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プロンプトから「動くもの」をつくる具体化・制約・コンテキストを体験する、はじめてのAIアプリ開発講座
Books: 生成AI時代のラピッドプロトタイピング: Streamlitで学び、Dockerで育てる AI業務システム

生成AIを使う場面は、文章作成や要約だけではありません。
アイデアを整理し、必要な条件を伝え、画面や処理の形にしていくことで、専門的なプログラミング経験がなくても、小さなアプリケーションの試作まで到達できるようになっています。
しかし、AIに単に「アプリを作って」と依頼するだけでは、期待どおりのものにはなりません。
何を作るのか。
誰が、どの場面で使うのか。
どんな条件を守るべきか。
何を根拠に判断してよいのか。
こうした情報が不足していれば、AIはもっともらしいものを生成できても、使いやすく、目的に合ったものにはなりにくいのです。
本講座では、旅行プランナーや献立メーカー、学習計画メーカーといった身近な題材を使いながら、プロンプトを少しずつ改善し、実際に動くStreamlitアプリを作ります。
目的は、コードを暗記することではありません。
曖昧な希望を、AIが実装できる仕様へ育てる力を身につけること。
です。
なぜ「動くアプリ」を題材にするのか
プロンプトの書き方は、文章生成だけでも学べます。
たとえば、「旅行プランを考えてください」という依頼に対して、予算や同行者、興味、天候などの条件を加えれば、提案の質が変わることは理解できます。
ただし、画面として動くアプリを作ると、その違いがより明確になります。
入力項目は足りているか。
条件を変えると結果は変わるか。
利用者は迷わず操作できるか。
必要な情報がないとき、アプリはどう振る舞うべきか。
プロンプトの不足は、そのまま画面や動作の不足として現れます。
逆に、利用者・目的・制約・データを丁寧に伝えれば、アプリは具体性を持ち始めます。この体験を通じて、受講者は「プロンプトはAIへのお願い文ではなく、設計のための言葉である」ことを実感できます。
身近で選べる題材から始める
大学生、新入社員、非IT部門の社員など、多様な受講者を対象にする場合、最初から実務に寄せすぎた題材は必ずしも適切ではありません。
そこで本講座では、身近で想像しやすく、条件を加えるほど工夫が生まれる題材を用意します。
| 題材 | 作るアプリ |
|---|---|
| 旅行プランナー | 条件に合う日帰り観光プランを提案する |
| 献立メーカー | 食材・人数・時間から夕食を提案する |
| 学習計画メーカー | 目標と期限から学習計画を作る |
| カフェ選びアプリ | 場所や目的に合う候補を絞り込む |
| 防災持ち出し品チェック | 家族構成に応じた備蓄品を確認する |
| プレゼント提案アプリ | 相手や予算に応じた候補を表示する |
| オリジナル診断メーカー | 回答に応じた診断結果を表示する |
講座の冒頭で、参加者が題材を選んだり投票したりすることもできます。自分で選んだテーマの方が、「こうしたい」「ここが足りない」という改善の視点が生まれやすくなります。
90分で体験する、プロンプトからアプリまでの流れ
講座は、完成品を受け取るだけの時間ではありません。曖昧な依頼から始め、参加者自身が条件を加え、AIとの対話を通じてアプリを改善していきます。
1. 曖昧な依頼で、まず作ってみる
たとえば、旅行プランナーであれば、最初の依頼は次の程度です。
鎌倉への日帰り旅行プランを作るStreamlitアプリを作ってください。
行き先、予算、興味を入力でき、おすすめのプランを表示してください。
AIは、一定の形を持つアプリを作ってくれるでしょう。
しかし、ここで受講者に問いかけます。
- 誰のための旅行なのか
- 出発時刻は考慮するのか
- 雨の日はどうするのか
- 子ども連れや高齢者と一緒の場合はどうするのか
- 予算を超える候補は表示してよいのか
- 情報が足りないときは、何をすべきか
最初のアプリは、失敗ではありません。次の改善に必要な情報を発見するための出発点です。
2. 利用者と目的を具体化する
次に、「誰が、何のために使うのか」を加えます。
このアプリは、鎌倉を初めて訪れる人が、
日帰り旅行の候補を考えるために使います。
利用者はスマートフォンでも操作するため、
画面はシンプルにしてください。
入力項目は、出発時刻、予算、同行者、興味、
雨天時の希望としてください。
結果には、午前・昼食・午後の行程、
概算費用、注意点を表示してください。
この段階で、入力欄や結果表示は変わります。
「旅行プランを作る」という機能だけではなく、「初めて訪れる人が、短時間で判断できる」という目的が、アプリの設計へ反映され始めます。
3. 制約を加え、現実に使えるものへ近づける
続いて、アプリが守るべき条件を追加します。
次の制約を追加してください。
- 予算を超える提案は表示しない
- 高齢者と一緒の場合は徒歩移動を少なくする
- 子ども連れの場合は休憩場所を含める
- 雨天の場合は屋内または屋根のある場所を優先する
- 出発時刻が遅い場合は予定を詰め込みすぎない
- 条件が不足している場合は、確認が必要な項目を表示する
ここで受講者は、AIが「よさそうな答え」を出すことと、「条件に沿って判断すること」は別であると理解します。
また、アプリの振る舞いを、次の三つに分けて考えることもできます。
| 状態 | アプリの動き |
|---|---|
| Act | 条件がそろっているため、提案を表示する |
| Ask | 必要な条件が不足しているため、追加入力を求める |
| Stop | 実現が難しい条件のため、無理に提案せず理由を示す |
この考え方は、旅行や献立だけでなく、将来、業務でAIを利用するときにも役立ちます。
4. コンテキストを渡し、AIの判断範囲を定める
AIが適切に働くためには、判断の前提となる情報、すなわちコンテキストが必要です。
旅行プランナーなら、講座用に準備した観光地データだけを使うように指示します。
講座で用意した観光地データだけを使って提案してください。
データにない店舗、営業時間、料金を事実のように作らないでください。
各観光地には、名称、ジャンル、屋内・屋外、
想定滞在時間、費用、子ども連れ向けか、
高齢者向けかという情報を持たせてください。
ここで学ぶのは、情報を多く渡せばよいということではありません。
何を根拠にしてよいか、何を根拠にしてはいけないかを定めること。
これが、AIを適切に使うための重要な設計になります。
5. 実際に動かし、言葉で改善する
作成したアプリは、Streamlitで起動して確認します。
streamlit run app.py
起動後、参加者は画面を操作しながら、さらに改善点を考えます。
たとえば、次のような変更をAIへ依頼します。
次の改善をしてください。
- 予算をスライダーで選べるようにする
- 同行者をラジオボタンで選べるようにする
- 提案結果に、この提案になった理由を表示する
- 条件が足りないときは、必要な入力項目を具体的に表示する
- 最後に、人が確認すべき点を表示する
コードを直接書き換えなくても、変更の目的と期待する振る舞いを言葉で伝えれば、アプリを改善できます。
この「作る、動かす、直す」の繰り返しが、AIを使った新しい試作の進め方です。
講座で身につくこと
本講座を通じて、受講者は次の力を身につけます。
- 曖昧な依頼を、具体的な要件へ分解する力
- 利用者・目的・利用場面を言葉にする力
- 制約や例外条件を設計する力
- AIが使ってよいデータと判断範囲を定める力
- 実際に動く試作品を通じて、改善点を発見する力
- AIとの対話を通じて、アイデアを形にする力
プロンプトが長ければよいわけではありません。
大切なのは、AIが判断し、実装するために必要な情報が、適切に含まれていることです。
よいプロンプトとは、AIに正解を当てさせる文章ではない。
人が考えた目的・条件・判断を、AIと共有するための設計図である。
おわりに
生成AIの時代には、すべての人がプログラマーになる必要はありません。
一方で、自分の考えを整理し、目的を定め、必要な条件を言葉にし、AIと協力して小さく試す力は、多くの人に必要になります。
旅行、献立、学習計画といった身近なテーマから始めることで、受講者は身構えることなく、AIとの協働を体験できます。
そして、その経験はやがて、学びや仕事の場面で「何を作るべきか」「何をAIに任せ、何を人が確認すべきか」を考える力につながります。
プロンプトから、実際に動くものを作る。
その小さな成功体験が、AIを使いこなすための確かな最初の一歩になります。
Chinoba
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この記事は Chinoba Knowledge Base の一部です。
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