科学的思考(2)仮説検証の為の推論パターン

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科学的思考(2)仮説検証の為の推論パターン

前回述べた様々な事実の関係性をたどる手法(推論パターン)には、ある文や命題の集まりから別の命題を導く演繹法と、演繹方以外の推論手法として、帰納法、投射法、類比法、アブダクション法の4つの非演繹法がある。

科学的思考のレッスン

ここで演繹法は、「全ての魚類はエラを持つ」「ウナギは魚類である」という前提から「ゆえにウナギはエラを持つ」という結論(前提の持っていた真偽が結論まで持ち越され全体の情報量は増えない)になり、

帰納法は、例えば「白血球には核がある」「神経細胞には核がある」「上皮細胞には核がある」という前提から、「ゆえに、人体のあらゆる細胞には核がある」という結論を密引き出すものとなる。

投射法は、「白血球には核がある」「神経細胞には核がある」「上皮細胞には核がある」という前提から、「ゆえに、赤血球には核がある」という結論を得るものになり、

類比法は「二つの質量の間に働く引力は距離の二乗に反比例する」「プラスとマイナスの電荷の引き合う力は距離の二乗に反比例する」という前提から「質量と電荷は同じ法則に乗る」という推論を行うものになり、

アブダクションは「天王星の軌道はニュートン力学だとうまく当てはまらない」という前提から、「もう一つ近くに天体があればうまく計算が合う」という仮説をおいて説明するものになる。

4つの非演繹的な推論の共通点は、「蓋然的(probable)」であり、これは「必然的(necessary)」の反対語で、非演繹的な推論は前提になっている事柄が正しくとも、結論が必ずしも正しいとは限らないというものとなる。(演繹的推論は必然的であり、前提が正しければ必ず正しくなる) これは、非演繹的推論では結論において情報量が増えるということを意味する。

つまり人間は非演繹的推論を行うことによって、取り入れた情報から新たな情報を作り出すということが言え、それが「考える」という行為になる。

ここで情報量が増えない演繹法は何故使われるのか?というと、推論が複雑になると、本来含まれている情報を見通すことが困難にで、演繹法を用いることでそれらを機械的に見つけ出すことが可能となるというものがある。これは、たとえば集合論のZF公理系という物を考えた際に、集合についての様々な定理が演繹できるが、それらの定理の中でどんな命題がZFの公理の中に含まれ、何が含まれないかというものは見通すことは困難であるという例からも言える。

以上をまとめると、非演繹的推論を使うメリットは、見たものがどうなっているかを踏まえて、見ていないもの、あるいは見えないものがどうなっているかという仮説に基づいた思考で使えるのに対して、演繹的推論はある前提のうちに隠れているが、それに直感的にすぐ気づけないような情報を明示化するのに使うものであるということが言える。

科学的な考察では、これらを組み合わせて、まず非演繹的推論(例えばアブダクション等)より、仮説を引き出し、その引き出した仮説に対して演繹的推論をかけて、仮説の中に隠された実際に起こる事象の予測を行うという「仮説演繹法」というアプローチをするものとなる。

またこれらの推論を計算機を使って実行するアプローチもある。

ここで仮説演繹法で仮説(H)から推論された予測(P)について、予測(P)が当たったとしても、仮説(H)は確からしいとは言えるが、非演繹的な蓋然的な推論であることは変わらず、Hが確かであるとは100%は言い切れない。これは例えば「aが2ならば、aの2乗は4である」という推論に対して「aの2乗が4である」という事実があったとしても、「aは2である」とは限らない(aは-2でもある)ということからも確認できる。

仮説はいつまでも仮説であり、以下のような条件が満たされている時に「その仮説は確からしい」として受けられる。

  • それが既に知られている沢山のことを説明する
  • そこから摘出される様々な予測がどれも当たる
  • 他の既に受け入れられている仮説と矛盾しない
  • アドホック(場当たり的な)要素を含まない
  • 同じ事柄を説明する為の同じくらい有力な仮説がない

次回は、推論された仮説を検証する為にはどうすれば良いのかについて述べる。

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