Human-in-the-loop が機能しない本当の理由 ―なぜ「最後に人間」は責任を失うのか、Human-as-Author への転換

Human-in-the-loop(HITL)は、
AI時代の“安全装置”として語られてきた。

  • 最後は人間が確認する

  • 人間が承認ボタンを押す

  • 重要な判断には人を介在させる

一見すると、
責任も判断も人間に残っているように見える。

だが現場では、
HITL はほとんど機能しない。

それどころか、
責任を失わせる装置として働くことが多い。


「最後に人間」が置かれた瞬間に起きていること

Human-in-the-loop の典型的な構図はこうだ。

  1. AIが判断を生成する

  2. スコア・確率・理由が提示される

  3. 人間が Yes / No を選ぶ

このとき、人間は
「判断している」ように見える。

だが実際には、

すでに決まった流れを、
追認しているだけ

になっている。


人は「作者」でない判断に責任を持てない

ここが決定的なポイントだ。

責任とは、

  • 結果を引き受けること

  • だが同時に

  • その判断を書いた当事者であること

を前提にしている。

HITL における人間は、

  • 評価関数を書いていない

  • 前提条件を選んでいない

  • 停止条件を決めていない

それでも最後に
「承認」だけを求められる。

このとき起きるのは、

形式的な責任と、
実質的な無力感の分離

だ。


なぜ「最後に人間」は判断を失うのか

理由は単純だ。

  • 判断の文脈を作っていない

  • 選択肢の構造を設計していない

  • 他の可能性を消した過程を知らない

人は、

自分が書いていない問いに、
本気で答えることはできない

Yes / No を押す行為は、
判断ではない。


HITL は「責任の押し付け合い」を生む

HITL が常態化した組織では、
必ず次の会話が生まれる。

  • 開発者:「AIの判断です」

  • 現場:「承認したのは人間です」

  • 経営:「プロセスは守られていた」

責任は分散し、
誰も“判断の作者”ではなくなる

これこそが、
HITL の最大の失敗だ。


問題は「人が入っていない」ことではない

ここで重要な反転がある。

問題は、

  • 人がループに入っていないこと

  • 人が承認していないこと

ではない。

人が“作者として入っていない”こと

が問題なのだ。


Human-as-Author とは何か

Human-as-Author(HAA)とは、

人間が判断の“最後”ではなく、
判断の“起点”と“構造”を書く立場

に立つことだ。

具体的には、人間が以下を引き受ける。

  • 何を評価対象にするか

  • 何を評価しないか

  • どこで判断を止めるか

  • どこから人に戻すか

  • 合意しない場合をどう扱うか

AIはその後で、

  • 計算する

  • 揺らぎを示す

  • 衝突を可視化する

役割を担う。


承認者から作者へ、立場が変わると何が変わるか

Human-as-Author の立場に立つと、
人の振る舞いは根本的に変わる。

  • 「なぜこの指標なのか」を説明できる

  • 合意しない結果を受け止められる

  • 例外が出ても慌てない

  • 止める判断を引き受けられる

なぜなら、

その判断が“自分の書いたもの”だから

だ。


AIは判断を代替しない。判断を書く人を露出させる

このブログを通して見えてきたことはAIは、

  • 判断を奪う存在ではない

  • 責任を持つ存在でもない

AIが本当にやっているのは、

誰が判断を書いたのかを、
逃げられなくすること

だ。

Human-in-the-loop は、
その露出を曖昧にする。

Human-as-Author は、
それを正面から引き受ける。


まとめ

ここまで言ってきたことをまとめると以下のようになる。

  • AIは判断できるが、引き受けられない

  • 最適化・確率・説明は判断を代替しない

  • 例外・衝突・不一致こそが価値を持つ

  • 停止条件は人が書くしかない

  • 合意しないことも成果である

  • 責任は「最後」ではなく「作者」に宿る

Human-in-the-loop は、
人を承認者にする。

Human-as-Author は、
人を判断の作者に戻す。

AI時代に失われつつあるのは、
人間の知性ではない。

「自分がこの判断を書いた」と
言える立場

だ。

それを取り戻す設計だけが、
PoCで終わらないAIを生む。

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