確率が出ると、人は安心する。
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成功確率 82%
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リスク 18%
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信頼度 0.91
数字が並ぶと、
世界が少しだけ理解できた気になる。
だがここに、
AI時代特有の大きな誤解がある。
確率は、不確実性を減らすための道具ではない。
なぜ確率は「安心」を生むのか
確率が好まれる理由は単純だ。
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はっきりして見える
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比較できる
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決断しやすい
確率は、
曖昧な世界に境界線を引いてくれる。
だが、その境界線は、
現実に存在していたものではない。
確率がやっているのは「縮約」である
確率とは何か。
それは、
不確実な状態の集合を、
ひとつの数値に押し込めたもの
だ。
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未知の要因
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測れていない変数
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未来の分岐
これらはすべて、
確率の裏側に折り畳まれる。
確率は、
世界を理解したのではない。
世界を単純化しただけだ。
AIにおける確率は「判断の代替」になりやすい
AIが確率を出すとき、
多くの場合それはこう使われる。
「確率が高い方を選ぶ」
これは計算としては正しい。
だが判断としては、危うい。
なぜなら、
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0.6 と 0.4 の差が
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本当に意味を持つかどうか
は、数値の外側で決まるからだ。
確率は「迷いを消す」ためのものではない
人が確率に期待しているのは、
「もう迷わなくてよくなること」
だ。
だが確率の本来の役割は、
その逆に近い。
「まだ迷うべきだ」という状態を、
正確に示すこと
が、確率の価値である。
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確率が割れている
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分散が大きい
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信頼区間が広い
これは、
判断を保留すべきサイン
だ。
不確実性を消すと、判断は暴走する
確率を「答え」として扱うと、
次のことが起きる。
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例外が見えなくなる
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不安要素が黙殺される
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「想定外」が量産される
確率は低い。
だから考えない。
この態度が、
最も危険だ。
確率は「曖昧さを残すための道具」である
ここで視点を反転させる。
確率とは、
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決めるための数値ではなく
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決めきれなさを保存する表現
だと考える。
すると、
設計の発想が変わる。
「曖昧さを保持する設計」とは何か
曖昧さを消すのではなく、
扱える形で残す。
そのための設計には、
いくつかの要点がある。
1. 単一の確率で終わらせない
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分布を出す
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区間を示す
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複数シナリオを併置する
ひとつの数字にまとめない。
2. 確率の“意味”を明示する
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何に対する確率か
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どの前提で計算したか
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何を含んでいないか
確率は前提つきの仮説である。
3. 確率が高いときほど、人を介在させる
逆説的だが重要だ。
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高確率
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高スコア
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高信頼
のときほど、
「本当にそれで良いのか?」
を問う。
確信が最大の盲点になる。
確率は、判断を助けるが、代替はしない
確率は強力だ。
だがそれは、
判断を不要にする力ではない
むしろ、
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迷いを可視化し
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未知を意識させ
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決断の重みを示す
ための道具だ。
まとめ
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確率は不確実性を消さない
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確率は世界を縮約する
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数値は判断を代替しない
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曖昧さは、消すものではなく保持するもの
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判断は、確率の外側で行われる
AIは確率を出せる。
だが、
その確率をどう引き受けるかは、
人間にしか決められない。
具体的な機械学習のアプローチに関しては、本ブログの”機械学習における確率的最適化の概要と実装“や”機械学習における確率的アプローチ“に述べてある。実務に応用しようと思う方はそちらも参考のこと。

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