なぜDecisionを研究するようになったのか ― シュレディンガーの問いへと続く旅 ―

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知識を扱うことから始まった

企業の知識をどう扱うか。

それが私の出発点だった。

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長い間、私たちは、

「知識を蓄積すれば賢くなる」

と思ってきた。

企業の中には膨大な知識が存在している。

過去の資料
会議録
マニュアル
設計書
メール
経験
ノウハウ

生成AIの登場によって、それらの知識を検索し、要約し、活用することは以前よりはるかに容易になった。

しかし、現場で繰り返し直面した問題があった。

「で、どうするのか?」

という問いである。

情報は見つかる。

過去事例も見つかる。

AIも提案してくれる。

しかし現場で求められていたのは、

情報そのものではなかった。

本当に必要だったのは、

状況を理解し、

何を重視し、

どのように行動するのかを決めることだった。

優先順位は何か。

リスクをどこまで受け入れるのか。

誰が責任を持つのか。

いつ行動し、

いつ立ち止まるのか。

知識は答えを与えてくれる。

しかし、

「どうするのか」

そのものは教えてくれない。

問題は知識の不足ではなく、

行動を生み出すための判断だった。

問題はKnowledgeではなく、Decisionだったのである。

Decisionを記録したかった

そこで自然に生まれたのが、

Decision Trace Model(DTM)

だった。

Event
↓
Signal
↓
Decision
↓
Boundary
↓
Human
↓
Execution
↓
Log

重要なのは、

何を知っていたかではない。

どのような状況で、

何を見て、

なぜその判断を行い、

誰が承認し、

何を実行し、

その結果どうなったのか。

そして、その経験が次の判断にどう還元されるのか。

つまり、記録したかったのは知識ではなく、

意思決定そのものだった。

Decisionとは何なのか

しかし、Decisionを追いかけているうちに、私はある疑問にぶつかった。

そもそも、

Decisionとは何なのだろうか。

なぜ人間は判断するのか。

なぜ同じ情報を見ても異なる結論になるのか。

なぜ経験が重要なのか。

なぜ目的が変わると、同じ情報の意味が変わるのか。

考えれば考えるほど、

Decisionとは単なる選択ではないことが見えてきた。

Decisionとは、

「目的を持った意味生成」

なのではないか。

外界の状態
内部状態
目的

これらが組み合わさることで、

情報は意味を持ち、

その意味から行動が生まれる。

つまり、

Decisionとは、

意味を生成し、

行動へ変換するプロセスなのである。

すると次の問いが現れた。

意味とは何か。

情報と意味は何が違うのか。

目的とはどこから生まれるのか。

私は自然と、

認知科学、

哲学、

生命科学へと足を踏み入れていった。

Terrence Deacon。

意味は単なる情報ではなく、

欠如や目的から生まれると考えた。

Incomplete Nature』。

Francisco Varela。

生命とは自己を維持し続ける自己生成系(Autopoiesis)であると考えた。

The Embodied Mind, revised edition: Cognitive Science and Human Experience

Evan Thompson。

心や知能は脳の中だけではなく、

身体と環境との関係の中で成立すると考えた。

Mind in Life』。

Daniel Dennett。

生命や知能を、

目的を持つシステムとして理解する

Intentional Stance を提唱した。

From Bacteria to Bach and Back: The Evolution of Minds

Paul Davies。

生命の本質は物質ではなく、

情報の流れや因果構造にあると考えた。

The Demon in the Machine』。

John Maynard Smith。

進化を情報の継承と選択のプロセスとして捉え、

生命を情報システムとして理解する基礎を築いた。

 Mathematical Ideas in Biology

シュレディンガーとの出会い

そして、その旅の先で出会ったのが、

エルヴィン・シュレディンガーの『What is Life?』だった。

彼が問うたのは、

生命とは何か、

という根源的な問いだった。

生命とは単なる物質なのか。

なぜ生命は秩序を維持できるのか。

なぜ自己を維持し続けることができるのか。

なぜ環境と相互作用しながら存在できるのか。

シュレディンガーは、

生命を単なる物質の集合ではなく、

秩序を維持し続ける情報システムとして捉えようとした。

私は生命を追いかけていた

そして私は、

あることに気付いた。

私はDecisionを研究していると思っていた。

しかし実際には、

生命を研究していたのである。

生命もまた、

外界を認識し、

意味を生成し、

行動し、

結果を学習し、

自己を維持している。

刺激
↓
知覚
↓
意味
↓
行動
↓
学習

この流れは、

Decision Trace Modelの構造と驚くほど似ていた。

Event
↓
Signal
↓
Decision
↓
Execution
↓
Log

DTMは企業のためのフレームワークとして生まれた。

しかし振り返ってみると、

それは生命の情報処理を社会へ拡張したものだったのである。

AIは生命になれるのか

そして、ここでさらに大きな問いが現れた。

現在のAIは、

巨大な知識生成器として発展している。

しかし生命は、

知識を生成するために存在しているわけではない。

生命は、

目的を持ち、

意味を生成し、

意思決定し、

自己を維持し、

環境と共進化する。

ならば、

本当に目指すべきAIとは何なのだろうか。

巨大な知識ベースなのか。

巨大な脳なのか。

それとも、

目的を持ち、

意味を生成し、

自己維持し、

学習し、

他者と協調しながら進化する、

新しい生命システムなのだろうか。

「What is Intelligence?」へ

シュレディンガーは、

「What is Life?」

を問うた。

そしてAI時代の私たちは、

新しい問いに向かい始めている。

「What is Intelligence?」

知能とは脳の中に存在するものなのか。

モデルの中に存在するものなのか。

あるいは、

人間とAI、

組織、

知識、

信頼、

経験、

関係の中から形成される現象なのか。

振り返ってみると、

Decision Trace Model。

Knowledge Infrastructure。

Trust Infrastructure。

Multi-Agent。

Coordination AI。

知能場。

Runtime Society。

これらはバラバラの研究ではなかった。

すべては、

「知能とは何か」

という一つの問いへ向かう長い旅の途中だった。

私はDecisionを研究しているつもりだった。

しかし、その旅は、

シュレディンガーが問いかけた

「What is Life?」

へと続いていた。

そして今、

その問いは、

「What is Intelligence?」

という新しい問いへと姿を変え始めている。

Chinoba — Runtime Society and Coordination Systems:
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