プラントエンジニアリングオントロジーISO15926とAI技術との融合

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プラントエンジアリングとオントロジーについて

プラントエンジニアリングとは、化学工場や発電所などのプラント(工場)の設計・建設における技術的な業務全般を指す。プラントエンジニアリングでは、工場の運転に必要な機器や設備の選定、プロセスフローの検討、プロセス制御の設計、環境対策の対応など、多岐にわたる技術的課題が存在し、これらの課題を解決するためには、機械工学、電気工学、化学工学、土木工学、計算機科学、制御工学などの専門知識が必要となる。

また、プラントエンジニアリングには、安全性や環境保護などの重要な要素もある。工場の建設や運転には、爆発や火災、漏洩などの危険性が伴う。そのため、安全性を確保するために、設備の選定やレイアウト、センサーの設置などの工夫が必要であり、また、工場から排出される廃棄物や汚染物質についても、環境保護に配慮した設計が求められる。

オントロジーは、ある特定の領域における概念や関係性を形式的に定義したものであり、その領域における知識共有や情報の統合に役立つものであり、プラントエンジニアリングにおいても、オントロジーを使用することで、設計情報や技術情報の共有や、プラントの自動化による運転監視・制御などが可能になり、プラント内の機器や装置を表すオブジェクトや、それらの機能やパラメータを表すプロパティ、さらには機器や装置間の関係性を表す関連性などを、オントロジー上で定義することができるようになる。

これにより、設計情報の整理や検索、システム間のデータ共有、自動化による運転監視・制御などが容易になり、生産性や安全性の向上につながる。また、オントロジーは、設備やプロセスの変更に伴い、既存のオントロジーを修正して、新しい状況に適合する際の設備やプロセスの変更・改修などの際にも役立つ。

ここでは、このプラントエンジニアリングとオントロジーに関して「Ontology Modeling in Physical Asset Management」の第一章「ISO15926」をベースに述べる。

プラントエンジニアリングオントロジーISO15926

ISO15926は元々「産業オートメーションシステムと統合—石油およびガス生産施設を含むプロセスプラントのライフサイクルデータの統合」という目的の為に構築されたデータ統合、交換、共有のためのプラットフォームとなる。内容としてはPart1から始まりPart13まで規定されている規格で、Part4からPart8にかけてオントロジーモデリング関連の記述がある。

主に利用されているのは、米国、欧州のプラントエンジニアリングの企業で、米国ではFIATECH(Fully Integrated & Automated Technologies)が、欧州ではPSOC Caesar Association(PCA)がオントロジーだけではなく、それらを活用したシステムを提供する形となっている。オントロジーデータの形としてはnameless nodeを多用した形態となり、概念をそのまま落とし込むという形よりは、データ相互運用性とフレキシビリティ担保に重点を置いた形となる。データの規模としては大規模なものが構築されており、siemenceのXML PLMと共に、製造業での物理的資産についてのオントロジー構築時に参考となる資料となる。

目次は以下となる。

1.1 Introduction 
        (イントロダクション)
   1.2 The ISO15926
    (ISO15926) 
       1.2.1 Why ISO15926 
         (何故ISO15926なのか)
       1.2.2 The History 
         (その歴史)
   1.3 Part2: The Data Model 
     (Part2:データモデル)
   1.4 Part4: The Initial Reference Data 
     (Part4:初期のリファレンスデータ)
   1.5 Part7: The Template Methodology 
     (Part7:テンプレートの利用)
   1.6 Reference Data
     (参考データ) 
   1.7 Object Information Model(OIM) 
     (オブジェクト情報モデル(OIM))
   1.8 Part8:The Implementation
     (Part8: 実装)
       1.8.1 RDF and OWL 
         (RDFとOWL)
       1.8.2 Data Flow 
         (データフロー)
       1.8.3 Storage 
         (ストレージ)
       1.8.4 Part9:The Facade and SPARQL 
         (Part9:ファサードとSPARQL)
       1.8.5 Peer-to-Peer Inferencing 
         (P2Pの推論)
   Appendix A:Life-Cycle Activities
 (付録A:ライフサイクル)
ISO15926をどのようにして活用するか

ISO 15926は、上述のように、情報の統合とデータの相互運用性を支援するための国際的な標準となり、異なる業界やドメインで使用される情報を一貫して表現するための枠組みを提供している。以下に、ISO 15926の活用方法について述べる。

  • データ統合と相互運用性の向上: ISO 15926は、異なるシステムやアプリケーション間でのデータの相互運用性を向上させるための基準を提供する。これにより、異なるデータフォーマットやデータモデルを持つシステム間での情報の共有や統合が容易になる。
  • プロジェクトライフサイクルの効率化: ISO 15926は、プラント設計や建設、運用、保守などのプロジェクトライフサイクル全体での情報の一貫性と統合をサポートしている。これにより、異なるフェーズやステークホルダー間での情報の連携や共有が容易になる。
  • ナレッジマネジメントの改善: ISO 15926は、情報の一貫性と相互運用性を通じて、組織内のナレッジマネジメントを向上させることができる。これにより、組織内の異なる部門やチーム間での情報共有や知識の再利用が容易になる。
  • システム統合の促進: ISO 15926は、異なるシステムやデータベース間での情報の一貫性を確保するための共通のデータモデルを提供している。これにより、異なるシステムを統合し、シームレスな情報フローを実現することができる。
  • データ品質の向上: ISO 15926は、データの品質を向上させるための基準を提供している。ISO15926を用いることで、情報の一貫性、正確性、完全性などの観点からデータを検証し、品質を確保することができるようになる。

ISO 15926の具体的な活用方法は、業界やプロジェクトの要件に応じて異なるが、組織内での標準化やデータモデリングの取り組み、業界間での情報交換のためのデータフォーマットの適用などが一般的な活用方法となる。

ISO15926にAI技術を組み合わせた事例について

ISO 15926とAI技術を組み合わせることにより、以下のような事例が考えられる。

  • データ品質管理: ISO 15926はデータ品質の向上をサポートするが、AI技術を活用することで、自動的にデータの品質を評価、監視、改善するシステムを構築することができる。これは、AIアルゴリズムを使用してデータの異常値や不整合を検出し、修正や補完のための自動化プロセスを実行することにより実現できる。
  • 自動データマッピング: 異なるデータソースやデータモデル間でのデータマッピングは、ISO 15926の適用において重要な課題となる。これにAI技術を適用することで、データの自動マッピングや変換を行うツールやシステムを開発することが見込まれる。具体的には、機械学習アルゴリズムを使用して、データの構造や意味を解析し、自動的に対応するISO 15926の概念にマッピングすることが可能となる。
  • ナレッジエンリッチメント: ISO 15926は情報の一貫性を実現するための枠組みを提供しるが、AI技術を組み合わせることで、情報の豊かさや洞察を向上させることができる。これは、自然言語処理(NLP)や知識グラフの技術を活用して、ISO 15926のデータと関連情報を結びつけ、関連するドキュメントや知識ベースからの情報を抽出することで実現できる。
  • システム統合と自動化: ISO 15926を利用したプロジェクトやシステムの統合は、多くの作業を要する場合がある。これにAI技術を適用することで、ISO 15926に準拠したデータの自動生成や更新、システム間のデータフローの自動化を実現することが見込まれる。具体的には、データエンリッチメントのためのAIアルゴリズムや自動化されたデータ検証ツールを開発することで、ISO 15926データの品質管理や効率的なシステム統合を実現するようなものが考えられる。
SO15926のpythonによる実装例

ISO 15926の実装は、複雑であり、特定の要件や目的に基づいて異なるアプローチが取られることがある。以下に、PythonでのISO 15926の実装の一例を示すが、この例は単純化されたものであり、実際の要件に応じてカスタマイズする必要がある。

# 必要なライブラリのインポート
import rdflib

# RDF グラフの作成
graph = rdflib.Graph()

# RDF データのロード
graph.parse('iso15926.ttl', format='turtle')

# クエリの作成
query = """
SELECT ?s ?p ?o
WHERE {
  ?s ?p ?o.
}
"""

# クエリの実行
results = graph.query(query)

# 結果の表示
for row in results:
    subject = row.s
    predicate = row.p
    object = row.o
    print(f"Subject: {subject}, Predicate: {predicate}, Object: {object}")

この例では、rdflib ライブラリを使用してISO 15926のRDFデータを操作している。ここではまず、Graph オブジェクトを作成し、parse メソッドを使用してRDFデータを読み込んでおり、次に、クエリを作成している。この例のケースでは、すべてのトリプルを取得するシンプルなクエリを作成していますが、必要に応じてクエリをカスタマイズすることができる。

最後に、作成したクエリを query メソッドに渡して実行し、結果を取得する。結果はイテレーションを使用して取得し、各トリプルの主語、述語、目的語を表示している。

コメント

  1. […] Chapter1 ISO15926                   (ISO15926) Chapter2 Ontological Analysis and Engineering Standards: An Initial Study of IFC                  (オントロジー分析とエンジニアリング標準:IFCの初期研究) Chapter3 FMEA, HAZID, and Ontologies                   (FEMA、HAZID、及びオントロジー) Chapter4 Ontology Development and Optimization for Data Integration and Decision-Making in Product Design and Obsolescence Management (プロダクトデザインとオブソーズメントマネジメントにおけるデータ統合と意思決定のための                    オントロジー開発と最適化) Chapter5 Fault Diagnosis System Based on Ontology for Fleet Case Reused (オントロジーに基づいた故障診断システム、フリートケースの再利用) Chapter6 Integrating Cultural and Regulatory Factors in the Bowtie: Moving from Hand-Waving to Rigor (文化的要素と規制的要素を統合したBowtie。ハンドライティングから厳密化へ) Chapter7 Addressing Uncertainty in Estimating the Cost for a Product- Service-System Delivering Availability: Epistemology and Ontology (可用性を実現する製品-サービス-システムのコストを見積もる際の不確実性への対応。                   エピステモロジーとオントロジー) Chapter8 Ontology-Based Knowledge Platform to Support Equipment Health in Plant Operations (オントロジーベースの知識プラットフォームによるプラント運用における機器の健全性支援) […]

  2. […] プラントエンジニアリングオントロジー(ISO15926) […]

  3. […] これらのアプローチにより、「プラントエンジニアリングオントロジーISO15926」や「故障リスク解析とオントロジーについて(FEMA、HAZID)」、「企業内データへのオントロジーの適用」に述べられているようなプラント、故障解析、エンタープライズの知識表現(オントロジー)と組み合わせることで、インダストリー4.0、スマートシティ、スマートビルディング等のリアルタイムのセンサーアプリケーションを構築することができる。 […]

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  5. […] それらの技術に加えて近年の最新IT技術であるセマンティックウェブ技術やIOT技術、ストリーミング推論技術を用いたスマートファクトリー技術を適用することで運用の効率化が行え、更にリスク解析技術と融合されたICT技術を用いることで更なる安全性の追求ができるものと考えられる。 […]

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