異常検知技術の概要と各種実装

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異常検知技術の概要と応用例

<概要>

異常検知技術(Anomaly Detection)は、データセットやシステムの中で異常な振る舞いやパターンを検出するための手法となる。異常検知では、通常のデータの振る舞いやパターンをモデリングし、それとの乖離を評価して異常を検出するしくみで、異常とは、予期しないデータの出現や異常な振る舞いを指し、正常データとの差異や外れ値として捉えるものとなる。異常検知は、教師あり学習や教師なし学習双方の手法で行われる。

<異常検知の応用例>

異常検知技術には以下のような応用がある。

  • ネットワークセキュリティ: 異常検知は、ユーザーのアクセスパターンや通信の異常な振る舞いを検知し、異常なアクティビティを特定することが目的として、ネットワークトラフィックやログデータを監視し、サイバーセキュリティ攻撃や侵入を検出するために利用される。
  • システム監視: 異常検知は、システムの正常な動作から逸脱した挙動や障害を検出するために利用される。これは例えば、サーバーログやセンサーデータを監視し、異常なパフォーマンスや予測不可能なイベントを検知し、障害や異常な動作を早期に検出し、メンテナンスやトラブルシューティングに役立てるような目的で使われる。
  • 製造業: 異常検知は、製造プロセスの品質管理やトラブル検出に応用される。その目的としては、センサーデータや製造ラインのパラメータを監視し、製品の異常や欠陥を検出することで、これにより品質改善やリコールの予防などが可能になる。
  • 医療診断: 異常検知は、患者の生体データや医療画像を解析し、異常な病変や疾患を検出するなど、医療診断においても重要な役割を果たしている。これには、心電図データの異常検知による心臓疾患の早期検出やリスク評価などがある。

次に異常検知技術で用いられるアルゴリズムについて述べる。

異常検知技術に用いられるアルゴリズムについて

異常検知技術には、さまざまなアルゴリズムや手法が使用されている。以下にそれらの中で代表的なものについて述べる。

  • 統計的異常検知:
    • 異常スコア: データの統計的特性を使用して、異常スコアを計算し異常を検出する。代表的な手法には、Zスコアや外れ値スコアなどがある。
    • トラブルシューティングチャート: データを制御限界や統計的な予測帯域と比較して、異常を検出する。
  • 教師あり異常検知:
    • サポートベクターマシン (SVM): 正常データと異常データを分類する識別モデルを構築し、未知のデータを分類して異常を検出する。
    • ランダムフォレスト: 複数の決定木を組み合わせて、データの異常性を検出するモデルを構築する。
  • 教師なし異常検知:
    • 密度推定: データの分布を推定し、異常データが低密度領域に存在すると仮定して異常を検出する。代表的な手法には、カーネル密度推定やガウス混合モデルなどがある。
    • クラスタリング: データをクラスタに分割し、新たなデータがどのクラスタに所属するかに基づいて異常を検出する。代表的な手法には、k-meansやDBSCANなどがある。
  • 深層学習ベースの異常検知:

以下に上記のアルゴリズムの具体的な実装例について述べる。

異常スコアの検出のpythonによる実装例

異常スコアを検出するには、具体的なアルゴリズムやデータの特性によって異なる実装方法があるが、以下に一般的な異常スコアの検出を行うPythonの実装例について述べる。

import numpy as np

def calculate_anomaly_score(data):
    # 正規化などの前処理が必要な場合はここで行う

    # 平均と標準偏差の計算
    mean = np.mean(data)
    std = np.std(data)

    # 異常スコアの計算
    anomaly_scores = np.abs((data - mean) / std)

    return anomaly_scores

# テストデータ
data = [1, 2, 3, 4, 5, 100]

# 異常スコアの計算
anomaly_scores = calculate_anomaly_score(data)

# 結果の表示
for i, score in enumerate(anomaly_scores):
    print(f"データ: {data[i]}, 異常スコア: {score}")

上記の例では、与えられたデータの各要素に対して異常スコアを計算している。これはまず、データを正規化したり前処理を行う場合には、適切な前処理ステップを追加し、その後、データの平均と標準偏差を計算し、異常スコアを計算するものとなる。異常スコアは、データが平均からどれだけ逸脱しているかを標準偏差で正規化した値として計算される。実行結果では、各データの値とそれに対する異常スコアが表示され、異常スコアが高いほど、データが異常と見なされる可能性が高くなる。

異常スコアの検出方法は問題やデータの特性によって異なるため、適切なアルゴリズムやパラメータの選択が重要であり、具体的な異常検知の要件に基づいて、さまざまな手法やアルゴリズムを試してみることが推奨される。

教師あり異常検知のpythonによる実装

教師あり異常検知では、正常データと異常データのラベル付けが必要となる。以下に、サポートベクターマシン(SVM)を使用した教師あり異常検知のPython実装例を示す。

from sklearn import svm

# 正常データ
normal_data = [[0, 0], [1, 1], [2, 2], [3, 3]]
# 異常データ
anomalous_data = [[2, 2], [3, 3], [10, 10]]

# データを結合してラベル付けする
X_train = normal_data + anomalous_data
y_train = [0] * len(normal_data) + [1] * len(anomalous_data)

# SVMモデルの構築と学習
model = svm.OneClassSVM()
model.fit(X_train)

# 新しいデータの異常スコアを予測
new_data = [[4, 4], [5, 5]]
anomaly_scores = model.decision_function(new_data)

# 結果の表示
for i, score in enumerate(anomaly_scores):
    print(f"データ: {new_data[i]}, 異常スコア: {score}")

上記の例では、正常データと異常データを準備し、それぞれにラベルを付けている(正常データはラベル0、異常データはラベル1)。その後、SVMのOneClassSVMクラスを使用してモデルを構築し、学習データを使って学習を行い、これに新しいデータを入力として与え、decision_functionメソッドを使用して異常スコアを予測している。異常スコアは、データが正常データからどれだけ外れているかを示す値となり、異常スコアが負の値に近いほど、データは異常と見なされ、最後に、結果を表示します。各データの値とそれに対する異常スコアが表示される。

異常検知の方法やアルゴリズムは、データの特性や異常の定義によって異なる場合がある。適切なアルゴリズムやパラメータを選択するためには、具体的な要件とデータセットに合わせて調整する必要がある。

教師なし異常検知のpythonによる実装

教師なし異常検知では、正常データのみを使用して異常を検出するものとなる。以下に、One-Class SVMを使用した教師なし異常検知のPython実装例を示す。

from sklearn import svm

# 正常データ
normal_data = [[0, 0], [1, 1], [2, 2], [3, 3]]

# データを学習に使用する
X_train = normal_data

# One-Class SVMモデルの構築と学習
model = svm.OneClassSVM(nu=0.1)  # nuパラメータは異常データの割合を指定
model.fit(X_train)

# 新しいデータの異常スコアを予測
new_data = [[2, 2], [4, 4]]
anomaly_scores = model.decision_function(new_data)

# 結果の表示
for i, score in enumerate(anomaly_scores):
    print(f"データ: {new_data[i]}, 異常スコア: {score}")

上記の例では、正常データのみを使用して学習データを構築している。One-Class SVMモデルは、正常データがデータ空間内にあると仮定し、それ以外のデータを異常として識別することを試みる。nuパラメータは異常データの割合を指定し、適切に調整する必要がある。これに新しいデータを入力として与え、decision_functionメソッドを使用して異常スコアを予測する。異常スコアは、データが正常データからどれだけ外れているかを示す値で、異常スコアが負の値に近いほどデータは異常と見なされる。最後に、結果を表示します。各データの値とそれに対する異常スコアが表示される。

異常検知の方法やアルゴリズムは、データの特性や異常の定義によって異なる場合があり、適切なアルゴリズムやパラメータを選択するためには、具体的な要件とデータセットに合わせて調整する必要がある。

深層学習ベースの異常検知のpythonによる実装

深層学習を使用した異常検知では、一般的にオートエンコーダ(Autoencoder)が使用される。以下に、Kerasを使用した深層学習ベースの異常検知のPython実装例を示す。

import numpy as np
from tensorflow import keras

# 正常データのみを使用してモデルを学習
X_train = ...  # 正常データの特徴量

# オートエンコーダのモデルを構築
input_dim = X_train.shape[1]
encoding_dim = 32  # エンコーディング次元数
model = keras.Sequential([
    keras.layers.Dense(encoding_dim, activation='relu', input_dim=input_dim),
    keras.layers.Dense(input_dim, activation='sigmoid')
])
model.compile(optimizer='adam', loss='mse')

# モデルの学習
model.fit(X_train, X_train, epochs=50, batch_size=32, verbose=0)

# テストデータの異常スコアを予測
X_test = ...  # テストデータの特徴量
X_pred = model.predict(X_test)
mse = np.mean(np.power(X_test - X_pred, 2), axis=1)  # 平均二乗誤差(異常スコア)

# 結果の表示
for i, score in enumerate(mse):
    print(f"データ: {X_test[i]}, 異常スコア: {score}")

上記の例では、正常データのみを使用してオートエンコーダモデルを学習する。オートエンコーダは、データを低次元の表現(エンコード)に変換し、再構築(デコード)するモデルです。学習では、入力データを自身に再構築するように学習させる。

テストデータを入力として与え、モデルによって再構築されたデータとの平均二乗誤差(MSE)を計算し、MSEは異常スコアとして使用され、再構築誤差が大きいほどデータは異常と見なされる。そして、最後に、結果を表示し、各データの値とそれに対する異常スコアが表示される。

深層学習モデルの実装では、データの前処理やモデルのアーキテクチャ、ハイパーパラメータの選択などが重要となる。それらは具体的な要件とデータセットに合わせて、適切な調整を行う必要がある。

参考情報と参考図書

上記以外の様々な異常検知技術に関しては”異常検知と変化検知技術“に述べているそちらも参照のこと。また、参考図書としては”機械学習プロフェッショナルシリーズ「異常検知と変化検知」”や

Pythonによる異常検知

Pythonと実例で学ぶ機械学習・識別・予測・異常検知等がある。

コメント

  1. […] 異常検知技術の概要と各種実装 […]

  2. […] 異常検知技術の概要と各種実装 […]

  3. […] などの医療画像の解析に使用され、異常検出、腫瘍検出、疾患の診断などのタスクで役立てられている。異常検出技術に関しては”異常検知技術の概要と各種実装“も参照のこと。 […]

  4. […] などの医療画像の解析に使用され、疾患の診断、異常検出、腫瘍検出などのタスクで有用な手法となる。異常検出技術に関しては”異常検知技術の概要と各種実装“も参照のこと。 […]

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