プロジェクトヘイルメアリーとマクガイバーとフロンティア精神

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プロジェクトヘイルメアリーとマクガイバーとフロンティア精神

アンディ・ウィアーによる『プロジェクト・ヘイルメアリー』  は、2021年3月に出版され、世界中で大きな話題を呼んだSF小説となる。

「プロジェクトヘイルメアリー」では、以下のような形で物語が始まる。

ある日、主人公のライランド・グレースは目覚めると、記憶を失ったまま孤独な宇宙船に乗っていた。彼は自分が科学者であることを思い出し、そして地球を救うためのミッションに必要な情報を取得するために送り出されたことを思い出していく。

ここで彼は、たった一人で地球から遠く離れた星で、自らの目的を思い出しながら、地球を救うための方法を探し出す。またその過程で他の天体の生物との遭遇し、彼らの問題も解決しようとする。

このたった一人で何もない状態から仮説を立てて一つ一つ解決していくストーリーは、アメリカ社会が持つ「フロンティア精神」に裏付けされた困難な状況に直面しても挑戦し続ける精神や、一人でもやり通す姿勢、努力や創意工夫を重んじる文化に重ね合わせることができる。ここでのフロンティア精神とはアメリカの西部開拓時代に形成された、探究心や冒険心、挑戦する精神などを指す言葉となる。

また、アメリカの歴史や文化に深く根付いた宗教としてキリスト教があるが、このキリスト教の教えでは、愛、寛容、慈悲、正義、平和、自己犠牲などの価値観を強調したものであり、”キリスト教の核心を読む「アウグスティヌス」告白を読む“で述べているように、人生とは「間断のない試練」で、困難な状況に直面しても、自分自身を犠牲にして他人を愛することができ、同時に自己決定や個人主義を重視することができる思想となっている。この思想はフロンティアスピリットの持つ、勇気や自己犠牲、個人主義などの価値観とも一致するものであるとも言える。

つまり、この極めてアメリカ的な「フロンティア精神」や「キリスト教の思想」と重ね合わせることができるものが「プロジェクトヘイルメアリー」であり、アメリカにおいてそれが大きく受け入れられるのもそれはそうだね、ということとなる。ちなみに同じようなストーリーを持ったものが、同じアンディ・ウィアーによるSF小説「火星の人」  においても見られ、この小説も、ベストセラーとなるとともに、マット・デイモンが演じる映画となり、大きな話題となっている(この小説は、火星の遠く離れた未来を舞台に、火星探査隊の一員が一人火星に取り残され、火星での生存に必要な食料、水、酸素などの資源が尽きつつある中、自らの知識とスキルを駆使して、火星での生存を続け、自分自身を助けるためにさまざまな機器を修理し、作物を育てたり、通信機器を修復したりしながら、救助を待つという話が描かれている)。

『プロジェクト・ヘイルメアリー』も映画化が計画されており、2023年に公開される予定であることが報じられている。この映画はライアン・ゴズリングが主演を務めると言われている。

彼は小説の主人公であるライランド・グレースのイメージにピッタリだ。

このフロンティア精神は、禅の思想とも共通点がある。”禅の思想と歴史、大乗仏教、道の思想、キリスト教“で述べているように、禅の思想では探究心、自己克服、目的のための集中力、精神的な自由、そして内面的な成長に焦点を当てており、現在の状況に囚われず、常に前進することを目指すものとなる。このようなスタンスはフロンティア精神が持つそれと同じであり、2つの概念には重なる部分があることがわかる。

しかしながら、この2つには異なる点もある。それは、フロンティア精神は、個人主義と物質主義に重きを置き、競争的な社会に適応することを強調する一方で、禅の思想は、共同体や自然との調和を重んじ、自己を超えた状態を追求することを重視している点にある。これらの相違点は、2つの概念が発生した文化的背景や歴史的状況により生じたものだと考えることができる。

最後に、アメリカのフロンティア精神的なものが全面に出ていたテレビドラマをいくつか紹介したい。「大草原の小さな家」は1974年から1982年までアメリカで作成されたドラマで、西部開拓期に中西部を幌馬車で移動しながら暮らす一家を描いたまさにフロンティアスピリットをストレートにドラマ化したものとなる。

このドラマは日本語版が1975年から1982年にかけてNHKにより放映されており、最近ではHuluやAmazon Primeでも放映されている。

次に紹介するのが冒険野郎マクガイバー

これは、1985年から1992年にかけてアメリカで放送されたテレビドラマで、主演のリチャード・ディーン・アンダーソンによって創作されたものとなる。物語は、元アイスホッケー選手で、ベトナム戦争では爆発物処理班、またレーサーでもあるアンガス・マクガイバーが、彼の工学的な才能を駆使して、危機的状況から生き残るために様々なトリッキーな装置を作り出す様子を描いていたものとなる。彼は物理学化学工学を始めとした非常に幅広い科学的知識を誇り、「アーミーナイフダクトテープと機転があれば何でも出来る」とどんな困難な場面も乗り切る精神力を持っている、まさに「プロジェクトヘイルメアリー」や「火星の人」と同じようなドラマとなる。

このドラマは2016年から2021年に「MACGYVER/マクガイバー」としてリブート版も制作されている。

コメント

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