現代思想2020年7月号  特集=圏論の世界 ――現代数学の最前線 読書メモ

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現代思想2020年7月号  特集=圏論の世界 ――現代数学の最前線 読書メモ

圏論は、概念構造を一般的な形式で表現し、それらの間の関係性を調べる数学の理論となる。ここでのとは、対象の二つの概念を中心に構成される抽象的な数学の対象となり、圏には、以下の三つの要素が存在するものとなる。

  • 対象(Object):圏内に存在するもので、抽象的な対象を表す。例えば、集合位相空間などが対象になる。
  • (Morphism):対象と対象の間の関係を表現するもので、ある対象から別の対象への「写像」のようなものとなる。例えば、集合の間の写像や、位相空間の間の連続写像が射になる。
  • 合成(Composition):二つの射を結び付け、新たな射を作り出す操作となる。この合成操作は、結合法則を満たし、恒等射が存在する必要がある。

圏は、上記の要素を満たすものであれば、どんな種類のものでも構成することができる。例えば、集合と写像、位相空間と連続写像、またはグラフとその間の射などが圏として考えられる。圏論は、代数学幾何学計算機科学物理学など様々な分野での圏の性質や構造を調べることができる。

また圏論においては、圏の間の関係性を表現する概念も重要となる。例えば、圏同型は、二つの圏の間において、対象と射の構造が一致するときに定義される。また、圏の間の関手と呼ばれる写像も重要であり、圏同型と同様に、圏の間の構造を保存するという性質を持つ。

圏論は”集合論の概要と参考図書“で述べている集合論や、”論理学をつくる 第1部論理学をはじめる 読書メモ“等で述べている論理学、さらに”構造とアルゴリズムと関数“で述べている代数学や、”形式言語と数理論理学“で述べている形式言語学や意味論とも関連がある理論となる。

圏論は、数学の分野としてだけでなく、計算機科学の分野においても応用されている。例えば、プログラミング言語の型システムデータベースのクエリ言語の設計において、圏論の概念が利用されている。さらに圏論は、集合論や位相幾何学、代数学、計算機科学など、様々な分野において応用されており、人工知能タスクで用いられる現代数学の重要な理論の一つでもある。今回はこの圏論にについて幅広く述べられた図書「現代思想2020年7月号  特集=圏論の世界 ――現代数学の最前線」をベースに読書メモを示す。

“矢印”が描きだす、豊穣なる現代数学の最前線
現代数学における最重要分野の一つともいえる圏論。その高度な抽象性と一般性は、物理学や計算機科学、生物学、言語学、美学などあらゆる領域で豊かな威力を発揮しつつある。本特集では圏論の基本からさまざまな応用の実際、さらには哲学的な射程についても紹介・検討することで、今ひときわ注目をあつめる数学的思考法の真髄に迫りたい。」

【Discussion】
圏論がひらく豊穣なる思考のインタラクション / 加藤文元+西郷甲矢人

圏論の普遍性と柔軟性
圏論とはものとものとの関係主義
「圏」とはカテゴリ
カテゴリとはものの集まり(リスト)ではない
そのものたちを比較する手段までそこに含まれているもの

群の圏といった時
ただいろんな群を集めてきただけではダメ
それらの構造を比較する準同型といった比較手段まで含めて初めて「圏」になる
リストアップされたものたちの関係性こそが主人公
普遍性
一般的には
個があって、それらの集合として「普遍」を考える
圏論における「普遍的なもの」
それ自体は個物
それが他のあらゆるものとある仕方で関係していることにより普遍性が生まれる
普遍的な個物は複数あっても良い
グロタンディークのEGA
代数幾何に本格的に圏論を導入
圏の言葉と層(shell)を使って代数幾何における空間概念を更新する
「スキーム」という概念
ある種の層である関手
ゲルファント変換
フーリエ変換の究極的な一般化
圏論での自然変換の典型的例
境界を越える圏論-AIから比喩の理論まで
認知科学での「同じさ」を認知する過程を自然変換を用いてモデリングする
認知科学での圏論の応用
随伴の概念を使った体系性に関する研究
圏論はグラフ理論と親和性が高い
ネットワークに関する数理科学によく使われる
高次の圏
ネットワークの中の多層のネットワークをさらにメタネットワークで多層化していく
機械学習のバックプロパゲーションを関手でモデリングするアプローチ
AIや機械学習の分野で、具体的な悠人を見い出せていない
考え方そのものが刺激になる
圏論の考え方にインスパイアされて新しい発想が生まれる期待
圏論の枠組みが橋渡しになって異分野における、分野横断的な応用や展開の可能性が出てくる
圏と確率の融合
プログラミングの世界での「型」の圏
何かを圏の言葉で表すのは、そのものの「意味」は忘れて、関係性の形式だけのこす
非常にシンタックス的なもの
プログラミングを単なるシーケンスとして見るのではなくて
そこにあるセマンティクスをうまく集めることで意味が通じないところ=バグを見つけやすくする
圏とは形式だけを持っているようで、そのためにむしろ「意味とは何か」についての視点が生まれる可能性がある
私たちの世界は様々な「イメージ」で満たされていて、それらのイメージは必ず「連想」を持つ
何かイメージがあった時
そこから次々にいろいろな連想が走ることによって
イメージを中心とした小宇宙のような圏を作ることができる
こうした連装の総体が「意味」
言葉とは「音声」や「文字」
単なる音や文字だと、それがもともと持っている連想は比較的乏しい
連想のネットワークが繋がるとで、言語をつらえる
地下鉄の線路が増えただけでその地域の人々の行動が大きく変わるように
蓋らしい連想の線が一つそかれるとそれだけで様々な連想間の距離構造が一気に変わることも考えられる
比喩の面白さを説明できるような意味の理論があっても良い
トポスを使うことで
自然言語的な構造をん型付ラムダ計算で表せる
これらと結びつく形で自然言語処理を圏論的にモデリングできる
言語を骨と皮だけにすることに圏論が関わる
圏論の健全な濫用に向けて
本当にクリエイティブなことを為そうとする時
一見下らないとされるような幼稚な試行をたくさんしてみないとわからないことがある
かつて物理学においてGrouppest(群ペスト)ということがよく言われた
物理学、特に量子力学において群論が極めて有効だった
物理学者が猫も杓子も「群論」に飛びついて、群という概念がペストの如く物理学を根底から覆す
群論の有名な”濫用”としては
レヴィ=ストロースの「親族の基本構造」
数学者アンドレ・ヴェイユによるサポート
クラインの四元群の、極めて高尚な”濫用”
ある分野で活躍している人たちが何か言い表したい時
今までごく曖昧な表現しかできなかったことを
圏論の枠組みで表現することに感動して定式化しようとする
数学と脳科学、あるいは認知科学やプログラミング などの複数の領域に橋渡しをして、そこに何か共通のチャンネルを見出そうとする
当てはまる事よりも不都合なことが起こることが多い
圏論は
ゲーテルの不完全性定理のような非常に難しいものではない
もっと根本的で、ある意味で”軽い”もの
圏論は射という「関数的なもの」を主役とする点で
それ以前の「集合が主役」という数学のやり方に比べてかなり動的な側面を有している
しかしながら、自然そのもののダイナミズムには全く届かない
認知科学や意識を研究している人たちから不満の声が上がる
普遍性や柔軟性といったすでにある良さを生かしつつ
圏論自体がよりモバイルになることでさらにあるたらしい応用範囲が広がる
圏論はピザの生地のようなもので
そこに何をどう乗せていくかが応用上は大事になる

【Keynote/Introduction】
圏論の哲学 ――圏論的構造主義から圏論的統一科学まで / 丸山善宏

1 圏論とは何か- 数学的基礎論としての圏論から科学基礎論としての圏論へ
圏論は、20世紀中葉に代数トポロジーの発展の中で生まれた
その後早々に集合論に変わる新たな「数学の基礎」としてその地位を確立した
数学基礎論(論理学)から計算機科学が生まれたように
数学基礎論としての圏論は、直ちに計算機科学に応用された
20世紀後半の(いわゆるアメリカ型にたいするユーロ型の)理論計算幾何学の主要な方法論となった
今世紀に入ると他の科学への応用が進んだ
特に物理学への応用が顕著な成功を収める
圏論は
微分方程式によるシステムの全体論的モデル化とは本質的に異なる
科学の新種の合成論的モデリング言語として新たな地位を得る
圏論的科学の射程
論理学
情報学
物理学
スピンオフとして
言語学
人工知能
経済学や社会選択論
圏論はここ50年の間に
数学的基礎としての圏論から
高次元圏論に基づくホモトロピー型理論のような「新しい数学的基礎論としての圏論」も生まれた
科学的基礎論としての圏論へと変貌した
圏論的テクノロジーを根幹に備える新しいスタートアップまで現れている
圏は
対象と射(と射の合成)の織りなす構造ネットワーク
通常のグラフもネットワークだがほとんど構造がない
純然たる抽象構造
対象や射は単なるプレイスホルダーに過ぎない
このプレイスホルダーを埋めることで、 科学の多様な領域に多様な健康像を見出すことができる
三つ巴の対応を アブラムスキー・クッカー対応と呼ぶ
論理学には
命題と証明(命題から命題への演繹)の圏がある
証明・プログラムもまた演繹・計算のプロセスであり
圏論は一般プロセス理論としての側面を持つ
物理学には
物理システム(系)と物理プロセスの圏があり
計算機科学には
データ型とプログラムの圏がある
さらには
言語学には
言葉と意味フローの圏
経済学には
対象物と理由付き選好関係の圏などがある
諸科学の諸領域を圏論的に定式化することで
異なる科学の異なる領域を圏という共通の土俵に乗せることで
異分野間の(脱中心化された) 知のネットワークとトランスファーが可能になる

論理と物理の圏論的対応を利用することで
物理のための自動推論システムが構築される
諸科学を横断した圏論的基礎論の発展による
知の再統合
「現代の自然哲学」としての圏論
それぞれの科学はそれぞれの圏を持つ
任意の圏に対して
それを実現する論理的・物理的・型理論があれば
全ての圏は論理的・物理的・計算的である
圏に付随した直感的な「絵計算」の演繹体系としてのグラフィカル・カルキュラスがある
良い場合には、実際に圏の等式の全てを絵計算により導出することができ
絵計算の完全性を証明できる
厳格な完全性定義により数学的に正当性を保障された絵の計算体系
圏論とそれに付随したグラフィカルカルキュラスは
直感せいと厳密性が両立可能な、諸科学のための絵の計算言語を与える
圏論は集合論と比較される
集合論
ものがあれば集まりがあり、さらに集まりの集まりがある
これを超限再帰的に反復することで巨大な集合のユニバースができていく
集合論にとって本質的なもの
超限的反復
集合論はもの的世界像を与える
圏論的集合論
圏論は集合論の広大な一般化
集合論でできることは圏論でもできる
圏論では、ものはただ矢印で結ばれるだけのプレイスホルダー
矢印はただものを結ぶだけのプレイスホルダー
矢印は(出先と行先の型が合えば)縦列して互いに合成することができる
この矢印の合成は簡単な性質帆満たす必要がある
ものだいる圏ならさらに並列して合成することもできる
「矢印がプライマリーな存在で、ものはセカンダリーな存在」等考えは誤り
二種類の存在はそれぞれ他方のそんざいとの相互関連において存立する
圏論はコト的世界像を与える
圏論では、モノとコトの二項対立という構造そのものがモノ化されてそれがさらにコトを生んでいく
ケンブリッジのジョンストンによると
60年代はモナド(圏論的普遍代数)の時代
70年代はトポス(圏論的普遍幾何学)の時代
その後モノダイルの圏の時代がきて
論理的対応物を持つ
線形型論理やその強化としての圏論的量子論理
さらに近年は高次元圏や高次元とぽすの時代となっている
論理的対応物を持つ
ホモトロピー型論理
直観主義型理論という「論理」
ホモトロピー論という「幾何」
数学の確実性や絶対性を保障するための論理学的な枠組みと
その計算機実装が数学の営みそれ自体にとって肝要なものとなる
(内包的な依存型理論等に加えて)存在の同一性に関するユニヴァレンス公理
に基づく
ユニバヴァレンス公理は
「同じとは何か」という根源的な問いを規定する
等価な対象を同一視する数学的議論に論理的な正当化を与えるための形式的枠組みを提供する
圏論的な数学的基礎論としてより伝統的な物
「論理」と「空間」がひとつになる場
直観主義的な高階論理とそう理論に基づくグロダンディー的な代数幾何学が融合する舞台
圏論には四種類のものが存在する
純粋数学としての純粋圏論
研究コミュニティが我が国には存在しない
世界的にもマージナルなものとなる
純粋数学のための応用圏論
数学的基礎としての圏論
科学的基礎としての圏論
特に強調されるのは「合成性(compositionally)」
システムの成り立ちをその原書から段階的に合成(compose)されていくものとして
システムの構成的な起源を因果的に与える
合成的モデリングが諸科学における圏論の主要な役割となる
2 圏論的構造主義 – 公開の構造主義と構造実在論
数学とは異なるものに同じ名前をつけるアートである
様々な異なる実体間に構造的な等価性を見出すことで多様の統一性を図ることが数学の技芸
圏論は従来の構造主義の焼き直しではない
新しい種類の構造主義である
レヴィ=ストロースはヴェイユらのブルバキ構造主義をバックボーンとした
ブルバキ構造主義における構造は
まず最初にプレーンな集合としての実体が原初の基礎としてあり
その上にいわばトッピングとして代数・位相・順序の所謂「母構造」やその他の付加構造を乗せて行けるに過ぎない
段階的に構造を増やしてゆくのに集合論的構造主義は確かに都合が良い
しかし
原初に集合という実体が「所与の神話」として存在する限り、 それは構造というものをダイレクトに捉えた理論ではない
ブルバキにとって「構造」は数学を実践するための言語
同じことはモデル論的構造主義についても言える
通常の数学における未定義の「構造」概念と異なり
「構造」はモデル理論においてはテクニカルタームである
「構造」あるいはその特別な場合としての「モデル」は
それ自体が数学的対象として扱われる
モデル理論における「構造」や「モデル」は
結局のところ
ブルバキ的な構造概念の述語論理による定式化に過ぎない
モデル論的構造主義は
代数構造と位相構造における「構造」概念の相違に敏感
上記の意味において
ブルバキ的構造主義よりも「構造」概念の機微を解するより精密な構造主義であると言って良い
究極的には
原初に実体という「所与の神話」を仮定する集合論的こうぞうしゅぎの一バージョンに他ならない
「構造」は通常数学では未定義語
個別例を離れて一般に構造とは何かがはっきりと画定されているわけではない
数学者の間では
「構造」の概念が共有され一定の共通了解がある
素朴集合論において集合の基数を同値類として定義するのと同様の仕方で
「構造」を構造のインスタンスの同値類として定義することは不可能ではない
その場合もやはり構造のインスタンスという実体が先にあって初めて「構造」という概念が定義可能になる
「代数構造」とか「位相構造」ですら構造の定義は明らかでない
代数構造としての群が、 構文論的な代数理論としての群なのか、 意味論的なモデル論的構造としての群なのかは自明でない
圏論は「台集合」なしの構造主義
3 圏論的認識論と圏論的存在論 – 知と存在の絶対的基礎論・総体的基礎論・概念的基礎論
学問の基礎論の分類
絶対的基礎論
当該学問に関する全ての存在と知がその唯一の枠組みの中に還元されるというような種類のもの
相対的基礎
存在の種類・知の種類に応じて異なる存在論的・認識論的枠組みが用いられる種類の基礎論
ローカルな基礎論や構造的基礎論
概念的基礎論
当該学問の実践において原理的な役割を果たす概念の追求に関わる種類の基礎論
圏論の認識論的意義
一階の法則性に対する「高階の法則性」
公開の法則性に関する構造主義が、高階の構造主義
「アナロジーの間のアナロジー」の明示的定式化
バナッハによる言葉
論理・物理・計算の三位一体を述べるアブラムスキー・クッカ対応
三領域を横断した高次のメタ法則性に関するもの
圏論の存在論的意義
その内在的なマルチバース性、多元性と、構造的存在論による存在論の軽量化の原理にある
圏論はその構造的存在論により存在論的コミットメントを逓減する
実体的な実在へのコミットメントを避け、構造としての実在のみにコミットすることにより、軽量化された存在論(LightweightOntology)を実現する
頭の中の存在という主観的存在がなぜ客観性を持ち得て、それに関する真理がなぜ絶対性を持ち得るのかという問題が生じる
安易な存在論は認識論を困難にし、安易な認識論は存在論を困難にする
構造的存在論には
構造に関する実在論を保ち実在論としてのステータスを維持しながら、同時にその実在への認知的アクセスの問題を解決できるという、ソリッドな存在論的利点がある
4 圏論的統一科学 – ウィーン学派・スタンフォード学派・オックスフォード学派
スタンフォード学派は科学の多元性を強調
バラバラであることの意味と強みの再興を促した
それに対して、ウィーン学派は一元論的・還元主義的・基礎付主義的統一科学
一般に諸科学はそれぞれ認識論も存在論も異なる
異なるからこそ協働に意味があり
一様化をもたらす統一はむしろ害悪である
最も強い物質は不純な物質であった
科学の雑種性が科学の強度と安定性を生み出す
科学的多元論の立場をとることが統一・統合を諦めることではない
スタンフォード学派が否定しているのは
せいぜい一階の法則性の間の還元主義的統一の可能性
ウィーン学派の統一科学は謂わば「上からの統一主義」
圏論が可能にするのは
高階の法則性のによるネットワーク書義的統合
圏論的統一科学は「下からの統一科学」
数学的な基礎論としての圏論はローヴェアラによって索引されてきた
絶対的意的基礎論としての圏論
科学的基礎論としての圏論はアブラムスキーらによく牽引されてきた
相対的基礎論としての圏論

圏はどういうものであったか / 小原まり子

はじめに
圏とは何なのか。
圏論とは簡単に言えば「関係性も考慮したグループ分け」である

家族構成が4人
家族内の関係を考慮すると
核家族間の間の似た部分を比較できる
学部生と圏と集合
代数での圏と関手
圏とは何か
圏(category)
対象(object)と呼ばれるデータA,B,C,…と
射(morphism又はarrow)のクラスからなる
射のクラスから射fを一つとったとき
fに対して
fの始域(domain)と呼ばれる対象dom(f)と
fの終域(codomain)と呼ばれる対象cod(f)が定まる
dom(f)=A、cod(f)=Bとおくとき
fを f:A→B と書く
ある”条件”を満たす
cod(f)=dom(g)となる射f,gに対して
fとgの合成と呼ばれる射 g∘f:dom(f)→cod(g)が定義でき
それらは以下の2つの性質をみたす
結合律
任意のf:A→B、g:B→C、h:C→Dに対して
h∘(g∘f)=(h∘g)∘fを満たす
カッコがついている部分を先に計算しても等式になっているという意味
恒等射の存在
任意の対象Aに対しある射1A:A→Aが存在し
任意の射f:Z→Aに対して
1A∘f=f
又は任意の射g:A→Bに対して
g∘1A=gとなる
射ひとつにたいして、射の始めと終わりに対象が二つ定まっている
射のクラスとは
大まかに言えば射の集まり
圏と集合とはどこが違うのか?
集合とはものの集まり
集合を構成するもの一つ一つを集合の元(又は要素)という
「Rという性質を持つもの」の集まりからなる集合Xを具体的に与える方法として
集合の間の写像
集合X,Yに対し、任意のXの元xに対して、f(x)というYの元を丁度ただ一つ定める対応fを
XをYの定義域と呼び
集合{y|yはYの元かつ、あるXの元xに対しy=f(x)}をfの値域とよぶ
Yをfの終集合と呼ぶ
Yが実数からなる集合である時にfを関数とよんだりする
圏における対象と射の概念は 集合全体と集合の射影とどこが違うのか?
圏においては集合の写像と違って結合律を最初から要請している
集合においては恒等写像は素朴に作れたが
圏では恒等射の存在がそもそも定義入っている
「全ての集合からなる集合」は集合ではない
圏の理論では
一つ一つの対象を、集合一つ一つとし、射を集合の間の射とすれば、「集合のなす圏」を作ることができる
「全ての集合からなる集合」は集合ではない
集合とは”もの”の集まり
“もの”とはなんなのか?
全ての集合からなる集合が、集合だと仮定する
全ての集合全体からなる集合をさらに二つの集合に分ける
一つは自分自身を元として持つような集合全体のなす集合Y
二つ目は自分自身を源として持たない集合Z
Z自身はZの元ではない
ZはYの元にもならない
全ての集合を二つに分けただけなのに、どちらにも属さない集合Zが突然生じる
不合理
集合とは何かを曖昧にしたまま議論を進めたため、矛盾が生じる
それらを曖昧にしない集合論
集合となりうるものたちが満たす性質を細かく観察し、それらを公理として定めたもの
公理系は
「客観的な条件」を記述するべく発展した「論理式」を用いて記されている
客観的に正しい条件を述べたい
「論理式」と「推論する規則」を決めておいた上で考える
上記の小売を満たせれば集合とよぶ
ZFC公理系
それらの公理に、選択公理を加えたもの
こう公理系のもとで
微積分や線形代数等の数学を行なって使用名をつける
現代の数学を記述するのに十分と考えられる
Russelの逆理で現れた全ての集合の集合は
この公理系では構成できないので集合にはならない
公理的集合論に対して
「ものの集まり」の方は素朴集合論とも呼ばれる
圏の定義に出てくる「クラス」とは
公理的集合論では集合を集めても集合になるとは限らないので
集合を集めたものを「クラス」と呼ぶ
ZFC公理系の元ではクラスそのものを体型の内部で扱うことができない
クラスは形式的に「変数のある論理式」として扱われる
圏のなす圏
圏のなす圏の、対象は圏であったとして、射はどうするのか?
圏から圏へ、関手と呼ばれる対応がある
CとC’が圏であるとき
FがCからC’への共変関手(F:C→C’とおく)であるとは
Cの対象Xに対して、C’の対象がただ一つ定まり(それをF(X)とおく)
その上で、Cの射f:A→Bに対して
C’の射F(f):F(A)→F(B)がただ一つ定まり
この対応に対して
F(f∘g)=F(f)∘F(g)を満たす時にいう
上の対応について、
Cの射f:A→Bに対してC’の射F(f):F(B)→F(A)がただ一つ定まり
この対応についてF(f∘g)=F(g)∘F(f)としたものを
反変関手という
また圏CからCへの共変関手で
Cの対象XをXに移し
射fをfに写すものを
Cの恒等関手と呼び「1C」と書く
異なる圏を比較したい場合には
適切な関手によって比較が可能である
圏CとC’について
共変関手F:C→C’とG:C’→Cが存在して
合成F∘G:C’→C’とG∘F:C→Cが
F∘G=1CかつG∘F=1Cとなるとき、
CはC’に圏同型
F∘GおよびG∘Fがそれぞれ恒等関手1Cおよび1Cにそれぞれ関手として同型なとき
CはC’に圏同値という
関手として同型とは何か?
関手の間の射(自然変換)を定義する
L,Hを圏Dから圏D’への共変関手とする
UがLからHへの射であるとは
任意のDの対象Xに対して
射u(X):L(X)→H(X)が定まっていて
図1がDの任意の射h:X→Yについて可換になること
関手L,Hが関手として同型とは
関手の射u:L→H、v:H→Lがあって
任意のDの対象Xについて
u(X)∘v(X)=1H(X)
v(X)∘u(X)=1L(X)
関手としてイコール
関手として同型
上記より緩やか
関手と関手の間の射を用いて条件が述べられる
圏論に登場するの基本的なものの定義
圏は対象と射からなり、圏から圏へは関手と呼ばれる対応がある
関手を用いて圏同士を比較できる
学部生の私と圏を使って何するかという問題
圏を定義した後に何に使うのか
圏の枠組みで話を書き直した後、何かを自分で証明する
多くの人は目的のない抽象論には耐えられない
大学院生と道具としての色々な圏
圏論には三つのパターンがある
論理学として集合論や圏論を扱う
圏論で定義されている枠組みを用いて他の純粋数学をわかりやすく記述する
整数論
素数の性質と振る舞いを調べる分野
プログラミングなどの実践的な応用の側面から圏論を見直す
圏に付随する量を調べる
小学生のなす圏を考える
射は簡単に恒等射だけがあるとする
中学生の圏、高校生の圏も考える
「夕方のアニメを見ている人の割合を計算」すれば各圏に一つずつ新たに得られる量が対応する
同様に、個々の圏において「深夜のアニメを見ている人の割合を計算」すればまた各圏に一つずつ新たな量が対応する
「圏に付随する量」は数字でも、集合でも「量」という
この付随する量を比較して、圏の性質を判定する
代数的K理論
適当な条件を満たした圏に付随する量
条件を満たした圏を一つ撮れば、代数的K理論と呼ばれる量が一つ定まる
整数論では
整数や素数の性質を反映する、重要な量
一般的に定義されている代数的K理論が
圏のどのような性質を反映しているために、重要な量となったかがよく分かっていなかった
代数的K理論に対する飛躍的な進展
高次圏という圏
高次圏の理論を使って
代数的K理論は適当な圏の、とある二つの性質を満たす量となる
逆に適当な圏の、とある二つの性質を満たす量は、代数的K理論唯一に決まる
高次圏について

ベクトル
向きと大きさという二つのデータを持ち、実数からなる成分の組みで表せる

Xy平面上の座標と、2次現実ベクトルは対応
成分の個数が同じベクトルは足し算を考えることができる
さらに実数倍を考えることができる
成分の個数が同じ実ベクトルは集合をなす
実ベクトルの足し算と実数倍もその集合に再び入る
実ベクトル空間という
特に成分の個数がn個であるベクトルたちからなるベクトル空間を、n次元ベクトル空間と呼ぶ
一つの実ベクトル空間から他の実ベクトル空間への写像で
実ベクトルを行き先の実ベクトルにとり
線形写像での標準ベクトルの行先の実ベクトルを
行先の実ベクトル空間の標準ベクトルの一次結合で書くと、行列表示ができる

線形変換fが標準ベクトル(1,0,0)をa11(1,)+a12(0,1)、標準ベクトル(0,1,0)をa21(1,0)+a22(0,1)、標準ベクトル(0,0,1)をa31(1,0)+a32(0,1)に写すとすると
線形写像fによる(x,y,z)の行先は行列と実ベクトルの積で計算できる
基底を一つ取っておくと、線形写像一つに行列が対応する
行列の足し算と実数倍も行列となる
N次元実ベクトル空間からM次元実ベクトルの線形写像全体の集合は
足し算と実数倍に閉じる集合になる
つまり
実ベクトル空間の線形写像全体が、再び実ベクトル空間になっている
ベクトル空間を対象とし、その間の線形写像を射とする圏を考える
対象一つ一つはN次元実ベクトル空間やM次元実ベクトル空間
射ひとつひとつは線形写像一つ一つ
実ベクトル空間のなす圏は二つの対象の間の射のクラスが再び実ベクトル空間になるという
結合律や恒等演射の存在だけでは書き表せない、豊かな構造を持っている
任意の二つの対象の間の射のクラスを考えたとき
それがさらに加えて食う像を持つものを「豊穣圏」という
実ベクトル空間のなす圏は、豊穣圏の一つの例である
任意の二つの対象の間のクラスが集合になる圏を
実ベクトル空間のなす圏のように任意の二つの対象の射のクラスが実ベクトル空間になる圏を
「近傍」という概念が定義されている集合を「位相空間」という
ε-δ論法
数列が実数αに収束するなら
Αの周りの幅半分の長さがεである開区間の中に十分大きな展示を持つ数列が収まって欲しい
この幅半分の長さがεである開区間が
これにより
実数のなす集合は位相空間になる
ε近傍を用いて
実数上の連続関数は
xをαに近づければf(x)がf(a)の「ε近傍」内に収まってくるという性質を持つ関数であると定義された
同様に、位相空間にも
近傍を用いて連続写像という回゛年が定まる
位相空間を対象、射を連続写像として、圏ができる
位相空間に、コンパクト生成空間、という条件をつけると
一つのコンパクト生成区あかんから他のコンパクト生成空間への蓮ぞ゛区写像全体が、再びコンパ口生成空間になる
コンパクト生成空間のなす圏は
コンパクト生成空間で放生された圏になる
もう一つの豊穣圏の例
単体
頂点、辺、面またはそれより次元の大きい向き付きの図形からなるもの
上記からイメージされるもの
多面体で辺が矢印になっていおり
面の部分にも矢印が書いてあるような四面体
N単体とは何か
0からNのまでの数からなる集合に、大きさに関して順序を入れたもの
0からNまでの各数字が頂点を表す図形
抽象的に定義したN単体とM単体の間に
大きさに関する順序を保つ集合の写像を考えることができる
これら抽象的に定義した単体たちを対象、順序を保つ写像を射として、単体圏(simplex category)と呼ばれる圏ができる
この単体圏から集合の圏への反変関手のことを、単体的集合と呼ぶ
一つ反変関手が会ったら、単体集合が一つある
単体的集合は関手であるので
先に定義した関手の間の射(自然変換)を考えることができる
単体に幾何学的解釈があることから
単体的集合にも木価格的解釈を与えることができる

N次元実ベクトル空間の原点と、残りN個の天を結んでできる向き付きの図形を各Nで作っておき
Nを0から無限まで動かして図形をずっと重ねるという解釈ができる単体的集合もある
単体的集合は、まるで位相空間のようなもの
単体的集合で放生された圏を単体的圏論(simplicial category)と呼ぶ
単体的集合は位相空間と同じような性質を持つことから
ホモロジー群やホモトロピー群といった「付随する量」を考えることができる
二つの単体的集合に対して、そのホモトロピー群が同型のとき
DwyerとKanによる単体的圏の考察
単体的圏における対象Xから対象Yへの射の集合(=単体的集合)のk単体の像になっている部分の図
圏にCalculus of fractionと呼ばれるある条件をつけると、二つの対象の間の射の集合が極めてシンプルになる
大学院生の私と圏論の応用
ポスドクと諸分野における圏論
ホモトロピー論と代数幾何学
実ベクトルには実数倍が定義されていた
実数とは足し算と掛け算を持つ
実ベクトルの足し算と実数倍は実数成分ごとに実数の足し算と掛け算を使って得られていた
実数のなす集合でなくても
足し算と掛け算が定義されているような集合であれば
その集合の元を成分として持つベクトルが定義できる
足し算と、かけられる数と書ける数を入れ替えても答えが変わらない掛け算が用意されている集合
可換環の元を成分に持つベクトルを考えたり、可換環からベクトルを作ったり、可換環から作ったベクトル空間のなす圏を考えたりすることができる
代数幾何学とは
可換環や可換環から作ったベクトル空間を調べたり
コモホロジーやホモロジーと呼ばれる、可換環から作ったベクトル空間のなす圏に付随する量をしらべたり
もっと一般に可換環からできる位相空間の性質を様々に調べる分野

【Mathematics/Logic】
圏論とトポロジー / 玉木大

1圏論の起源
圏と関手、そして自然変換の概念は、
アイレンバーグ(Eilenberg)とマクレイン(MacLane)により、ホモロジーの性質を簡潔に述べるために導入され
ホモロジーとは何か
ポアンカレにより多様体と呼ばれるものを調べるために導入された
多様体とは何か
曲線や曲面の一般化として定義される幾何学的構造
多様体の例
1次元多様体
2次元多様体1
球面上には、演習を書くことができるが、どのようにえがいても互いに連続的に写し合うことができる
ボールの上に乗せた輪ゴムをボールの上を滑らせて移動させることをイメージ
そのような演習は連続的に大きさを縮めて一点にすることができる
球面上には本質的な1次元サイクルが存在しないのでb1(S2)=0
2次元多様体2
トーラスに輪ゴムをかけるときに「縦方向」に欠けたものは、どんなに頑張っても一点に潰すことができない
外側から横方向に輪ゴムをかけるのは難しいが
トーラスを浮き輪と思ってその内部に輪ゴムを「横方向」にかけることはできる
その輪ゴムを一点に潰すことはできない
連続的な変形で「縦方向」に直すこともできない
トーラス上には
本質的に異なる1次元サイクルが二つあると考える
トーラスの一次元ベッチ数が2であるという
一般にn次元サイクルという概念が定義されて
「その本質的に独立した個数により多様体の性質を調べる」というアイデアがリーマンやベッチにより導入された
例 球面とトーラスのベッチ数
球面とトーラスは異なることを証明できる
ポアンカレによる多様体の特性識別アプローチ
アーベル群
加法+と減法-が定義されている集合
集合と写像の持つ性質を抽象化して圏(category)という概念が定義される
集合に対応するものを対象(object)
写像に対応するものを射(morphism)
称号を対象とし写像を射とする圏Set
アーベル群を対象とし準同型を射とする圏Abel
ベクトル空間を対象とし線形写像を射とする圏Vect
位相空間を対象とし連続写像を射とする圏Top
2ホモトピーと高次の圏
このようにして生まれた圏論は
その後様々な分野に使われていくようになった
トポロジスト以外で最初に圏論を本格的に使ったのはグロタンディーク
代数幾何学を基礎から再構築する
さらに
圏論を代数的、幾何学的対象として見なすことができる
圏を幾何学的対象とみなす際の基本的なアイデア
圏と三角形の関係
合成可能な二つの射からは、三角形ができる
2単体
合成可能な三つの射からは、同様に考えて四面体ができる
3単体
県は様々な次元の単体を合わせてできたモノとみなせる
単体の集まりとし定義される図形としては
単体複合体と呼ばれるものがある
圏を幾何学的対象とみなすことは
現在の高次の圏の理論の発展に密接につながる
高次の圏では様々な種類の射の関係を表す必要がある
そのことだけでも非常に煩雑になる
このような場合は単体を用いた幾何学的解釈がとても有用になる

数論幾何と圏論 / 伊藤哲史

1数論幾何の「思想」と圏論
数学の分野の中に「数論」あるいは「整数論」と呼ばれる分野がある。
要するに「数の法則」を研究する分野である
フェルマーの最終定理
を3以上の整数とすると、を満たす正整数は存在しない
「数の法則」を幾何的な手法で研究する分野が「数論幾何」
数論幾何の「思想」
「数の法則」には、まだまだ解明されていないものが沢山ある。 そしてその法則のうちのいくつかは、トポロジー(位相幾何学)や 物理学といった「連続的」な手法を応用することで解明できるはずである。
数論幾何のスローガン(⁉)
数論幾何をさらに発展させるには、 トポロジーや物理学の手法を、 圏論を使って数論幾何に取り込むことが大切なのだ
2ガウスの切り拓いた道
一五歳の頃ガウスは 素数列2,3,5,7,11,…が増大する様子に興味を持ち実験を行った。
N以下の素数の個数をπ(n)とおく。10以下の素数は四個なのでπ(10)=4である。
となって、π(n)はnが増大するにつれてだんだんゆっくりと増大することが実験的にわかった
素数定理
素数定理の緻密化はリーマン予測と関係している
平方剰余の相互法則
p,qを相異なる奇素数とする。
1. もしpまたはqから1を引いたものが4で割り切れれば、pがqをを法として平方余剰であることと、qがpを法として平方余剰であることは同地である
2. そうでなければ、pがqを法として平方余剰であるための必要十分条件は
qがpを法として平方余剰でないことである
3グロタンディークのガロア理論
4平方剰余の相互法則と保型性
5ヴェイユ予想
6エタール・コホモロジー
7ラマヌジャン予想
ラマヌジャン予想
8ヴェイユ予想の証明をめぐって
9保型性予想、ラングランズ関手性、保型表現の「圏論化」
10基本補題、ヒッチン・ファイブレーション、ミラー対称性
11混合モチーフの圏
12おわりに

圏論的論理学への道案内 ――論理学と数学をつなぐトポス / 荒武永史

1はじめに
圏論的論理学は
数理論理学における対象を圏論的に表現することで
圏論と論理学の相互作用を研究する
圏論的論理学において重要な三つのパラダイム
函手的意味論
論理式の圏論的解釈
式の内部的言語による理論と圏の対応
2圏論的論理学のはじまり――ローヴェアの函手的意味論
代数理論に対する函手的意味論
函手的意味論のアイデアを紹介するために
まず”集合と写像の圏Set”から出発する
3より複雑な論理式の圏論的解釈、および“論理的な圏”におけるモデル
4論理から圏へ、そして圏から論理へ
はじめに
インタールード
5トポス理論――論理学と数学の架け橋として
6おわりに

圏論と集合論 / 渕野昌

1数学の基礎と数学の基礎付け
「数学の基礎」は数学を学習/研究したり、応用したりするときに必要となる基礎知識/基礎概念
「数学の基礎付」というのは、数学がいかなる基盤の上に成り立っているかを研究する
数学を行っている我々の行為を外側から数学的に分析するための枠組み(超数学meta-mathematics)
ゲーテルの不完全性定理
集合論とカテゴリ論のちがい
2数学的theoryforeverythingとしての集合論
集合論は、既存の数学理論を全てその部分体系として記述できる
数学の処理論のほとんどは、ただ集合論の部分理論としてコードされている
3小さいカテゴリーと大きいカテゴリー
カテゴリの定義の復習
カテゴリ𝖪とは
Kは対象(object)の範囲と
対象の範囲は多くの場合、集合とはならず、真のクラスとなってしまう
集合論のスタンダードな公理系であるZFC (Zemelo-Frankel)集合論に選択公理を加えた体系)では、 クラスは理論のオブジェクトとしては扱えない
個々の具体的なクラスが、それを定義する論理式の別章のようなものとして扱えるだけ

群の全体からなるクラス
集合論の言語での「xは群である」に対応する論理式Φ(x)の別章としてこのクラスを与えることになる
その範囲内の任意の二つの対象X,Yの間に射(morphisms)と呼ばれるものの集合Hom(X,Y)を指定することで得られるもの
カテゴリの定義は集合の概念を既知のものとしてなされている
Kの任意の対象X,Y,ZとHom(X,Y),Hom(Y,Z)のそれぞれの要素f,gにたいし
それらの合成f∘g∈Hom(X,Z)が対応させられている
4グロタンディク宇宙
ZFC公理に対して、公理を付け加えることで圏論に利用可能なものにする
5レヴィ・モンタギュ反映定理
6ヴォペンカ原理とカテゴリー
7究極のカテゴリー論としての集合論的多元宇宙

【Computing/Language】
コンピュータ科学と圏論についての回想と考察 / 三好博之

1代数的意味論とGoguen
コンピューター科学と圏論の結びつき
S.Eilenbergは圏論を用いてオートマトンの理論を展開
オートマトン理論の数学か
M.A.Arbib & E.G.Manesの代数的な意味論
J.Goguenの一連の仕事
ADJグループによる始代数意味論の構築
代数的意味論あるいは代数的データ型
Goguenが複雑な圏論にのめり込まずにそれでも圏論を使うのは
彼にとってバランスを取るための枠組みが圏論出会った
コンピューター科学は論理的側面と物理的側面と人間的側面のバランスが問われる分野
人間にとっての理解しやすさは重要な要素
Curry-Howard-Lambek対応
カルテシアン閉圏と単純型理論、高階の直観主義論理と初等トポス
数理論理学とコンピューター科学と圏論の三者の目まぐるしい交流の時期
1986年
Logic in Computer Science(LICS)が始まったのが1986年
強力な非可述的(impredicative)型理論であるCoquand-HuetのCalculus of Construction(CC)に適用される
LEGOやCoq等の定理検証系を設計開発
定理検証では階層を持つ型理論が必要
Goguenの始代数意味論は圏論の専門家にとってそれほど難しくはない
2表示的意味論と計算モナド
緻密な表示的意味論では
プログラムに意味を与える
実際ののプログラミング言語では入出力をはじめとする副作用や例外処理を表現することが重要
そのため、構文の意味領域への翻訳がどんどん複雑になっていった
プログラムの意味論を与えてもその翻訳は元々のプログラムと同じくらい複雑になる
そのため直感的に理解しやすい操作的意味論が人気となった
圏論的に代数を議論するためのモナドという構成を、 表示的意味論を整理して表すための枠組みとして 用いるアイデアを出したがE.Moggi
関数プログラミング言語において
副作用を考える際に
関数の出力に副作用を含めて考える
問題になるのは関数の合成
副作用を祝力に含めてしまったために
元は合成できていたものが肩が合わなくなって合成できなくなる
問題を解決するのが
モナドの構造射(自然変換)μと𝛈
これらを使うことで新たな合成を系統立てて定義し直すことができる
このように考えた関数はモナディック関数と呼ばれる
Curry-Howard-Lambek対応的な肩理論との相性も良い
モナド(とコモナド)を論理でいう様相演算子として解釈することで
Curry-Howard-Lambek対応の拡張を考えることができる
Haskelだがモナドを使う代表言語ではない
純粋な関数形言語で、副作用特にIOヲドノヨウニヒョウゲンスルカノモンダイデ
計算モナドを用いることになり、それが言語のデザインそのものに深く影響を与えた
モナドによって副作用のような計算が隠蔽されているとみなすことで
一種の計算リフレクションを行なっているとの見方ができ
実装が隠蔽されたレベルとそれが陽になったレベルの二つのレベルを持つプログラミング言語を考える理論的枠組みとして用いられるようになった
近年はモナド計算の代わりに「代数的効果(algebratic effect)」を用いたものが考えられている
計算モナドよりも直感的に様々な副作用を捉えることができる
人間の理解のしやすさが高い
3応用圏論と圏論の限界
圏論のコミュニティによる様々な分野への応用の検討
J.Lambekによる言語学への応用を念頭にした部分的構造論理に対応する圏論的なカルキュラスやマルチ圏
線形論理の先駆的な研究となった
A.C.Ehresmanによる生物の階層性の記述に圏論を応用
認知科学への圏論の応用
S.AbramskyとB.Coeckeのグルーブによる圏論的な量子論の研究
量子情報で扱われる有限自由どの量子系を
圏論のストリング図の各種合成を使って記述することで
量子テレポーテーションなどの量子的現象を圏論により特徴付ける
グラフィカルな圏に対する研究
組紐群を通じた結び目と圏論の関係
その抽象化であるJoya-Streetのテンソル圏の研究
Abramsky-JagadesenによるGeometry of Interactionのグラフィカルな定式化
Hyland-Street-Verityのトレース付きモノダイル圏
長谷川真人とM.Hylandにより独立に見出されたラムダ計算の意味論への応用
Selingerによるサーベイ
Abramsky-Coeckeの有限次元の量子論の定性的な理解
インタラクションや双方向の情報の流れやコンポ辞書なりティという特性を量子論以外に応用する
アメリカのD.I.Spivakを中心としたMITグループやJ.Baezを中心とした応用圏論の流れ
国際研究集会(Applied Category Theory)の組織化
ジャーナルCompositionalityの創設
Fong-Spivak-Tuyerasのバックプロパゲーションの記述
難しい基礎研究よりも面白い応用研究の方向
テクニカルにはストリクトな圏の話で済むような、数学的にはそれほど難しい話でないものが多い
圏論だけでは容易に応用に結び付けられない

計算リフレクション
プログラミング言語の文脈で提起
リフレクションそのものは
現在では進んだプログラミング言語では
メタプログラミングやジェネリックプログラミングという形で取り入れられている
Smithの論文に沿ってリフレクションについて述べる
Lispを利用
準備
抽象的なプログラムとその実行モデルとして プログラムと実行装置を考える
実行装置は例えばインタプリタのように、 それ自体が何らかのプログラミング言語とその実行装置で実現されている
上記の想定は、レベル3,4,5..と無限に遡ることができる
このとき各レベルで実行装置の記述に使われている言語が同じものである時
Smithはプログラムが実行されているときに、この仮想的な無限階層が動作していると想定し、これを2-Lispとよんだ
プログラムの動作、すなわち意味論では
このような改装を想定していようといまいと変わらない
プログラムの動作として
上の階層の動作の情報を見ることができたり
改変したり
することができるとどうなるのか
上記によりプログラムを変えずにその動作を変えることができることになる
そのような命令を2-Lisp言語に付け加えた物を3-Lispと呼んだ
Smithはreifyやreflectできるものが自分自身の動作の改変できる範囲を規定しているという意味で、これを自己表現(selfーrepresentation)と呼んだ
実際には2-Lispでは実行装置が操作できるものは、式、環境、継続
これが3-Lispになった場合は一つ上の階層のこれらを操作できる
その範囲で自己書き換えが可能になる

Printという字句と動作のむすびつきを環境を変えることによって変更できる
Smithの研究に対して
M.WandとD.P.Frechmanらによる表示的意味論を用いた説明が行われた
プログラミング言語を簡略化したのち
どのレベルで動作しているかという情報をメタ継続というデータで持たせることにより表示的意味論を与えることで
一応数学的な意味を与えることができる
上記のやり方ではメタ継続が構文からはみだすため、意味論が構文からはみだす

代数的言語理論の圏論的公理化とガロア理論との統一 / 浦本武雄

1はじめに
代数的言語理論と呼ばれる理論計算機科学の一分野が
圏論的な最定式化を通して
整数論におけるガロア理論に新しい視点を与える
数学的にいうと
この現象の核となる定理はsemigalois圏と呼ばれる圏と副有言ものいどの間の双対定理
代数的言語理論もガロア理論もこの双対定理により統一される
圏論は
一見異なる理論が実は「共通のパターン」を共有していることを明らかにする
日明示的に共有されているパターンについて明示的に語る
2言語の形式的研究
代数的言語理論(algebraic language theory)はそもそもどのような理論か
言語に関する数理研究の理論
「言語」とは
我々の思考・感情・意志を他者に伝えるために規定された、一定の記号体系
言語の研究
認知科学、心理学、哲学など様々なアプローチがある
形式言語理論(formal language theory)は
物理学が世界の法則を記述するのに世界を数学的に形式化するように
「言語」を数学的に形式化して研究する
その中でも代数的理論は
言語の形式的研究に、有限半群論など純粋数学における代数的理論を採用するもの
形式言語理論(および代数的言語理論)で研究される典型的問題は
有限文字列の集合に関する組み合わせ的問題として定式化される
直感的意味は
言語学におけるNoam Chomskyによる生成文法の研究にルーツを見る
端的に言えば
一般に言語とは
形式的に有限文字列の集合として定義され
形式言語理論は
「言語の持つ記号的パターン(syntax)」に主要な関心を寄せ
その構造の記述や・分類を中心的な課題とする
言語学の文脈だと
言語の「文法」の研究と関わり
計算論理的な問題とも等価である
自然言語である英語や日本語は
その文法を見出すことは決して容易ではない
どのようなならび(あるいはパターン)の文字列であれば英文として成立するのかを明示的に記述することは(=文法を構築すること)は決して自明ではない
言語の意味を理解するのに
文章の中の一定のパターンに着目する
Chomskyの生成文法は、 そのような言語のパターンを明示的に記述するための 一般的記法として数学的に定義され研究されたもの
生成文法では文章の入れ子構造を記述できる
プログラミング言語の設計に応用されている
Chomskyの生成文法で記述される言語は、チューリング機械という計算モデルにより記述できる言語と等価である
形式言語理論では
言語学の文脈から離れ、 単純に記号的な文字列としての文章の組み合わせ的パターンに着目し 言語を階層づけ、計算論的な立場から分類する
言語学における問題との関連で言えば 言語Lが与えられた時に興味があるのは
「どのような文字列w∈∑*であればLに属するか」を特徴付けるwのパターン(文法)を見つけることである
Lのパターンを特徴づける生成文法が存在すれば
生成文法とチューリング機械との透過性から
アルゴリズムが存在することを意味する
代数的言語理論では
言語階層の分類に代数学の知見を応用する
歴史的には1960年代から貼ってなしてきた
この理論では「正規言語」と呼ばれる非常にシンプルな言語を対象にするという制約がある
その代わりに一般の言語階層には見られない体系だった方法論を持つ
形式言語理論(あるいは計算理論)における理想的基礎
計算理論における”線形代数”
3代数的言語理論――正規言語の分類理論
理論で分類対象となる正規言語の定義を与える
正規言語は「正規表現(regular expression)」と呼ばれるある種の式で記述可能な言語として特徴づけられる
Chomskyの生成文法で言えば
3型の生成文法で記述可能な言語と同値
生成文法は大きく分けて0型から3型まであり、3かたが市場か単純な階層である
4圏論によるガロア理論との統一
5結論

ソフトウェアの数理モデルと圏論 / 檜山正幸

はじめに
圏論はソフトウェアの問題に対して役に立つのか?
役に立つ
ソフトウェア工学/計算化学の理論的基盤を提供する
現実のプログラミング言語やソフトウェアシステムを設計する際の指針となる
ソフトウェアに関わる現象を理解するための堅牢で整合的な枠組みとなる
ソフトウェアに関連してどのような圏論的概念がどのように使われているのか?
デカルト圏が、ラムダ計算と論理と圏の三者を対応させるカリー・ハワード・蘭ベック対応に登場する
トレース付きモノイド圏は、プログラミングで使われる再帰的手法、あるいは再帰的現象を定式化するための圏
モナドは、純粋な計算以外のこともする関数をうまく扱うための道具
モナドと関連する随伴や、カン拡張も、プログラミング言語の機能設計やプログラミング手法のバックボーンになっている
圏論をそのまま(カスタマイズせずに)データベースに応用したものに、スピヴァック理論がある
圏論の米田埋め込みは、プログラミングの継続私方式と同じこと
集合圏、有向グラフのパスの圏
とある圏の対象・射を逗子した場合、点は何らかの対象を表し、矢印は何らかの射を表す
点と矢印から美雨性された図形は「有向グラフ」と呼ばれる
有向グラフが一つ与えられたとする
有向グラフはそのままでは圏ではない
有向グラフから容易に圏を作ることができる
一つの点からもう一つの点に他いる経路
有向グラフのパスを次のルールで書き下す
1. 最初に出発点、最後に到着点を書く
2. 通った矢印(のラベル)を、出発点と到着点のあいだにカンマに区切って書く
3. 全体を角括弧で囲む

1. [A,a,a,b,c,b,d,C] 2.[B,c,a,b,B] 3. [B,d,C] 4. [B,c,a,a,b,c,b,B] 矢印を全く通らないパスも認める
1. [A,A] 2. [B,B] 3. [C,C] 有向グラフの点とパス(長さ0も許す)を使って圏を構成できる
対象は、有向グラフの点とする

{A,B,C] 射は、有向グラフのパスとする

[B,c,a,b,B] 射の集合は無限集合になる
射[X,a,Y]の域は
X
射[X,a,Y]の余域は
Y
二つの射[X,α,Y]、[Y,β,Z]の合成は
[X,α,β,Z] 対象Xの恒等射は
[X,X] パスの合成演算が、圏の計算法則(結合法則、左単位法則、右単位法則)を満たすので
圏が構成できたことになる
有向グラフから構成された圏を
2つの圏を手に入れた
1 集合圏:対象が集合で、射が写像である圏
2 有向グラフのパスの圏: 対象が点で、射がパスである圏
事物の抽象モデルとインターフェイス
例として数取器を現実世界のものとしてモデル化
1. カウンター・オブジェクトに、countup操作をしたら、計数値が一つ上がる
2. カウンター・オブジェクトに、reset操作をしたら、計数値が0になる
3. カウンター・オブジェクトに、value操作をしたら、計数値を返す
現実の数取器とソフトウェアの世界の存在物であるカウンター・オブジェクトが違う点
ボタンやインジケーターのようなユーザーインターフェース文が付属していない
カウンターオブジェクトは、数取器の内部機能だけを抽象している
カウンターオブジェクトは、内部状態として計数値を保持している
内部状態を外部から変更するには
countup操作
reset操作
“Value操作”はオブジェクトの内部状態を知るために使うもので、オブジェクトの内部状態を変えることはない
コンピューター内部にいるカウンター・オブジェクトは、countup、rest、valueにより操作する
オブジェクトに対する操作法をコンピューターの外にいる人間であるユーザーが知っているわけではない
境界が二つ出てくる
“数取器のソフトウェア的モデルの記述”は、プログラミングインターフェース
ユーザーインターフェースの情報は含まれない
Interface Counter {  countup() :void;  reset() :void;  value() :number; }
Signature Counter {  sort S  operation init:Void→S  operation counter:S→S  operation reset:S→S  operation value:S→Nat }
プログラミングインターフェース(仕様の記述)を理論的に扱う際にはそれを「指標(signature)」と呼ぶ
Sort S
カウンターオブジェクトの内部状態の集合をSとする
Operation init:Void→S
Init操作は、単元集合(単一の要素を持つ集合)VoidからSへの写像である
この操作はカウンター・オブジェクトを初期化(使用開始時の一回だけの設定)するために使う
Operation counter:S→S
Countup操作は、内部状態の集合SからSへの写像である
この種の写像を「状態遷移」と呼ぶ
Operation reset:S→S
Reset動作は、内部状態の集合SからSへの写像である
Init操作とは違い、いつでも使える
この写像も状態遷移である
Operation value:S→Nat
Value操作は、内部状態の集合Sから自然数の集合Natへの写像である
インターフェイスの概念的実装としての関手
有向グラフで表すと
実際の(コンピューターハードウェア上で動く)プログラムではなく
概念上の存在物として「実装」する
テキストとして書かれた7つの記号:S、init、Void、countup、reset、value、Natを
定項記号(前もって意味が確定している記号)と変項記号(意味が未定である記号)に分ける
1. 変項記号S:未定の集合を表す 2. 定項記号Void:意味は規定で、単元集合。数学的な書き方では 1。1={0}と約束する 3. 定項記号Nat:意味は規定で、自然数の集合。数学的な書き方ではN。N={0,1,2,…} 4. 変項記号init:未定の写像を示す。 5. 変項記号count:未定の写像を示す 6. 変項記号reset:未定の写像を示す 7. 変項記号value:未定の写像を示す
これらの記号に数学的実体を割り当てていく
「〜の意味は、….である」という表現を「M(〜) = …」という形に書き換える。MはMeaningかModel
S,Void,Natが有向グラフの点、init,countup,reset,valueが有向グラフの矢印
Mは有向グラフの点と矢印をそれぞれ、集合と写像に対応させる
有向グラフからはパスの圏が生成される
対応Mはパスに対しても拡張定義できる
パスは、カウンター・オブジェクトに送る一種の命令列と解釈できる
その命令列に応じた実際の動作・振る舞いが、Mで対応させた写像として概念的に(数学的に)意味づけられる
パスに対して拡張された対応Mは、実は関手になっている
関手とは次のような対応
1. 圏の対象に、別な圏または同じ圏の対象を対応づける
2. 圏の射に、別な圏または同じ圏の射を対応づける
3. 二つの射を合成(結合)した射は、対応した先での射の合成に対応づる
4. 対象の恒等射は、その対象の対応先対象の恒等射になる
実際にMは次の性質を持つ
1. パスの圏の対象である有向グラフの点に、集合圏の対象である集合を対応づける
2. パスの圏の射であるパスに、集合圏の射である写像を対応づける
3. 2つのパスを合成(結合)したパスは、対応した先での写像の合成に対応づけられる
4. ある点からの長さ0のパスは、その点の対応先集合の写像の合成に対応づけられる
残りは脱兎のごとくに――インデックス付き圏/ファイバー付き圏/インスティチューション
前節で定義した関手Mは
数取器の数学的モデルとして自然で標準的なもの
現実の数取器では形数値の上限がある
計数値が一桁(0から9まで)と仮定する
1. M(1S)={0,1,2,…,9} 2. M1(Void)=1={0} 3. M1(Nat)=N 4. M1(init)=map(1∋0 ↦ 0∈{0,1,2,…,9} 5. M1(countup)=map({0,1,2,…,9}∋k ↦ (if(k=9) then 9 else k+1∈{0,1,2,…,9}) 6. M1(reset)=map({0,1,2,..,9}∋k ↦ 0∈{0,1,2,…,9}) 7. M1(value)=map({0,1,2,..,9} ∋k ↦ k∈N)
この概念的カウンターは、内部の係数値が9になるとそれ以上は上がら位で停滞する
単一の指標(プログラミングの用語ではインターフェース、図示すれば有向グラフ)に対して
その数学モデルはいくらでもある
どのように選んでも「モデルは関手である」という事実は変わらない
指標Σを有向グラフとみなして作ったパスの圏をPathCat(Σ)とすると
指標Σのモデルとは
カウンターの場合でも”モデル=関手”は一つでなくたくさんあった
考えうる全ての”モデル=関手”の集合をFunctor(PathCat(Σ).Set)とする
関手の集合に自然変換と呼ばれる高次の対応を付け加えると
新しい圏を構成できる
関手圏をFunctorCat(PathCat(Σ).Sey)とする
この関手圏が指標Σのモデルたちを扱う適切な舞台になる
Model(Σ)とも書く
扱うべき指標は膨大にある、考えうる全ての指標と、指標との間の適切な対応を一緒に考えると、またしても圏が形成される
それを指標圏(signature category)と呼ぶ
具体的に構成された指標圏をSigと書く
Model(Σ)は圏、Σは圏Sigの対象
Σを動かすと、対応Σ ↦ Model(Σ)は、圏Sigの対象に圏を対応させることになる
圏は”圏の圏”CATの対象
Modelは「圏Sigの対象に圏CATの対象を対応づける」ことになる
「圏Sigの射に、圏CATの射を、反転して対応づける」こともできる
Modelは、Model:Sig →CATという反変関手(射の方向を反転させる関手)になる
値を”圏の圏”に取る反変関手は「インデックス付き圏(indexed category)」と呼ばれる
グロタンディーク構成(Grothendieck construction)という手順を施すことで
ファイバー付き圏(fibered category)が得られる
インデックス付き圏/ファイバー付き圏に適切な付加機能を加えると
後ぐえん&バストーる(Joseph Goguen and Rod Burstall)のインスティチューション(institution)と呼ばれる圏論的構造に仕立てることができる

【Sciences/Art】
科学の書き言葉としての圏論 / 谷村省吾

おことわり
数字の威力
代数化
数式はプロセスかプロダクトか
ゆるい合同性
代数化で可能になったこと
空間化

三種の矢
量の理論
科学は実在論か認識論か

普遍性とそのゆらぎ ――ネットワークの圏論的諸展開 / 春名太一

1はじめに
モノとしてのネットワーク理論
ネットワーク内のどの頂点や辺が重要であるのか
より多くの頂点と隣接している頂点が重要
より多くの最短パスが通過する頂点もしくは辺が重要
重要な頂点と隣接している頂点が重要である
ネットワークの内部構造が問題となる
主要な関心事
生物・社会・情報ネットワークなど実世界のネットワーク構造やダイナミクス
ネットワークの構造の特徴を定量化
定量化された特徴を再現するネットワークの数理モデル
圏論的ネットワーク理論は
ネットワークをプロセスとしてみなす
開いたネットワークを記述する一般的枠組みとして圏論的ネットワーク理論を提唱している
開いたネットワークは
電気回路や化学反応ネットワークなど、入出力のための接続部を持つ
開いたネットワーク同士は、接続部を通して「合成」することができる
接続部が対象、開いたネットワークが射
主要な関心は
ネットワーク自体の内部構成ではなく
外部から観察可能な開いたネットワークの振る舞い
化学反応ネットワークの場合
入力となる化学種の濃度・流入量と、出力となる化学種の濃度・流出量の間の定常状態における関係
開いたネットワーク同士の合成やモノダイル積で保存されるのかどうか
モノダイル積
接続部や開いたネットワークを「並置」する
合成
直列する
ネットワークの内部構造はブラックボックス化
ネットワークを射とみなすことを
「モノとしてのネットワーク(Network as Things)」に対して
「プロセスとしてのネットワーク(Networks as Process)」と呼ぶ
2圏論的ネットワーク理論の内在的展開
2‐1準備
米田拡張について有向ネットワークに関数限りで議論する
有向ネットワーク内の野次るとをプロセスとして考える
有向ネットワークは以下の4つ組からなる構造
頂点の集合
矢印の集合
与えられた矢印に対してその始点、終点となる頂点を対応ざる二つの写像
2‐2頂点はプロセスであり、矢印はプロセスとしての頂点間のインターフェイスである
頂点をプロセスとして考える

遺伝子調節ネットワーク
頂点は遺伝子
頂点は、他の遺伝子から調整を受け
DNAの転写と翻訳を経て他の遺伝子を調節しうるタンパク質を合成する
矢印は遺伝子間の調節の関係
「プロセスとしての頂点間のインターフェース」と見ることができる
神経ネットワーク
生態系ネットワーク
等の生物のネットワーク
2‐3矢印はモノであり、頂点はモノとしての矢印に対する制約である
矢印はモノであると考える

触媒応ネットワーク
触媒反応とは
C1+A→C1+C2といった化学反応式で描かれる化学反応
Aが触媒反応の基質
C2が生成物
C1が触媒分子
C2もある触媒反応における触媒分子の時
C1からC2に矢印を引くことで
注目する触媒分子たちを頂点とし、
それらの間の触媒反応による生成の関係を矢印とする
有向ネットワークが形成できる
触媒反応において
反応の基質が取り込まれて初めて反応が進行する
「触媒ネットワークの矢印は基質=モノ」という側面を持つ
触媒分子である頂点は
それに向かう矢印とそこから出ていく矢印があるとすれば
これらの矢印=モノを繋ぐ制約である
ここでの制約は
ある変化(ここでは基質の生成物へと変換)に作用し
その作用において注目されている側面は、その変化に影響を受けないモノ
制約の閉包
制約が別の制約を生み出す関係を矢印とした制約のネットワークは
どの頂点にも入っていく矢印があるという条件を満たすときに
制約の閉包とよばれる
2‐4普遍性とその帰結I――内側から開いたネットワーク
「頂点はプロセスであり、矢印はプロセスとしての頂点間のインターフェースである」というアイデアに関する普遍性
各頂点に対して、その頂点を始点側(もしくは終点側)として通過する側方パスの個数を数えることで、入力(もしくは出力)としての重要度をはする媒介中心性を得ることができる
側方パス
視点と終点を交互に共有する矢印の列
圏論的ネットワーク理論のようにあらかじめネットワークに対して入出力部を指定するのではなく
ネットワークの内部構造から入出力部の候補を選び出す
どのようにネットワークが内側から開きうるかを評価する
2‐5普遍性とその帰結Ⅱ――ネットワークの自己決定性の担体
「矢印はモノであり、頂点はモノとしての矢印に対する制約である」というアイデアに関する普遍性
Kauffmanのランダムなポリマーからなる触媒反応ネットワークのモデル(20)が生命の起源を説明するモデルとして妥当かどうかを議論した論文(21)において、触媒反応ネットワークにおける強連結成分は、基質が十分供給されているかぎりそれ自身とその周縁部分を維持することが可能であることから、おおよそ原始的な遺伝子型に相当し、周縁部分がおおよそ原始的な表現型に相当するのではないか、という仮説を述べている
3普遍性のゆらぎ
3‐1稠密性定理とVarelaの非対称な相補性
Varelaはその著書『生物学的自律性の諸原理』(未邦訳)(23)の「相補性のフレームワーク」と題された章において
システムの異なる記述間の関係を、相反するものではなく相補的なものとして扱うことが生物システムや認知システムを理解するのに有効であることを議論している
その際、圏論における随伴もその例として含めて、非対称な相補性という概念を提示している
例えば、「全体/全体を構成する部分」、「存在/生成」、「環境/システム」、「自律性/制御」などの対が挙げられている
これらはまとめて「何か(theit)/何かをもたらすプロセス(theprocessleadingtoit)」とよばれており、対の二つの項は同じ水準にあって対等な関係にあるのではなく、第一項が第二項を包摂するという、水準が重なり合う非対称な関係にあることが強調されている
3‐2臨界状態へと時間発展する適応的ネットワークモデル
一般に生物システムにおいては、与えられた環境における安定的な振舞いと環境変化への適応能を両立させることが問題となる
複雑系科学においては、システムの状態を安定状態と不安定状態の境界の臨界状態へともたらすことが一つの解とされ、そのメカニズムを理解することが研究課題となっている
4むすびにかえて――ランダムKan拡張
第3節で稠密性定理に適用した「普遍を個別で置き換える」という操作は、より一般のKan拡張に対しても適用できる。これをランダムKan拡張とよぶ
ランダムKan拡張にもとづいてべき乗則を生み出す異なるメカニズムのうちの三つ(臨界状態、優先的選択成長、SSR)を実現するモデルをそれぞれ構築することができる
ランダムKan拡張にもとづいてべき乗則を生み出す異なるメカニズムのうちの三つ(臨界状態、優先的選択成長、SSR)を実現するモデルをそれぞれ構築することができる

圏論の展開〜脱圏論への転回 / 郡司ペギオ幸夫

1はじめに
2圏論――異質な二者を比較可能な対に持ち込むアプローチ
3脱構築される圏
3‐1対比条件の脱構築
3‐2量子心理学の圏論・脱圏論的アプローチ
4おわりに

圏の図式からみた芸術の理論 ――穴・コホモロジー・アブダクション / 久保田晃弘

1同じであるとはどういうことか
位相空間の内在性
2オイラー標数からホモロジー群へ
3アーベル群と準同型写像
4認知形式としての数学モデル
5ホモロジー代数による推論の描写
6集合から圏へ
7アーベル圏と射の分解
8アート・ネクサスと芸術の圏
9関手としてのエージェンシー
10芸術作品とは何か
11図式主義とその内在性

【Philosophy】
圏論による現象学の深化 ――射の一元論・モナドロジー・自己 / 田口茂+西郷甲矢人

はじめに
1射の一元論――圏論と媒介論的現実観
2「同じであること」の媒介論的・圏論的解釈
3自他関係を圏論的に表現する――スライス圏を手がかりに
はじめに
スライス圏
自他関係
4モナドロジーから「媒介としての自己」へ
ライプニッツのモナドロジー
フッサールにおけるモナドと世界
スライス圏から元の圏を知りうるか?
一人称の底へと滲みだす自己
謝辞

数学の構造概念はフランスの構造主義にいかなる理解をもたらすか ――ブルバキ、カヴァイエス、ロトマン、そして圏論を手引きにして / 中村大介

はじめに
1ブルバキの「構造」概念再考
2カヴァイエスにおける「構造」概念と学知の「刷新」について
3ロトマン――ブルバキの「密教」(?)、そして圏論との共振
終わりに

アラン・バディウの哲学と数学の関係についての批判的考察 ――「概念の哲学」のポスト・カヴァイエス的展開の諸相という観点から / 近藤和敬

バディウと圏論
カヴァイエスの「概念の哲学」とその後の展開
バディウにおける圏論とくにトポス理論への言及について
結論と考察

【連載●科学者の散歩道●第六九回】
新たな居場所を求めて ――人格教育と科学 / 佐藤文隆

ウイルスは文理融合の戦略
文理分離のきっかけ
理系は兵隊か
図体の大きな万年青年
性差、巨匠、アジア化…
ドイツ国民教育の歴史をみる
科学の二つの効用――応用と人格教育
教育による国づくり
純粋数学が学校教育に責任を持つ
専門家気質
ハーバマスの裁定
正しさが消失する
科学と人格教育
自然と人間
「詩はヒロシマをながめたときにうまれる」
「何故ビッグバンと考えられるか」

【研究手帖】
人間の差異と今日の現象学 / 酒井麻依子

コメント

  1. […] 現代思想2020年7月号  特集=圏論の世界 ――現代数学の最前線 読書メモ […]

  2. 〇△▢乃庭 より:

    ≪…ブルバキの「密教」(?)…≫的に、数の言葉ヒフミヨ(1234)を【HHNI眺望】で観るには、3冊の絵本で・・・

     絵本「哲学してみる」
     絵本「わのくにのひふみよ」
     絵本「もろはのつるぎ」

  3. √6意味知ってると舌安泰 より:

    1と0カオスコスモス膜になる

    膜により離散連続出入りさす

    πと1〇と▢のなぞり逢

  4. 三文字(i e π)寄れば文殊のヒフミヨ より:

    ≪…圏論的解釈…≫で、数の言葉ヒフミヨ(1234)を想うと次の記事が目にとまる・・・

     1・2・3・4次元が、計算できる数というコトは、1次元のお友達(数体)2次元のお友達(数体)3次元のお友達(数体)4次元のお友達(数体)と[0で割ってはいけない]を[0で纏める方程式]から生まれるお友達(数体)が一致協力して、物事が計算できる世界を観る・・・
     国語に[主語になるも述語になれない][述語になるも主語になれない]を乗り越えているのが数の言葉ヒフミヨ(1234)であるとしたい・・・
     数の言葉の文脈命題の量化(量化って)は、『離散的有理数の組み合わせによる多変数関数』が『存在量化確度方程式』と『存在量化創発摂動方程式』に生るのを、数の言葉の[1]と[0]とで纏める上げている。

     これは、【 量化って エッセイ 】の極々簡単な計算事例の存在量化で、数の成り立ちを観ているようだ・・・

     離散数(算数)計算と連続数(数学)計算を圏論的に説明できるのを待ち望んでいる・・・

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