Skipgramの概要とアルゴリズム及び実装例

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Skipgramの概要

Skip-gramは、単語の意味をベクトル表現として捉え、類似性や意味の関連性を数値化することが可能な自然言語処理(NLP)の分野で広く使われる単語の分散表現(Word Embedding)を学習するための手法の一つで、”DeepWalkの概要とアルゴリズム及び実装例について“で述べているDeepWalkなどのGNNでも用いられるものとなる。

Skip-gramは、”Word2Vec“でも述べているWord2Vecとして知られるニューラルネットワークモデルの一種で、Skip-gramの基本的なアイデアは、文中の単語を入力とし、その周囲の単語を出力として学習を行い、入力単語から周囲の単語を予測することとなる。これは例えば、次のような文”I love deep learning”があったとする。このとき、”love”を中心の単語(ターゲット)として、周囲の単語(コンテキスト)を予測し、ここでは、Skip-gramは、”love”を入力とし、”I”, “deep”, “learning”を出力として学習している。

Skip-gramは、以下の3層のニューラルネットワークで構成されている。

1. 入力層(Input Layer):単語のone-hotベクトルが入力される。各単語は辞書のサイズに対応する長さを持つone-hotベクトルとして表現される。

2. 中間層(Hidden Layer):入力層から得られたone-hotベクトルが、重み行列との行列積で変換される。この重み行列は、各単語を密な(dense)ベクトル表現に変換している。

3. 出力層(Output Layer):中間層の出力が、出力層のsoftmax関数を通じて各単語の確率分布として解釈される。具体的には、コンテキスト単語が現れる確率が最大になるように学習している。

このようなモデルを学習することで、単語は密なベクトル表現(Word Embedding)に変換され、意味的な類似性や関係性を保持したベクトルが得られる。

Skip-gramの利点としては、以下の様なものがある。

  • 効率的な学習: Skip-gramは、大規模なコーパスに対しても効率的に学習できる。これは、単語のone-hotベクトル表現を密なベクトル表現に変換するだけでなく、多くの情報を保持できるためである。
  • 単語の意味的関係の捉え: 学習された単語のベクトルは、意味的な類似性や関係性を反映している。例えば、”king”と”queen”のベクトルの差分が”man”と”woman”のベクトルの差分に近いというような関係性が捉えられる。
  • 単語のベクトル表現の再利用: Skip-gramで学習された単語のベクトル表現は、他の自然言語処理タスク(文書分類、意味解析、機械翻訳など)において、事前学習済みの埋め込みベクトルとして再利用することができる。

参考文献としては以下のものがある。
– Mikolov, T., Sutskever, I., Chen, K., Corrado, G. S., & Dean, J. (2013). Distributed representations of words and phrases and their compositionality. In Advances in neural information processing systems (pp. 3111-3119).

Skipgramに関連するアルゴリズムについて

以下に、Skip-gramアルゴリズムの概要を示す。

1. データの準備: コーパス(大量のテキストデータ)を用意し、ボキャブラリ(単語の集合)を構築し、各単語に一意なIDを割り当てる。

2. 入力と出力: Skip-gramでは、各ターゲット単語が入力として与えられ、出力は、その周囲の単語(コンテキスト)を予測する。

3. ニューラルネットワーク構造: Skip-gramは、以下の3層のニューラルネットワークで構成される。

  • 入力層(Input Layer): ターゲット単語をone-hotベクトルで表現する。
  • 中間層(Hidden Layer): 入力層のone-hotベクトルが、重み行列によって密な(dense)ベクトル表現に変換される。
  • 出力層(Output Layer): 中間層の出力が、softmax関数を通じて各単語の確率分布として解釈される。

4. 学習: ネットワークは、入力単語とコンテキスト単語の対を大量に使って学習し、学習の目標は、コンテキスト単語の確率分布を最大化することとなる。これは、与えられた入力単語から周囲の単語がどれだけ正しく予測できるかを学習するものとなる。

5. 学習されたベクトル表現: 学習が進むと、中間層の重み行列によって各単語は密なベクトル表現に変換され、これらの単語のベクトル表現は、意味的な類似性や関連性を反映したものとなる。

Skipgramの適用事例について

以下にSkip-gramの適用事例について述べる。

1. 単語の意味的類似性の捉え: Skip-gramは、単語の分散表現(Word Embedding)を学習することができるため、単語の意味的な類似性を捉えることに利用され、例えば、”king”と”queen”の間の関係や、”man”と”woman”の間の関係などを、ベクトル空間内で反映させることが可能となる。

2. 文書分類: 文書分類では、Skip-gramによって学習された単語の分散表現を使って、文書の意味的な特徴を表現し、この表現を用いて、機械学習モデル(例えば、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなど)を訓練し、文書を分類することができる。

3. 意味解析: 意味解析では、Skip-gramによって学習された単語の分散表現を使って、文やフレーズの意味を表現し、この表現を利用して、単語の意味の類似性や文の意味的な関係を理解することができる。具体的には、単語のクラスタリング、類似語の検出、文の類似度の計算などが挙げられる。

4. 機械翻訳: 機械翻訳では、Skip-gramによって学習された単語の分散表現を使って、文間の意味的な対応関係をモデル化し、これにより、言語間の翻訳モデルを構築し、より良い翻訳結果を得ることが可能となる。

5. 意味的な質問応答: 意味的な質問応答システムでは、Skip-gramによって学習された単語の分散表現を使って、質問と回答の間の意味的な類似性を評価し、これにより、より自然な質問応答インターフェースを構築することが可能となる。

6. 意味的な推論: Skip-gramによって学習された単語の分散表現を使って、単語間の意味的な関係を利用して推論を行うことができ、例えば、”king” – “man” + “woman” = “queen”のような単語間の意味的な演算が可能となる。

Skipgramの実装例について

以下にSkip-gramのPythonとTensorFlowを使用した実装例を示す。Skip-gramを実装するには、まずデータの準備、ニューラルネットワークの構築、そして学習のための設定が必要となる。

ライブラリのインポート:

import numpy as np
import tensorflow as tf
from tensorflow.keras.preprocessing import text
from tensorflow.keras.preprocessing.sequence import skipgrams

データの準備: 学習するためのテキストデータを準備する。

corpus = ["I love deep learning", "I love NLP", "I enjoy studying algorithms"]
tokenizer = text.Tokenizer()
tokenizer.fit_on_texts(corpus)
vocab_size = len(tokenizer.word_index) + 1

Skip-gramデータの生成: Skip-gramモデルの学習に使用するデータを生成する。

sequences = tokenizer.texts_to_sequences(corpus)
skip_grams = [skipgrams(sequence, vocabulary_size=vocab_size, window_size=2) for sequence in sequences]
pairs, labels = skip_grams[0][0], skip_grams[0][1]
word_target, word_context = zip(*pairs)
word_target = np.array(word_target, dtype="int32")
word_context = np.array(word_context, dtype="int32")
labels = np.array(labels, dtype="int32")

モデルの構築: Skip-gramモデルを構築する。ここでは、単純な2層のニューラルネットワークを使用している。

embed_size = 50

input_target = tf.keras.layers.Input((1,))
input_context = tf.keras.layers.Input((1,))

embedding = tf.keras.layers.Embedding(vocab_size, embed_size, input_length=1, name='embedding')
target = embedding(input_target)
target = tf.keras.layers.Reshape((embed_size, 1))(target)
context = embedding(input_context)
context = tf.keras.layers.Reshape((embed_size, 1))(context)

dot_product = tf.keras.layers.Dot(axes=1)([target, context])
dot_product = tf.keras.layers.Reshape((1,))(dot_product)

output = tf.keras.layers.Dense(1, activation='sigmoid')(dot_product)

model = tf.keras.models.Model(inputs=[input_target, input_context], outputs=output)
model.compile(loss='binary_crossentropy', optimizer='adam')

モデルの学習: Skip-gramモデルを学習させる。

model.fit([word_target, word_context], labels, epochs=10, batch_size=16)

この例では、簡単なSkip-gramモデルを構築し、テキストデータを使って学習している。実際のアプリケーションでは、より大規模なコーパスや適切なハイパーパラメータの調整が必要で、学習済みの埋め込みベクトルを利用してさまざまなNLPタスクに応用することもできる。

Skipgramの課題とその対応策について

以下に、Skip-gramの課題とその対応策について述べる。

1. 低頻度語の扱い:

課題: 低頻度の単語は、学習データに十分に現れず、その意味的な関係を正確に捉えることが難しい。

対応策:
サブサンプリング: 頻度が低い単語を学習時に無視することで、学習効率を向上させる。一般的に、頻度が \( f(w) \) の単語をサンプルする確率は \( P(w) = 1 – \sqrt{\frac{t}{f(w)}} \) として計算される(\( t \) はハイパーパラメータ)。

ネガティブサンプリング: 頻度の低い単語に対しても学習が行われるように、ランダムに選択したネガティブなサンプル(コンテキスト内の間違った単語)に対する損失を計算する。これにより、低頻度の単語に対する埋め込みが改善される。詳細は”ネガティブサンプリングの概要とアルゴリズム及び実装例“を参照のこと。

2. 複合語や固有名詞の扱い:

課題: Skip-gramは、単語レベルの表現を学習するため、複合語や固有名詞などの一意のトークンを正確に扱うことが難しい。

対応策:
サブワード(Subword)レベルの分割: 単語を小さなサブワード(部分単語)に分割して学習を行うことで、複合語や固有名詞の意味を捉えやすくする。これには例えば、Byte Pair Encoding(BPE)や”WordPieceの概要とアルゴリズム及び実装例について“で述べているWordPieceアルゴリズムなどがある。

3. 意味の多義性とポリシーモルフィズム:

課題: Skip-gramは、単語を一意に特定するため、単語の意味の多義性やポリシーモルフィズム(1つの単語が複数の意味を持つこと)を正確に表現することが難しい。

対応策:
多義性の考慮: 単語の意味を文脈に基づいて捉えることで、多義性に対処できる。例えば、単語の意味を周囲の単語によって特定する文脈ウィンドウを調整することが可能となる。

ポリシーモルフィズムへの対処: 単語の異なる意味を別々のベクトルで表現する手法がある。例えば、sense2vecなどの手法などになる。

4. 大規模なデータセットと計算量:

課題: Skip-gramは、大規模なデータセットを用いて学習する際に計算量が増大するため、学習に時間がかかる。

対応策:
ミニバッチ学習: 学習データを小さなバッチに分割して学習することで、メモリの効率的な利用や計算の並列化を行う。詳細は”ミニバッチ学習の概要とアルゴリズム及び実装例“を参照のこと。

分散学習: 複数の計算ノードを使用して学習を並列化することで、計算時間を短縮することができ、例えば、TensorFlowの分散学習フレームワークを使用することができる。

参考情報と参考図書

自然言語処理全般に関しては”自然言語処理技術“や”自然言語処理の概要と各種実装例について“を参照のこと。

基礎的な参考図書としては、近代科学社の一連のシリーズ自然言語処理システムをつくる形態素解析テキスト処理の実践情報抽出対話システム口コミ分析

実用という点では”実践 自然言語処理 ―実世界NLPアプリケーション開発のベストプラクティス

BERT入門ーープロ集団に学ぶ新世代の自然言語処理

機械学習エンジニアのためのTransformer ―最先端の自然言語処理ライブラリによるモデル開発“等が参考となる。

Natural Language Processing with Python

Deep Learning

Speech and Language Processing

Word2Vec Explained: Deriving Mikolov et al.’s Negative-Sampling Word-Embedding Method

Hands-On Machine Learning with Scikit-Learn, Keras, and TensorFlow

Neural Network Methods for Natural Language Processing

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