北方謙三『水滸伝』 — 宋の時代が生んだ「英雄の物語」と日本文化の源流 —

最近、WOWOWで北方謙三版『水滸伝』が放送されているのをきっかけに、


久しぶりにこの作品を思い出した。

実はつい最近、北方謙三の『水滸伝』シリーズを読破したばかりである。

水滸伝(全19冊+1)楊令伝(全15冊+1)岳飛伝(全17冊)

このシリーズはとにかく長い。

最初の水滸伝から始まり、楊令伝そして岳飛伝へと続く。

全部合わせると数十巻に及ぶ大河小説だ。

普通の歴史小説の感覚で読み始めると、途中でそのスケールに圧倒される。

だが読み進めていくうちに、不思議とこの世界から抜け出せなくなる。

北方謙三が描いた『水滸伝』

原典の水滸伝(中国古典小説)は、中国四大奇書の一つとして知られている。

北方謙三はこの古典を、単なる冒険譚ではなく、

政治、戦略、国家

をめぐる巨大な物語として描き直した。

物語の中心にあるのは梁山泊に集まった108人の豪傑たちである。

しかしこの物語は、単なる英雄物語ではない。

国家とは何か、秩序とは何か、人はどこまで自由に生きられるのか

そうした問いが、長い物語の中で繰り返し描かれる。

物語の舞台は宋の時代

『水滸伝』の舞台は宋代である。

宋は中国史の中でも、少し特殊な時代だ。

軍事国家というより文化国家

と言った方が近い。

都市が発達し、商業が広がり、文化が成熟した。

一方で、政治の腐敗、軍事の弱体化、社会格差

といった問題も抱えていた。

『水滸伝』の梁山泊は、
こうした社会の歪みの中から生まれた。

国家の外側に生まれたもう一つの秩序。

それが梁山泊である。

宋文化は日本に強い影響を与えている

この宋の時代は、実は日本文化にとっても非常に重要な時代だった。

この時代、中国では

  • 水墨画
  • 陶磁器
  • 文人文化

が発展した。

その中心にあったのが”禅とメタ認知とAI“等でも述べている

である。

この禅文化が日本に伝わり、後の日本文化に大きな影響を与える。

特に

茶道、枯山水、水墨画

などの文化は、この流れの中で生まれていった。

侘び寂びのルーツ

日本文化を語るとき、”荒(あら)と和(にぎ)と日本文化“でも述べている

侘び寂び

という言葉がよく出てくる。

静けさ 、簡素さ、不完全の美といった感覚である。

この感覚のルーツの一部は宋の文化にあると言われている。

例えば宋の陶磁器は、

派手な装飾ではなく、静かな色合い、簡素な形

を重視した。

この美意識は、後に日本の茶の湯の文化にもつながっていく。

激しい英雄物語と、静かな美意識

ここで面白いのは、

同じ宋の時代からまったく異なる二つの文化が生まれていることだ。

一つは

梁山泊の豪傑たちの、激しい反乱の物語。

もう一つは

禅や侘び寂びに代表される、静かな精神文化。

一方は戦いと自由の物語。

もう一方は沈黙と内面の文化。

しかしその両方が、同じ時代の空気の中から生まれている。

長い物語を読み終えて

北方謙三の『水滸伝』シリーズはとにかく長い。

しかし読んでいるうちに、

歴史、政治、文化、人間

がすべて一つの世界として見えてくる。

読み終えたとき、ただ一つの物語を読んだというより、

一つの時代を旅したような感覚が残る。

WOWOWでの放送を見ながら、
あの長い物語を思い出している人も
きっと多いのではないだろうか。

そしてもしまだ読んでいないなら、
少し長い旅になるが、
この物語の世界に入ってみる価値はあると思う。

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