音楽の歴史と西洋と東洋の音楽

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音楽の歴史

音楽は、古代ではコミュニケーション手段であり、自然の音を模倣したり、儀式や祭りにおいて使用されることから始ったと考えられている。初期の楽器には、打楽器(石や木の棒)、笛(動物の骨や木製のもの)などが用いられてきた。

音とリズムとメロディとUX“でも述べているように音楽は人間の感情に影響を与えるものであり、時代が進み、文明が形作られてくると、音楽は、宗教や祭りなどの人間社会の文化を形成する上で重要なイベントと深く結びつくようになってくる。

たとえば、宗教における音楽の役割としては、キリスト教の聖歌、ヒンドゥー教のバジャン(賛美歌)、仏教の経文の詠唱などのように、多くの宗教儀式や礼拝において重要な役割を果たすようになってきた。そこでは、祈りや賛美を音楽で表現することで、信者の心を一つにし、神聖な雰囲気を作り出したり、信者に精神的な高揚感や内面的な安らぎをもたらす手段として使われ、神聖な体験を強化し、宗教的なメッセージを伝える手段となったり、信者同士の絆を深め、共同体意識を高める役割 を果たすようになっていった。

また、より原始的な体験である祭りにおいても、日本の祭りでの囃子(はやし)や、インドのディワリ祭でのダンス音楽などのように、音楽が祝祭の雰囲気を盛り上げる重要な要素となり、喜びや祝福の感情を表現し、参加者を一つに結びつける役割を担っている。これらの祭りで演奏される古くからのメロディーやリズムは、地域の伝統や文化を次世代に伝える重要な手段となったり、特定の楽器やメロディーが儀式や象徴的な意味を持っていた。

更に時代が進み、独自の文化が形成されていくことで、例えば古代ギリシャやローマにその起源を持ち、ヨーロッパ、中東、後にアメリカ大陸に広がった西洋文明と、中国、インド、日本、朝鮮半島などアジアを中心に発展した東洋文明では、異なる方向に音楽は進化していくこととなる。

西洋音楽

西洋音楽では、”「ソクラテスの弁明」と哲学とは何を目指すものなのかについて“にも述べている古代ギリシャにおいて、音楽理論の発展があり、音階や和声の基本概念が形成され、哲学者のピタゴラスは、音楽と数学の関係を研究するなど、音楽は教育や宗教儀式の一部として重要視され、幾何学を作り出した哲学者のピタゴラスなどによる音楽と数学の関係も研究されるようになった。

その後、西洋思想の根幹となる”キリスト教と聖書と関連する書物“でも述べているキリスト教が興ると、グレゴリオ聖歌などの宗教音楽が広まり、教会の礼拝において重要な役割を果たすようになり、民間の音楽としては、トルバドゥールやミンストレルなどの世俗音楽が広まり、歌や詩とともに演奏されるようになっていった。そこでは、恋愛や騎士道精神、物語、詩、民謡、さらには風刺的な内容を含んだ演奏がパフォーマンスと共に行われるようになっていた。

さらに時代が進み、”街道をゆく 南蛮のみち(1) ザビエルとバスクについて“や”街道をゆく 南蛮のみち(2) スペインとポルトガル“で述べているルネッサンスの時代(14世紀から17世紀)には、複数の旋律が同時に進行するポリフォニースタイルが確立され、楽曲の表現力が増した。それらに伴い楽器のバリエーションも増え、特にリュートやオルガンが広まり、演奏技術が向上していった。また、活版印刷術の発明により、楽譜が広まり、音楽の技術やスタイルがヨーロッパ全土に広がるようにもなっていった。

街道をゆく オランダ紀行“や”街道をゆく アイルランド紀行(1) 英国の旅“でも述べている宗教改革と市民文化の勃興、そして宮廷文化が発展したバロック時代には、ドラマティックな表現と感情表現を重視した音楽劇としてのオペラが生まれ、バロックオーケストラの基盤が形成され、バイオリン、チェロ、トランペットなどの楽器が重要な役割を果たすようになっていった。

バロック時代の音楽家としては、ヨハン・セバスチャン・バッハやゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、アントニオ・ヴィヴァルディなど挙げられ、彼の作るオペラやカンタータ、オラトリオ、協奏曲、組曲などは現代のクラシック音楽の礎となっている。

バロック時代の音楽は、後のモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンなどによるソナタ形式、交響曲などの明確な構造が確立された古典派音楽や、シューベルト、ショパン、シューマン、メンデルスゾーン、リスト、ワーグナー、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ベルリオーズなどによる個人の感情や自然を表現したロマン派音楽につながっていく。

これらの音楽はさらに、”ジャズの概要と機械演奏“で述べているジャズや、”ブルースの歴史とClojureによる自動生成“で述べているブルース、”ディス・イズ・ボサノヴァ“で述べているボサノヴァに繋がり、さらにロックや電子音楽へとつながっていく。

東洋音楽

西洋の音楽は、調性(キー)や和声(ハーモニー)に基づいており、主にメロディーと和声の関係に依存して、楽曲の形式においても、ソナタ形式、フーガ、交響曲など、構造が明確なものが多く、楽譜に従って演奏されることが一般的なものとなっている。これはギリシャ時代の数学的アプローチにもルーツを持っている。

それに対して、東洋の音楽は、西洋の音楽と比べ調性や和声の概念が異なり、スケール(音階)の使用が重要で、音楽の形式においても、即興や伝承が中心で、明確な楽曲の構造がないことが一般的となり、異なる進化をとげていった。

具体的には、西洋の音楽でのスケールである7音音階(ドレミファソラシ)が、例えばCメジャースケール(一般的な鍵盤の並び)において、ド(C)とレ(D)、レ(D)とミ(E)、ファ(F)とソ(G)、ソ(G)とラ(A)、ラ(A)とシ(B)の間が全音で、ミ(E)とファ(F)、シと(B)とド(C)の間が半音(黒い鍵盤がない)に対して

中国や日本などの東洋音楽では、ペタトニックスケールと呼ばれる半音階のない五音音階が使われている

これが中国では「宮・商・角・徴・羽」という音を基本としたスケールであり、西洋音楽でいうと「ド・レ・ミ・ソ・ラ」、日本では”ノベンヴァー・ステップスと武満徹とミュージック・コンクレート“でも述べているように「呂音階」と「律音階」などが使われ「ド・ミ・ファ・ソ・シ」の5音で構成されている。

これらは、メロディ、リズム、ハーモニィのような音の繋がりを重視するのではなく、音そのものや音の間の空間を用いることに重点がおかれており、西洋音楽の概念で聞こうとすると音楽とは異なったものとして感じられる。

これらは、音楽本来の人の感情に訴えるという目的から考えると、西洋とは異なった文化的背景に基づいた感情へのアプローチであるということができる。

同じ東洋でも、インドの音楽や中東の音楽では、西洋の12音階では表現できない微妙な音程(微分音)が使用されており非常に複雑なものとなっている。

これは、演奏者はその場でメロディやリズムを自由に展開し、スケールの選び方や音の使用も即興性に富んでいるという、インド音楽の特徴である即興演奏に基づいた特徴となっている。

このアプローチは、その時々のパーソナルな感情をフレキシブルに表現したいという目的に合致しており、音楽のフレキシビリティや即興性という視点は、”ブルースの歴史とClojureによる自動生成“で述べているブルースにおける音のハズレであるブルーノートやリズムのハズレであるスウィングやシンコペーション、あるいは”ジャズの概要と機械演奏“で述べているジャズにおける即興性を持ったコード進行や、アンサンブルでのインタラクション、あるいはコレクティブ・インプロヴィゼーションなどに見ることができる。

参考図書

参考図書としては以下のようなものがある。

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