マイクロサービスシステムの概要について

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マイクロサービスシステムについて

マイクロサービスは、ソフトウェア開発アーキテクチャのアプローチの一つであり、アプリケーションを複数の小さな独立したサービス(マイクロサービス)に分割することを特徴としたものとなる。各マイクロサービスは、個別に開発、展開、拡張、保守が可能であり、独自の機能を持っている。以下に、マイクロサービスの特徴と利点について述べる。

  • サービスの分割: アプリケーションを複数の小さなサービスに分割することで、各サービスは特定のビジネス機能や責任範囲を担当する。これにより、アプリケーション全体がモノリシックな構造になることを避け、柔軟性と保守性を向上させる。
  • 独立性とスケーラビリティ: マイクロサービスは独立して開発・展開されるため、各サービスは独自のスケジュールとテクノロジースタックを持つことができる。必要に応じて、個々のサービスのみをスケールアップまたはスケールダウンすることが可能となる。
  • サービス間の疎結合: マイクロサービスは、API(Application Programming Interface)を介して通信する。各サービスは疎結合であり、内部の実装の詳細を隠蔽している。これにより、各サービスは独自の技術スタックやデータベースを使用でき、独立して開発と進化を行うことができる。
  • ポリグロットパターン: マイクロサービスでは、個々のサービスが独自のデータベースやテクノロジースタックを使用できる。このようなアプローチをポリグロット(polyglot)と呼び、最適なデータベースや技術を選択して、個々のサービスの要件に合わせることが可能となる。
  • チームの独立性: マイクロサービスのアプローチでは、各サービスに専門的なチームを割り当てることができる。各チームは独自の責任と権限を持ち、迅速な開発とデプロイが可能となる。また、異なるサービスのチームは、独立して進行することができる。

マイクロサービスのアーキテクチャは、大規模なシステムや複雑なビジネス要件を持つアプリケーションの開発に適している。しかし、適切なサービスの分割やコミュニケーションの調整が重要であり、適用するには注意が必要となる。

マイクロサービスに用いられる構成要素について

マイクロサービスアーキテクチャでは、複数の独立したマイクロサービスが協調して動作するものとなる。以下に、マイクロサービスに用いられる一般的な構成要素について述べる。

<サービス>

マイクロサービスアーキテクチャでは、アプリケーションを複数の小さな独立したサービスに分割する。各サービスは、特定のビジネス機能を担当し、独立して開発、デプロイ、スケーリング、保守が可能となる。以下に、マイクロサービスにおけるサービスの特徴と考慮すべき点について述べる。

  • 単一の責務: 各サービスは、特定のビジネス機能や責務を担当する。たとえば、ユーザー管理、支払い処理、商品カタログなどのサービスがあり、サービスは、その責務に集中することで、コードの保守性と理解しやすさを向上させる。
  • 疎結合: サービス間の疎結合性は重要な要素となる。各サービスは独立して開発、デプロイされるため、他のサービスの内部実装の詳細に依存しないようにする必要がある。サービス間の通信はAPIを介して行われ、それぞれのサービスは自身のデータモデルやテクノロジースタックを持つことができる。
  • スケーラビリティ: マイクロサービスは個別にスケーリング可能となり、必要に応じて、負荷の高いサービスだけをスケールアップすることができる。この柔軟性により、リソースの最適な利用とパフォーマンスの向上が可能になる。
  • 独自のデータベース: 各サービスは、必要に応じて独自のデータベースを持つことができる。これにより、関連するデータをサービス内で独立して管理し、サービスごとに適切なデータモデルやデータベーステクノロジーを選択することが可能となる。
  • 分散開発と独立性: マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスに対して個別の開発チームを割り当てることができる。各チームはサービスに関連する責務を担当し、独立して開発と進化を行うことができ、この分散開発のアプローチは、迅速なイテレーションとアジリティを可能にする。
  • 監視とトラブルシューティング: 各サービスの監視とトラブルシューティングは重要な機能となる。これは具体的には、ログ収集、メトリクス、ダッシュボード、トレーシングなどのツールや仕組みを使用して、各サービスの状態を監視し、トラブルシューティングやパフォーマンスチューニングを行うようなものとなる。
  • バージョン管理とデプロイ: サービスごとに独立したデプロイ可能な単位として、バージョン管理とデプロイのプロセスを確立する必要がある。各サービスは異なるスケジュールでデプロイされ、個別にバージョンアップグレードやロールバックが行える。

マイクロサービスにおけるサービスは、それぞれが独立性と責務を持ち、柔軟なスケーリングと保守性を実現する。ただし、適切なサービスの分割とコミュニケーションの調整が重要であり、データの整合性や一貫性の確保にも留意する必要がある。

<API(Application Programming Interface)>

マイクロサービスアーキテクチャでは、異なるサービス間の通信と相互作用を実現するためにAPIが重要な役割を果たす。APIは、サービス間のデータの送受信や操作を可能にするインターフェースとなる。以下に、マイクロサービスにおけるAPIの役割と設計に関するいくつかの重要なポイントについて述べる。

  • サービス間の通信: マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスが独立して動作するため、サービス間の通信はAPIを介して行われる。APIは、要求と応答の形式でデータのやり取りを行い、サービス間の連携と協調動作を実現する。
  • RESTまたはGraphQL: マイクロサービスにおけるAPIの設計には、REST(Representational State Transfer)やGraphQLのようなアーキテクチャスタイルやプロトコルを使用することが一般的となる。RESTは、リソースとHTTPメソッドを使用してデータを公開し、一般的なCRUD操作をサポートするものであり、GraphQLは、クエリ言語とスキーマを使用して柔軟なデータ取得を実現するものとなる。
  • APIゲートウェイ: マイクロサービスアーキテクチャでは、APIゲートウェイが使用されることがある。APIゲートウェイは、外部からのリクエストを受け取り、適切なサービスにルーティングする役割を果たす。また、認証や認可、セキュリティ、トラフィック制御などの機能を提供することもある。
  • APIデザイン: サービス間の通信を円滑に行うために、APIの設計は重要な要素となる。RESTfulなURL構造やエンドポイントの命名規則、データの表現形式(JSONやXMLなど)などの規約を遵守することが推奨され、また、APIのバージョニングやエラーハンドリングなどの設計も検討する必要がある。
  • ドキュメントと自己記述性: APIのドキュメントは、開発者に対してAPIの使用方法やエンドポイント、パラメータ、レスポンス形式などを提供する。ドキュメントはわかりやすく詳細に作成されるべきであり、SwaggerやOpenAPIなどの自己記述的なツールを使用して自動生成することが一般的となる。
  • テストとモック: APIのテストとモックは重要な要素となる。各サービスが独立して開発されるため、各サービスのAPIに対するユニットテストや統合テストが行われるべきであり、また、モックサービスを使用して他のサービスとの統合テストを行うことも推奨される。
  • APIセキュリティ: APIのセキュリティも重要な考慮事項となる。認証や認可、アクセス制御、データの暗号化などのセキュリティ対策が必要で、APIゲートウェイやトークンベースの認証などのセキュリティ機構を導入することが一般的となる。

APIは、マイクロサービスアーキテクチャにおいて異なるサービス間の通信を実現し、柔軟性とスケーラビリティを向上させるものであり、適切なAPIの設計と管理は、マイクロサービスの成功に重要な要素となる。

<データベース>

マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスが独立してデータベースを持つことが一般的となる。これにより、各サービスが自身のデータを管理し、データベースの選択やスキーマ設計をサービスごとに最適化することができる。以下に、マイクロサービスにおけるデータベースの重要な要素について述べる。尚、これらのベースとなるデータベース技術の詳細は”データベース技術“等も参照のこと。

  • サービスごとのデータベース: マイクロサービスでは、各サービスが独自のデータベースを持つことが一般的であり、これにより、サービスの責務やデータモデルに合わせた最適なデータベーステクノロジーを選択できる。ここでは関係型データベース、ドキュメントストア、キャッシュ、グラフデータベースなど、用途に応じたデータベースを使用する。
  • データベースパターン: マイクロサービスにおけるデータベースパターンには、各サービスがデータの整合性と一貫性を確保するための手法が含まれる。パターンには、各サービスが独立してデータを更新するパターンや、データのコピーと同期を行うパターンなどがある。
  • データの共有と整合性: マイクロサービスでは、データの共有と整合性を管理する必要がある。データの共有は、イベント駆動やメッセージングを介して他のサービスに変更を通知することで実現でき、整合性の維持には、分散トランザクションやイベントソーシング、CQRS(Command Query Responsibility Segregation)などの手法が使用される。
  • データベースのマイグレーション: マイクロサービスの開発や変更に伴い、データベーススキーマの変更やマイグレーションが頻繁に行われる。各サービスは独自のデータベーススキーマを持つため、スキーマの変更は個別のサービスに対して行われる。
  • データベースの保護とセキュリティ: マイクロサービスにおけるデータベースの保護とセキュリティも重要な要素な要素となる。各サービスのデータベースには、アクセス制御、暗号化、脆弱性対策などのセキュリティ対策が必要であり、また、バックアップと復元戦略も重要なデータベース管理の一環となる。
  • データベースの監視とスケーリング: マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスのデータベースの監視とスケーリングが重要となる。データベースのパフォーマンスや容量、クエリの最適化などを監視し、必要に応じてスケーリングすることで、サービスのパフォーマンスと可用性を確保することができる。

マイクロサービスにおけるデータベースの設計と管理は、各サービスが独立してデータを管理するための重要な要素となる。データの整合性と一貫性、データベーススキーマの変更への対応、セキュリティと監視の実施など、データベースに関する考慮事項はマイクロサービスアーキテクチャの成功に影響を与える。

<メッセージングおよびイベント駆動>

マイクロサービスアーキテクチャでは、メッセージングおよびイベント駆動のアプローチが広く採用されている。これらの手法は、マイクロサービス間の通信と相互作用を実現するために使用される。以下に、メッセージングとイベント駆動の概要と利点について述べる。

  • メッセージング: メッセージングは、マイクロサービス間の非同期な通信手法となる。これは、一つのサービスがメッセージを生成し、それを別のサービスが受け取るもで、メッセージは、キューやトピックなどのメッセージブローカーを介して送受信される。
    • イベント駆動メッセージング: イベント駆動メッセージングでは、サービスがイベントを生成し、他のサービスがそれを購読することで通信が行われるものとなる。これにより、サービス間の疎結合性が高まり、イベントは非同期に処理され、メッセージブローカーがイベントを受け取り、購読者に配信する。
    • リクエスト-レスポンスメッセージング: リクエスト-レスポンスメッセージングでは、サービスがリクエストを生成し、他のサービスがそれに応答するものとなる。メッセージブローカーはリクエストを受け取り、対応するサービスに送信し、応答を返す。この手法は、異なるサービス間で要求と応答のやり取りを行う場合に使用される。
  • イベント駆動: イベント駆動アーキテクチャでは、サービスが特定のイベントに反応して動作するものとなる。イベントは、何かが起こったことを表す情報であり、イベント駆動のアプローチでは、イベントが発生するたびに関連するサービスがそれに応答し、必要な処理を実行する。
    • イベントソーシング: イベントソーシングは、データの状態変化をイベントとしてキャプチャし、変更履歴を保持する手法となる。各サービスはイベントストリームを購読し、必要なデータの更新を行い、これにより、データの状態変更の履歴を追跡することができる。
    • CQRS(Command Query Responsibility Segregation): CQRSは、データの更新(コマンド)とデータの取得(クエリ)を別々のモデルで処理するアーキテクチャパターンとなる。データの更新はイベント駆動で行われ、データの取得は最適化されたクエリモデルで行われる。これにより、柔軟なデータ操作とクエリパフォーマンスの向上が可能となる。

メッセージングとイベント駆動の利点は以下のようになる。

  • 疎結合性とスケーラビリティ: メッセージングとイベント駆動は、サービス間の疎結合性を高め、各サービスを個別にスケーリングできる柔軟性を提供する。これにより、各サービスは、メッセージやイベントによって情報を受け取り、必要な処理を行うことが可能となる。
  • 保守性と拡張性: メッセージングとイベント駆動のアプローチは、各サービスが独立して開発、展開、保守できるため、保守性と拡張性を向上させる。これにより、新しいサービスの追加や既存のサービスの変更が容易になる。
  • 柔軟な統合: メッセージングとイベント駆動により、異なる技術スタックやプログラミング言語を使用して構築されたマイクロサービスを柔軟に統合できる。これにより、各サービスは、イベントやメッセージのフォーマットに従って通信し、相互作用することができるようになる。

メッセージングとイベント駆動は、マイクロサービスアーキテクチャにおける柔軟性、疎結合性、スケーラビリティを実現するための強力な手法となる。ただし、適切なメッセージングプラットフォームの選択、イベントの設計、メッセージングパターンの実装など、設計と管理には注意が必要となる。

<監視とトレーシング>

マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスの監視とトレーシングが重要な役割を果たす。マイクロサービスは分散環境で実行されるため、各サービスのパフォーマンス、可用性、およびトラブルシューティングを追跡する必要がある。以下に、監視とトレーシングの概要と利点について述べる。

  • 監視:
    • ログ収集: マイクロサービスの各サービスはログを生成し、集中的なログ収集システムに送信する。ログはアプリケーションの動作、エラー、重要なイベントなどを記録するため、問題の特定とトラブルシューティングに役立つ。
    • メトリクス: 各サービスはパフォーマンスメトリクス(CPU使用率、メモリ使用量、リクエスト数など)を収集し、監視システムに送信する。メトリクスはシステムの状態を可視化し、負荷や障害の早期警告に役立つ。
    • ダッシュボード: 監視システムはダッシュボードを提供し、各サービスの状態とメトリクスを視覚化する。ダッシュボードはリアルタイムの状態を表示し、サービスのパフォーマンスと可用性を把握するための集中的な管理ポイントとなる。
  • トレーシング:
    • 分散トレーシング: マイクロサービス間のリクエストのフローとタイミングを追跡するために、分散トレーシングを使用することができる。各サービスはリクエストにタグやコンテキストを追加し、トレーサーによって追跡され、これにより、リクエストのパス、レイテンシ、ボトルネックの特定などが可能になる。
    • パフォーマンスの最適化: トレーシングデータはサービス間の通信と依存関係を可視化し、ボトルネックやパフォーマンスの低下の特定に役立つ。これにより、ボトルネックを特定し、最適化することで、全体的なシステムのパフォーマンスと応答時間を向上させることが可能となる。
    • エラーと障害のトラブルシューティング: トレーシングデータはエラーや障害の発生時に問題の特定とトラブルシューティングに役立つ。リクエストのフローとタイミングを追跡することで、エラーや障害の原因を特定し、迅速な対応を行うことが可能となる。

監視とトレーシングの利点は以下のようになる。

  • パフォーマンスの可視化: 監視とトレーシングにより、マイクロサービスのパフォーマンスと可用性をリアルタイムに可視化できる。これにより、メトリクス、ログ、トレースデータを分析し、問題の早期発見と対応が可能になる。
  • 迅速なトラブルシューティング: 監視とトレーシングは問題の特定とトラブルシューティングに役立つ。ログやトレースデータの分析により、エラーや障害の原因を特定し、迅速な対応を行うことが可能となる。
  • パフォーマンスの最適化: 監視とトレーシングはシステムのパフォーマンスの特定のボトルネックやパフォーマンスの低下を特定し、最適化するための洞察を提供する。
  • 可視化と報告: 監視とトレーシングは、ダッシュボードやレポートを通じてサービスの状態とトレンドを可視化し、運用チームや開発者に対して情報を提供する。

監視とトレーシングは、マイクロサービスアーキテクチャの運用と可用性の向上に欠かせない要素となる。適切なツールやプラットフォームの選択と設定、重要なメトリクスとイベントの監視、トレーシングデータの収集と分析が重要な要件となる。

<ロードバランシングとスケーリング>

マイクロサービスアーキテクチャでは、ロードバランシングとスケーリングも重要な要素となる。これらの手法は、アプリケーションのパフォーマンス向上と可用性の確保を支援する。以下に、ロードバランシングとスケーリングの概要と利点について述べる。

  • ロードバランシング:
    • ロードバランサー: ロードバランシングは、リクエストを受け取り、バックエンドの複数のサービスインスタンスに均等に分散させる役割を持つロードバランサーを使用することで実現できる。ロードバランサーは、負荷分散アルゴリズム(ラウンドロビン、ウェイト付きなど)に基づいてリクエストを適切なサービスに転送する。
    • 可用性とスケーラビリティ: ロードバランサーは、負荷の高いトラフィックを分散することで、アプリケーションの可用性とスケーラビリティを向上させる。負荷が増加する場合、新しいサービスインスタンスが追加され、ロードバランサーはリクエストを新しいインスタンスに分散させる。
    • ヘルスチェック: ロードバランサーは、バックエンドのサービスのヘルスチェック(ヘルスプローブ)を定期的に実行し、正常な状態のサービスにのみリクエストを転送する。ヘルスチェックにより、障害が発生したサービスからのリクエストを回避し、可用性を維持することができる。
  • スケーリング:
    • 水平スケーリング: マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスを個別にスケールアウトすることができる。負荷が増加すると、新しいサービスインスタンスが追加され、リクエストの処理能力が向上する。水平スケーリングは、負荷の均等な分散、高い可用性、およびパフォーマンスの向上を実現する。
    • 自動スケーリング: 自動スケーリングは、負荷に応じてサービスのインスタンス数を自動的に増減させる機能となる。モニタリングと閾値に基づいて、負荷が一定の範囲内に保たれるようにサービスのスケーリングが行われ、これにより、効率的なリソースの使用と適切なパフォーマンスを実現する。
    • コンテナ化とオーケストレーション: マイクロサービスのスケーリングは、コンテナ化とオーケストレーションプラットフォーム(Kubernetesなど)との組み合わせでより効果的に行われる。コンテナ化により、サービスを独立してパッケージ化し、柔軟にスケールアウトできま、オーケストレーションプラットフォームは、コンテナのデプロイメントとスケーリングを管理し、リソースの最適化と自動スケーリングを実現する。Kubernetesの詳細に関しては”Kubernetesの概要と環境設定、参考図書“等も参照のこと。

ロードバランシングとスケーリングの利点は次のようになる。

  • 高い可用性: ロードバランシングにより、システム全体でリクエストの負荷が分散され、個々のサービスの障害による影響が軽減される。また、スケーリングにより、リクエストの処理能力が増加し、応答時間が改善される。
  • 効率的なリソース利用: スケーリングにより、負荷の増加に応じてリソースを自動的に追加および削減することができる。これにより、リソースの効率的な利用とコストの最適化が実現される。
  • 柔軟な拡張性: マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスを個別にスケールアウトできるため、必要なサービスのみを拡張することができる。これにより、リソースの柔軟な利用が可能となる。

<サービスディスカバリと構成管理>

マイクロサービスアーキテクチャでは、サービスディスカバリと構成管理は重要な要素となる。これらの手法を使用することで、各サービスの位置や状態を把握し、設定や構成を管理することが可能となる。

  • サービスディスカバリ:
    • サービスレジストリ: サービスレジストリは、マイクロサービスの登録と検出を管理するための中央のデータベースやサービスとなる。各サービスは起動時に自身をサービスレジストリに登録し、他のサービスはサービスレジストリからサービスの場所と接続情報を取得する。
    • サービスディスカバリプロトコル: サービスディスカバリには、さまざまなプロトコルが使用される。一般的なプロトコルには、Eureka、Consul、etcd、ZooKeeperなどがある。これらのプロトコルは、サービスの登録、発見、ヘルスチェック、ロードバランシングなどの機能を提供している。
    • クライアントサイドロードバランシング: サービスディスカバリを使用する際には、クライアントサイドロードバランシングが一般的となる。クライアントはサービスディスカバリから利用可能なすべてのサービスのリストを取得し、リクエストを送信する際にロードバランシングアルゴリズムに基づいてサービスを選択する。
  • 構成管理:
    • 外部構成ストア: マイクロサービスの構成は、外部の構成ストアに保存される。構成ストアは、環境変数、設定ファイル、データベースなどの形式で構成情報を保持し、各サービスは起動時に構成ストアから必要な構成を取得し、ランタイムで使用する。
    • 動的な構成の更新: マイクロサービスの構成は動的に変更されることがある。構成ストアを使用することで、構成の変更や更新をリアルタイムに反映することができ、各サービスは定期的に構成ストアをポーリングし、変更を検出して適用する。
    • セキュアな構成管理: 構成情報にはセンシティブな情報が含まれる場合がある。構成ストアは機密情報の暗号化やアクセス制御を提供し、セキュアな構成管理を実現する必要がある。

サービスディスカバリと構成管理の利点は次のようになる。

  • 動的なサービスの検出と接続: サービスディスカバリを使用することで、マイクロサービスは独立して起動および停止し、他のサービスとの接続を確立できる。これにより、サービスの位置や接続情報の変更があっても、他のサービスは自動的に最新の情報を取得する。
  • ロードバランシングとフェールオーバー: サービスディスカバリはロードバランシングとフェールオーバーにも使用される。これにより、各サービスのリクエストは負荷分散され、利用可能なサービスの間で均等に分散される。また、障害発生時には別の利用可能なサービスに自動的に切り替わる。
  • 構成の一元管理と柔軟性: 構成管理は各サービスの設定や構成情報を一元的に管理するため、一貫性と柔軟性が向上する。構成の変更や更新は中央の構成ストアで行われ、各サービスは必要な構成を取得して自身を構成する。
  • セキュリティとアクセス制御: 構成ストアはセキュリティ対策を提供し、構成情報の機密性とアクセス制御を確保する。これにより、センシティブな情報の暗号化やアクセスポリシーの設定を行い、適切なセキュリティレベルを維持することができる。

サービスディスカバリと構成管理は、マイクロサービスアーキテクチャにおいて柔軟性とスケーラビリティを向上させるために不可欠なものとなる。そのため適切なサービスディスカバリプロトコルと構成ストアの選択、適切なセキュリティ対策の実施が重要となる。

マイクロサービスシステム構築に用いられるツールやプラットフォームについて

マイクロサービスシステムの構築には、さまざまなツールやプラットフォームが利用される。以下に代表的なものについて述べる。

<コンテナオーケストレーションツール>

  • Kubernetes(クーバネティス): Kubernetesは、Googleによって開発されたオープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームとなる。コンテナのデプロイメント、スケーリング、ローリングアップデート、自動復旧、負荷分散、セキュリティ管理など、さまざまな機能を提供し、クラスタリングにより、高可用性と耐障害性も提供される。
  • Docker Swarm: Docker Swarmは、DockerエンジンをベースにしたDockerネイティブのコンテナオーケストレーションツールとなる。Docker Swarmを使用すると、Dockerコンテナを単一のクラスタにまとめて、簡単にスケーリングしたり、高可用性を確保したりすることができる。
  • Amazon ECS(Elastic Container Service): Amazon ECSは、Amazon Web Services(AWS)が提供するフルマネージドのコンテナオーケストレーションサービスとなる。これにより、AWS上でDockerコンテナを簡単にデプロイ、管理、スケーリングが可能となる。
  • Microsoft Azure Kubernetes Service(AKS): AKSは、Microsoft Azure上で動作するマネージドKubernetesクラスタを提供するサービスとなる。これにより、Azure上でKubernetesを簡単にデプロイして利用することができる。
  • Google Kubernetes Engine(GKE): GKEは、Google Cloud上でマネージドKubernetesクラスタを提供するサービスで、Kubernetesのデプロイメントと管理を簡略化するものとなる。

<APIゲートウェイ>

  • Kong: オープンソースのAPIゲートウェイで、柔軟で拡張性があり、プラグインを活用してさまざまな機能を追加できるものとなる。
  • Apigee: Google Cloudが提供するAPI管理プラットフォームで、マイクロサービスシステムのAPI管理やセキュリティ対策を簡素化するものとなる。
  • Tyk: 軽量で高性能なAPIゲートウェイで、オープンソース版とエンタープライズ版が提供されている。
  • AWS API Gateway: AWSのマネージドAPIゲートウェイで、AWS上のマイクロサービスを簡単に公開・管理できるものとなる。

<ロードバランサー>

  • NGINX: リバースプロキシとして動作し、HTTPやTCPレベルのロードバランシングをサポートするものとなる。NGINXは高いパフォーマンスと柔軟性を持つことが特長となる。
  • HAProxy: 高速で軽量なロードバランサーで、TCPおよびHTTPプロトコルで動作するものとなる。これらを用いることで、柔軟な設定とカスタマイズが可能となる。
  • Envoy: CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のプロジェクトで、モダンなマイクロサービスアプリケーション向けに設計されたロードバランサーおよびプロキシとなる。
  • Amazon ELB(Elastic Load Balancing): AWSのマネージドロードバランサーサービスで、AWS環境でのロードバランシングを簡単に行えるものとなる。

<サービスディスカバリ>

  • consul: Consulは、HashiCorp社が提供するオープンソースのサービスディスカバリーとキー/バリューストアのソリューションとなる。Consulは、マルチデータセンターサポートやヘルスチェックなどの高度な機能を提供し、サービスディスカバリーに加えて、分散構成管理やセキュリティ機能も提供されている。
  • etcd: etcdは、CoreOSによって開発されたオープンソースの分散キーバリューストアとなる。Kubernetesなどのプロジェクトで広く使用されており、サービスディスカバリー、設定管理、リーダー選出などの用途に使用されている。

<監視とロギング>

  • Prometheus: Prometheusは、クラウドネイティブコンピューティングファンデーション(CNCF)の一部として開発されたオープンソースの監視ツールとなる。Prometheusは、メトリクスデータの収集、保存、クエリを行うことができ、可視化にはGrafanaと組み合わせることが一般的となる。Prometheusはシンプルで柔軟な設計が特長であり、コンテナ化されたアプリケーションやマイクロサービスに適している。
  • Grafana: Grafanaは、可視化のためのオープンソースのツールで、Prometheusなどのデータソースから取得したメトリクスをダッシュボードで視覚的に表示できるものとなる。Grafanaを使用することで、リアルタイムのモニタリングとダッシュボードの作成が容易になる。
  • ELK Stack: ELK Stackは、Elasticsearch、Logstash、Kibanaの組み合わせであり、Elasticsearchは、大量のログデータを分散型で高速に格納・検索するためのデータストアで、Logstashは、ログデータの収集、フィルタリング、変換を行うパイプラインツール、Kibanaは、Elasticsearchに格納されたログデータを可視化してダッシュボードとして表示するものとなる。ELK Stackは、ロギングの集中管理と可視化に適したツールとなる。
  • Jaeger: Jaegerは、CNCFのトレーシングプロジェクトであり、マイクロサービス間のリクエストトレーシングを提供するものとなる。Jaegerは、リクエストのフローを可視化し、ボトルネックやパフォーマンスの問題を特定するのに役立つ。
  • Zipkin: Zipkinもトレーシングツールの一つで、分散トレーシングシステムを提供するものとなる。Zipkinは、リクエストのトレーシング情報を収集し、リクエストのタイムラインを表示することで、マイクロサービスのリクエストフローを理解するのに役立つ。

<サービスメッシュ>

  • Istio: Istioは、Google、IBM、およびLyftなどの企業によって開発されたオープンソースのサービスメッシュツールとなる。Kubernetesなどのオーケストレーションプラットフォーム上で動作し、サービス間のトラフィック制御、セキュリティポリシーの適用、トラフィック監視、ロードバランシング、トラフィックの分割などの機能を提供している。
  • Linkerd: Linkerdは、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のプロジェクトであり、オープンソースのサービスメッシュツールとなる。Linkerdは軽量で高性能なメッシュを提供し、マイクロサービスアプリケーションのネットワーキングを透明に制御する。
  • Consul Connect: Consul Connectは、HashiCorp社のConsulプロジェクトの一部であり、サービスディスカバリーと同時にサービスメッシュ機能を提供する。Consul Connectは、セキュリティに重点を置いたメッシュを提供し、サービス間の通信を暗号化してセキュアに行う。

<データベース>

  • RDBMS(Relational Database Management System): 伝統的なリレーショナルデータベースは、スキーマとトランザクション処理をサポートするため、データの整合性が重要な場合に適している。例として、PostgreSQLMySQLがあり、マイクロサービスのうち、リレーショナルデータベースを使用するサービスでは、そのサービスがデータを管理することになる。
  • NoSQLデータベース: NoSQLデータベースは、スキーマレスで柔軟なデータモデルを持つため、スケーラビリティが高く、大量のデータを処理するのに適している。例として、MongoDB(ドキュメント型)、Cassandra(列指向型)、Redis(キー/バリューストア)などがある。これらのデータベースは、特定のマイクロサービスによって使用されることがある。
  • グラフデータベース: グラフデータベースは、ネットワーク構造やリレーションシップの解析に特化しており、関連データの複雑なクエリに適している。例として、Neo4jBlazeGraphDatomic等がある。これらは、特定のマイクロサービスがネットワーク構造を管理する場合に利用されている。
  • オブジェクトストレージ: オブジェクトストレージは、非構造化データ(ファイルや画像など)を保存するのに適している。例として、Amazon S3Google Cloud Storageがあり、特定のマイクロサービスが大量の非構造化データを扱う場合に使用されている。
マイクロサービスの適用事例について

マイクロサービスアーキテクチャは、以下のような適用事例において効果を発揮する。

  • 大規模なシステムの開発: 大規模なシステム開発では、複数の開発チームが連携して作業を進める必要があり、マイクロサービスアーキテクチャは、各サービスを独立して開発・展開できるため、開発チームの分業と並行作業が容易となる。また、各サービスの技術スタックやデータベースの選択が自由に行えるため、柔軟性もある。
  • 高いスケーラビリティと可用性の要求: マイクロサービスは、各サービスを個別にスケーリングできるため、負荷が集中するサービスにのみスケールアップすることが可能となる。これにより、システム全体のパフォーマンスと可用性を向上させることができ、また、障害が発生した場合にも、影響範囲を限定し、サービス間でフェールオーバーを実現することが可能となる。
  • 異種システムの統合: マイクロサービスアーキテクチャは、異なる技術スタックやレガシーシステムとの統合に適している。各サービスは独立して開発されるため、既存のシステムに依存することなく、新しい機能を追加したり、外部システムとの連携を行ったりすることができる。
  • 持続的なデリバリーとDevOpsの導入: マイクロサービスアーキテクチャは、独立したサービスの開発と展開を可能にするため、持続的なデリバリーやDevOpsの導入に適している。各サービスは個別にテスト、ビルド、デプロイが行われ、自動化されたプロセスによって短いリリースサイクルを実現する。
  • ビジネスの柔軟性とイノベーション: マイクロサービスは、ビジネスの要求変更に迅速に対応するための柔軟性とイノベーションを提供する。各サービスは独立して開発・展開されるため、新しい機能やビジネスプロセスの追加が容易であり、また、小さなチームやスタートアップにとっても、スケーラブルなアーキテクチャと開発手法となり得る。

これらの具体的なアプリケーションとしては以下のようなものがある。

  • インターネットショッピングアプリケーション: 顧客管理、商品管理、注文管理、支払い処理など、異なるドメインごとにサービスを作成することができる。各サービスは、RESTful APIを介して通信し、特定の役割に特化している。例えば、顧客サービスがユーザー登録・認証を担当し、商品サービスが商品情報を提供し、注文サービスが注文の処理と追跡を行うなどのようになる。
  • ソーシャルメディアプラットフォーム: ユーザー管理、投稿管理、フィード表示などの機能をマイクロサービスとして実装できる。ユーザーサービスがユーザー情報と認証を管理し、投稿サービスがユーザーの投稿情報を保存し、フィードサービスがユーザーのタイムラインを構築するなどのようになる。
  • メッセージングアプリケーション: ユーザー管理、メッセージ管理、通知機能などをマイクロサービスとして実装できる。各サービスは非同期メッセージングを使用して通信し、メッセージングサービスがユーザーのメッセージを管理し、通知サービスがユーザーに通知を送信するなどのようになる。
  • マイクロサービス開発ツール: マイクロサービスアーキテクチャ自体も、マイクロサービスによって構築することができる。例えば、APIゲートウェイサービス、認証サービス、監視・トレーシングサービスなどのマイクロサービスを組み合わせて、マイクロサービスアーキテクチャの開発基盤を構築することができる。
参考情報と参考図書

マイクロサービスに関する具体的な実装を含めた詳細な情報は”マイクロサービスと効率的なアプリケーション開発とマルチエージェントシステム“に述べている。そちらも参照のこと。

参考図書としては”マイクロサービスパターン[実践的システムデザインのためのコード解説]”

マイクロサービスアーキテクチャ 第2版”

マイクロサービス インアクション”

Microservices with Clojure: Develop event-driven, scalable, and reactive microservices with real-time monitoring”等がある。

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