街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家

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サマリー

旅は人間が新しい場所を訪れ、異なる文化や歴史を体験するための行為であり、旅を通じて、歴史的な場所や文化遺産を訪れることで、歴史的な出来事や人々の生活を実際に感じることができ、歴史をより深く理解し、自分自身の視野を広げることができる。ここでは、この旅と歴史について司馬遼太郎の「街道をゆく」をベースに旅と訪れた場所の歴史的な背景について述べる。

街道を行く第14巻 南伊予・西土佐の道

前回洛北諸道として京都の北部の山間部の旅について述べた。今回は南伊予西土佐の道について述べる。

南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家

今回は四国の南部と西部。県でいうと愛媛県と高知県にあたる。司馬遼太郎の小説でいうと日露戦争の時代を背景に、松山出身の秋山兄弟を主人公とした「坂の上の雲」と、時代は幕末で前回のべた長州出身だが、宇和島で大きく著名となった大村益次郎を主人公とした「花神」の舞台となっている場所となる。

スタートは松山から。「坂の上の雲」でも出ていたが、松山は俳句が盛んで、正岡子規高浜虚子川東碧梧桐山頭火等の俳人が多数出ている土地でもある。その高浜虚子の書いた「正岡子規」という本の中に、松山城の下にある練兵場で中学時代の虚子が、当時東京の大学予備門に通っていた子規に初めて会うシーンで

「松山城の北に練兵場がある。ある夏の夕其処へ行って当時中学生であった余等がバッチングを遣っていると、そこへぞろぞろと東京帰りの四六人の学生が遣ってきた。余等も裾を短くして腰に手拭いを挟んでいっぱし学生さんの積りでいたのであったが、其人々は本場仕込みのツンツルテンで膝の露出具合もいなせなり、腰に挟んだ手ぬぐいも赤い色のにじんだタオルであることが先づ人目をそばただしめるのであった。」

とあり、バットを貸してバッティングを始めたのが若き日の子規であったとある。「坂の上の雲」は司馬遼太郎がこの文書を読み、何某等のイメージが広がって描き始めたとのことらしい。

ちなみに、愛媛県の名前は、最初は「石鉄」県という当時の県令が根拠も何身なく唐突に決めた名前だったのが(明治維新の時に幕府側についていたので嫌がらせ的な名前とも酷評している)、県令が変わった際に「古事記」にある四国をイザナミイザナギが産んだ際に四国は「身一つに面4つあり」としてすでに4つの国に分けられ、それぞれに男女の人命が命名された際に、愛比売(えひめ:いい女という意味)という粋な名前をとって付けられたと褒めている。

南伊予の旅は松山空港に降り立ったところから始まる。空港からまず向かったのは「伊予豆比古命神社」に向かう。

「伊予豆比古命神社」は市街地から少し離れた土居町というところにあり、地元では「椿神社」あるいは「お椿さん」とも呼ばれ、旧暦1月7日から9日に行われる「椿まつり」は松山人は皆訪れるほどの参拝者の数では四国一の大祭が行われる神社となる。

神社を過ぎてしばらく南下すると「重信川」と呼ばれる川がある。重信川は、松山城を作った

加藤嘉明の部下である足立重信という普請奉行が、当時氾濫を繰り返していた伊予川を治水したことを受けて、命名されたもので人名が川の名前になっているものは日本でも珍しいものらしい。次に一行は大森彦七供養塔に向かう

大森彦七は前回河内のみちでも述べた楠木正成を破り、自刃に追いやった人物だが、そのおかげで正成の怨霊に祟られた怪談が江戸時代に作られ人気を博したらしい。供養塔自体は上記の写真のように非常にコンパクトなものとなっている。供養塔を見た後は、彼らは砥部焼を見る為に、砥部町に向かっている。砥部焼は、砥部地方にあった刃物を研ぐための砥石を使った陶磁器を作りたいという思いから始まっている。当時の殿様に命じられた家臣は、肥前の長与や筑前の須恵に赴き、砥石を原材料に陶磁器を作ろうとしたが、それは結局うまくいかず、代わりに見つけた陶石や釉薬を使った窯行が成立するようになったものらしい。

特徴としては、上記の写真にもあるようにやや厚手でぼってりとしたフォルムと、白磁に藍色の染付が施されているところで、他の磁器と比べるとひひや欠けが入りにくく丈夫なので日常使いできる陶磁器として疲れているとのこと。

砥部から山の中を抜け、途中和蝋燭で有名な内子町を抜け大洲へと向かう。

大洲は、江戸時代には、大洲藩と呼ばれる藩があり、町の中を流れる肱川(鵜飼が行われることで有名)の中にある大洲城は小規模ながら風情がある古城となる。

また近年では「キャッスルステイ」と称して、一日2名に限定して宿泊することもできるらしい。ただし1泊100万円という高額な宿泊費であるため、一般人にはなかなか手が届かないものとなっている。司馬遼太郎たちは油屋という古くから続く旅館に泊まっている。当時は江戸末期の建物が残り風情があるとしきりに褒められていたが、現在は旅館としては存在せず、その跡地がオシャレな炉端焼き屋(名前は同じく油屋なので同じ一族の人による店なのか?)となっている。

大洲ではそのほかに、明治の風がかおる白塗りの洋風建物である開明小学校にも訪れている。

大洲にはこの他にも古い時代の建物が多く残されており、数多くの映画やドラマの撮影の舞台となっている。

大洲の話題はこの辺りで終わり、次の目的地である宇和島に話は進む。宇和島藩の初代藩主は、独眼竜と呼ばれる仙台伊達政宗

の嫡男である伊達宗城となる。伊達宗城は嫡男であり、本来ならば仙台の伊達家を継ぐはずが、伊達政宗が豊臣秀吉に息子(伊達宗城)を差し出し、秀吉にも可愛がられて豊臣家の中で次第に地位を高めていたものが、関ヶ原/大阪夏の陣/冬の陣を経て徳川の世になり、豊臣側であった宗城の行き場がなくなり、宇和島への冊封となったらしい。

その時に、伊達政宗は息子のために優秀な部下をつけたり、多くの持参金をつけたりしてサポートしたとのこと。その為宇和島は人材を大切にする気風が残り、江戸時代に弾圧を受けていた蘭学者である高野長英を匿ったり、司馬遼太郎の小説「花神」の主人公である幕末の軍神・大村益次郎を育てたりされている。

宇和島で眺望を楽しめる場所が愛宕山となる。山頂の展望台からは、宇和島城と宇和海と周辺の山々の風景を楽しむことができる。

宇和島から高知方面に抜ける道が松丸街道となる。宇和島方面は基本的には陸の孤島で、JRも十分に通っていないことで有名で、この松丸街道も近隣では唯一の伊予-高知をつなぐ交通手段となる。

次回北海道の諸道について述べる。

コメント

  1. […] 街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家 […]

  2. […] 次回は南伊予・西土佐の道について述べる。 […]

  3. […] してはかなりのものがあったらしい。そのような圧倒的な戦力差があったにも関わらず、前回述べた松山出身の秋山真之(司馬遼太郎の小説である坂の上の雲の主人公の一人でもある)が参 […]

  4. […] 街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家 […]

  5. […] 生誕100周年を記念して取られたアンケートでは、1位は”街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“でも述べた「坂の上の雲」、2位は「龍馬が行く」、3位は「燃えよ剣」、4位は”司馬遼太郎と日本の街道“で述べている「街道をゆく」、5位は「峠」となっている。 […]

  6. […] そのような高知において、”街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“でも述べた隣国である伊予の国との境にある檮原(ゆすはら)を中心に今回の旅は行われ […]

  7. […] 時代になりつつあり、かれらにより領土を減らされたり、”街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“に述べている様に長男を遠く離れた領地に飛ばされるこ […]

  8. […] この一遍上人は鎌倉時代の僧侶であり、時宗の開祖でもある。“街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“で述べている伊予国(愛媛県)松山市の出身となる。時宗は浄土宗の流れを汲み、浄土教では”禅の思想と歴史、大乗仏教、道の思想、キリスト教“でも述べているように阿弥陀仏への信仰がその教説の中心で、浄土宗では信心の表れとして念仏を唱える努力を重視し、念仏を唱えれば唱えるほど極楽浄土への往生も可能になると説かれていたが、時宗では、阿弥陀仏への信・不信は問わず、念仏さえ唱えれば往生できると説いていた(仏の本願力は絶対であるがゆえに、それが信じない者にまで及ぶという解釈)。 […]

  9. […] 若い時代は官吏としての父の後を継ぐべく、京で学問を修めていたが、19歳を過ぎたときから30歳まで、一説によると”街道をゆく 阿波と淡路島の旅と歴史“で述べた阿波国(徳島県)、”街道をゆく 檮原街道 – 高知と四国山脈の旅“で述べた土佐国(高知県)、”街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“で述べた伊予国(愛媛県)などの山中を訪れて修行に明け暮れていたとされている。空海が著した儒教・道教・仏教の比較思想論でもある『聾瞽指帰』にも、若い頃に伊予国の石鎚山などで修行したと記されている。 […]

  10. […] 和歌山城は、江戸時代以降は”暴れん坊将軍“で有名な徳川吉宗を出した紀州徳川家となるが、元々の普請は、豊臣秀吉により行われ、そこを設計したのは”街道をゆく – 南伊予・西土佐の道 坂の上の雲と南国の伊達家“で紹介した宇和島城や大洲城も設計した藤堂高虎となる。 […]

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