論理学をつくる 第2部論理学を拡げる 読書メモ

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論理学をつくる 第2部論理学を拡げる 読書メモ

論理学は、人間が考える方法や議論の方法について研究する学問分野であり、特に、命題や推論に関する基本的な概念を扱うものとなる。

論理学の基本的な概念として、命題や命題論理、論理学の記号体系などがある。命題とは、真偽が決まる文句であり、真か偽かが確定するものとなる。命題論理は、命題を扱う論理学の分野であり、論理的な関係を表すための論理演算子が用いられる。論理学の記号体系は、論理的な演算を表すための記号を定めた体系であり、命題論理においては「否定」「論理積」「論理和」などの論理演算子が用いられる。

論理学には、命題論理以外にも、一階述語論理や高階論理などの分野もある。一階述語論理は、命題論理に述語や変数を導入することで、より複雑な論理的な関係を表現することができるものとなる。高階論理は、集合や関数などの数学的概念を含む論理を扱うものとなる。

論理学には、命題の真偽を決定する方法や、正しい推論を行うための方法についても研究されている。例えば、命題の真偽を決定する方法として、真理値表や証明という方法がある。真理値表は、命題に対して全ての可能な真偽の組み合わせを試して、命題の真偽を決定する方法となる。証明は、命題が正しいことを示すための論理的な手順であり、公理や推論規則を用いて、命題の真偽を導き出す。

論理学は、哲学や数学、人工知能などの分野にも深く関わっている。哲学においては、論理学の概念を用いて論理的な議論を行い、数学においては、論理学を用いて数学的な命題を導出するための基礎的な体系を構築する。人工知能においては推論技術や知識情報処理技術のベースとなっている。

論理学のベースとなっている数学的理論としては、”集合論の概要と参考図書“に記載している集合論、構造とアルゴリズムと関数“で述べている代数学、”形式言語と数理論理学“で述べている形式言語学や意味論等があり、そちらも参照のこと。

今回は数理論理学の著名な教科書である「論理学をつくる」より、読書メモを示す。

前回の第1部論理学をはじめるに続き、今回は第2部論理学を拡げるの読書メモについて述べる。

第Ⅱ部 論理学をひろげる

第5章 論理学の対象言語を拡張する
5.1 なぜ言語の拡張が必要なのか

人工言語Lによる記号化では正しさを特徴つけられない論証
タコは頭足類である
頭足類は火星から飛来した寄生生物である
タコは火星から飛来した寄生生物である
上記は妥当な論証
この論証をLで記号化しようとすると3つの命題が単純命題なので
「P、Q、ゆえにR」の形にしか分析できない
どうすれば妥当性を保証できるのか
以下のような形によって妥当性が保証される
◯は◆である
◆は□である
◯は□である
「それぞれの命題に、◯、◆、□が共通して顔を出す」ことが妥当性の根拠になっているらしい
これまでの単純命題の内部構造を分析する必要がある
命題の内部構造を問題にする論理
単純命題の内部構造は問わない論理

5.2 述語論理での命題の記号化

5.2.1 命題の内部構造とは?
とりあえず命題を「◯は□である」という構造を持ったものとする
◯は主語(subject)
個体指示表現(singular term)
一般名辞(general term)
□は述語(predicate)
5.2.2 個体指示表現を主語とする文の記号化
個体指示表現の多様性
個体を支持する表現にも様々な多様性がある
代表的なものは次の3種類に分類される
(1)固有名(proper name)
「吉田戦車」、「ロバートロドリゲス」、「信濃川」
(2)確定記述句(definite description)
複数の名詞や形容詞、動詞などが組み合わさって全体として一つの個体を示している表現
日本で一番長い橋、ハリウッド版「ゴジラ」の監督
英語では「the planet nearest sun」 「the author of Neuromancer」等 定冠詞「the」から始まる
(3)指示詞(demonstrative)
「これ」「それ」「私」「君」
確定記述句の課題
フレキシブルで無限の組み合わせを作れるが
存在しないものの名前を作れる

水星と金星の間の惑星は地球より質量が大きくない
ある命題とそれの否定命題が共に偽になる
真理値として真でも義でもない第3の値を認めるか、 真理値を持たない命題(真理値ギャップ)を認めるしかない
指示詞の課題
誰がどこで使うかに応じて支持対象が異なる
その語が使われる状況を考えに入れなければならない
個体指示表現としては
常に指示対象があり、しかも文脈によらず同じ個体を指すようなものだけを典型として考える
固有名を主語とする命題の記号化

スティーヴン・スピルバーグは映画監督である
この命題に現れる構成要素を論理言語の記号に置き換える規則
「スティーヴン・スピルバーグは映画監督である」をDsと書く
小文字は個体指示表現に対応
大文字は述語に対応
命題関数として述語をとらえる
述語は「個体の集合」から「命題の集合」への関数になる
5.2.3 普通名詞が主語になっている命題の記号化
普通名詞を主語とする命題の記号化

「映画監督は経営者感覚に富む」
[Interpretation] Mx:xは経営者感覚に富む d:映画監督
ここでやりたいことは
スティーヴン・スピルバーグは映画監督である Ds 映画監督は経営者感覚に富む Md ———————————————————— スティーヴン・スピルバーグは経営者感覚に富む Ms
Dとdが繋がっていないと正しさをうまくとらえることができない
dの「映画監督」をDで表して記号化することはできるか?
おおよそどんなxをとってきても(Dx→Mx)
D:xは映画監督である
M:xは経営者である
量子化と個体変項
「∀」を全称記号とか全称量化子(限量子)あるいは普遍量化子(限量子)と呼ぶ
「x」は個体定項「s」のように特定の個体を指すのではなく 全ての人または個体を決めずに指している表現
5.2.4 もう1つの量化子
否定の位置による違い
個体変項xの指す範囲を人間の集まりとする
[interpretation] Gx:xは善良である
全ての人間は善良である
全ての人間が善良であるわけではない
全ての人間xについて、xは善良ではない
存在量化子
あるものxが存在して〜(〜であるようなものxが(少なくとも一つ)存在する)
∃と∀の関係
¬∀x¬Px ⊨⫤ ∃xPx
∀x¬Px ⊨⫤ ¬∃Px
ド・モルガンの法則
∀x¬Px ⊨⫤ ∃xPx
¬∀xPx ⊨⫤ ∃x¬Px
「或る」と「Some」
Pなものが存在する(There exist P)
或るものはPである(Some thing is P)
全く限定なしの「或るもの」について話をすることはあまりない
普通は「或るSはPである」とか 「Some S’s are P’s」のような命題となる

或る芸術家は天才だ
天才であり芸術家であるようなものが存在する
[Interpretation] Mx:xは芸術家である Gx:xは天才である
まとめ
量化子と否定を用いて作られる表現の守備範囲
[1]グループと[3]グループは相手の否定になっている
[2]と[4]も互いの否定になっている
[1]グループは[2]グループ内にすっぽり入っている
[1]が成り立っているときは[2]も成り立つ
[1]グループの式は[2]グループの式を論理的に含意する
[4]グループの式は[3]グループの式を論理的に含意する
5.2.5 翻訳練習をたっぷりとやっとこう
翻訳のためのコツ
すべてのものはPである = Everything is P ✒︎ ∀xPx
Pなものが存在する = Something is P ✒︎ ∃xPx
すべてのPはQである = Every P is Q ✒︎ ∀x(Px→Qx)
或るPはQである = Something P is Q ✒︎ ∃x(PxΛQx)
「しかし」と「だけ」
「しかし」「だけ」「only」は或る意味で「すべて」の裏返し

人質になったのは日本人だけだ
日本人しか人質になっていない
[Interpretation] Hx:xは人質である Jx:xは日本人である
翻訳のコツ:しか・だけ
「AなのはBだけだ」
「BしかAではない」
「AなのはすべてBである」
すべてのAはBである
注意
Everyとsomeが違うと、 ∀と∃だけでなく、 括弧の中の→とΛも違う
「Every P is Q」
「Some P is Q」
どうして両方ともΛか→にならないのか?
∀x(PΛQ)

P:鳥である
Q:卵から生まれる
この世の中のあらゆるものは卵から生まれる鳥である
∀x(P→Q)
あらゆる鳥は卵から生まれる
∃x(P→Q)
∃x(Px→Qx) ⊨⫤ ∃x¬(PxΛ¬Qx)

P:クラゲである
Q:脊椎を持つ
無脊椎のクラゲではないようなものが存在する

5.3 述語論理のための言語をつくる

5.3.1 言語MPLの定義
これから定義する言語をMPLと呼ぶ
MPLの語彙
MPLで用いられる語彙は、 4つのグループに分かれる
(1) 項(term)
個体定項
a,b,c,…
個体変項
x,y,z,…
(2) 述語記号
P,Q,R,S,…
(3) 論理定項
結合子
→、Λ、Ⅴ、¬
量化子
∀、∃
(4) 補助記号
(, )
MPLの文法、すなわち論理式の定義
定義
(1)一つの述語記号の後ろに一つの項を置いたものは論理式である。これを原子式と呼ぶ
(2)A,Bを論理式とすると、(AΛB)、(AⅤB)、(A→B)、(¬A)は各論理式である
(3)Aを論理式、𝛏を個体変数とすると、∀𝛏A、∃𝛏Aはおのおの論理式である
(4)(1)(2)(3)によって論理式とされるもののみが論理式である
図式文字の使い方
(1)「𝛏」は「クシー」というギリシア文字
「𝛏」「ζ」(ゼータ)のようなギリシア小文字を個体変項を表す図式文字として使う
𝛏は、x,y,z,..の任意のものをどれと定めずに代表する
(2)個体定項a,bなどのための図式文字としては、ギリシア小文字の最初の方「α」「β」を使う
(3)個体変項と個体定項を合わせて項(term)と呼ぶ
任意の項を代表する図式文字としてはギリシア文字「τ」(タウ)を使う
形成の木
どのような論理式にも ただ一つの形成の木が対応する
∀x(Dx→Mx)
(∀xDx→Mx)
(∀xDx→∀xMx)
Unique readability theoremが MPLの論理式の定義についても成り立つ
カッコ省略のための取り決め
余分なカッコを省略するための取り決め
(∀xPx→Qx)は∀xPx→Qxに
∀x(¬Px)は∀ x¬Pxになる
5.3.2 量化子の作用域と変項の自由な現れ・束縛された現れ
「不自然な」論理式
∀xPy
∃yQa
∃x∀xPx
アプローチ
多少訳の分からないものも余計に論理式にまざってもよしとする
定義を手直ししてこうした記号列を論理式から排除する
定義が込み入ってくる
不自然な論理式に共通する構造上の特徴は?
変項の自由な現れ・束縛された現れ
定義によるとPx,(PaΛQx)のような量化子を伴わない 裸の個体変項が残っているような論理式も生じる
「〜はアニメオタクである」とか 「タランティーノは映画監督であり、〜は女優である」
真偽は定まらない
個体変項xは自由に現れている(occur free)とか自由変項(free variable)
∀xPx、∃y(PyΛQy)のように論理式が 空所なしで日本語の命題に翻訳される
個体変項は束縛されて現れている (occur bound)という
一つの論理式の中に何箇所かxが出てくるような場合
出現箇所によって自由変項で或る所や束縛変項で或るところもある

∃xPxΛQx
∃xPxとQxがΛでくっついたもの
Pxのxは束縛変項
Qxのxは自由変項
∃xPxΛQxでは束縛変項
自由な現れとか束縛された現れを きちんと定義する必要がある
(1)個体変項𝛏の現れ
∃xPxΛQxや∃(PxΛQx)のように同じ個体変項が何箇所にも現れる
それぞれの出現箇所を個体変項xの現れ(occurence)という
(2)量化子の作用域
量化子の作用いき(scope)とは
形成の木においてその量化子が結合する相手になった部分論理式のこととする

論理式∀xDx→Mxの形成の木における∀の作用域は
Dxではなく
(Dx→Mx)である
(3)𝛏を束縛する量化子
∀𝛏や∃𝛏のように量化子の直後にある個体変項が𝛏で或るとき
その量化子は𝛏を束縛する量化子であるという
∃xの∃はxを束縛する量化子
∀yの∀はyを束縛する量化子
(4)個体変項の自由な現れ
個体変項𝛏の流れが自由(free)で或る

その現れが𝛏を束縛する量化子の素養域真中にない
現れが自由でないとき、束縛されているという
(5) 閉じた式と開いた式
閉じた式(または閉論理式(closed formula)とは
個体変項のいかなる自由な現れも含まないような論理式のことを言う
そうでない論理式を開いた式(開論理式 open formula)と言う
人によっては閉じた式のことを文(sentence)と言うこともある
本書では採用しない
(6)量化子の空虚な現れ(vacuous occurence)
量化子の現れ∀𝛏または∃𝛏が空虚である

その量化子の作用域に変項𝛏が自由に現れない

5.4 タブローの方法を拡張する

5.4.1 具体例からヒントを得る
述語論理へのタブローの方法の適用
タブローの方法を拡張する
論理命題と同等の判定基準が成り立つように∀と∃についての規則を作る
矛盾していることが直感的にもわかりきっているような式集合を取り上げて
それがこれまでと同様の判定基準で矛盾だと判定されるように
タブローの展開規則を作る
新しく作る展開規則は
∀と∃、またそれの否定形の4つ

サービススタンプを10子集めた人はもれなくラーメン券がもらえる
サービススタンプを10個集めた人がいる
ラーメン券をもらった人はいない
存在量化子についての規則
タブローを導く
3つの論理式を縦に並べる
とりあえず2番目の論理式で
Pxが成り立つようなxに 「a」と言う個体定項を割り当てる
サービススタンプを10個集めた「aくん」
∃𝛏A ↓……….[∃] A[α/𝛏] 普遍量化子に対する規則
1行目に注目
すべてのxについてPx→Qxが成り立つ
aについても成り立たないといけない
Px→Qxのxにaを代入
否定+量化子についての規則
まだ何の規則も当てはめていない3行目に注目
¬∃xQxが真になるとき真になる式は何か
ド・モルガンの法則
規則の代入(タブローは閉じる)
5.4.2 展開規則とその使い方
[∀]と[∃]は同じ規則だが大丈夫か?
存在量化子についての展開規則には制約条件がある
集合{∃xPx, ∃x¬Px}は充足可能
ダメなタブロー
本来は
∃に関しては代入して良い個体定項に制約がある
一番最初に∃を使うとその時点では経路に個体定項が現れていないので何でも使える
∃の展開規則
[EI] ∃𝛏A ↓ ただし、αはその経路にこれまで現れていない個体定項とする A[α/𝛏] 普遍例化と存在例化の違い
∀に関する展開規則
[UI] ∀𝛏A ↓ ただし、αは任意の個体定項とする A[α/𝛏] 普遍例化と存在例化は、個体定項を𝛏の自由な現れに代入すると言う操作自体は同じ
違いは、どのような個体定項を代入して良いかと言う但し書きのところにある
普遍例化は繰り返し適用される
「∀x(Px→Qx)、Pa、¬Qb。従って、¬(¬QaⅤPb)」という論証Aを考える
Step1 まだ閉じない
第一行にUIを適用する
まだ閉じない
第一行は Px→Qxがあらゆるものについて成り立つと主張しているので、 aだけではなくbについて成り立つ
閉じた
UIはお二次しきに何度も繰り返し適用される
[UI]は原則的に現れる個体定項のかずだけ繰り返して適用されないといけない
攻略法
[EI]はなるべく[UI]の前に適用すること
そうすればやたらと個体定項を導入せずに済む

第6章 おおっと述語論理のセマンティクスがまだだった
6.1 述語論理のセマンティクスをつくらなければ

はじめに
前述まででMPLに対して使えるようにタブローの整備も完了
タブローの信頼性を示せば完成
タブローが信頼できるということは
Γから開放タブローが生じる

Γは充足可能
述語論理で書かれた式の集合が矛盾しているとか、充足可能とは、どういうことか?
{∀x(Px→Qx), ¬∃xQx, ∃xPx}は矛盾している
矛盾しているとは、3つの式がいっぺんに真になるような真理値の割り当てがない、ということか?
そもそも述語論理式に対する真理値の割り当てって何だろう?
命題論理の場合
「PΛ¬Qは、原子式Pに1、Qに0を割り当てることで倫理値割り当てのもとで1になる」と言っていた
原子式PやQは最小単位なので、さらに「Pが1になるのはどういう時か」を問うことはなかった
述語論理の場合
「¬∃xQxは∃xQxが0の時1になる」ということはできる
∃xQxは最小単位ではないので、それが0になるというのはどういう時かに答えなければならない
6.1.1 論理式の真偽は解釈で決まる
PとかQの述語の意味は?

[Interpretation] Px:xは1より大きい Qx:xは0より大きい
「xでどのような範囲のものを考察範囲にしているのか」が分からない
自然数だと偽
有理数だと真
述語論理式の真偽を決めるには 次の2点を決めなくてはならない
(1)そこに出てくる個体変項がどのような範囲のものをカバーしているのか
(2)そこに出てくる述語記号(個体定項を含むときは個体定項)の意味
「解釈」は翻訳であってはダメなんだ
自然言語への翻訳によって論理式の真偽を捉えようとするのは大変まずいやり方
6.1.2 翻訳から世界の直接描写へ
日本語でMPLを解釈するのをやめる
言語の意味は
他の言語への翻訳ではなく
言語が世界を描写することにより与えられる
MPLとそれが語る世界を直接対応づける

大きな四角は世界の果て
●は、人だったり、分子だったり、世界に存在する何らかの個体
●を含む楕円はその中に含まれる個体が性質Pを持つことを意味する
上記の世界で∀xPx→∃xPxの真理値はどうなるのか?
世界Aでは、∀xPxは偽
従って∀xPx→∃xPxは真になる
世界Bでは、∀xPxは真
従って∃xPxも真になる
世界Cでは、∀xPxは偽
従って∀xPx→∃xPxは真になる
どのような世界でも∀xPx→∃xPxは真になる
どんなふうに記号を解釈しても
「どんな世界で」という言い方にかえる

6.2 セマンティクスとモデル

6.2.1 数学の助けを借りて形式化を進める
世界を集合としてみる
(1)論議領域として何らかの集合を決める
これが世界だったら、この集合をDと名付ける
(2)記述記号Pに対しては、世界の中に小さな楕円を描き、それを対応させた
Dの部分集合を割り当てることと同等
(3)個体定項にはDの要素を割り当てれはせよい
解釈を関数としてみる
セマンティクスを形式化するとは
「意味する」とか「真」と言ったセマンティクス特有の概念を みんな集合という数学的な道具を使って定義する
MPLが記述している世界を集合に置き換える
MPLの様々な記号に世界の中の何かを「割り当てる」と言った対応づけを
関数という集合論的な言い回しで語る
MPLの記号に対する味付けとは、次のような関数V
(1)Vは述語記号P1にはDの部分集合を割り当てる
(2)Vは個体定項a1にはDの要素を割り当てる
6.2.2 モデル
DとVのペア<D,V>そのものが「解釈」
モデルの例
<モデルM1> (1) D=(■、●、◆) (2) 述語記号に対する付値 VM1(P)={■, ◆} VM1(Q)={●,◆} (3) 個体定項aに対する付値 VM1(a)=■ VM1(b)=●
<モデルM2> (1) D=N(自然数の集合) (2) 述語記号に対する付値 VM2(P)=偶数の集合 VM2(Q)=奇数の集合 (3) 個体定項aに対する付値 VM2(a)=7 VM2(b)=8
閉じた論理式はモデルによって真理値が左右される
∃x(PxΛQx)はモデルM1では真だが、モデルM2では偽
PbはモデルM1では偽だが、モデルM2では真
モデルM1でPxは真かどうか
xが■なら真
xが●なら偽
モデルの満たすべき条件
(1) Dは何の集合でも良い
有限集合、無限集合でも良いが、空集合Φではいけない
(2)述語記号に対応づける集合は空集合でも良い
(3)議論領域に含まれる全ての個体がMPLでの名前(個体定項)を持っている必要はない
スタンダードな述語論理では
個体定項には必ず何らかの個体を割り当てないといけない
6.2.3 モデルMのもとでの論理式の真偽をきっちり定義しよう
「かくかくのモデルのもとで真である」というモデルに相対的な真理の概念にしか意味はない
「モデル<D,V>のもとで、論理式Aは真である」とはどういうことか?
モデルを一つに固定している時はV(A)=1と書く
出発点を決める:原子式の定義
あるモデルの元で真偽が定まるのは閉論理式だけ
述語記号の後ろに個体定項を置いたものだけに限る
様々な述語記号(P,Q,R..)を一括して表す図式文字をΦとする
[T1] VM(Φα)=1 ⇔ VM(α)∈VM(Φ)
原子式ΦαがモデルMのもとで真であるということは
そのモデルの付値関数VMが個体定項αに割り当てるものVM(α)が
VMが述語Φに割り当てる集合VM(Φ)に要素として含まれる
複合的な論理式の真理を定義してみよう
「複合的な論理式の真偽が その部分論理式の真偽に応じてどのように決まるのか」 を帰納的に定める規則をたてる
複合的な論理式を作る操作
(1)結合子でつなぐこと
命題論理で定めたもの
[T2] (1) AがBΛCのとき、VM(A)=1 ⇔ VM(B)=1 かつ VM(C)=1 (2) AがBⅤCのとき、VM(A)=1 ⇔ VM(B)=1 または VM(C)=1 (3) AがB → Cのとき、VM(A)=1 ⇔ VM(B)=1 でないかまたは VM(C)=1 (4) Aが¬Bのとき、VM(A)=1 ⇔ VM(B)=1でない
(2)∀,∃で量化子すること
論理式∀𝛏B𝛏が真だというのは
論議領域に属する全てのものについてBが成り立つ、ということ
論議領域に属するすべてのものがBに割り当てられる集合に属している、ということ
論理式∃𝛏B𝛏が真だということは
Bに割り当てられる集合に何か一つでも個体が属している、ということ
[T2.9] (1) Aが∀𝛏B𝛏のとき、 VM(A)=1 ⇔ Mの論議領域Dに属するすべての個体iについて、i∈VM(B) (2) Aが∃𝛏B𝛏のとき、 VM(A)=1 ⇔ Mの論議領域Dに属する少なくとも一つの個体iについて、i∈VM(B)
うまくいかない
∃x(PxΛQx)のような論理式
[T2.9]の(2)に代入すると
PxΛQxは述語記号ではない
[T3]に足りないので[T2.9] 量化子について
どこで失敗したか
以下の2つの要請を調和させるのが難しい
(1)帰納的に定義したいのは閉論理式に対してだけ意味を持つ「モデルMのもとでの真理」
(2)しかし、論理式の帰納的定義において、閉論理式は閉論理式岳から作られているのではない
手直しの方針
[方針S] 開いた式を含む論理式全体に対しての帰納的定義を試みる
閉論理式に対してだけ意味がある「真である」を定義するわけにはいかなくなる
もっと広い何らかの概念「xxである」を考えて
「xxである」をすべての論理式にわたって帰納的に定義する
その上で「真である」を「xxである」の閉論理式の場合にだけ当てはまる特殊ケースとして定義する
タルスキ(Alfred Tarski)が採用した方法
[方針T] 閉論理式だけに対して心理概念を帰納的に定義していくという方針は捨てない
∃x(PxΛQx)のような式についても
これらの真理がどういうことであるかを
それよりつくりの簡単な何らかの閉論理式(例えばPaΛQaのような式)の真理に言及して定義していく
方針Tに従ったほうが出来上がる定義が簡単になる
6.2.4 方針Tに基づいて「Mのもとでの真理」をきちんと定義する
[T1], [T2]はそのまま使う
手直しするのは[T2.9] ∀x(PxΛQx)が真だったら
(PxΛQx)のなかのxの自由な現れに任意の個体定項を代入して 得られるPaΛQaという形の閉論理式はみんな真になる
モデルMですべての個体に何らかの個体定項が割り当てられているとするならば
上記の逆も成り立つ
PaΛQaという形の閉論理式はみんな真になるなら
∀x(PxΛQx)が真になる
Mの論議領域Dに属するすべての個体にそれぞれ個体抵抗を割り当てた上で
[T2.99] (1) Aが∀𝛏Bのとき、 VM(A)=1 ⇔ すべての個体定項αについて、VM(B[α/𝛏])=1 (2) Aが∃𝛏Bのとき、 VM(A)=1 ⇔ 少なくとも一つの個体定項αについて、VM(B[α/𝛏])=1
6.2.5 方針Sに基づいて「Mのもとでの真理」をきちんと定義する
6.2.6 方針Sにおける真理の定義
6.2.7 矛盾・論理的帰結・妥当式
6.2.8 反証モデル

6.3 存在措定と会話の含意

6.3.1 同じ論証が妥当になったりならなかったりする怪
体罰を容認する日本人がいるからと言って日本人がみんな体罰を容認していることは言えない
逆に
[論証1] 日本人全員が体罰を容認しているということからは
体罰を容認している日本人が存在することが論理的に出てくる
[Domain] 日本人 [Interpretation] Px: xは体罰を容認している
[論証2] ∀xPx、従って、∃xPx
[Domain] 人間 [Interpretation] Px: xは体罰を容認している Jx: xは日本人である
[論証3] ∀x(Jx→Px)、従って、∃x(JxΛPx)
タブローを使ってチェックすると妥当でないと出てしまう
6.3.2 食い違いの原因はどこにあるのか
一般に
「〇〇は△△である」という命題をまともに主張したり、聞いたりするとき
余程〇〇がありそうもないものでない限りは、〇〇ほ存在するものとして語る
隠れた前提として補っている
6.3.3 会話の含意
存在指定は、「会話の含意(conversational implicature)」と呼ばれているものの一種
その主張の論理的帰結として含まれているわけではないのだが
その主張がまともなものであるためのある種の共通了解事項として踏まえられている。偽ではないが、極めて誤解を招きやすい(misleading)なもの

6.4 伝統的論理学をちょっとだけ

6.4.1 4つの基本形とその相互関係
矛盾対当
大小対当
反対対当
6.4.2 伝統的論理学はどのように論証を扱ったのか
三段論法
大概念・中概念・小概念
三段論法の4つの格
三段論法はいくつあるか、その中で妥当なものはいくあるか

第7章 さらに論理言語を拡張する
7.1 MPLの限界

はじめに
MPLをさらに拡張する
MPLでもうまく使えない論証があるため
7.1.1 MPLにとっての難問
伝統的論理学を悩ませ続けた論証
難問1
<論証1>
「誰かが誰もに愛されている。従って、誰もが誰かを愛している」は妥当だが
<論証2>
「誰もが誰かを愛している。従って、誰かが誰もに愛されている。」は妥当ではない
難問2
<論証3>
「すべての馬は動物である。従って、すべての馬の頭は動物の頭である」が妥当なのはなぜか
<論証4>
リサ:マリンバはパーカッションなのよ バート:へぇー。じゃあ、マリンバ奏者はパーカショニストなのか。 論証としてみた場合、これが正しいのはなぜか
7.1.2 MPLの限界はどこにあるのか
「誰もが誰かを愛している」「誰かが誰もに愛されている」をMPLで記号化しようとすると
上記の2つ(∀xPx,∃xQx)は 記号的には論理的に関係づけることはできない
論証4の記号化
[Interpretation] Px:xはマリンバである。 Qx:xはパーカッションである。 Rx:xはマリンバ奏者である。 Sx:xはパーカッショニストである
前提と結論に共通の述語がないため
妥当性を示せない
「xはマリンバ奏者である」をRxという風に単独の述語で書いたらダメ
「xはマリンバであるようなものを演奏する人」にパラフレーズ化する必要がある
MPLの限界
「〜は….を演奏する」という表現は、MPLで扱えない
MPLはPx、Qxののように空所が1ケ所の述語しか含んでいない
「〜は….を演奏する」のような個体と個体の関係を表すような表現は扱えない
2つ以上の空所を伴う述語は扱えない
7.1.3 個体と個体の関係を表現するには
関数としての述語
命題関数として述語をとらえる
現代論理学では
述語というものを
「文から個体指示表現を抜き取って残る関数」としてとらえる

「スピルバーグは映画監督である」
個体指示表現「スピルバーグ」を抜き取った関数「〜は映画監督である」が述語
個体の属性を示す

「スピルバーグは黒澤明を尊敬している」
2つの個体指示表現を抜いた「〜は…を尊敬している」が述語
2項関係(binary relation)を示す
Rxy

「スピルバーグは黒澤明よりも若く、タランティーノよりも年長である」
3つの個体指示表現を抜いた「〜は…より若く、—-より年長である」
3項関係(tertiary relation)を示す
Rxyz
…..
N項述語(n-place predicate)
N項関係(n-ary relation)を示す
Sx1x2…xn
7.1.4 多重化
上記のような命題を記号化する
どんな昆虫にも天敵がいる
天敵がいる
xの天敵であるようなものが存在する
∀x(Ix→∃yNyx)
2つの量化子が1つの式の中に出てくる
同じ一つの述語記号に続く異なる個体変項のそれぞれを 2つのことなる量化子が束縛している
重なり合った量化 多重量化(multiple qualification)
多重量化で重要なのは どの量化子がどの隙間を束縛しているのかということだけ
∀x(Ix→∃yNyx)を日本語に直してみる
∀x(xは昆虫である→∃y(yはxの天敵である))
∀x(xは昆虫である→xの天敵であるようなものがいる)
どんな昆虫にも天敵がいる
注意のポイント
元の論理式が閉じた式である限り
それを日本語に直したものには、個体変項xとかyは出てこない
∀z(Iz→∃yNyz)でも∀z(Iz→∃wNwz)でも「どんな動物にも天敵がいる」になる
xとかyとかzは互いに区別がついていることだけが必要、何を使おうが構わない
これらの記号の役割
どの述語のどこの空所がどの量化子に束縛されているかを示すことだけ
束縛のパターンが同じであれば
2つの論理式はどのような個体変項(x,y,z..)を用いようと、同じことを言っている
「マリンバ奏者」を記号化しよう
多重量化を含む論理式を体系的に扱えるようになったことが現代論理学のメルクマール
マリンバはパーカッションである
Mx :xはマリンバである
Px : xはパーカッションである
マリンバ奏者はパーカッショニストである
xはマリンバ奏者である
Hx : xは人である
xはマリンバを演奏する
xが演奏し、なおかつマリンバを演奏であるようなものが存在する
Qxy : xはyを演奏する
xはマリンバ奏者である
xはパーカッショニストである
マリンバ奏者はパーカッショニストである
<論証4>
∀x(Mx→Px) —————— ∀x(HxΛ∃y(QxyΛMy)→HxΛ∃y(QxyΛPy))
7.1.5 あ・れ・も・愛、これも愛 – 愛の論理学
難問1を考える
Lxy : xはyを愛する とする
8つのパターンがある
(!) ∀x∀yLxy
(2) ∀y∀xLxy
(3) ∃x∃yLxy
(4) ∃y∃xLxy
(5) ∃x∀yLxy
(6) ∀y∃xLxy
(7) ∃y∀xLxy
(8) ∀x∃yLxy
同種の量化子のみを含む場合
(1) ∀x∀yLxy ≈ ∀x(∀yLxy) ≈ ∀x(xはすべての人を愛する) ≈ すべての人はすべての人を愛する(Everybody loves everybody)
(2) ∀y∀xLxy ≈ ∀y(すべての人はyを愛する) ≈ すべての人はすべての人を愛する
(3),(4)は「ある人はある人を愛する (Somebody loves somebody)
同じ種類の量化子が重なって出る場合は、量化子の順序に関係がない
2種類の量化子が混ざって出てくる場合
2種類の量化子が混ざって出てくるようなケース (mixed multiple quantification)
簡単ではない
(5)のケース
∃x∀yLxy ≈ ∃x(xはすべての人を愛している) ≈ すべての人を愛するような人がいる(Someone loves everyone)
(6)のケース
∀y∃xLxy ≈ ∀x(yを愛する人がいる) ≈ どんな人にもその人を愛してくれる人がいる(Everyone is loved by somebody)
残りの2つの論理式も表現している事柄が全て異なる
「端的に存在」と「応じて存在」
量化子が混在する4つノケースを整理する
(5) ∃x∀yLxy ≈ すべての人を愛するような人がいる
(7) ∃y∀xLxy ≈ 誰からも愛される人がいる
(6) ∀y∃xLxy ≈ どんな人にもその人を愛してくれる人がいる
(8) ∀x∃yLxy ≈ 誰にでも好きな人がいる
(6)(8)は「応じて存在」
(5)(7)は「端的な存在」
7.1.6 言語PPLの定義
PPL(Polyadic Predicate Logic)の定義はMPLの定義とほとんど変わらない (polyadicは多項のこと,MPLのMはmonodic(単項))
PPLの語彙
MPLの語彙はそのまま使用する
ただし、述語記号だけは多項述語を認めるように変更する必要がある
述語記号を、その空所の数で分類する
(1)1項述語=PxやQxのような空所が一つの述語
(2)2項述語=Lxyのように空所を2ケ所もつ述語
(3)n項述語=空所をnケ所もつ述語
Pniのように書く
任意のn項述語をどれつ定めずに代表する図式文字としてΦnを使う
<PPLの語彙>
(1) 項 MPLに同じ
(2) 述語記号 P11,P12,P13…. P21,P22,P23,… …. Pn1,Pn2,Pn3,…
(3) (4) 論理定項と補助記号はMPLと同じ
PPLの文法、すなわち論理式の定義
変更はごくわずか
多項述語記号を導入したことによって、 原子式の定義が次のものに変更になる
<定義>
(1)一つのn項述語記号の後ろにn個の項を置いたものは論理式である。
これを原子式と呼ぶ
(2) 以降 MPLと同じ

7.2 PPLのセマンティクス

はじめに
多項述語を含む論理式にも真偽を定義できるようにモデルを拡張する
7.2.1 愛の世界
2項以上の述語には、世界において関係が対応する
●◆■の3人しかいない世界を考える
7.2.2 モデルの定義の手直し
多項述語に何を割り当てようか
論議領域に含まれる個体のうちで、 その述語が当てはまるものを全部集めた集合をその述語に割り当てる

「〜は….を愛している」が当てはまるものって何?
矢印で表されたもの
矢印の代わりに、「何らかの集合論的対象に矢印の代わりを果たさせる」
順序対(order pair)
■→●、●→◆、◆→■
<■, ●>、<●, ◆>、<◆, ■>
<モデルM1> D={■, ●, ◆} V(L)= {<■, ●>, <●, ◆>, <◆, ■>} V(a)= ● V(b)= ◆ V(c)= ■
このモデルでLabが真になること
V(a)=●からV(b)=◆に向かう矢印がこの世界にあること
2項述語には、Dの要素を2つ並べた順序対の集合D2の部分集合を割り当てる
3項述語には、Dの要素を3つ並べた順序対の集合D3の部分集合を割り当てる
N項述語には、Dの要素をn個並べた順序対の集合Dnの部分集合を割り当てる
モデルの定義
以上の考察をまとめたモデルの定義
(1) 集合Dは空ではない
(2) Vは述語記号ΦnにはDnの部分集合を割り当てる V(Φn)⊆Dn
(3) Vは個体項αにはDの要素を割り当てる V(α)∈D
7.2.3 真理の定義の手直し
真理(または充足関係)の定義も原子式についての定義を多項述語を含む場合に拡張する
[T1′] VM(Φnα1α2…αn)=1 ⇔ <V(α1), V(α2), …,V(αn)>∈V(Φn) [S1′} VM,σ(Φnτ1τ2…τn)=1 ⇔ <σ(τ1), σ(τ2), … σ(τn)>∈V(Φn)
[T2][T3], [S2][S3]はそのまま
[T1′][T2][T3]が方針Tを取ったときの新しい真理の定義
[S1′][S2][S3]が方針Sを取ったときの新しい充足関係の定義
本当に大丈夫だろうか
例での確認
[例題] <モデルM>を次のように定義する D={◇, ◆, ☆, ◎} V(P)={◇,◆} V(Q)={◆, ☆} V(L)={<◇, ◆>, <◆, ◎>, <☆, ◎>, <◎, ◇>} V(C)={<◇, ◆, ◇>, <◎, ◎, ◇>} V(a)=☆ V(b)=◎
(1) ∃xCbbxはモデルMで真か
(2) ∀x∃xLxyはモデルMで真か
多重量化を認めても、論理的帰結、妥当式、論理式の集合の矛盾と充足可能性、論理的同値性に対する定義は、MPLの場合と全く同じ形で通用する
異なる変項には同じものを割り当てても良いということ
真理の定義に従うなら
∃x∃yLxyの「あるxとあるy」は2つのべつなものでなくとも良い
7.2.4 述語論理のセマンティクスのについて成り立つ幾つかの定理
述語論理のセマンティクスが整備されたこの段階で
述語論理のセマンティクスについて成り立つ幾つかの事実を提示する
定理29
2つのモデルM1とM2が同じ論議領域を持ち、 閉じた式Aに現れるすべての個体定項と述語記号に それぞれ同じものを割り当てるならば、 VM1(A)=VM2(A) (ただし、VM1(A)=VM2(A)は VM1(A)=1 ⇔ VM2(A)=1の略紀)
定理30
モデルMにおいて、 V(α)=V(β)つまり、個体定項α、βにこのモデルは同じものを割り当てるとする。 このとき、VM(A(α))=VM(A(β))。
つまりαを含む式A(α)のαのところをいくつかβに取り据えても、 その結果ができる式A(β)は元の式と同じ真理値を持つ
ある命題に出てくるみたい指示表現αを 同じ個体を支持する別の個体支持表現β に取り据えても命題全体の心理が変わらないなら
あらゆる命題が外延的であるわけではない
「知っている」が形成するような文脈については、 同じ個体を指示する表現(共外延的表現(coextensive expression)を置き換えると命題全体の心理地が変わってしまう
内包的文脈(intensional context)
その他の定理
定理31

7.3 PPLにタブローを使ってみる

7.3.1 マリンバに挑む
7.3.2 タブローを活用して関係を科学する
関係を分類する
「親である」と「年上である」という関係は似ているところもあるし、似ていないところもある
aはa自身の親ではないし、aはa自身の年上でもない
親の親は親でない(祖父母)、年上の年上は年上
定義
関係Rがreflectiveである ⇔ ∀xRxxが成り立つ 関係RがSymmetricである ⇔ ∀xy(Rxy→Ryx)が成り立つ 関係Rがtransiveである ⇔ ∀xyz(RxyΛRyz)→Rxz)が成り立つ 関係Rが同値関係(equivalence relationである ⇔ Rがreflexiveかつsymmetricかつtransitiveである
定義
関係Rがirreflexiveである ⇔ ∀x¬Rxxが成り立つ(1) 関係Rがnonreflexiveである ⇔ ∃xRxxΛ∃x¬Rxxが成り立つ(2)
X<yと「愛している」は共にreflexiveではないが、仕方が異なる
(1)x<yはどんな数も自分より小さいことはないために、reflexiveではない
(2)「愛している」は自分を愛している人もいれば愛していない人もいる
みんながみんな自分を愛しているわけではないのでrflexiveではない
定義
関係Rがasynmetricである ⇔ ∀xy(Rxy→¬Ryx)が成り立つ 関係Rがnonsynmetricである ⇔ ∃xy(RxyΛRyx)Λxy(RxyΛ¬Ryx)が成り立つ
定義
関係Rがintransiveである ⇔ ∀xyz((RxyΛRyz)→¬Rxz)が成り立つ 関係Rがnontransitiveである ⇔ ∃xyz(RxyΛRyzΛRxz)Λ∃xyz(RxyΛRyzΛ¬Rxz)が成り立つ
7.3.3 タブローの信頼性
タブローが止まらない
{∀x∃xPxy}が矛盾しているかどうかをチェックする
∀x∃yPxy ∃yPay Pab ∃yPby Pbc ∃yPcy ….
タブローは終わらない
多重量化を認める述語論理にまで拡張されたタブローは「決定可能ではない」
決定不可能であっても出た結果は信頼できる
PPLの場合、タブローは止まらなくなることがある
いつでも判定を下せるということと、判定が下せたときにその判定を信頼できるということは別問題
定理33
Γが矛盾している ⇔ Γから出発するタブローが閉鎖タブローになる
(1)タブロー構成が止まって判定が出たなら、その判定は信頼できる
(2)タブローが閉鎖タブローになったとき、タブローの構成は終了しているから
Γから出発するタブローが終わらないということは
Γから閉鎖タブローが生じない
タブロー構成が止まらなくなってしまうのは、テストにかけたΓが充足可能な式集合であった場合に限られる
7.3.4 「閉鎖タブローが生じたら矛盾している」の証明
定理33-a
Γから出発するタブローが閉鎖タブローになる ⇔ Γが矛盾している
定理33-b
Γが矛盾している ⇔ Γから出発するタブローが閉鎖タブローになる
タブローが止まらないということ
少なくとも一本いつまでも閉じない経路がある
7.3.5 「矛盾した場合から出発するタブローは閉鎖タブローになる」の証明
ヒンティッカ集合
定義
定理34
いかなるヒンティッカ集合も充足可能である
タブローの開放経路はヒンティッカ集合であることの証明

7.4 論理学者を責めないで —— 決定問題と計算の理論

7.4.1 PPLの決定不可能性
タブローだけが悪いのではない
PPLのどんな有限集合を与えられても、
有限ステップのうちにそれが矛盾しているか充足可能か判定してくれるような機械的方法はあり得ない
機械的方法である限りは、有限ステップでの判定がつかなくなってしまうケースが必ずある
「決定可能性」は、タブローの方法などの一つ一つの方法について言われるべきではない
PPLそのものについて言われるべきこと
決定不可能性
定理35
以下を機械的手続きの有限の適用によって判定するための 一般的方法(アルゴリズム・決定的手続き)は存在しない
PPLの任意の論理式の有限集合が与えられたときに
それが矛盾しているか充足可能であるかどうか
PPLの任意の論証が与えられたときに
その論証が妥当であるかを
7.4.2 決定問題
決定問題とは
次の形式を持った問いを「決定問題」と呼ぶ
[決定問題(decision problem)] 任意の{ }を入力したとき、常に有限ステップ内で{ }を出力してくれるようなアルゴリズムが存在するか?
任意の{PPLの論理式の有限集合}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それが矛盾しているかどうかの判定結果} を出力してくれるようなアルゴリズムが存在するか
定理35によってそのようなアルゴリズムは存在しない
一つでも良いからアルゴリズムを具体的に作ることができたら
肯定的に解かれた決定問題
肯定的に解かれた決定問題の例
(1)任意の{Lの論理式の有限集合}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それが矛盾しているかどうかの判定結果}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
真理表やタブローが要求されたアルゴリズム
(2)任意の{MPLの論理式の有限集合}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それが矛盾しているかどうかの判定結果}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
タブロー
(3)任意の{∀式の有限集合}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それが矛盾しているかどうかの判定結果}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
(4)任意の{全ての前提が∀∃式で、結論が∀∃式になっているような論証}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それが妥当かどうかの判定結果}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
(5)任意の{2つの自然数の組}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{それらの自然数の最大公約数}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
ユークリッドの互除法
否定的に解かれた決定問題
任意の{プログラムPとそれへの入力iの組}を入力したときに、 常に有限ステップ内で{Pへiを入力して実行させると有限時間に停止するかしないかについての判定結果}を 出力してくれるようなアルゴリズムは存在するか?
7.4.3 アルゴリズムの概念とチャーチの提案
「決定問題を否定的に解く」とは何をすることなのか
決定問題を肯定的に解くこと
その決定問題が要求しているアルゴリズムをとにかく作る
決定問題を否定的に解くには
アルゴリズムの存在しないことの証明をしなくてはならない
¬∃xは∀x¬と同じ
アルゴリズムの不在証明が意味のあるものであるためには
「全てのアルゴリズム」の範囲をはっきりさせないといけない
アルゴリズム全てに共通の特質は何か
アルゴリズムとそうでないものの線はどのようにして引いたら良いか
アルゴリズムの新年の明確化とチャーチの提案
アルゴリズムの説明
手続きは明確でなくてはならない
手続きには汎用性がなくてはならない
手続きは有限でなくてはならない
論理式を「記号を意味をなすように並べたもの」と説明するようなもので、厳格な説明ではない
アルゴリズムの概念
チャーチの「λ定義可能性」
チューリングの「チューリングマシン計算可能性」
ゲーデル、クリーニの「帰納的関数」
その他
上記は全が互いに同等
「チャーチのテーゼ」
アルゴリズムがある、と言うのはチューリングマシンで計算できることだと考える
チューリングマシン
数学的に厳密に定義された抽象的な架空の計算機
決定問題を否定的に解く典型的な方法
チャーチのテーゼ(提案)により、決定問題の否定的解決がどう言うことかが明確になる
決定問題を否定的に解決するとは
要求された計算を行うようにチューリングマシンをプログラムすることができないことを証明すること
背理法を使って証明される
その決定問題が要求するような計算をするチューリングマシンがプログラムできたと仮定して
そこから矛盾を導く
すでに否定的に解かれた別の決定問題を利用する
すでに停止問題が否定的に解かれているとする
PPLの決定不可能性を証明するのに
もしPPLの任意の式集合の矛盾/充足可能性を判定するようなアルゴリズムがあったならと言う過程のもとで
そのアルゴリズムをちょっと変えれば、停止問題が求めているようなアルゴリズムに転用できると言うことを証明しておく
停止問題が求めるアルゴリズムは存在しないのだから
PPLの任意の式集合の矛盾/充足可能性を判定するようなアルゴリズムも存在しない

第8章 さらにさらに論理言語を拡張する
8.1 同一性を含む述語論理IPL

8.1.1 同一性記号を導入する
「ビリーは全ての人間を憎んでいる」
∀xHbxが真になるためには、xにビリー自身を割り当てられた時もHbxが満たされなくてはならない
∀xHbxはビリーが自分を憎んでいること(Hbb)を論理的に含意している
ビリーは自分以外の全ての人間を憎んでいる
ビリーでない全ての人はビリーに憎まれている
∀x(xはビリーでない→Hbx)
→の前件を記号化するには
「〜は…である」と言う2つの個体同士が同一であることを述べる術語が必要
「=」は話題を選ばずどのような話にでも顔を出す「主題中立性」をもつ
∀x(¬(x=b)→Hbx)
∀x(x≠b)→Hbx)
「=」を論理定項として認める述語論理
8.1.2 論理式の定義とセマンティクスの手直し
論理式の定義の変更
新しい論理定項を加えたので、論理式の定義とモデルの定義を変更する
(1)まずMPLの語彙に「同一性記号」と言う項目を加え、そこに「=」を登録する
(2)論理式の定義のうち原始式の項目に次の定義を追加する
<定義>
τ1とτ2が項のとき、(τ1=τ2)は論理式である。
もちろん、かっこを適切に省略するための取り決めも付け加えるものとする
モデルにおける真理の定義の変更点
我々が普通に理解している同一性に相当する意味を記号「=」に与えなくてはならない
方針Tをとる場合は、(1)をMPLにおける原子式に対する真理の定義[T1′]に付け加えれば良い
(1)任意の個体定項α、βについて、VM(α=β)=1 ⇔ V(α)=V(β)
方針Sをとる場合には、(2)を充足関係の定義[S1′]に付け加えれば良い
(2) 任意の項τ1とτ2について、VM,σ(τ1=τ2)=1 ⇔ σ(τ1)=σ(τ2)
2つの「=」を区別せよ
定義(1)(2)に出てくる3ケ所の「=」は、見た目が同じでも、浦南来は異なった記号
VMに続くカッコの中に現れる「=」は論理式の構成要素になっている同一記号
IPLの語彙に含まれている記号
⇔の右辺に出てくる「=」や左辺の「=1」の「=」は
付値関数Vがαとβに同じ個体を割り当てる
α=βと言う形の論理式がモデルMのもとで真である
と言う日本語を短く書くために使われている、メタ言語の記号
IPLの語彙に属する方を「≈」として
VM(α≈β)=1 ⇔ V(α)=V(β)
同一性記号についてのセマンティカルな定理
妥当式、矛盾、論理的帰納とみたとき定義はこれまでと変わらない
定理36
(1) ⊨α=α つまりα=αの形の式は妥当式である (2) ⊨α=β → β=α (3) ⊨(α=βΛβ=γ) → α=γ(方針Sをとっている場合は、個体定項ではなく任意の項について成り立つ) (4) ⊨∀𝛏(𝛏=𝛏)つまり同一性関係はreflexiveである (5) ⊨∀𝛏∀𝛇(𝛏=𝛇→𝛇=𝛇) 同一性関係はsynmetricである (6) ⊨∀𝛏∀𝛇∀𝛈((𝛏=𝛇Λ𝛇=𝛈) → 𝛏=𝛈) 同様にtransitiveである (7) α=β⊨ A[α/𝛏] ↔︎ A[β/𝛏] (8)α≠ α ⊨ つまり、α≠αの形の式は矛盾式である
(7)は同一者付加識別の原理(principle of indisernbility of identivals)とかライプニッツの原理(Leibnitz’s principle)と呼ばれる
8.1.3 同一性をタブローで扱う
「=」に対する展開規則を導入する
否定形の規則
α≠α → x
¬(α=α) → x
=を含む否定形の論理式についての展開規則
PaΛ¬Pb a=b Pa ¬Pb

8.2 個数の表現と同一性記号

8.2.1 「〜個ある」を表現する
はじめに
同一性記号を使うと、 任意の有限数nについて「少なくともn個のPがある」とか 「ちょうどn個のPがある」と言う言い回しを記号化できる
同一性を導入する最大のメリット
One at least
「少なくとも一つのPがある」は同一性記号を使わなくても表現できる
Just one
「あなたの希望に当てはまる人はちょうど一人います」
Px:あなたの希望に当てはまる
何らかの人の存在が主張されているので、∃x(…)の形をしている
存在するとされるxさんはどんな人か
(a) Pである (b)彼以外にPであるような人はいない
問題は「x以外にPであるような人はいない」
Pであってxと別人であるようなyさんはいない
あるいは論理的同値
Pな人は全てxと同一人物である
Pなのはxだけ
一意的存在(unique existence)
At most one
「あなたの希望当てはまる人はせいぜい一人です」
「多くて一人」「せいぜい一人」
「ちょうど一人いるかあるいは一人もいない」
多くても一人
「2人以上いる」の否定形
Two at least
少なくとも2つのPがある
Just two
「ちょうど2つのPがある」
全体としては∃x∃y(….)の形になる
(…)の中に書くべきxとyの条件
(1) xもyもPである。PxΛPy
(2) xとyは別物である。y≠x
(3)xとy以外にPであるようなものはない。
¬∃z(PzΛz≠xΛx≠y)もしくは∀z(Pz→(z=xⅤz=y))
以上より
∃x∃y(PxΛPyΛy≠xΛ¬∃z(PzΛz≠xΛz≠y))
8.2.2 確定記述句の理論
確定記述句とは何か
はじめに
「月面を最初に歩いた人(the first person who walked on the Moon)」
「太陽系で最も重い惑星(the heaviest planet in the solar system)」
ある一つの個体を示す表現
述語を含み、それらから作られている表現
確定記述句を主語にする命題の論理言語IPLへの翻訳には課題がある
「その飛行機事故の唯一の生存者は5歳の子供だった (The survivor of the plane crash is a five-year-old child)
(1)確定記述句自体が持つ情報
P:その飛行機の唯一の生存者
a:5歳の子供だった
Paとする
この情報では5歳の子供が存在することしか引き出せない
(2)支持対象が存在しない確定記述句
存在しないものを指定することができる
存在しないものは偽とすると、論理式の偽と矛盾が生じる場合がある
分析の手かがり
困難の原因は
「太陽の上を最初に歩いた人間」のような確定記述句を、
あたかも固有名のような単体表現と考えて個体項「a」としようとしたこと
命題の文法形式
「太陽の上を最初に歩いた人(主語) + はロシア人である(述語)」をそのまま受けて
「指示表現+述語」の枠組みにたって分析するのをやめれば道が開ける
ある人がいて、(a)その人が5歳の子供で、(b)その飛行機の生存者であること、(c)その飛行機のただ一人の生存者であること
とパラフレーズ化していけば良い
(a)(b)(c)の3つの条件を満たしている命題
記述理論
上記の考えに基づいて記号化する
∃x(xはその飛行機事故の生存者である Λxは5歳の子供である Λxのそのほかにその飛行機の青邨者はいない)
∃x(PxΛQxΛ∀y(Py→y=x))
バートランド・ラッセルの記述理論 (theory of description)
分析を味わう
元の命題では一つの意味的なユニットのように見えていたものが、バラバラになって現れる
確定記述句が一かたまりの表現ではなくなった
確定記述句は、それを含む命題全体に論理的分析を施すことで消去される
固有名や述語のようにそれだけを取り出して単独で意味を問うことはできない記号

第Ⅱ部のまとめ

次回は第3部論理学をもう一つの目で見るの読書メモについて述べる。

コメント

  1. […] 推論技術等の人工知能技術の基盤となる数理論理学の著名な教科書である「論理学をつくる」より。前回の第2部論理学を拡げるに続き、今回は第3部論理学をもう一つの目で見るの読書メモについて述べる。 […]

  2. [1]の存在量化(∃) より:

    ≪… あ・れ・も・愛、これも愛…≫や≪… 数学の助けを借りて形式化…≫で、昭和歌謡の本歌取りに、[愛の水中花(カオス)]や[円周率]がある(∃)。

     数学の基となる自然数を、数の言葉ヒフミヨ(1234)が平面(2次元)からの送りモノとして眺めると、[一を聞いて十を知る]の[五色の五蘊物指]が十を示す刀模様の物指になるとか・・

     令和6年4月に[橋本市岡潔数学体験館]が設立されるとか・・・
       このモノサシが見られるといいなぁ~

     もみじ葉の石に潜みし十牛図 

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