例外は失敗ではない ―例外処理をどう設計に組み込むか、例外が多いほど健全なシステムという視点

例外が多いシステムは、
「未完成」「不安定」「設計が甘い」
と思われがちだ。

だから多くのAI・業務システムでは、
例外を減らそうとする。

  • ルールを増やす

  • 条件を網羅する

  • ケースを潰す

だが、この発想こそが、
システムを壊す。


例外をなくそうとした瞬間、何が起きるか

例外を減らす設計は、
一見すると“賢く”見える。

  • 自動化率が上がる

  • 人手が減る

  • 判断が速くなる

だが現場では、
次の現象が必ず起きる。

  • ルールが肥大化する

  • 説明不能な分岐が増える

  • 「想定外」がより深刻になる

これは偶然ではない。


例外とは「世界の歪み」ではない

まず、前提をひっくり返そう。

例外とは、

現実が複雑であることの証拠

だ。

  • 人が想定どおり動かない

  • 状況が重なり合う

  • 文脈が変化する

世界が生きている限り、
例外は必ず生まれる。

例外が多いのは、
世界が壊れているからではない。
モデルが世界に追いついていないだけ
だ。


「例外=失敗」という誤解

例外が起きたとき、
システムはこう扱いがちだ。

  • エラー

  • 異常

  • フォールバック

つまり、

本流から外れたもの

として隔離する。

だが実際には、
例外こそが判断が必要な瞬間である。


判断が必要な場所は、必ず例外として現れる

これまでの書いたものを思い出してほしい。

  • 判断は計算では完結しない

  • 確率は曖昧さを保持する

  • 責任は人が引き受ける

この3つが同時に現れる場所はどこか。

それが、

例外処理

だ。

例外は、
「人が介在すべき境界点」を
正確に指し示している。


例外を減らすほど、判断は不可視化される

例外をロジックで潰すと、
何が起きるか。

  • 判断がコードの奥に隠れる

  • 誰が決めたのか分からなくなる

  • 責任の所在が曖昧になる

つまり、

例外を減らす設計は、
判断を隠す設計

なのだ。


健全なシステムほど、例外が“表に出る”

逆に、健全なシステムではどうなるか。

  • 例外が明示される

  • 境界条件が見える

  • 人の介入点がはっきりする

例外は、

システムが世界と接している場所

であり、
その数が多いほど、
世界を誠実に扱っていると言える。


例外処理を「設計」に組み込むとはどういうことか

例外を潰すのではなく、
居場所を与える

そのための設計視点は、
次のようになる。


1. 例外は「エラー」ではなく「状態」として扱う

  • failure ではなく state

  • 異常系ではなく判断待ち

  • 自動停止ではなく保留

例外=人の判断が必要な状態。


2. 例外は必ず「理由付き」で表に出す

  • なぜ例外になったのか

  • どの前提が外れたのか

  • 何が足りなかったのか

例外は、
設計のフィードバックでもある。


3. 例外はログではなく「対話」に渡す

  • ダッシュボードに出す

  • 判断者に説明する

  • 次の設計に反映する

例外は、
学習データ以前に
思考の材料だ。


例外が多いほど、AIは賢く“ならない”

重要なので、あえて逆を言う。

例外が多いからといって、
AIが賢くなるわけではない。

だが、

人間が、どこで考えているかは明確になる。

それこそが健全さだ。


例外は、設計者への問いである

例外が現れたとき、
問われているのはAIではない。

  • なぜこの判断を自動化したのか

  • なぜこの境界を選んだのか

  • なぜ人を外したのか

例外は、

設計者に返ってくる問い

だ。


まとめ

  • 例外は失敗ではない

  • 例外は世界の複雑さの証拠

  • 例外は判断が必要な場所を示す

  • 例外を潰すと責任が消える

  • 例外が多いほど、システムは誠実である

AI時代の設計とは、
例外をなくすことではない。

例外に、人が立つ場所を用意すること

それが、
PoCで終わらないシステムの条件だ。

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