ISWC2002論文集より

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ISWC2002論文集より

知識情報をハンドリングする人工知能技術の一つであるセマンティックウェブ技術の国際学会であるISWC2002より。

第一回の国際的セマンティックウェブ会議の論文集。多くの論文が、データをつないだ後のフレキシブルなデータの処理であるWebサービスの統合に関して述べられている。 詳細としては、リサーチペーパーでは、マッチング、検索、オントロジー、RDF等に関して、ポジションペーパーではヨーロッパにおける実施例やセマンティックウェブを導入ためのステップについて、そして最後のシステム概要では、研究論文のセマンティックウェブシステム、エンタープライズへの応用、エージェントを用いたスケジュール管理、ビジュアルアナリティクス等について述べられている。目次は以下の通り。 例えばposter sessionで発表されている”Learning Organizational Memory”に関しては、論文そのものはネット上でも見つける事ができないが、それらに触発された組織記憶や個人記憶の扱いに関する知識マネジメントの論文ややHuman Resource Management関連の論文は数多く見つける事ができる。

組織や個人の知識マネジメントの具体的な例としては、テキストコンテンツの機械学習によるクラスター分析による組織内のナレッジの見える化や、テキストコンテンツのリピート数をワードクラウドで見える化したものと組み合わせたもの等ある。これらの領域は現在でも「働き方改革」のキーワードの元様々な検討がなされている。20年前のアプローチではtextコンテンツとして構造化されたデータが中心だった為、データの濃度が薄くそれらから抽出されたパターンを可視化しても知識の可視化としての厚みがなく、実用という観点から不十分なものであったが、近年の技術の発展により、例えば非構造化されたデータとして組織内で交わされた会話の情報を音声認識して利用することで、古くから言われてきた”暗黙知”と呼ばれる組織memoryにアプローチすることが可能になる等知識の可視化にも厚みを持たせることが可能になりつつある。

またデータの見える化の手法に関してもD3.jsのような様々なデータ可視化技術のセットが容易に利用可能になり、例えばZoomable Circle Packingを使うことでクラスター化した知識ドメインの見える化を行ったり、Sequences Sunburstのようなツールで組織内知識の階層構造を提示したり、あるいは会話の情報に注目して人と人、コンテキストとコンテキストの関係の時系列の変化をTemporal Force-Directed Graphのようなツールを使って可視化する手法など様々なアプローチが考えられる。

データのパターンの認識に関しても同様に様々なアプローチが可能となっている。スペクトラルクラスタリング等の関係データ学習の手法や、トピックモデルのアプローチ、またベイズモデル等のシミュレーション的な手法の適用は、単純な機械学習の手法しかなかった時代には困難だった知識のパターンの抽出を可能とする。これらの手法の詳細に関しては別途記載をする予定である。

SemanticWeb技術はweb技術を起点にして人の知識やコミュニケーション等様々なソリューションを考えることができる。それらの過去の様々なアプローチを見直すことは、新たなアイデアの起点となるだけでなく、ソリューションを検討するためのトレーニングにもなると考えられる。参考までに2002年ISWCのposter sessionの残りの題目を掲載しておく。

Invited Papers
(招待論文)
  Semantic Web Enabled Web Services
  (セマンティックウェブ対応のウェブサービス)
  The Grid, Grid Services and the Semantic Web
  (グリッド、グリッドサービス、セマンティックウェブ)
Research Papers
(研究論文)
  Matching RDF Graphs
  (マッチングRDFグラフ)
  Layering the Semantic Web: Problems and Directions
  (セマンティック・ウェブのレイヤリング。問題点と方向性)
  Notions of Indistinguishability for Semantic Web Languages
  (セマンティック・ウェブ言語のための識別不可能性の概念)
  The Usable Ontology: An Environment for Building and Assessing a Domain Ontology
    (使えるオントロジー: ドメインオントロジーの構築と評価のための環境)
  Sesame: A Generic Architecture for Storing and Querying RDF and RDF Schema
    (Sesame: RDFおよびRDFスキーマの保存と検索のための汎用アーキテクチャ)
  A Formal Model for Topic Maps
  (トピックマップの形式的モデル)
  Towards High-Precision Service Retrieval
  (高精度なサービス検索を目指して)
  Automatic Generation of Java/SQL Based Inference Engines from RDF Schema and RuleML
  (RDFスキーマとRuleMLからのJava/SQLベースの推論エンジンの自動生成)
  Ontology-Based Integration of XML Web Resources
  (オントロジーベースのXMLウェブリソースの統合)
  Benchmarking RDF Schemas for the Semantic Web
  (セマンティックWebのためのRDFスキーマのベンチマーク)
  Building the Semantic Web on XML
  (XMLでセマンティック・ウェブを構築する)
  Trusting Information Sources One Citizen at a Time
  (情報源の信頼性一度に一人の市民)
  Querying the Semantic Web: A Formal Approach
    (セマンティック・ウェブへの問い合わせ。フォーマルなアプローチ)
  Semantic Configuration Web Services in the CAWICOMS Project
  (CAWICOMSプロジェクトにおけるセマンティック・コンフィギュレーション・ウェブサービス)
  Integrating Vocabularies: Discovering and Representing Vocabulary Maps
  (ボキャブラリーを統合する。ボキャブラリーマップの発見と表現)
  OntoEdit: Collaborative Ontology Development for the Semantic Web
  (OntoEdit: セマンティックウェブのためのコラボレーションによるオントロジー開発)
  Towards a Modification Exchange Languagefor Distributed RDF Repositories
  (分散型RDFリポジトリのための交換言語の最適化を目指して)
  Representing Disjunction and Quantifiers in RDF
  (RDFでの接続詞と数量詞の表現)
  Towards Semantic Web Mining
  (セマンティック・ウェブ・マイニングを目指して)
  Bringing Together Semantic Web and Web Services
  (セマンティックウェブとウェブサービスの融合)
  Global vs. Community Metadata Standards: Empowering Users for Knowledge Exchange
  (メタデータ・スタンダードのグローバル化とコミュニティ化。知識交換の力をユーザー与える)
  Taking the RDF Model Theory Out for a Spin
    (RDFモデル理論を使ってみる)
  Concurrent Execution Semantics of DAML-S with Subtypes
  (サブタイプを持つDAML-Sの同時実行セマンティクス)
  Semantic Matching of Web Services Capabilities
  (Webサービス機能のセマンティックマッチング)
  DAML-S: Web Service Description for the Semantic Web
  (DAML-S: セマンティックウェブのためのウェブサービス記述)
  TRIPLE—A Query, Inference, and Transformation Language for the Semantic Web
  (TRIPLE-A セマンティックウェブのためのクエリ、推論、および変換言語)
  A Data Integration Framework for e-Commerce Product Classification
  (電子商取引における商品分類のためのデータ統合フレームワーク)
Position Papers
(ポジションペーパー)
  Nonmonotonic Rule Systems on Top of Ontology Layers
  (オントロジーレイヤー上での非単調なルールシステム)
  An RDF Net API
  (RDFネットのAPI)
  A Mini-experiment in Semantic Annotation
  (セマンティックアノテーションのミニ実験)
  SWAD-Europe: Semantic Web Advanced Development in Europe
  (SWAD-Europe:ヨーロッパにおけるセマンティックウェブの先進的開発)
  Preemptive Reification
  (先進技術の具体化)
  Four Steps Towards the Widespread Adoption of a Semantic Web
    (セマンティック・ウェブの普及に向けた4つのステップ)
System Descriptions
(システム概要)
  Three Implementations of SquishQL, a Simple RDF Query Language
  (シンプルなRDFクエリ言語「SquishQL」の3つの実装方法)
  ClaiMaker: Weaving a Semantic Web of Research Papers
  (ClaiMaker: 研究論文のセマンティック・ウェブを作る)
  Business and Enterprise Ontology Management with SymOntoX
  (SymOntoXによるビジネスとエンタープライズのオントロジー管理)
  Is Participation in the Semantic Web Too Difficult?
  (セマンティック・ウェブへの参加は難しいのか?)
  Consistency Checking of Semantic Web Ontologies
  (セマンティック・ウェブ・オントロジーの整合性チェック)
  WebThemeTM: Understanding Web Information through Visual Analytics
  (WebThemeTM:ビジュアル・アナリティクスによるWeb情報の理解)
  Browsing Schedules - An Agent-Based Approach
  (スケジュールの閲覧 - エージェントベースのアプローチ)

次回はISWC2003について述べる。

コメント

  1. […] ISWC2002 […]

  2. […] 第二回の国際的セマンティックウェブ会議の論文集。第一回のISWC2002と比べて、内容が多岐にわたっている。内容としては基礎的な部分でOWLやRDFSをweb連携について述べられ、次にオントロジーを使った推論、そして前回でも多く述べられていたセマンティックウェブサービス、更にデータの統合を語るさ際に重要なデータの信頼性やセキュリティ、そしてウェブサービス統合の為のエージェントシステムや、情報検索、マルチメディアと続いている。 […]

  3. […] ISWC2002論文集より […]

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