欠損値を最頻値で補完し、Salary
列の欠損値を中央値で補完している。その後、重複データの除去を行い、drop_duplicates
メソッドを使用して、重複した行を削除しており、最後に、クレンジング後のデータを表示している。
技術トピック
ノイズ除去とデータクレンジング
統計的処理によるノイズ低減
統計的処理によるノイズ低減。実際の画像には、なんらかの外乱やノイズが加わり、外乱などの影響を受けている画像から得られた局所特徴をそのまま利用すると、期待する認織精度が得られない可能性がある。そこで、観測されるデータの確立統計的な構造に基づいて認織に有利な特徴へ変換する統計的特徴抽出が必要となる。統計的特徴抽出(statistical feature extraction)とは、抽出した局所特徴に対して確率統計的な構造に基づいてさらに特徴抽出をおこない、ノイズや外乱の影響を受けにくい頑健な特徴に変換することを言う。統計的特徴抽出は、局所特徴だけでなく、画像認識の様々な特徴に適用可能な手法となる。
音声認識でのノイズ処理と正規化
音声認識でのノイズ処理と正規化。音声には、音声認織で必要な音韻の特徴以外の特徴が多く含まれている。その中でも、誰が話しているか、すなわち、話者に関する特徴は重要になる。音声工学において音声に含まれる音韻特徴と話者特徴の分離は長年の課題だかいまだに解決されていない。
サポートベクトルデータ記述法による異常検知 -双対問題とラグランジュ関数とデータクレンジング
サポートベクトルデータ記述法による異常検知 -双対問題とラグランジュ関数とデータクレンジング。古典的手法であるホテリングのT2法では、全データが単一の正規分布に従うと仮定して異常検知モデルを作っていた。一方混合分布モデルやベイズ推定を用いたアプローチでは、単一の分布を使うのを諦め、着目点の周りの局所的なデータの散らばりに着目して異常検知モデルを作っていた。ここでは、発想をホテリングのT2法の世界に引き戻し、しかしその代わりに「カーネルトリック」という技術を使って、分布の濃淡を間接的に表現するというアプローチについて述べる。
データクレンジングツールOpenRefine 自然言語等でのデータクリーニングツール
データクレンジングツールOpenRefine 自然言語等でのデータクリーニングツール。かつクリーンに処理する方法がデータクレンジングと呼ばれる手法となる。前回までに行った機械学習の前処理や、自然言語処理したデータの後処理でこれらのデータクレンジング処理が必要になる。
ベイズ推論における線形次元削減モデルでの画像特徴抽出と欠損値推論
ベイズ推論における線形次元削減モデルでの画像特徴抽出と欠損値推論。線形次元削減(linear dimensionality reduction)は、多次元のデータを低次元の空間に写像することにより、データ量の削減や特徴パターンの抽出、データの要約・可視化などを行う基本的な技術となる。実際に、多くの実データにおいて、観測データの次元数Dよりもはるかに小さい次元数Mの空間でデータの主要な傾向を十分表現できることが経験的にしられているため、機械学習の分野に限らず次元削減のアイデアはさまざまな応用分野で発展・活用されてきた。
これから述べる方法は、確率的主成分分析(probabilistic principal component analysis)や因子分析(factor analysis)、あるいは確率的行列分解(probabilistic matrix factorization)と呼ばれる技術と深く関連しているが、ここでは一般的に使われる手法よりももっと単純化した簡素なモデルを題材にする。
また、ここでは具体的な応用として、線型次元削減モデルを利用した画像データの圧縮や欠損値の補間処理などの簡易実験も行う。次元削減や欠損値補間の考え方は、非負値行列因子分解やテンソル分解といったモデルにも共通している。
ロバスト主成分分析の概要と実装例
ロバスト主成分分析の概要と実装例。ロバスト主成分分析(Robust Principal Component Analysis、RPCA)は、データの中から基底を見つけ出すための手法であり、外れ値やノイズが含まれているようなデータに対しても頑健(ロバスト)に動作することを特徴としている。ここでは、このRPCAに関して様々な適用事例とpyhtonによる具体的な実装について述べている。
統計的な仮説検定と機械学習技術について
統計的な仮説検定と機械学習技術について。統計的な仮説検定(Statistical Hypothesis Testing)は、統計学の中で、ある仮説が真であるかどうかを確率的に評価する手法であり、統計手法の評価に用いられるだけではなく、機械学習においても、予測の信頼性評価やモデルの選択と評価に用いられたり、”説明できる機械学習“でも述べているような特徴選択の評価に用いられたり、”異常検知と変化検知技術“で述べている様な正常と異常の判別性能の検証などで用いられるなど、基本的な技術となっている。ここでは、この統計的な仮説検定に関して、様々な手法とそれらの具体的な実装例について述べている。
欠損値補間
欠陥値のある行列分解モデルへの変分ベイズアルゴリズムの適用
欠陥値のある行列分解モデルへの変分ベイズアルゴリズムの適用。観測行列のすべての成分が観測されていない場合にも、同じ方針で変分ベイズ学習アルゴリズムを歳出できるが、A及びBの事後共分散が欠損の影響を受けて少し複雑となる。今回はそれらのアルゴリズムの導出について述べる。
スパースモデリングと多変量解析(10) 行列データの分解の活用
スパースモデリングと多変量解析(10) 行列データの分解の活用。行列の因子分解は無数に考えられるが、元の行列の各行のベクトルの正規直行基底による展開を与えるような分解で、かつ展開を途中までで打ち切った場合に、それが元のデータを2乗誤差最小の意味で近似しているような分解が、”特異値分解(Singular Value Decomposition, SVD)の概要とアルゴリズム及び実装例について“で述べている特異値分解によって求められる。
こうした分解を通じた低ランク近似は、顧客x商品のデータに限らず、さまざまなデータに対して適用されている。例えば、Xが文書x単語のデータの場合には、その行列を特異値分解する手法は、潜在意味解析(latent semansic analysis:LSA)あるいは、潜在意味索引付け(latent semantic indexing:LSI)と呼ばれている。
この行列を特異値分解すると、文章の意味を表すための新しい基底(複数の単語の意味を重み付きで組み合わせたような概念=トピック)と、それを用いた文書の表現が得られる。たとえば、先程の買い物の例を文書x単語行列だと見ると、パンに関する文書群と、くだものに関する文書群のデータから、パンのトピックと、果物のトピックが抽出されると解釈できる。
ベイズ推論における線形次元削減モデルでの画像特徴抽出と欠損値推論
ベイズ推論における線形次元削減モデルでの画像特徴抽出と欠損値推論。線形次元削減(linear dimensionality reduction)は、多次元のデータを低次元の空間に写像することにより、データ量の削減や特徴パターンの抽出、データの要約・可視化などを行う基本的な技術となる。実際に、多くの実データにおいて、観測データの次元数Dよりもはるかに小さい次元数Mの空間でデータの主要な傾向を十分表現できることが経験的にしられているため、機械学習の分野に限らず次元削減のアイデアはさまざまな応用分野で発展・活用されてきた。
これから述べる方法は、確率的主成分分析(probabilistic principal component analysis)や因子分析(factor analysis)、あるいは確率的行列分解(probabilistic matrix factorization)と呼ばれる技術と深く関連しているが、ここでは一般的に使われる手法よりももっと単純化した簡素なモデルを題材にする。
また、ここでは具体的な応用として、線型次元削減モデルを利用した画像データの圧縮や欠損値の補間処理などの簡易実験も行う。次元削減や欠損値補間の考え方は、非負値行列因子分解やテンソル分解といったモデルにも共通している。
EMアルゴリズムと各種応用の実装例
EMアルゴリズムと各種応用の実装例。EMアルゴリズム(Expectation-Maximization Algorithm)は、統計的推定や機械学習の分野で広く用いられる反復最適化アルゴリズムとなる。特に、未観測の潜在変数(latent variable)が存在する確率モデルのパラメータ推定によく用いられている。
ここではこのEMアルゴリズムの概要と、混合モデル、HMM、欠損値推定、レーティング予測にそれぞれEMアルゴリズムを適用した時のフローとpythonによる実装例について述べる。
DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)の概要と適用事例および実装例について
DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)の概要と適用事例および実装例について。DBSCANは、データマイニングや機械学習における人気のあるクラスタリングアルゴリズムであり、クラスタの形状を仮定するのではなく、データポイントの空間密度に基づいてクラスタを発見することを目的としたアルゴリズムとなる。ここでは、このDBSCANの概要とアルゴリズム、様々な適用事例とpythonによる具体的な実装について述べている。
EMアルゴリズムを用いた制約充足問題の解法
EMアルゴリズムを用いた制約充足問題の解法。EM(Expectation Maximization)アルゴリズムは、制約充足問題(Constraint Satisfaction Problem)の解法として使用することもできる手法となる。このアプローチは、欠損データや非完全データのような不完全な情報がある場合に特に有用となる。ここではこのEMアルゴリズムを用いた制約充足問題に関して、様々な適用事例とpythonによる実装について述べている。
コメント
[…] ノイズの性質: プロセスノイズと観測ノイズは、通常ガウス分布(正規分布)を仮定している。そのため、状態空間モデルは”不確実性と機械学習技術“で述べている確率論的なモデルとなる。またノイズがガウス分布に従う場合、カルマンフィルタなどの確率的な推定手法を用いて、フィルタリングや予測を行うことが可能となる。ノイズのハンドリングに関する詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] エッジの正確な識別、タイムスタンプの整合性の確保などの手法を採用する必要がある。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] 形とクレンジングを自動化し、信頼性の高いデータセットを確保することも重要となる。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] いデータセットを使用することで、アライメントの品質を向上させるみとも重要となる。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] 、シーケンスデータのパディングなどを行うことで、モデルの性能を向上させることができる。”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] し、データ品質を向上させ、欠損データや外れ値を処理し、データの整合性を確保する。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“も参照のこと。 […]
[…] タの前処理や不要なノイズの削除など、コーパスの品質を向上させる対策が重要となる。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“を参照のこと。 […]
[…] メインでのデータのようなものとなる。収集したデータは、前処理が必要な場合がある。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“を参照のこと。 […]
[…] ケールに関する情報を活用して、物体候補領域を効率的に生成する方法も考慮できる。詳細は”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“等も参照のこと。 […]
[…] 深層学習技術 一般的な機械学習 R言語と機械学習 ノイズ除去と欠損値補間 […]
[…] 機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間 | Deus Ex Machina より: 2023年7月28日 1:43 PM […]
[…] 1. データの収集と前処理: 仮説を見つけるためには、対象とする問題に関連する豊富なデータが必要で、このデータを、センサーやユーザーログ、調査結果など、多様なソースから収集する。さらにデータをそのまま使うと”機械学習におけるノイズ除去とデータクレンジング、欠損値補間“で述べているノイズや欠損値などの問題があるため、クリーニングや正規化、”様々な特徴エンジニアリングの手法とpythonによる実装“で述べている特徴量エンジニアリングといった処理を行い、仮説の根拠となるデータの品質を向上させる。 […]