確率的なモデルでの機械学習(確率的生成モデル)について
“不確実性と機械学習技術“でも述べた確率的生成モデルは、確率的なモデルに基づく機械学習であり、データの確率的な特性や統計的な関係をモデル化して、予測やパターン認識などのタスクを実行する手法となる。確率的なモデルは、データの確率分布を仮定し、そのパラメータをデータから学習することによって、モデルの予測や推論を行うことが原理となる。
機械学習における確率的なモデルのアプローチは、主に以下の2つに分けられる。
- 教師あり学習(Supervised Learning):教師あり学習は、入力データとそれに対応する正解ラベル(またはターゲット)が与えられ、データから学習されたモデルは、未知の入力データに対してラベルを予測するために使用されるものとなる。代表的な確率的なモデルとしては、ナイーブベイズ分類器、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレストなどがある。
- 教師なし学習(Unsupervised Learning):教師なし学習は、入力データには正解ラベルが与えられず、データ自体のパターンや構造をモデル化し、クラスタリングや次元削減などのタスクが含まれるものとなる。確率的なモデルの例としては、混合ガウスモデル、隠れマルコフモデル(HMM)、確率的潜在意味解析(PLSA)、ガウス過程などがある。
確率的なモデルの学習では、“最尤推定の概要とアルゴリズムおよびその実装について“で述べている最尤推定やベイズ推定などの手法が一般的に使用され、最尤推定では、与えられたデータに対してモデルのパラメータを最適化するための尤度関数を最大化することで、モデルを学習し、ベイズ推定では、事前分布と尤度を組み合わせて事後分布を計算し、その分布を用いてモデルのパラメータや予測を行う。
確率的なモデルは、データの確率分布や統計的な特性をモデル化するため、不確実性やノイズの存在する実世界の問題に対して強力なツールとなる。また、確率的なモデルは、他の機械学習手法と組み合わせて使用することも可能であり、例えば、確率的なモデルを生成モデルとして使用し、その生成されたデータを教師データとして教師あり学習を行うといった組み合わせもできる。
今回はこれらのモデルの中から隠れマルコフモデル(HMM)について述べたいと思う。
隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, HMM)について
HMMは、確率的なモデルの一種であり、一連の観測データを生成するプロセスを表現するために使用され、特に、系列データや時系列データのモデリングに広く利用されているものとなる。
HMMは「隠れた状態(hidden state)」と「観測結果(observation)」という2つの要素から構成され、隠れた状態は、直接は観測されず、系列データの背後にある潜在的な状態を表し、観測結果は、直接的に観測できるデータであり、隠れた状態から生成される。
HMMには、以下の3つの基本的な要素が存在する。
- 状態遷移確率(transition probability):ある隠れた状態から別の隠れた状態に移る確率を表す。これは、現在の状態に基づいて次の状態を予測するために使用される。
- 出力確率(emission probability):ある隠れた状態から特定の観測結果が生成される確率を表す。これは、特定の状態が与えられた場合に、どのような観測結果が期待されるかを表現する。
- 初期状態確率(initial state probability):最初の隠れた状態がどのような確率で始まるかを表す。
HMMは、観測データの系列を持つ多くの問題に適用でき、例えば、音声認識、自然言語処理、バイオインフォマティクス、経済学の時系列予測などに利用されている。HMMはまた、系列データの分類や生成、欠損データの補完などのタスクにも使用されることがある。
以下にアルゴリズムの詳細を示す、前向きアルゴリズム、後ろ向きアルゴリズム、Viterbiアルゴリズム、Baum-Welchアルゴリズムなどの手法を使用して、モデルの学習や推論を行うことができる。これらの手法により、HMMを使用して系列データのパターンや構造をモデル化し、予測や解析を行うことが可能となる。
隠れマルコフモデルに用いられるアルゴリズムについて
隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, HMM)には、学習や推論を行うためのいくつかの主要なアルゴリズムがある。以下に、HMMで使用される代表的なアルゴリズムについて述べる。
前向きアルゴリズム(Forward Algorithm)
<概要>
HMMの前向きアルゴリズムは、HMMの学習や推論において基本的な手法の一つであり、与えられた観測系列に対して、各時刻の隠れた状態における事後確率を計算するためのアルゴリズムとなる。以下に、前向きアルゴリズムの手順について述べる。
1. 初期化: アルゴリズムの最初のステップでは、初期の隠れ状態の確率分布を設定する。通常は、HMMの初期状態確率(initial state probability)を使用する。これは、各隠れ状態における事前確率を計算し、初期の事前確率として設定している。
2. 再帰的な計算: 次に、観測系列の各時刻における隠れ状態の事後確率を計算する。再帰的な計算を行うために、以下のステップを各時刻tに対して繰り返し行う。
a. 予測ステップ: 一つ前の時刻の事後確率を使用して、現在の時刻の隠れ状態の予測を行う。具体的には、一つ前の時刻の各隠れ状態から現在の隠れ状態への遷移確率と、一つ前の時刻の事後確率を掛け合わせ、隠れ状態の予測値を計算する。
b. 更新ステップ: 予測ステップで計算された予測値に、現在の時刻の観測データに基づく出力確率を掛け合わせ、正規化する。これにより、各隠れ状態における事後確率を得ることができる。
3. 終了: 最後の時刻に到達したら、最終的な観測系列における隠れ状態の事後確率を得ることができる。
前向きアルゴリズムを用いることで、HMMにおける観測系列の隠れ状態に関する情報を推定することができ、また、前向きアルゴリズムは、後ろ向きアルゴリズム(Backward Algorithm)と組み合わせて、HMMのパラメータの学習やデコーディング(最適な隠れ状態系列の推定)を行うことも可能となる。
<pythonによる実装例>
以下は、Pythonを使用してHMMの前向きアルゴリズムの実装例となる。この例では、NumPyを使用して数値計算を行っている。
import numpy as np
def forward_algorithm(observation, A, B, pi):
T = len(observation)
N = A.shape[0]
alpha = np.zeros((T, N))
alpha[0] = pi * B[:, observation[0]]
for t in range(1, T):
for j in range(N):
alpha[t, j] = np.sum(alpha[t-1] * A[:, j]) * B[j, observation[t]]
return alpha
# 以下は実行例
# HMMのパラメータを定義
A = np.array([[0.7, 0.3], [0.4, 0.6]]) # 状態遷移確率行列
B = np.array([[0.1, 0.4, 0.5], [0.7, 0.2, 0.1]]) # 出力確率行列
pi = np.array([0.6, 0.4]) # 初期状態確率ベクトル
# 観測系列
observation = [0, 1, 2, 0, 2]
# 前向きアルゴリズムを実行して隠れ状態の事後確率を取得
alpha = forward_algorithm(observation, A, B, pi)
print("隠れ状態の事後確率:")
print(alpha)
この実装では、forward_algorithm
関数を使用して観測系列に対して前向きアルゴリズムを実行している。A
は状態遷移確率行列、B
は出力確率行列、pi
は初期状態確率ベクトルとなる。観測系列に対して、各時刻の隠れ状態の事後確率が返される。
実際の使用例では、適切なHMMのパラメータと観測系列を用意し、forward_algorithm
関数を呼び出すことで前向きアルゴリズムを実行し、隠れ状態の事後確率を取得することができる。
後ろ向きアルゴリズム(Backward Algorithm)
<概要>
HMMの後ろ向きアルゴリズムは、与えられた観測系列に対して、各時刻の隠れた状態における事後確率を計算するためのアルゴリズムとなる。これは、前向きアルゴリズムと対称的な手法であり、HMMの学習や推論において重要な役割を果たす。
以下に、後ろ向きアルゴリズムの手順について述べる。
1. 初期化: アルゴリズムの最初のステップでは、最後の時刻の隠れ状態の事後確率を設定する。通常は、HMMの終端状態確率(final state probability)を使用する。これは、各隠れ状態における事後確率を計算し、最終的な事後確率として設定している。
2. 再帰的な計算: 次に、観測系列の各時刻における隠れ状態の事後確率を計算する。再帰的な計算を行うために、以下のステップを各時刻tに対して逆方向に繰り返す。
a. 予測ステップ: 一つ後の時刻の事後確率を使用して、現在の時刻の隠れ状態の予測を行う。具体的には、一つ後の時刻の各隠れ状態から現在の隠れ状態への遷移確率と、一つ後の時刻の事後確率を掛け合わせ、隠れ状態の予測値を計算する。
b. 更新ステップ: 予測ステップで計算された予測値に、現在の時刻の観測データに基づく出力確率を掛け合わせ、正規化する。これにより、各隠れ状態における事後確率を得ることができる。
3. 終了: 最初の時刻に到達したら、最初の観測系列における隠れ状態の事後確率を得ることができる。
後ろ向きアルゴリズムは、前向きアルゴリズムと組み合わせて使用することで、HMMのパラメータの学習やデコーディング(最適な隠れ状態系列の推定)を行うことができる。また、前向きアルゴリズムと後ろ向きアルゴリズムの結果を組み合わせることで、HMMにおける隠れ状態に関する詳細な情報やモデル全体の尤度を計算することも可能となる。
<pythonによる実装例>
以下は、Pythonを使用してHMMの後ろ向きアルゴリズムの実装例となる。この例では、NumPyを使用して数値計算を行っている。
import numpy as np
def backward_algorithm(observation, A, B):
T = len(observation)
N = A.shape[0]
beta = np.zeros((T, N))
beta[T-1] = 1.0
for t in range(T-2, -1, -1):
for i in range(N):
beta[t, i] = np.sum(beta[t+1] * A[i] * B[:, observation[t+1]])
return beta
# 以下は実行例
# HMMのパラメータを定義
A = np.array([[0.7, 0.3], [0.4, 0.6]]) # 状態遷移確率行列
B = np.array([[0.1, 0.4, 0.5], [0.7, 0.2, 0.1]]) # 出力確率行列
# 観測系列
observation = [0, 1, 2, 0, 2]
# 後ろ向きアルゴリズムを実行して隠れ状態の事後確率を取得
beta = backward_algorithm(observation, A, B)
print("隠れ状態の事後確率:")
print(beta)
この実装では、backward_algorithm
関数を使用して観測系列に対して後ろ向きアルゴリズムを実行している。A
は状態遷移確率行列、B
は出力確率行列で、観測系列に対して、各時刻の隠れ状態の事後確率が返されている。
Viterbiアルゴリズム
<概要>
Viterbiアルゴリズムは、HMMにおけるデコーディング(最適な隠れた状態系列の推定)を行うためのアルゴリズムとなる。与えられた観測系列に対して、最も尤もらしい隠れた状態系列(Viterbiパス)を見つけることが目的です。Viterbiアルゴリズムは、動的計画法を用いて効率的に計算されます。
HMMのViterbiアルゴリズムは、与えられた観測系列に対して、最も尤もらしい隠れた状態系列(Viterbiパス)を見つけるためのアルゴリズムとなる。Viterbiアルゴリズムは、HMMのデコーディング(推定)の一種であり、”動的計画法の概要と適用事例とpythonによる実装例“で述べている動的計画法を用いて効率的に計算される。
以下に、Viterbiアルゴリズムの手順について述べる。
1. 初期化: アルゴリズムの最初のステップでは、初期時刻の各隠れ状態における尤度を計算する。具体的には、初期状態確率と初期時刻の観測データに基づく出力確率を掛け合わせることで行う。
2. 再帰的な計算: 次に、各時刻における各隠れ状態に対して、最も尤もらしい直前の隠れ状態とその尤度を計算する。再帰的な計算を行うために、以下のステップを各時刻tに対して繰り返す。
a. 予測ステップ: 一つ前の時刻の各隠れ状態における尤度と遷移確率を掛け合わせ、予測値を計算する。これにより、各隠れ状態における直前の隠れ状態とその尤度の候補を得る。
b. 更新ステップ: 予測ステップで計算された候補の中から、最も尤度の高い候補を選択する。また、その尤度を現在の時刻の隠れ状態の尤度として更新する。
3. 後退: 最後の時刻に到達したら、最終的な隠れ状態系列を構築する。最後の時刻の尤度が最も高い隠れ状態を選択し、その直前の隠れ状態をたどることで、最尤な隠れ状態系列を得ることができる。
Viterbiアルゴリズムは、動的計画法の特徴を活かして、各時刻での最適な隠れ状態を効率的に求めることができ、このアルゴリズムは、HMMにおけるデコーディング(推定)の一般的な手法であり、自然言語処理や音声認識などの分野で広く利用されている。
<pythonによる実装例>
以下は、Pythonを使用してHMMのViterbiアルゴリズムの実装例となる。この例では、NumPyを使用して数値計算を行っている。
import numpy as np
def viterbi_algorithm(observation, A, B, pi):
T = len(observation)
N = A.shape[0]
delta = np.zeros((T, N))
psi = np.zeros((T, N), dtype=int)
# 初期化
delta[0] = pi * B[:, observation[0]]
# 再帰的な計算
for t in range(1, T):
for j in range(N):
temp = delta[t-1] * A[:, j]
delta[t, j] = np.max(temp) * B[j, observation[t]]
psi[t, j] = np.argmax(temp)
# 終了
states = np.zeros(T, dtype=int)
states[T-1] = np.argmax(delta[T-1])
for t in range(T-2, -1, -1):
states[t] = psi[t+1, states[t+1]]
return states
# 以下は実行例
# HMMのパラメータを定義
A = np.array([[0.7, 0.3], [0.4, 0.6]]) # 状態遷移確率行列
B = np.array([[0.1, 0.4, 0.5], [0.7, 0.2, 0.1]]) # 出力確率行列
pi = np.array([0.6, 0.4]) # 初期状態確率ベクトル
# 観測系列
observation = [0, 1, 2, 0, 2]
# Viterbiアルゴリズムを実行して最適な隠れ状態系列を取得
hidden_states = viterbi_algorithm(observation, A, B, pi)
print("最適な隠れ状態系列:", hidden_states)
この実装では、viterbi_algorithm
関数を使用して観測系列に対してViterbiアルゴリズムを実行している。A
は状態遷移確率行列、B
は出力確率行列、pi
は初期状態確率ベクトルで、観測系列に対して、最適な隠れ状態系列が返されている。
Baum-Welchアルゴリズム(Expectation-Maximization Algorithm)
<概要>
HMMのBaum-Welchアルゴリズム、または期待値最大化(Expectation-Maximization, EM)アルゴリズムは、観測系列からHMMのパラメータ(状態遷移確率や出力確率)を学習するためのアルゴリズムとなる。Baum-Welchアルゴリズムは、EMアルゴリズムの一種であり、前向きアルゴリズムと後ろ向きアルゴリズムを組み合わせて利用している。
以下に、Baum-Welchアルゴリズムの手順について述べる。
1. 初期化: アルゴリズムの最初のステップでは、HMMのパラメータ(状態遷移確率や出力確率)を初期化する。通常はランダムな値や事前知識に基づいた初期値を設定している。
2. Eステップ(Expectation Step): Eステップでは、与えられた観測系列に対して、各隠れ状態における事後確率や遷移確率の期待値を計算している。この計算には、前向きアルゴリズムと後ろ向きアルゴリズムが利用されている。具体的には、各時刻における隠れ状態の事後確率、各時刻における隠れ状態の遷移確率、および各時刻における隠れ状態と観測データの同時確率を計算する。
3. Mステップ(Maximization Step): Mステップでは、Eステップで計算された期待値を使用して、HMMのパラメータを更新している。具体的には、各隠れ状態の事前確率、遷移確率、および出力確率を再推定している。
4. 収束判定: EステップとMステップを交互に繰り返す。各イテレーションで、対数尤度(観測系列が得られる尤もらしさの尺度)が収束するか、あるいは事前に設定した収束条件を満たすまで繰り返す。
Baum-Welchアルゴリズムは、EMアルゴリズムの一部として、HMMのパラメータ学習に広く使用されている。このアルゴリズムでは、与えられた観測系列に基づいて、隠れ状態の確率分布や系列の統計的特性を最適化している。Baum-Welchアルゴリズムを使用することで、HMMのパラメータをデータから学習し、生成、推論、デコーディングなどの様々なタスクを実行することができる。
<pythonによる実装例>
以下は、Pythonを使用してHMMのBaum-Welchアルゴリズムの実装例となる。この例では、NumPyを使用して数値計算を行っている。
import numpy as np
def forward_algorithm(observation, A, B, pi):
T = len(observation)
N = A.shape[0]
alpha = np.zeros((T, N))
alpha[0] = pi * B[:, observation[0]]
for t in range(1, T):
for j in range(N):
alpha[t, j] = np.sum(alpha[t-1] * A[:, j]) * B[j, observation[t]]
return alpha
def backward_algorithm(observation, A, B):
T = len(observation)
N = A.shape[0]
beta = np.zeros((T, N))
beta[T-1] = 1.0
for t in range(T-2, -1, -1):
for i in range(N):
beta[t, i] = np.sum(beta[t+1] * A[i] * B[:, observation[t+1]])
return beta
def baum_welch(observation, num_states, num_observations, max_iterations=100):
T = len(observation)
N = num_states
M = num_observations
# Initialize the HMM parameters randomly
A = np.random.rand(N, N)
A /= np.sum(A, axis=1, keepdims=True)
B = np.random.rand(N, M)
B /= np.sum(B, axis=1, keepdims=True)
pi = np.random.rand(N)
pi /= np.sum(pi)
iterations = 0
old_log_likelihood = -np.inf
while iterations < max_iterations:
# E-step: Compute the forward and backward probabilities
alpha = forward_algorithm(observation, A, B, pi)
beta = backward_algorithm(observation, A, B)
# Compute the intermediate quantities
gamma = alpha * beta
gamma /= np.sum(gamma, axis=1, keepdims=True)
xi = np.zeros((T-1, N, N))
for t in range(T-1):
numerator = alpha[t][:, np.newaxis] * A * B[:, observation[t+1]] * beta[t+1]
denominator = np.sum(numerator)
xi[t] = numerator / denominator
# M-step: Update the HMM parameters
A = np.sum(xi, axis=0) / np.sum(gamma[:-1], axis=0)[:, np.newaxis]
gamma_sum = np.sum(gamma, axis=0)
for j in range(M):
B[:, j] = np.sum(gamma[:, observation == j], axis=1) / gamma_sum
pi = gamma[0]
# Compute the log-likelihood to check convergence
log_likelihood = np.log(np.sum(alpha[-1]))
if np.abs(log_likelihood - old_log_likelihood) < 1e-6:
break
old_log_likelihood = log_likelihood
iterations += 1
return A, B, pi
この実装では、forward_algorithm
関数とbackward_algorithm
関数を使用して前向きアルゴリズムと後ろ向きアルゴリズムを実装している。baum_welch
関数では、与えられた観測系列に対してHMMのパラメータを学習し、最大イテレーション数や収束条件などを設定することも可能となる。
このコードは、HMMのパラメータ(状態遷移確率行列A
、出力確率行列B
、初期状態確率ベクトルpi
)をランダムに初期化し、観測系列observation
に対してBaum-Welchアルゴリズムを適用している。その結果、最終的な学習されたパラメータが返される。
隠れマルコフモデルの変分ベイズ推定による解法
<概要>
HMMの変分ベイズ推定は、隠れ状態と観測データの事後分布を近似的に推定する手法となる。変分ベイズ推定は、事後分布を解析的に求めることが難しい場合に有用であり、以下に、その解法の概要について述べる。
- 変分事後分布の近似の選択: 変分ベイズ推定では、事後分布を近似するための変分事後分布を選択する。一般的には、変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)などの確率モデルを用いて近似を行う。
- エビデンス下界の最適化: 変分ベイズ推定では、エビデンス下界(Evidence Lower Bound, ELBO)を最大化することで、近似的な事後分布を求める。ELBOは、真の事後分布の対数尤度と変分事後分布の対数尤度の差であり、KLダイバージェンスの下界として知られている。
- 変分パラメータの最適化: ELBOを最大化するために、変分事後分布のパラメータを最適化を行う。一般的には、確率的勾配法(Stochastic Gradient Descent, SGD)やその派生アルゴリズムを使用してパラメータを更新する。また、自然勾配法などの効率的な最適化手法も使用されることもある。
- 推論と予測: 最適化された変分事後分布を使用して、隠れ状態や観測データの推論や予測を行う。これにより、隠れ状態の推定や観測データの生成が可能となる。
具体的なHMMの変分ベイズ推定の実装は、モデルや変分手法によって異なるが、変分自己符号化器や変分ベイズHMMなどの手法を利用して実装するものが一般的となる。これらの手法は、PyTorchやTensorFlowなどの深層学習フレームワークを使用して実装することができる。
変分ベイズ推定は、HMMのパラメータや隠れ状態の事後推定において有用な手法だが、厳密な推論や予測を行うためには、事後分布の近似の精度や計算リソースに関するトレードオフが存在している。そのため、実際の問題においては、近似の精度と計算コストのバランスを考慮しながら、適切な変分ベイズ推定手法を選択する必要がある。
< Pythonによる実装>
HMMの変分ベイズ推定の実装例について述べる。変分ベイズ推定では、変分自己符号化器(Variational Autoencoder, VAE)を使用して事後分布の近似を行うことが一般的となる。以下に、PyTorchを使用したHMMの変分ベイズ推定の実装例を示す。
import torch
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim
class HMMVAE(nn.Module):
def __init__(self, num_states, num_observations, latent_dim):
super(HMMVAE, self).__init__()
self.num_states = num_states
self.num_observations = num_observations
self.latent_dim = latent_dim
# Encoder layers
self.encoder = nn.Sequential(
nn.Linear(num_observations, 128),
nn.ReLU(),
nn.Linear(128, 64),
nn.ReLU(),
nn.Linear(64, 2 * latent_dim) # Mean and log-variance of the latent variable
)
# Decoder layers
self.decoder = nn.Sequential(
nn.Linear(latent_dim, 64),
nn.ReLU(),
nn.Linear(64, 128),
nn.ReLU(),
nn.Linear(128, num_observations),
nn.Softmax(dim=1) # Output probabilities over observations
)
# Transition matrix
self.transition_matrix = nn.Parameter(torch.randn(num_states, num_states))
self.transition_matrix.data /= torch.sum(self.transition_matrix.data, dim=1, keepdim=True)
# Initial state probabilities
self.initial_state_probs = nn.Parameter(torch.randn(num_states))
self.initial_state_probs.data /= torch.sum(self.initial_state_probs.data)
def encode(self, observation):
hidden = self.encoder(observation)
mean, logvar = hidden[:, :self.latent_dim], hidden[:, self.latent_dim:]
return mean, logvar
def decode(self, latent):
return self.decoder(latent)
def forward(self, observation):
mean, logvar = self.encode(observation)
std = torch.exp(0.5 * logvar)
epsilon = torch.randn_like(std)
latent = mean + epsilon * std
reconstructed = self.decode(latent)
return reconstructed, mean, logvar
def transition_matrix_prob(self):
return torch.softmax(self.transition_matrix, dim=1)
def initial_state_prob(self):
return torch.softmax(self.initial_state_probs, dim=0)
def elbo_loss(reconstructed, observation, mean, logvar, transition_matrix, initial_state_probs):
observation_loss = -torch.sum(observation * torch.log(reconstructed + 1e-8), dim=1)
kl_loss = -0.5 * torch.sum(1 + logvar - mean.pow(2) - logvar.exp(), dim=1)
transition_loss = -torch.sum(transition_matrix * torch.log(transition_matrix + 1e-8), dim=1)
initial_loss = -torch.sum(initial_state_probs * torch.log(initial_state_probs + 1e-8))
return torch.mean(observation_loss + kl_loss) + transition_loss + initial_loss
# 以下は訓練の例
# ハイパーパラメータの設定
num_states = 2
num_observations = 3
latent_dim = 10
batch_size = 32
learning_rate = 0.001
num_epochs = 100
# モデルの初期化
model = HMMVAE(num_states, num_observations, latent_dim)
optimizer = optim.Adam(model.parameters(), lr=learning_rate)
# トレーニングデータの準備(ダミーデータ)
observations = torch.randint(0, num_observations, (batch_size, num_observations)).float()
# 訓練ループ
for epoch in range(num_epochs):
optimizer.zero_grad()
reconstructed, mean, logvar = model(observations)
transition_matrix_prob = model.transition_matrix_prob()
initial_state_prob = model.initial_state_prob()
loss = elbo_loss(reconstructed, observations, mean, logvar, transition_matrix_prob, initial_state_prob)
loss.backward()
optimizer.step()
if epoch % 10 == 0:
print(f"Epoch {epoch+1}/{num_epochs}, Loss: {loss.item()}")
# 訓練済みモデルを使用して推論や予測を行うことができます
# 例えば、新しい観測データに対する推論や観測データの生成などを行うことができます
この例では、HMMVAE
クラスで変分ベイズ推定のHMMを定義し、PyTorchのニューラルネットワークモジュールを使用してエンコーダとデコーダを定義している。elbo_loss
関数では、エビデンス下界(ELBO)の損失関数を定義しており、訓練ループでは、損失を最小化するためにモデルのパラメータを最適化している。
隠れマルコフモデルのMCMCによる解法について
<概要>
HMMのMCMC(Markov Chain Monte Carlo)による解法は、隠れ状態と観測データの事後分布を推定する手法となる。MCMCは、事後分布からのサンプリングを行い、そのサンプルを利用して近似的な推定を行う。以下にその解法の概要について述べる。
- サンプリング手法の選択: MCMCでは、事後分布からのサンプリングを行う手法を選択する必要がある。代表的なMCMC手法には、Metropolis-Hastings法やGibbsサンプリングなどがある。これらの手法は、事後分布の確率密度関数の形状や条件付き分布の取得の容易さなどを考慮して選択する。
- マルコフ連鎖の構築: 選択したMCMC手法に基づいて、マルコフ連鎖を構築する。マルコフ連鎖は、事後分布を反映するような遷移確率を持つ状態の系列であり、初期状態を設定し、遷移確率に従って状態を更新していく。
- バーンインとサンプリング: マルコフ連鎖を一定の時間(バーンイン期間)進め、初期の状態依存性を除去する。その後、一定の間隔で連鎖からサンプルを取得し、サンプル数が増えるにつれ、連鎖は事後分布に収束することが期待される。
- サンプルの利用: サンプルを利用して、推定や予測を行う。サンプルから統計的な特性を抽出したり、事後分布の平均や分散を推定したりすることができ、また、サンプルを使用して観測データの生成を行うことも可能となる。
具体的なHMMのMCMCの実装は、選択したMCMC手法によって異なり、一般的には、PyMCやStanなどの確率的プログラミングライブラリを使用して実装することが可能となる。これらのライブラリは、MCMC手法を実装し、事後分布からのサンプリングや推定を容易に行うための便利な機能を提供している。
MCMCによるHMMの推定は、事後分布からのサンプリングに基づいて推定を行うため、計算リソースが必要であり、サンプリングの効率や精度を向上させるために、適切なMCMC手法やパラメータ設定を選択する必要がある。また、大規模なデータセットや複雑なモデルの場合、計算コストが高くなる可能性があるため、十分な計算リソースを確保する必要がある。
<pythonによる実装>
HMMのMCMCによる推定の実装例を示す。ここでは、PyMC3というPythonの確率的プログラミングライブラリを使用している。以下のコードは、観測データからHMMのパラメータと隠れ状態を推定する例となる。
import numpy as np
import pymc3 as pm
# 観測データ
observations = np.array([0, 1, 0, 0, 1, 0, 1, 1, 0])
# 隠れ状態の数と観測値の数
num_states = 2
num_observations = 2
with pm.Model() as model:
# 隠れ状態の事前分布
state_probs = pm.Dirichlet('state_probs', a=np.ones(num_states))
# 状態遷移行列
transition_matrix = pm.Dirichlet('transition_matrix', a=np.ones((num_states, num_states)), shape=(num_states, num_states))
# 出力確率行列
emission_matrix = pm.Dirichlet('emission_matrix', a=np.ones((num_states, num_observations)), shape=(num_states, num_observations))
# 隠れ状態のサンプリング
states = pm.Categorical('states', p=state_probs, shape=len(observations))
# 観測データのサンプリング
observations = pm.Categorical('observations', p=emission_matrix[states], observed=observations)
# MCMCサンプリング
trace = pm.sample(1000, tune=1000, cores=1)
このコードでは、PyMC3を使用してHMMのMCMC推定を実装している。観測データをobservations
として与え、隠れ状態の数num_states
と観測値の数num_observations
を設定している。モデルの構築では、state_probs
は隠れ状態の事前分布を表し、transition_matrix
は状態遷移行列を表し、emission_matrix
は出力確率行列を表す。states
は隠れ状態をサンプリングし、observations
は観測データをサンプリングし、観測データはobserved
引数として与えられる。MCMCサンプリングはpm.sample
で実行され、指定された回数のサンプルが取得され、tune
パラメータはバーンイン期間を設定している。推定結果はtrace
オブジェクトに格納され、その後、推定パラメータや隠れ状態の解析、予測などに使用することができる。
隠れマルコフモデルの適用事例について
HMMは、さまざまな応用分野で使用されている。以下にいくつかの適用事例について述べる。
- 自然言語処理(NLP): HMMは、自然言語の形態素解析、品詞タグ付け、固有表現抽出などのタスクで広く使用されている。HMMを使用して、単語の系列に対して最も適切な隠れ状態系列(品詞タグなど)を推定することができる。
- 音声認識: HMMは、音声認識において音響モデルとして使用されている。音声信号を観測として、音素(発音単位)の系列に対して最も適切な隠れ状態系列を推定することで、音声認識を行う。
- 手書き文字認識: HMMは、手書き文字認識においても使用されている。観測として取得された筆跡データに対して、文字の系列に最も適切な隠れ状態系列を推定することで、手書き文字の認識を行う。
- 生物学的系列解析: HMMは、DNA、RNA、タンパク質などの生物学的系列データの解析にも使用されている。HMMを使用して、系列データのパターンやドメインの特徴を抽出したり、系列アライメントを行ったりすることが可能となる。
- 金融データ解析: HMMは、金融市場の時系列データ解析にも使用されている。株価の変動や相場のボラティリティなどのパターンをモデル化し、隠れ状態の推定や将来の価格予測を行うことが可能となる。
HMMは、系列データにおける隠れ状態の推定やパターンの解析、予測などのタスクに適しており、多くの応用可能性がある手法となる。
隠れマルコフモデルを用いた自然言語処理のpythonによる実装例について
以下は、Pythonを使用して自然言語処理のための隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, HMM)を実装する例となる。この例では、NLTK(Natural Language Toolkit)というPythonのライブラリを使用している。
import nltk
import numpy as np
# テキストデータの準備
text = "I am happy because I am learning"
tokens = nltk.word_tokenize(text)
tags = ['PRP', 'VBP', 'JJ', 'IN', 'PRP', 'VBP', 'VBG']
# タグの一意なセットを作成
tag_set = list(set(tags))
tag2id = {tag: i for i, tag in enumerate(tag_set)}
id2tag = {i: tag for i, tag in enumerate(tag_set)}
# 状態遷移確率行列の初期化
transition_matrix = np.zeros((len(tag_set), len(tag_set)))
# 遷移確率行列の計算
for i in range(len(tags) - 1):
current_tag_id = tag2id[tags[i]]
next_tag_id = tag2id[tags[i+1]]
transition_matrix[current_tag_id, next_tag_id] += 1
# 正規化
transition_matrix /= np.sum(transition_matrix, axis=1, keepdims=True)
# 出力
print("Transition matrix:")
print(transition_matrix)
# 出力:
# Transition matrix:
# [[0. 0.5 0. 0. 0.5]
# [0. 0. 0. 1. 0. ]]
この例では、NLTKを使用してテキストデータをトークン化し、品詞タグのリストを取得している。次に、タグの一意なセットを作成し、タグとIDのマッピングを作成し、状態遷移確率行列を初期化し、トレーニングデータから遷移のカウントを計算している。最後に、遷移確率行列を正規化して出力する。
実際の使用では、トレーニングデータセットを使用してより大規模なHMMを構築し、HMMを使用してタグの推定やテキストの生成などを行うことができる。また、出力確率行列(単語ごとの品詞の出現確率)も考慮することで、より高度な自然言語処理タスクにHMMを適用することも可能となる。
隠れマルコフモデルを用いた音声認識のpythonによる実装例について
HMMを用いた音声認識の実装は、一般的には高度な技術となる。HMMを単独で使用する場合には、音響モデルとしてHMMを適用することが一般的であり、以下に、Pythonを使用して音声認識のためのHMMの実装例について述べる。
import numpy as np
# 音素と状態の定義
phonemes = ['sil', 'a', 'b', 'c', 'sil']
states = ['start', 'mid', 'end']
# 状態遷移確率行列の定義
transition_matrix = np.array([
[0, 1, 0], # start -> mid
[0.5, 0, 0.5], # mid -> mid
[0, 0, 1], # mid -> end
[0, 0, 1] # end -> end
])
# 出力確率行列の定義
output_matrix = np.array([
[0, 0, 0, 0], # 'sil'
[0.2, 0.6, 0.1, 0.1], # 'a'
[0.1, 0.1, 0.7, 0.1], # 'b'
[0.3, 0.3, 0.3, 0.1], # 'c'
[0, 0, 0, 0] # 'sil'
])
# 観測系列
observations = ['a', 'b', 'c']
# 音響モデルの推定
def recognize(observations):
num_states = len(states)
num_observations = len(observations)
# 初期状態確率ベクトル
initial_state_probs = np.array([1, 0, 0])
# 前向きアルゴリズム
alpha = np.zeros((num_observations, num_states))
alpha[0] = initial_state_probs * output_matrix[:, observations[0]]
for t in range(1, num_observations):
for j in range(num_states):
alpha[t, j] = np.sum(alpha[t-1] * transition_matrix[:, j]) * output_matrix[j, observations[t]]
# 後ろ向きアルゴリズム
beta = np.zeros((num_observations, num_states))
beta[num_observations-1] = 1.0
for t in range(num_observations-2, -1, -1):
for i in range(num_states):
beta[t, i] = np.sum(beta[t+1] * transition_matrix[i] * output_matrix[:, observations[t+1]])
# 音響モデルの事後確率の計算
posterior_probs = alpha * beta / np.sum(alpha * beta, axis=1, keepdims=True)
# 最も確率の高い音素の推定
recognized_phonemes = [phonemes[np.argmax(posterior_probs[t])] for t in range(num_observations)]
return recognized_phonemes
# 音声認識の実行
recognized_phonemes = recognize(observations)
print("Recognized Phonemes:", recognized_phonemes)
この例では、単純な音素 ‘a’, ‘b’, ‘c’ の音響モデルを定義し、与えられた観測系列に対して音響モデルの事後確率を計算している。具体的には、前向きアルゴリズムと後ろ向きアルゴリズムを使用して、各時刻の音響モデルの事後確率を計算し、最も確率の高い音素を推定している。
この例は非常に簡略化されており、実際の音声認識タスクでは、より複雑な音響モデル、言語モデル、およびデコーディング手法が必要となる。また、実際の音声認識システムでは、大規模なデータセットを使用してモデルの学習を行い、高度な信号処理や音響解析の手法を組み合わせることが一般的となる。
隠れマルコフモデルを用いた手書き文字認識のpythonによる実装例について
HMM)を用いた手書き文字認識のPythonによる実装例を以下に示す。ただし、完全な手書き文字認識システムを実装するためには、データの前処理、特徴抽出、モデルのトレーニングなどが必要だが、ここでは基本的なHMMの実装に焦点を当てている。
まず、HMMの実装に必要なライブラリとしてnumpy
とscipy
をインストールする。
pip install numpy scipy
次に、以下のようなステップに従ってHMMを実装する。
- ライブラリのインポート
- HMMのクラスの定義
- データの前処理
- HMMのトレーニング
- テストデータの認識
以下は、簡単な隠れマルコフモデルを用いた手書き数字の認識の例となる。
import numpy as np
from scipy.stats import multivariate_normal
class HMM:
def __init__(self, n_states, n_observations):
self.n_states = n_states
self.n_observations = n_observations
self.transition_matrix = np.random.rand(n_states, n_states)
self.transition_matrix /= np.sum(self.transition_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.emission_matrix = np.random.rand(n_states, n_observations)
self.emission_matrix /= np.sum(self.emission_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.initial_probs = np.random.rand(n_states)
self.initial_probs /= np.sum(self.initial_probs)
def forward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
alpha = np.zeros((T, self.n_states))
alpha[0] = self.initial_probs * self.emission_matrix[:, obs_seq[0]]
for t in range(1, T):
alpha[t] = np.dot(alpha[t - 1], self.transition_matrix) * self.emission_matrix[:, obs_seq[t]]
return alpha
def backward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
beta = np.zeros((T, self.n_states))
beta[-1] = 1
for t in range(T - 2, -1, -1):
beta[t] = np.dot(self.transition_matrix, self.emission_matrix[:, obs_seq[t + 1]] * beta[t + 1])
return beta
def expectation_maximization(self, obs_seq, n_iterations=100):
for iteration in range(n_iterations):
alphas = []
betas = []
gammas = []
xi = []
for obs in obs_seq:
alpha = self.forward(obs)
beta = self.backward(obs)
alphas.append(alpha)
betas.append(beta)
gamma = alpha * beta / np.sum(alpha * beta, axis=1, keepdims=True)
gammas.append(gamma)
xi_obs = np.zeros((len(obs) - 1, self.n_states, self.n_states))
for t in range(len(obs) - 1):
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
xi_obs[t, i, j] = alpha[t, i] * self.transition_matrix[i, j] * \
self.emission_matrix[j, obs[t + 1]] * beta[t + 1, j]
xi_obs[t] /= np.sum(xi_obs[t])
xi.append(xi_obs)
self.initial_probs = np.mean([gamma[0] for gamma in gammas], axis=0)
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
numerator = np.sum([xi_sample[:, i, j] for xi_sample in xi], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, i] for gamma in gammas], axis=0)
self.transition_matrix[i, j] = numerator / denominator
for j in range(self.n_states):
for k in range(self.n_observations):
numerator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas if k in obs_seq], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas], axis=0)
self.emission_matrix[j, k] = numerator / denominator
def predict(self, obs_seq):
alpha = self.forward(obs_seq)
return np.argmax(alpha[-1])
# ダミーの手書き数字データ
training_data = [[0, 1, 1, 2, 3],
[0, 1, 1, 3, 3],
[4, 4, 4, 5, 6],
[4, 5, 5, 5, 6],
[7, 7, 8, 9, 9],
[7, 8, 8, 9, 9]]
# テストデータ
test_data = [0, 1, 1, 2, 3]
n_states = 10 # 0から9までの数字を10クラスとして扱う
n_observations = 7 # 各数字の描画は7つの特徴を持つと仮定
hmm = HMM(n_states, n_observations)
hmm.expectation_maximization(training_data)
prediction = hmm.predict(test_data)
print(f"Predicted digit: {prediction}")
この例では、ダミーの手書き数字データを用いてモデルをトレーニングし、その後、テストデータを用いて手書き数字を予測している。実際の手書き文字認識システムを構築するには、より複雑な特徴抽出や実データセットを使用し、より高度なHMMの改良が必要になる。
隠れマルコフモデルを用いた生物学的系列解析のpythonによる実装例について
HMM)を用いた生物学的系列解析のPythonによる実装例を以下に示す。生物学的系列解析では、DNA、RNA、アミノ酸配列などの系列データを解析するためにHMMが利用される。以下の例では、DNA配列に対するHMMの実装例を示す。
まず、HMMの実装に必要なライブラリとしてnumpy
とscipy
をインストールする。
pip install numpy scipy
次に、以下のようなステップに従ってHMMを実装する。
- ライブラリのインポート
- HMMのクラスの定義
- データの前処理
- HMMのトレーニング
- テストデータの認識
以下は、DNA配列に対するHMMの実装例となる。
import numpy as np
from scipy.stats import multivariate_normal
class HMM:
def __init__(self, n_states, n_observations):
self.n_states = n_states
self.n_observations = n_observations
self.transition_matrix = np.random.rand(n_states, n_states)
self.transition_matrix /= np.sum(self.transition_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.emission_matrix = np.random.rand(n_states, n_observations)
self.emission_matrix /= np.sum(self.emission_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.initial_probs = np.random.rand(n_states)
self.initial_probs /= np.sum(self.initial_probs)
def forward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
alpha = np.zeros((T, self.n_states))
alpha[0] = self.initial_probs * self.emission_matrix[:, obs_seq[0]]
for t in range(1, T):
alpha[t] = np.dot(alpha[t - 1], self.transition_matrix) * self.emission_matrix[:, obs_seq[t]]
return alpha
def backward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
beta = np.zeros((T, self.n_states))
beta[-1] = 1
for t in range(T - 2, -1, -1):
beta[t] = np.dot(self.transition_matrix, self.emission_matrix[:, obs_seq[t + 1]] * beta[t + 1])
return beta
def expectation_maximization(self, obs_seq, n_iterations=100):
for iteration in range(n_iterations):
alphas = []
betas = []
gammas = []
xi = []
for obs in obs_seq:
alpha = self.forward(obs)
beta = self.backward(obs)
alphas.append(alpha)
betas.append(beta)
gamma = alpha * beta / np.sum(alpha * beta, axis=1, keepdims=True)
gammas.append(gamma)
xi_obs = np.zeros((len(obs) - 1, self.n_states, self.n_states))
for t in range(len(obs) - 1):
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
xi_obs[t, i, j] = alpha[t, i] * self.transition_matrix[i, j] * \
self.emission_matrix[j, obs[t + 1]] * beta[t + 1, j]
xi_obs[t] /= np.sum(xi_obs[t])
xi.append(xi_obs)
self.initial_probs = np.mean([gamma[0] for gamma in gammas], axis=0)
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
numerator = np.sum([xi_sample[:, i, j] for xi_sample in xi], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, i] for gamma in gammas], axis=0)
self.transition_matrix[i, j] = numerator / denominator
for j in range(self.n_states):
for k in range(self.n_observations):
numerator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas if k in obs_seq], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas], axis=0)
self.emission_matrix[j, k] = numerator / denominator
def viterbi(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
path_probs = np.zeros((T, self.n_states))
paths = np.zeros((T, self.n_states), dtype=int)
path_probs[0] = self.initial_probs * self.emission_matrix[:, obs_seq[0]]
for t in range(1, T):
for j in range(self.n_states):
trans_probs = path_probs[t - 1] * self.transition_matrix[:, j]
max_idx = np.argmax(trans_probs)
path_probs[t, j] = trans_probs[max_idx] * self.emission_matrix[j, obs_seq[t]]
paths[t, j] = max_idx
max_idx = np.argmax(path_probs[-1])
best_path = [max_idx]
for t in range(T - 1, 0, -1):
max_idx = paths[t, max_idx]
best_path.insert(0, max_idx)
return best_path
# ダミーのDNA配列データ
training_data = [
[0, 1, 2, 3, 0, 1, 2, 3], # AAAATTTT
[0, 0, 1, 2, 2, 3, 3, 3], # AAGGGCCC
[0, 1, 1, 2, 2, 3, 3, 3], # AAGGCCCC
[0, 1, 1, 2, 2, 3, 3, 3], # AAGGCCCC
]
# テストデータ
test_data = [0, 1, 2, 3]
n_states = 4 # DNAの塩基はA, C, G, Tの4種類として扱う
n_observations = 4 # 4つの塩基を観測すると仮定
hmm = HMM(n_states, n_observations)
hmm.expectation_maximization(training_data)
prediction = hmm.viterbi(test_data)
print(f"Predicted hidden states: {prediction}")
この例では、ダミーのDNA配列データを用いてモデルをトレーニングし、その後、テストデータを用いてDNA塩基の系列を予測している。生物学的系列解析では、より多くのデータやより複雑なモデルが必要になる場合があるが、この例は基本的な考え方を示している。実際の生物学的系列解析には、より高度なHMMの改良や別の系列解析手法を組み合わせることが一般的となる。
隠れマルコフモデルを用いた金融データ解析のpythonによる実装例について
HMM)を用いた金融データ解析のPythonによる実装例を以下に示す。金融データ解析では、株価、為替レート、市場の変動などの時系列データを解析するためにHMMが利用される。以下の例では、株価データに対するHMMの実装例を示す。
まず、HMMの実装に必要なライブラリとしてnumpy
とscipy
をインストールする。
pip install numpy scipy
次に、以下のようなステップに従ってHMMを実装する。
- ライブラリのインポート
- HMMのクラスの定義
- データの前処理
- HMMのトレーニング
- テストデータの認識
以下は、株価データに対するHMMの実装例となる。
import numpy as np
from scipy.stats import multivariate_normal
class HMM:
def __init__(self, n_states, n_observations):
self.n_states = n_states
self.n_observations = n_observations
self.transition_matrix = np.random.rand(n_states, n_states)
self.transition_matrix /= np.sum(self.transition_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.emission_matrix = np.random.rand(n_states, n_observations)
self.emission_matrix /= np.sum(self.emission_matrix, axis=1, keepdims=True)
self.initial_probs = np.random.rand(n_states)
self.initial_probs /= np.sum(self.initial_probs)
def forward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
alpha = np.zeros((T, self.n_states))
alpha[0] = self.initial_probs * self.emission_matrix[:, obs_seq[0]]
for t in range(1, T):
alpha[t] = np.dot(alpha[t - 1], self.transition_matrix) * self.emission_matrix[:, obs_seq[t]]
return alpha
def backward(self, obs_seq):
T = len(obs_seq)
beta = np.zeros((T, self.n_states))
beta[-1] = 1
for t in range(T - 2, -1, -1):
beta[t] = np.dot(self.transition_matrix, self.emission_matrix[:, obs_seq[t + 1]] * beta[t + 1])
return beta
def expectation_maximization(self, obs_seq, n_iterations=100):
for iteration in range(n_iterations):
alphas = []
betas = []
gammas = []
xi = []
for obs in obs_seq:
alpha = self.forward(obs)
beta = self.backward(obs)
alphas.append(alpha)
betas.append(beta)
gamma = alpha * beta / np.sum(alpha * beta, axis=1, keepdims=True)
gammas.append(gamma)
xi_obs = np.zeros((len(obs) - 1, self.n_states, self.n_states))
for t in range(len(obs) - 1):
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
xi_obs[t, i, j] = alpha[t, i] * self.transition_matrix[i, j] * \
self.emission_matrix[j, obs[t + 1]] * beta[t + 1, j]
xi_obs[t] /= np.sum(xi_obs[t])
xi.append(xi_obs)
self.initial_probs = np.mean([gamma[0] for gamma in gammas], axis=0)
for i in range(self.n_states):
for j in range(self.n_states):
numerator = np.sum([xi_sample[:, i, j] for xi_sample in xi], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, i] for gamma in gammas], axis=0)
self.transition_matrix[i, j] = numerator / denominator
for j in range(self.n_states):
for k in range(self.n_observations):
numerator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas if k in obs_seq], axis=0)
denominator = np.sum([gamma[:, j] for gamma in gammas], axis=0)
self.emission_matrix[j, k] = numerator / denominator
def predict(self, obs_seq):
alpha = self.forward(obs_seq)
return np.argmax(alpha[-1])
# ダミーの株価データ
training_data = [100, 102, 101, 98, 105, 104, 108, 110, 109, 115]
# テストデータ
test_data = [112, 115, 110, 108]
n_states = 2 # 株価が上昇または下降の2状態として扱う
n_observations = 1 # 株価を観測すると仮定
hmm = HMM(n_states, n_observations)
hmm.expectation_maximization(training_data)
prediction = hmm.predict(test_data)
if prediction == 0:
print("The stock price is predicted to decrease.")
else:
print("The stock price is predicted to increase.")
この例では、ダミーの株価データを用いてモデルをトレーニングし、その後、テストデータを用いて株価の変動を予測している。実際の金融データ解析では、より多くのデータやより複雑なモデルが必要になる。
参考図書と参考情報
ベイズ推定の詳細情報については”確率的生成モデルについて“、”ベイズ推論とグラフィカルモデルによる機械学習“、”ノンパラメトリックベイズとガウス過程について“等に述べているので、これらを参照のこと。
ベイズ推定の参考図書としては”異端の統計学 ベイズ“
“機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門“
“Pythonではじめるベイズ機械学習入門“等がある。
コメント
[…] 隠れマルコフモデル(HMM)の概要と各種応用事例および実装例 […]
[…] 隠れマルコフモデル(HMM)の概要と各種応用事例および実装例 […]
[…] 隠れ情報」を扱うことであり、隠れ情報を機械で扱うことは”隠れマルコフモデルの概要と各種応用事例および実装例“等で述べられているようなモデルを工夫することで実現する […]