シュバルツシルト時空とアインシュタイン=ローゼン橋とワームホール

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シュバルツシルト時空

シュバルツシルト時空(Schwarzschild spacetime)は、一般相対性理論において、球対称で回転しておらず、電荷を持たない天体の重力場を記述する解を表し、ブラックホールを構成するためのアインシュタイン方程式の初めての厳密解でもある。この解はカール・シュバルツシルトによって1916年に発見されたものとなる。

wikiより

シュバルツシルト時空の特徴としては、空間が完全に球対称で、どの方向から見ても物理的性質が同じである球対称性、重力源となる天体は回転していないと仮定され、天体が電荷を持たないと仮定されたものとなる。

数学的記述としては、以下のような時空のメトリック(距離の測り方)で記述される。

\[
ds^2 = -\left(1 – \frac{2GM}{c^2 r}\right)c^2 dt^2 + \left(1 – \frac{2GM}{c^2 r}\right)^{-1}dr^2 + r^2 (d\theta^2 + \sin^2\theta \, d\phi^2)
\]

変数の意味:
– \( ds^2 \): 時空の間隔(距離)。
– \( t \): 時間。
– \( r \): 重力源からの半径距離。
– \( \theta, \phi \): 球面座標の角度。
– \( G \): 重力定数。
– \( M \): 中心天体の質量。
– \( c \): 光速。

このシュバルツシルト時空により定義されるシュバルツシルト半径(Schwarzschild radius)は、以下のようなブラックホールの事象の地平面(Event Horizon)を定義する。

\[
r_s = \frac{2GM}{c^2}
\]

この式の意味、シュバルツシルト半径 \( r_s \) では、重力が非常に強くなり、光ですらその領域から脱出できず、。この半径を超えると、天体はブラックホールとして振る舞うことを表す。

シュバルツシルト時空の物理的性質としては、以下のものがある。

  • 外部時空: シュバルツシルト半径 \( r > r_s \) の領域では、通常の空間と似ており、時空は天体の質量によって歪んでおり、重力レンズ効果などが観測される。
  • 事象の地平面: シュバルツシルト半径 \( r = r_s \) の境界は、観測可能な宇宙とブラックホール内部を分けるポイントとなる。この境界を越えた物質や光は外に出ることができない。
  • 内部時空:  \( r < r_s \) の領域では、一般相対性理論が予測する極端な時空の歪みが発生し、特異点\( r = 0 \) において時空の歪みが無限大となり、現在の物理理論では記述が困難となる。

シュバルツシルト時空は、シンプルでありながら重力と時空の本質を捉えた重要な解であり、シュバルツシルト時空は、非回転ブラックホールのモデルとして利用されたり、天体周囲での物質や光の運動(軌道、赤方偏移など)を正確に記述したり、重力場による光の曲がりを予測するモデルとして扱われている。

ブラックホールのモデルは、この静的なシュバルツシルト時空の他に、電荷を考慮したライスナー=ノルドシュトロム時空をベースとしたもの、回転を考慮したケリー時空(Kerr spacetime)をベースとしたもの、さらにそれらを組み合わせたものの4種類がある。

ブラックホールは4種類?――宇宙はなぜブラックホールを造ったのか(5)より

アインシュタイン=ローゼン橋(Einstein-Rosen Bridge)

1935年、アインシュタインとローゼンは、一般相対性理論の解としてこのシュバルツシルト時空を研究しており、シュバルツシルトブラックホールの内部には、特異点と呼ばれる無限に高密度な点が存在し、アインシュタインとローゼンはこの特異点を回避できる別の数学的構造を発見した。その結果、ブラックホールと「別の時空」または「別の宇宙」を結ぶ橋のような構造が存在し得ると考えた。

この構造は、発見者の名前をとって「アインシュタイン=ローゼン橋」と呼ばれるようになった。この橋の入り口はブラックホールとして振る舞い、もう一方はホワイトホール(理論上の存在)として振る舞い、ブラックホールが物質やエネルギーを吸い込むのに対し、ホワイトホールはそれらを放出するものとして定義した。

What is the meaning of ‘Wormhole’ which is commonly found in SF works?より

この橋は、2つの異なる時空の領域を結ぶトンネルとして描かれてえり、通常の空間を通るよりも短い経路で、別の場所や時間に到達できる可能性が示唆されている。

このアインシュタイン=ローゼン橋は非常に不安定で、微小な擾乱でも崩壊すると考えられており、物質や光がトンネルを通過しようとすると、橋自体が崩壊するため、通行は現実的ではないとされいる。

また、ワームホールを安定させるためには、通常の物質ではなく「エキゾチック物質」(負のエネルギー密度を持つ仮想的な物質)が必要であるとも言われている。現在の物理学では、このような物質の存在は確認されていない。

更に、ホワイトホール自体が観測されたことがなく、その存在は完全に理論的なものとなっている。

このような課題に対して、最新の量子重力理論(一般相対性理論と量子力学の統合)を用いることで、新たな解釈や可能性が議論されており、最近の研究では、「アインシュタイン=ローゼン橋(ER)」と量子力学の「エンタングルメント(EPR)」の関係が注目されている。これは、量子もつれとワームホールが同じ物理現象の異なる表現である可能性を示唆する理論となる。

アインシュタイン=ローゼン橋は、ワームホールの初期のモデルとして理論物理学に重要な影響を与え、実際にこの構造が宇宙に存在するか、また利用可能かは不明だが、宇宙の基本構造や時空の性質を理解するための深遠な問いを提供したものとなっている。

映画やテレビの中でのワームホール

このような様々な理論と仮説を見える化する手段として”SFプロトタイピングとDXでの見える化“でも述べているSFプロトタイピングがある。

SFプロトタイピング(SF Prototyping)は、サイエンス・フィクション(SF)のアイデアやストーリーを利用して、新しい技術や未来の社会の可能性を探求する手法で、単なる物語創作に留まらず、未来のテクノロジーやその影響を現実的に模索するための強力なツールとして注目されたものとなっている。

ここではSFの想像力として、”『インターステラー』『ドクター・フー』『ファウンデーション』の宇宙。DNEG のスペース VFX ショーリール“より、理論物理学者であるキップ・ソーンの監修による『インターステラー』のワームホールや、ターディス(『ドクター・フー』の次元超越時空移動装置)ファウンデーション“で述べているファウンデーションのワームホールの移動シーンを述べている。

これらは、基本的には、何らかの高エネルギーでブラックホールを作成、そこに吸い込まれる形で移動を開始し、ホワイトホールが現れる形態となっている。

これらの共通の課題としては、ブラックホールの形成に関しては、何らかの技術的アプローチで可能になるにしても、任意の目的地に対してホワイトホールを生成させることが可能なのか、という点と、複数ブリッジがある時に、どのように選択するのか、という点にあるかと思う。

ホワイトホールの生成に関しては、人工的にブラックホールを作成しその構造を操作することで構築する、量子力学の不確定性を利用して時空の一部を目的地に結び付ける、負のエネルギー密度(例えばカシミール効果を増幅させたもの)を利用することで、出口を目的地に設定するなど、いくつかのアイデアが考えられている。

ワームホールの任意の選択に関しては、人工知能技術を使ってシミュレーションや予測して出口をもとめる、ワームホールの繋がっている先が高次元空間でそれらせの次元の中を航行する、ワームホールネットワークにタグ付けを行いそれらを指標に航行するものなどいくつかのSFでもアイデアが考えられている。

これらの実現に関しては、越えるべき壁が多々残っている。

参考図書

今回のテーマに関する理解を深めるための参考図書を以下に挙げる。

一般向け参考図書:

Black Holes & Time Warps: Einstein’s Outrageous Legacy

Time and Space: Unraveling the Mysteries of Relativity (Exploring the Cosmos: The Ultimate Guide to the Universe

専門的参考図書(大学レベル以上)

Quantum Field Theory in Curved Spacetime and Black Hole Thermodynamics

Quanta and Fields: The Biggest Ideas in the Universe

Introduction To General Relativity And Cosmology

Gravitation

テーマ別解説書:

Modern General Relativity: Black Holes, Gravitational Waves, and Cosmology

The Physical and Mathematical Foundations of the Theory of Relativity: A Critical Analysis

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