That’s the Way of the World ― 世界は思い通りにならない。それでも前へ進む知性

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AIは世界の一部になる|予測・意思決定・Trust、そしてOptimizationからAdaptationへ

AIは世界の一部になる|予測・意思決定・Trust、そしてOptimizationからAdaptationへ

Earth, Wind & Fireの1975年の楽曲 “That’s the Way of the World” を聴いていると、不思議な感覚になる。

休日の夕方、柔らかな陽射しが少しずつ傾いていく時間をゆっくり過ごしているような、穏やかで温かな気持ちになる。

何かを急ぐ必要もなく、今日という一日が静かに暮れていく。

そんな時間に流れていてほしい音楽だと思う。

けれど、そのタイトルをそのまま読めば、

「それが、この世界というものだ」

という、ある種の達観にも聞こえる。

世界は、自分の期待通りには動かない。

努力したからといって、必ず成功するわけではない。

正しいことを言ったからといって、理解されるとは限らない。

誰かを信頼したからといって、その信頼が必ず返ってくるわけでもない。

思いがけない出来事によって、それまで考えていた未来が突然変わることもある。

それでも人は、誰かを信じ、何かをつくり、次の一歩を踏み出していく。

“That’s the Way of the World”という言葉には、そんな世界との向き合い方が込められているように思える。

世界は思い通りには動かない

私たちは、世界を単純な因果関係として理解したくなる。

努力
 ↓
成果

正しい判断
 ↓
成功

知識
 ↓
正解

けれど、現実はそれほど単純ではない。

同じ努力をしても、結果は違う。

同じ情報を持っていても、判断は違う。

同じ戦略を実行しても、市場環境、タイミング、人間関係、そして偶然によって結果は変わる。

現実の世界には、常に不確実性が存在している。

だから実際の世界は、

Action
 ↓
Interaction
 ↓
Uncertainty
 ↓
Outcome

に近い。

私たちは世界を完全に制御しているのではない。

世界と相互作用しながら生きている

そして、その相互作用によって、自分自身もまた変化していく。

AIもまた、不確実な世界を扱っている

これはAIについて考えると、さらに興味深い。

AIは、ときどき「答えを知っている機械」のように見える。

質問をすれば答える。

文章を書く。

画像をつくる。

未来を予測する。

けれど、AIも世界の正解を最初から知っているわけではない。

生成AIであれば、文脈から次にどの言葉が続く可能性が高いのかを推定する。

予測AIであれば、過去のデータから未来に何が起こる可能性が高いのかを推定する。

AIが扱っているのは、多くの場合、

TruthではなくProbability

である。

Observation
 ↓
Probability
 ↓
Prediction
 ↓
Decision
 ↓
Action

ただし、ここには重要な問題がある。

PredictionとDecisionは同じではない。

AIが「これが最も可能性が高い」と予測したとしても、それを実行すべきかどうかは別の問題だからだ。

未来が不確実である以上、確率が最も高い選択肢が、いつも最も良い選択肢とは限らない。

だからこそ、AIが社会の中で行動するようになるほど、「何を予測したか」だけではなく、「なぜその判断を行い、どのような結果になったのか」が重要になっていく。

知性とは、正解を当て続ける能力なのか

これまで知性は、しばしば「正しい答えを出す能力」として評価されてきた。

学校のテストでもそうだ。

コンピュータでもそうだ。

そしてAIでも、Benchmark Scoreによって性能を測ろうとする。

もちろん、正しい答えを出す能力は重要である。

しかし、現実社会で本当に必要な知性は、少し違うのではないだろうか。

世界には、そもそも正解が存在しない問題が大量にある。

会社を経営する。

新しい研究を始める。

新しい製品をつくる。

誰かと協働する。

新しい場所へ行く。

人生の方向を決める。

そこでは、

Correct Answer

を探し続けるのではなく、

Observe
 ↓
Decide
 ↓
Act
 ↓
Observe Again
 ↓
Adapt

という循環を続ける必要がある。

つまり知性とは、

正解を知っていることではなく、不確実な世界の中で適応し続ける能力

なのかもしれない。

Trustもまた、未来への期待である

人間社会を動かしているTrustについて考えてみても、同じことが言える。

Trustとは、相手について完全な情報を持っている状態ではない。

むしろ、未来が分からないからこそTrustが必要になる。

この人なら約束を守るだろう。

この会社なら責任を果たすだろう。

この仲間なら一緒に進めるだろう。

そしてこれからは、

このAI Agentなら、この範囲の仕事を任せられるだろう。

というTrustも生まれてくる。

そこには必ず不確実性がある。

つまりTrustとは、

まだ起きていない未来の行動に対する期待

でもある。

もし世界が完全に予測可能なら、Trustという概念そのものが必要なくなるかもしれない。

すべてが計算できるなら、信じる必要はないからだ。

不確実だからこそ、私たちは信じる。

そして信じるからこそ、他者と一緒に何かを始めることができる。

AIが進化しても、世界は完全には予測できない

AIがさらに進化すると、未来をかなり正確に予測できるようになるだろう。

需要予測。

故障予測。

顧客行動。

金融市場。

物流。

人間の行動。

しかし、どれほどAIが進化しても、世界そのものを完全に予測することは難しい。

なぜなら、予測をもとにした行動そのものが、次の世界を変えてしまうからである。

World
 ↓
AI observes
 ↓
AI predicts
 ↓
AI acts
 ↓
World changes
 ↓
AI observes again

AIは世界の外側から未来を眺めている存在ではない。

社会の中で使われ、判断や行動に関わるようになれば、AIもまた世界を変化させる側になる。

つまりAI自身も、世界の一部になっていく。

これは非常に重要な変化だと思う。

OptimizationからAdaptationへ

20世紀のシステム設計では、「最適化」が非常に重要な考え方だった。

最も効率のよい生産。

最も効率のよい物流。

最も効率のよい組織。

そしてAIにも、究極的にはすべてを最適化するような能力を期待したくなる。

しかし、環境そのものが変化し続ける世界では、一度見つけた最適解が永遠に最適であり続けることはない。

今日の正解が、明日の正解とは限らない。

だから、これから重要になるのは、

OptimizationではなくAdaptation

という考え方なのではないだろうか。

Optimization

Find the best answer
        ↓
Execute

ではなく、

Adaptation

Observe
 ↓
Decide
 ↓
Act
 ↓
Learn
 ↓
Adapt
 ↺

である。

知能とは、世界を完全に支配する能力ではない。

変化する世界との関係を更新し続ける能力なのだと思う。

“That’s the Way of the World”

休日の夕方。

少し傾いた陽の光の中で、“That’s the Way of the World”を聴く。

一週間の間に起きたことや、うまくいったこと、思い通りにならなかったことを、ぼんやり思い出す。

世界は、いつも自分の計画通りには動いてくれない。

もっと正確な予測があれば。

もっと多くのデータがあれば。

もっと優れたAIがあれば。

もっと完璧な仕組みがあれば。

すべてを制御できるのではないか、と私たちは考える。

でも、おそらく世界はそういう場所ではない。

予測できないことが起こる。

計画は変わる。

人は変わる。

技術も変わる。

社会も変わる。

そして、自分自身も変わっていく。

だから必要なのは、世界を完全に予測することではない。

世界が変わったときに、

もう一度観察し、もう一度考え、もう一度選び直せること。

Observe
 ↓
Understand
 ↓
Decide
 ↓
Act
 ↓
Learn
 ↓
Adapt
 ↺

人間もAIも、この循環から逃れることはできない。

そして、もしかするとそれこそが、

知性が世界の中に存在するということ

なのかもしれない。

世界は完全ではない。

未来は確定していない。

私たちの判断も、いつも正しいわけではない。

それでも、誰かを信じる。

何かを始める。

うまくいかなければ考え直す。

そして、また次へ進んでいく。

夕方の柔らかな光の中でこの曲を聴いていると、それでいいのではないかと思えてくる。

世界をすべて思い通りにする必要はない。

変わり続ける世界の中で、自分もまた変わりながら生きていけばいい。

That’s the way of the world.

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