機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例

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機械学習における並列分散処理について

機械学習における並列分散処理は、データや計算を複数の処理ユニット(CPU、GPU、コンピュータクラスタなど)に分散し、同時に処理することで処理時間の短縮やスケーラビリティの向上を実現するもので、大規模なデータセットや複雑なモデルを処理する際に重要な役割を果たすものとなる。以下に、機械学習におけるそれらの一般的な手法とその実装方法について述べる。

  • データ並列処理: データ並列処理は、データを複数の処理ユニットに分割し、それぞれのユニットで独立に処理する手法であり、各処理ユニットは部分データセットを取得し、モデルの学習や予測を並列に実行するものとなる。最終結果は個々の処理ユニットの処理結果を集約することで得られ、例えば、TensorFlowライブラリを使用したデータ並列処理の実装例では以下のようになる。
import tensorflow as tf
import numpy as np

# データの準備
X = ...  # 特徴ベクトル
y = ...  # ターゲットラベル

# データを分割して各処理ユニットに配布
X_split = np.array_split(X, num_workers)  # num_workersは処理ユニットの数
y_split = np.array_split(y, num_workers)

# 各処理ユニットで学習を実行
model = tf.keras.Sequential([...])  # モデルの定義
optimizer = tf.keras.optimizers.SGD(...)  # オプティマイザの定義
for i in range(num_workers):
    with tf.device(f'/cpu:{i}'):  # 処理ユニットの指定
        model.compile(optimizer=optimizer, ...)
        model.fit(X_split[i], y_split[i], ...)

# 処理結果の集約
aggregated_model = tf.keras.Sequential([...])
aggregated_model.set_weights(model.get_weights())

上記の例では、データを複数の処理ユニットに分割し、各ユニットで学習を行ってい流ものを示している。各ユニットは独立にモデルを構築し、部分データセットで学習を実行し、最後に、各ユニットの重みを集約して最終モデルを得ている。

  • モデル並列処理: モデル並列処理は、複雑なモデルを複数の処理ユニットに分割し、それぞれのユニットでモデルの一部を処理する手法となる。ここでの各処理ユニットは部分モデルを担当し、処理結果を他のユニットと共有しながらモデルの学習や予測を実行している。以下に、PyTorchライブラリを使用したモデル並列処理の実装例を示す。
import torch
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim

# データの準備
X = ...  # 特徴ベクトル
y = ...  # ターゲットラベル

# モデルの分割と配置
model_part1 = nn.Sequential([...])  # モデルの一部
model_part2 = nn.Sequential([...])  # モデルの他の一部
model_part1.to('cuda:0')
model_part2.to('cuda:1')

# 分割されたデータの配置
X_part1 = X[:, :100]  # データの一部
X_part2 = X[:, 100:]  # データの他の一部
y_part1 = y  # ラベル

# モデルの学習と予測
criterion = nn.CrossEntropyLoss()
optimizer1 = optim.SGD(model_part1.parameters(), lr=0.001)
optimizer2 = optim.SGD(model_part2.parameters(), lr=0.001)
for epoch in range(num_epochs):
    output_part1 = model_part1(X_part1)
    output_part2 = model_part2(X_part2)
    loss1 = criterion(output_part1, y_part1)
    loss2 = criterion(output_part2, y_part1)
    optimizer1.zero_grad()
    optimizer2.zero_grad()
    loss1.backward()
    loss2.backward()
    optimizer1.step()
    optimizer2.step()

上記の例では、モデルを2つの処理ユニットに分割し、それぞれのユニットで一部のデータを処理している。モデルの一部はcuda:0に、他の一部はcuda:1に配置され、それぞれで学習が行われ、最終的な予測は、両方のユニットの出力を組み合わせて得られる。

機械学習における並列分散処理は、処理効率の向上や大規模データの取り扱い、複雑なモデルの訓練などにおいて重要な役割を果たし、各フレームワークやライブラリには、並列分散処理をサポートする機能やツールが備わっているため、実装においてそれらを活用することが推奨されている。

機械学習における並列分散処理に用いられるライブラリやプラットフォーム

機械学習における並列分散処理を実現するために、さまざまなライブラリやプラットフォームが利用されている。以下に代表的なものについて述べる。

  • TensorFlow: TensorFlowは、Googleが開発したオープンソースの機械学習フレームワークであり、並列分散処理をサポートしているものとなる。TensorFlowは、データ並列処理やモデル並列処理を実現するための分散ストラテジーやAPIを提供しており、複数のデバイスやマシン上での並列処理を容易に行うことができる。
  • PyTorch: PyTorchは、Facebookが開発した機械学習フレームワークであり、並列分散処理をサポートしている。PyTorchでは、torch.nn.DataParalleltorch.nn.parallel.DistributedDataParallelなどの機能を使用して、データ並列処理やモデル並列処理を実装することができる。
  • Horovod: Horovodは、Uberが開発した分散深層学習フレームワークであり、TensorFlowやPyTorchなどの他のフレームワークと統合して使用することができるものとなる。Horovodは、データ並列処理やモデル並列処理を容易に行うためのツールキットを提供し、複数のマシン上でのトレーニングを効率的に行うことを可能としている。
  • Apache Spark: Apache Sparkは、大規模データ処理を行うための分散処理プラットフォームであり、機械学習もサポートしているものとなる。Sparkは、データの並列処理やモデルの分散トレーニングに特化したAPIを提供し、スケーラビリティの高い機械学習アプリケーションの開発を支援することを可能としている。

次に、これら並列分散処理の適用事例について述べる。

機械学習における並列分散処理の適用事例について

機械学習における並列分散処理は、以下のような適用事例で効果的に活用されている。

  • ビッグデータ処理: 大量のデータを処理する際に、並列分散処理は非常に重要となる。データ並列処理を使用して、データを複数のノードに分割し、並列に処理することで、データ処理の効率を向上させることができ、例えば、分散データ処理フレームワークであるApache Sparkを使用して、大規模なデータセットの前処理や特徴抽出を並列に行うことが可能となる。
  • モデルトレーニング: 複雑な機械学習モデルのトレーニングは、膨大な計算リソースを必要とする場合がある。モデル並列処理を使用して、モデルを複数のノードに分割し、並列に学習することで、トレーニング時間を大幅に短縮することができる。また、ハイパーパラメータチューニングなどの手法も並列分散処理を活用して行われることがある。
  • リアルタイム予測: リアルタイムでの予測や推論を行う場合、処理速度が重要となる。モデルのパラメータを複数のノードに分散し、並列に予測を行うことで、高速なリアルタイム処理を実現することができる。これは、オンライン広告のリアルタイムパーソナライゼーションや自動運転などの応用においては重要な要素となる。
  • ハイパーパラメータ探索: モデルのハイパーパラメータ探索は、機械学習のパフォーマンス向上において重要だが、計算コストが非常に高い場合がある。この課題に対して、並列分散処理を適用することで、異なるハイパーパラメータの組み合わせを複数のノードで同時に評価し、最適な組み合わせを探索することが可能となる。

これらは一部の適用事例であり、並列分散処理はさまざまな機械学習タスクや問題において効果を発揮する。具体的な適用の際には、データの並列処理やモデルの並列処理、リアルタイム処理やハイパーパラメータ探索など、問題に応じて適切な並列分散処理の手法を選択することが重要となる。

次に、具体的な実装例としてApache Sparkを用いたケースについて述べる。

Apache Sparkの環境立ち上げについて

Apache Sparkの環境設定と立ち上げにはいくつかの手順があり、”分散データ処理を可能とするApache Sparkの導入と環境設定“にも述べているが、ここでは最もシンプルな手順について述べている。

  1. Javaのインストール: Apache SparkはJavaで動作するため、まずJavaをインストールする必要がある。Oracleの公式ウェブサイトからJava Development Kit (JDK)をダウンロードし、インストールする。
  2. Sparkのダウンロード: Apache Sparkの公式ウェブサイトから、使用したいバージョンのSparkをダウンロードする。Sparkは事前にビルドされているため、単一のバイナリファイルとして提供される。
  3. Sparkの展開: ダウンロードしたSparkファイルを適当なディレクトリに展開する。展開後のディレクトリは、Sparkのホームディレクトリとなる。
  4. 環境変数の設定: Sparkの実行には、環境変数の設定が必要となる。SPARK_HOMEという環境変数を作成し、Sparkのホームディレクトリへのパスを指定する。また、PATH環境変数にもSparkのバイナリディレクトリへのパスを追加する。
  5. 設定ファイルの編集: Sparkの設定ファイルを編集して、必要な設定を行う。SPARK_HOME/confディレクトリにあるspark-defaults.confファイルを編集し、クラスターの設定やログの保存場所などを指定する。
  6. Sparkの起動: Sparkを起動するには、コマンドラインからspark-submitコマンドを使用する。spark-submitコマンドには、実行するアプリケーションのパスや必要な引数を指定し、また、マスターのURLやデプロイモードなどの設定も指定できる。

次にそれらを使った分散処理の実装例について述べる。

Apache Sparkの実装例について

Apache Sparkは、大規模データ処理を行うための分散処理プラットフォームであり、機械学習もサポートしているものとなる。以下に、Apache Sparkを使用した機械学習の実装例について述べる。

データの読み込みと前処理: Apache Sparkは、さまざまなデータソースからデータを読み込むための機能を提供している。以下は、CSV形式のデータを読み込んで前処理を行う例となる。

from pyspark.sql import SparkSession
from pyspark.ml.feature import StringIndexer, VectorAssembler
from pyspark.ml import Pipeline

# Sparkセッションの作成
spark = SparkSession.builder.getOrCreate()

# データの読み込み
data = spark.read.csv('data.csv', header=True, inferSchema=True)

# 前処理パイプラインの構築
string_indexer = StringIndexer(inputCol='label', outputCol='label_index')
assembler = VectorAssembler(inputCols=['feature1', 'feature2'], outputCol='features')
pipeline = Pipeline(stages=[string_indexer, assembler])

# データの変換
transformed_data = pipeline.fit(data).transform(data)

上記の例では、CSVファイルからデータを読み込んでおり、その後、ラベルのエンコーディングと特徴ベクトルの結合を行う前処理パイプラインを構築し、データを変換している。

機械学習モデルの学習と評価: Apache Sparkは、さまざまな機械学習アルゴリズムを提供している。以下は、分類タスクにおけるロジスティック回帰モデルの学習と評価の例となる。

from pyspark.ml.classification import LogisticRegression
from pyspark.ml.evaluation import BinaryClassificationEvaluator
from pyspark.ml.tuning import ParamGridBuilder, CrossValidator

# モデルの学習データとテストデータへの分割
train_data, test_data = transformed_data.randomSplit([0.7, 0.3], seed=42)

# モデルの学習
lr = LogisticRegression(featuresCol='features', labelCol='label_index')
param_grid = ParamGridBuilder().addGrid(lr.regParam, [0.01, 0.1]).build()
evaluator = BinaryClassificationEvaluator(metricName='areaUnderROC')
cv = CrossValidator(estimator=lr, estimatorParamMaps=param_grid, evaluator=evaluator, numFolds=5)
cv_model = cv.fit(train_data)

# モデルの評価
predictions = cv_model.transform(test_data)
auc = evaluator.evaluate(predictions)

上記の例では、データを学習データとテストデータに分割し、ロジスティック回帰モデルを学習するものとなる。ハイパーパラメータのチューニングはクロスバリデーションを使用して行い、テストデータでの予測結果を評価している。

分散処理の実行: Apache Sparkは、分散処理を容易に実行するためのクラスタマネージャや分散ファイルシステムとの連携機能も提供している。以下に、Sparkクラスタ上での分散処理の実行例について述べる。

from pyspark import SparkConf
from pyspark import SparkContext

# Sparkコンフィグの設定
conf = SparkConf().setAppName('MyApp').setMaster('spark://localhost:7077')
sc = SparkContext(conf=conf)

# RDDの作成と操作
rdd = sc.parallelize([1, 2, 3, 4, 5])
rdd_squared = rdd.map(lambda x: x ** 2)
result = rdd_squared.collect()

上記の例では、Sparkコンフィグを設定し、Sparkコンテキストを作成している。その後、RDDを作成し、マップ操作を適用して各要素を二乗している。最終的な結果はcollect()メソッドを使用して収集される。

Apache Sparkは、データの前処理からモデルの学習、評価、分散処理の実行まで、さまざまな機械学習タスクをサポートしているツールとなる。

次にクラウド環境(AWS)での並列分散処理について述べる。

AWSでの並列分散処理による機械学習について

AWS(Amazon Web Services)を用いて並列分散処理を行う場合、上記のsparkをコンテナ上に構築することがシンプルな利用法となるが、ここではそれ以外のアプローチを利用した。AWSの利用による機械学習ワークロードの並列分散処理による実行について述べる。

AWSでの並列分散処理による機械学習には、以下のようなサービスやアプローチがある。

  • Amazon Elastic MapReduce(EMR):EMRは、HadoopやSparkなどのオープンソースのフレームワークを使用して、大規模なデータセットを分散処理するためのマネージドサービスとなる。EMRを使用すると、クラスタを作成し、複数のノードでタスクを並列に実行することができる。以下にAmazon Elastic MapReduce(EMR)を使用した環境立ち上げと、それらを用いた実装の手順の概要について述べる。
    1. AWS Management Consoleにサインインする。
    2. EMRコンソールに移動する。
    3. 「クラスタを作成する」をクリックする。
    4. 「基本設定」セクションで、クラスタの名前やログフォルダの場所などの基本情報を設定する。
    5. 「ソフトウェア設定」セクションで、使用するHadoopバージョンや追加のソフトウェアパッケージ(Spark、Prestoなど)を選択する。
    6. 「ハードウェア設定」セクションで、マスターノードとコアノードの数、インスタンスタイプなどを指定する。
    7. 「セキュリティ設定」セクションで、EC2キーペアやセキュリティグループなどのセキュリティ関連の設定を構成する。
    8. 「起動設定」セクションで、起動時に実行されるスクリプトやジョブフローを指定する。
    9. 「ステップ」セクションで、実行するジョブの詳細を設定する。これにより、例えば、SparkやHiveのジョブを指定することができるようになる。
    10. 「Bootstrap Actions」セクションでは、クラスタの起動時に実行される追加のスクリプトを指定することができる。
    11. 必要な設定が完了したら、「クラスタを作成」をクリックして、EMRクラスタを作成する。

これでEMRクラスタが作成され、機械学習のタスクを実行する準備が整う。

実装例としては、Sparkを使用してデータの前処理やモデルトレーニングを行うケースについて述べる。

    1. EMRクラスタを作成する。
    2. クラスタが起動したら、EMRマスターノードへのSSHアクセスを設定する。
    3. SSH経由でマスターノードに接続し、Sparkコードを作成する。ここでは例えば、PySparkを使用して以下のようなコードを作成することができる。
from pyspark import SparkContext, SparkConf

conf = SparkConf().setAppName("MySparkJob")
sc = SparkContext(conf=conf)

# データの読み込みや前処理のコードを記述します

# モデルのトレーニングや推論のコードを記述します

sc.stop()
    1. コードを実行するために、スクリプトファイル(例: my_spark_job.py)を作成する。
    2. SSH経由でマスターノードに戻り、以下のコマンドを実行してSparkジョブを実行する。
spark-submit my_spark_job.py

これにより、EMRクラスタ上でSparkが実行され、指定したコードが並列に実行される。注意点としては、EMRは一時的なクラスタとして使用することもできるが、本番環境での使用を考える場合は適切な設計と管理が必要であり、また、実際の実装にはデータの読み込みや保存、モデルの管理など、さまざまな要素が関わるため、具体的なニーズやデータの特性に応じて実装を調整も考慮する必要がある。

  • AWS Batch:AWS Batchは、バッチ処理ワークロードをスケジュールして実行するためのサービスとなる。機械学習のモデルトレーニングや推論などのタスクを、複数のコンピューティングリソースに分散して並列実行することができる。以下に以下に、AWS Batchを使用した機械学習の実装例の手順を示す。
    1. AWS Management Consoleにサインインする。
    2. AWS Batchコンソールに移動する。
    3. 「ジョブキューの作成」をクリックして、ジョブキューを作成する。ジョブキューは、ジョブの実行を管理するキューとなる。
    4. 「ジョブ定義の作成」をクリックして、ジョブ定義を作成する。ジョブ定義は、ジョブの実行方法とパラメータを定義する。
    5. ジョブ定義で、使用するコンピューティング環境を設定する。AWS Batchは、EC2インスタンス上でジョブを実行する。
    6. ジョブ定義で、実行するコンテナイメージを指定する。このイメージには、機械学習フレームワークや必要なパッケージ、モデルトレーニングスクリプトなどが含まれる。
    7. ジョブ定義で、実行するコマンドや引数を指定する。これは、モデルトレーニングスクリプトや推論スクリプトのパスや引数となる。
    8. ジョブ定義で、必要なリソース(CPU、メモリ)を設定する。
    9. ジョブ定義が作成されたら、「ジョブの作成」をクリックして、ジョブを作成する。ジョブは、ジョブ定義を使用して実行されるタスクとなる。
    10. ジョブの作成時に、ジョブパラメータや入力データの場所などを指定する。
    11. ジョブが作成されると、AWS Batchは指定されたジョブキュー内でジョブをスケジュールし、実行する。

これにより、AWS Batchは複数のジョブを並列に実行し、機械学習のタスクを分散処理することができるようになる。実装例としては、以下の手順を考える。

    1. AWS Batchコンソールに移動し、「ジョブキューの作成」をクリックする。
    2. ジョブキューを作成し、ジョブの優先順位やリソース割り当てポリシーなどを設定する。
    3. 「ジョブ定義の作成」をクリックして、ジョブ定義を作成する。
    4. ジョブ定義で、実行に使用するDockerコンテナイメージを指定する。例えば、TensorFlowやPyTorchなどの機械学習フレームワークが含まれたイメージを使用する。
    5. ジョブ定義で、実行するスクリプトやコマンド、引数を指定する。例えば、モデルトレーニングスクリプトのパスと引数を指定する。
    6. ジョブ定義で、必要なリソース(CPU、メモリ)を設定する。
    7. 「ジョブの作成」をクリックして、ジョブを作成する。
    8. ジョブの作成時に、ジョブパラメータや入力データの場所などを指定する。
    9. ジョブが作成されると、AWS Batchは指定されたジョブキュー内でジョブをスケジュールし、実行する。
  • AWS Step Functions:Step Functionsは、ワークフローを作成して実行するためのサービスであり、機械学習のパイプラインを構築するのに役立つものとなる。これにより、複数のステップを定義し、それらを並列に実行したり、条件に基づいて処理のフローを制御したりすることができる。以下に、AWS Step Functionsを使用した機械学習の実装例の手順を示す。
    1. AWS Management Consoleにサインインする。
    2. AWS Step Functionsコンソールに移動する。
    3. 「ステートマシンの作成」をクリックする。
    4. ステートマシンの定義を作成する。定義は、タスクの順序、分岐、並列処理などを記述したJSON形式のドキュメントとなる。
    5. ステートマシンの定義で、機械学習のタスクを記述する。例えば、データの前処理、モデルのトレーニング、推論のタスクを定義する。
    6. タスクを並列に実行するために、Step Functionsの「Parallel」ステートを使用する。これにより、複数のタスクが同時に実行される。
    7. 各タスクは、AWS Lambda関数やAWS Glueジョブなどの実行リソースを指定することができる。また、異なるAWSサービスや外部APIとの連携も可能となる。
    8. ステートマシンの定義が完了したら、「ステートマシンの作成」をクリックして、Step Functionsステートマシンを作成する。
    9. ステートマシンが作成されたら、入力データを指定してステートマシンを開始する。

これにより、AWS Step Functionsは定義されたワークフローを実行し、機械学習のタスクを並列分散処理で実行することができるようになる。実装例としては、以下の手順を考える。

    1. AWS Step Functionsコンソールに移動し、「ステートマシンの作成」をクリックする。
    2. ステートマシンの定義で、順次および並列のステートを記述する。例えば、以下のような定義を考える。
{
  "StartAt": "DataPreprocessing",
  "States": {
    "DataPreprocessing": {
      "Type": "Task",
      "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:DataPreprocessingFunction",
      "End": true
    },
    "ModelTraining": {
      "Type": "Task",
      "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:ModelTrainingFunction",
      "End": true
    },
    "Inference": {
      "Type": "Task",
      "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:InferenceFunction",
      "End": true
    },
    "ParallelTasks": {
      "Type": "Parallel",
      "Branches": [
        {
          "StartAt": "DataPreprocessing",
          "States": {
            "DataPreprocessing": {
              "Type": "Task",
              "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:DataPreprocessingFunction",
              "End": true
            }
          }
        },
        {
          "StartAt": "ModelTraining",
          "States": {
            "ModelTraining": {
              "Type": "Task",
              "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:ModelTrainingFunction",
              "End": true
            }
          }
        },
        {
          "StartAt": "Inference",
          "States": {
            "Inference": {
              "Type": "Task",
              "Resource": "arn:aws:lambda:REGION:ACCOUNT_ID:function:InferenceFunction",
              "End": true
            }
          }
        }
      ],
      "End": true
    }
  }
}
    1. 各ステートのResourceには、実行するLambda関数のARN(Amazon Resource Name)を指定する。
    2. ステートマシンの作成をクリックして、AWS Step Functionsステートマシンを作成する。
    3. ステートマシンが作成されたら、入力データを指定してステートマシンを開始する。

AWS Step Functionsは、ステートマシンの定義に基づいてタスクを並列に実行し、各タスクの完了を監視し、タスク間の依存関係や分岐、ループなどの制御ロジックを柔軟に定義することができる。

  • AWS Glue:Glueは、データの準備と変換を行うための完全マネージドのETL(Extract, Transform, Load)サービスとなる。これを用いることで、大規模なデータセットの前処理や特徴量エンジニアリングなどを並列に行うことが可能となる。以下に、AWS Glueを使用して機械学習ワークロードを実装する手順の概要について述べる。
    1. AWS Management Consoleにサインインする。
    2. AWS Glueコンソールに移動する。
    3. 「ジョブの作成」をクリックする。
    4. 「ジョブの設定」セクションで、ジョブの名前やロール、ジョブタイプ(スクリプトまたはApache Spark)を指定する。
    5. 「データソース」セクションで、入力データのソース(S3バケット、RDBMS、データウェアハウスなど)を指定する。
    6. 「ターゲット」セクションで、出力データのターゲット(S3バケット、RDBMS、データウェアハウスなど)を指定する。
    7. 「ジョブスクリプト」セクションで、ジョブスクリプトを記述する。ジョブスクリプトは、入力データの変換やクリーニング、特徴量エンジニアリング、モデルのトレーニングなどの機械学習のタスクを記述している。
    8. 「ジョブの実行設定」セクションで、ジョブの実行に関連する設定を構成する。例えば、リソースの割り当て、ジョブのスケジューリング、トリガーなどを指定できる。
    9. 必要な設定が完了したら、「ジョブの作成」をクリックして、AWS Glueジョブを作成する。

これでAWS Glueジョブが作成され、機械学習のタスクが並列分散処理で実行される準備が整った。次に実装例として、以下の手順を考えてみる。

    1. AWS Glueコンソールに移動し、「ジョブの作成」をクリックする。
    2. ジョブの設定で、ジョブの名前やロール、ジョブタイプを指定する。
    3. データソースとしてS3バケット内のデータを指定する。
    4. ターゲットとして別のS3バケットを指定し、モデルのトレーニング結果や予測結果を保存する。
    5. ジョブスクリプトを作成し、機械学習のタスクを記述する。例えば、Pythonのパンダスやscikit-learnライブラリを使用してデータの前処理やモデルのトレーニングを行うコードを記述する。
    6. ジョブの実行設定で、リソースの割り当てやジョブのスケジューリングを設定する。
    7. ジョブの作成をクリックして、AWS Glueジョブを作成する。

AWS Glueは、指定したデータソースやターゲットが大規模である場合でも、自動的に並列分散処理を行う。また、GlueはApache Sparkをバックエンドに使用しているため、高速な処理とスケーラビリティが提供されている。

参考情報と参考図書

並列分散処理による機械学習の詳細情報としては”機械学習における並列分散処理“に述べている。そちらも参照のこと。

また、参考図書としては、”並列分散処理”

Apache Spark入門 動かして学ぶ最新並列分散処理フレームワーク”

並行プログラミング入門 ―Rust、C、アセンブリによる実装からのアプローチ”

実践AWS Lambda ~「サーバレス」を実現する新しいアプリケーションのプラットフォーム”等がある。

コメント

  1. […] 機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例 […]

  2. […] 的には分散グラフデータベースやGPUを使用して計算を高速化するようなことを行う。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  3. […] ピューティング環境を利用して並列処理を行うことも考えられる。分散並列処理に関しては”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“を参照のこと。 […]

  4. […] グを使用してデータを縮小、あるいは近似アルゴリズムを使用することも考慮する。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  5. […] 、サンプリングやサブサンプリングを検討して、データを縮小することができます。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  6. […] サンプリングを使用してデータを縮小し、計算コストを削減する方法も検討される。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  7. […] 並列性を最大限に活用することが必要になる。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“を参照のこと。また、ミニバッチ処理などのトレー […]

  8. […] や分散処理を活用し、複数のプロセッサやクラスターを使用して計算を高速化する。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  9. […] マシンを使用してトレーニングを並列化し、トレーニング時間を短縮することができる。詳細は機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

  10. […] 採用し、また、サブサンプリングや近似アルゴリズムを検討することも有用となる。詳細は”機械学習における並列分散処理の概要とオンプレ/クラウドでの実装例“も参照のこと。 […]

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