経済数学の直感的方法 確率・統計編 読書メモ

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サマリー

経済数学は、経済学において数学的手法を用いて分析する学問であり、社会や個人の資源配分や意思決定に関する学問である経済学に対して、数学的手法を適用して、モデル化し、数学的に解析することで、より深い洞察を得ることを指す。

経済数学は、供給と需要の理論をモデル化するために用いられたり、その他にも、価格設定や費用削減、生産量の最適化、投資、ポートフォリオ理論、金融市場の理論など、様々な経済学的問題に対して数学的なアプローチを適用することで用いられている。

経済数学は、高度な数学的技術や統計的手法を必要とする場合があり、数学と経済学の両方に強い知識が必要となる。またそれらのアプローチは一般的な機械学習に対して示唆を与えるものとなる。さらに、経済学における理論的な洞察と計量的な分析を組み合わせることで、より妥当な結論や意思決定が可能になる。

ここではこの経済数学に対して、「経済数学の直感的方法 確率・統計編」をベースに述べる。

今回は読書メモについて述べている。

経済数学の直感的方法 確率・統計編 読書メモ

高度に発展した経済数学の本質を、70点に及ぶ図・グラフを中心に、直観的に理解していきます。本書では、「確率・統計編」として、正規分布曲線ができるメカニズムを学び、確率統計論で最も重要な原理とされる、中心極限定理の不思議に触れ、教養としてのブラック・ショールズ理論を身につけていきます」

第1章 初級編

1. 確率統計を理解するための根本思想

確率統計の学習に現れる障害
神はサイコロを振らない
ガウスの時代に確率論の中にも「神の指紋」が見つけられた
人間は今まで「誤差の修正」をどういう思想で行ってきたか
ガウスが研究していたのは「誤差論」
天体観測の中で生まれる誤差はどういうメカニズムで生まれるのか?
命中効率を最大にする伝統的な方法
人は誤差の修正をどうやってきたか
艦隊の砲台は「夾叉を得る」まで修正して、後は運任せ
第一の重要ポイント
誤差の本質は2つの部分で構成される
一定方向に出る誤差
修正の対象
+方向と-方向に同じように出る誤差
純粋に確率論に支配されている誤差
第二の重要ポイント
この世界の誤差は多段構造で生まれる
誤差の伝言ゲーム
問題の単純化
規格化(±1の誤差)
順序の入れ替え
確率統計の基本思想
「創造主のベルトコンベア」が個体差を生み出す
この世界の物事のバラツキはどのような分布パターンに従うのか?
なぜ世界の物事のバラツキは正規分布に従うのか

2. 我々の世界の確率統計はどう成立したか

確率統計論の最大の岐路
この核心部分は「神の指紋あり」か「なし」か?
形は複雑だか単純な数式が表される
正規分布曲線が生まれるメカニズム
シンプルなプロセスの多段構造でのメカニズム
「神の指紋なし」のパラレルワールドでは統計学はどう進化したか
2つのデータがあれば「すべてがわかる」
どこの位置でいくつ玉があるかは、2つの乗法(底辺の長さと中央の位置(平均)があればわかる
驚くほど単純なパラレルワールドの「標準偏差」
標準偏差が底辺の幅に対応する
この方法で確率統計の攻略方法
「偏差値」の意味とは何か
平均値からどれほどずれているかを判定する
ずれの大きさ/底辺の長さ
教科書とぴったり一致するパラレル・ワールドの公式
中心値を50として計算
実世界での標準偏差
Dがσになっただけ
パラレル・ワールドの「偏差値70」とは
パラレル・ワールドの「偏差値」の使い方
標準偏差60以上なら上位1/8に入り、競争率が8倍程度だと合格ラインに入る
我々の世界の標準偏差
正規分布曲線の「幅」をどうやって指定するか
正規分布では無限大に広がる
そこに現れる「特殊な2点の幅」
全体の幅は定義できないので、変移点間の距離で定義
標準偏差σ

3. 補足的な基礎知識

実際の正規分布曲線
球数が少なくてせいぜい数十個の場合は「二項分布」のパターンとなる
曲線の大まかな形
形2
なぜ標準偏差の計算には「2乗」が出てくるのか
パラレルワールドでの底辺dの求め方
各データをxiとして、三角形の中心線0mとした時
実世界の標準偏差
参考:パラレル・ワールドでの標準偏差の公式の求め方
標準的な求め方との対比
まとめ

第2章 中級編

1. 最小2乗法の本質

最小2乗法の本質
調査や観測で得られたデータが、誤差でバラついていて本当の値がわからない時
その真の値を割り出して誤差を最小にするための手法
データの背後に隠されている正規分布曲線の中心線の位置を推理すること
パラレルワールドの「最小(絶対値)1乗法」
データの分布グラフの背後に隠されている三角形の位置を推定する
中心線が本命のデータ
中心線の位置をどうやって推理するか
ケース1
ケース2
ケース3
なぜ1乗ではなく2乗なのか
2乗を使った方が精度が良くなる
パラレルワールドと正規分布
まとめ

2. 中心極限定理の不思議

正規分布の思想が導く深い世界
世の中には様々な確率分布がある
それらを混ぜて合成すると綺麗な正規分布になる
中心極限定理のメカニズム
バラツキの構成要因
一方向に現れて人間が修正できる部分
確率の部分にバイアスとしてかかる
バイアスの規則性により、何通りもの分布パターンができる
左右(+-)方向に現れて確率的にしか扱えない部分
正規分布

実例1
実例 2
実例3
様々な統計分布は正規分布のバリエーションで生まれる
二項分布だけは、正規分布の初期状態として考えられる
二項分布を無限回にすると正規分布になる
正規分布を有限回に落としたものが二項分布
色々な分布の例
ポアソン分布
一回あたりでは非常に珍しくしか起こらない事象が、 非常に長い時間で眺めるとどのような分布カーブになるか調べるもの
1回あたりで起きる確率が1万分の1ぐらいでしかない珍しい現象を何年も眺めた分布
例:交通事故
一般に工事こが起きる確率はかなり低いが、 時間のスケールを長く取ると目に見える大きさで現れる
正規分布の一回ごとの確率と時間の単位の双方を大きくスケール変換した形でカーブを描いたもの
べき分布
構造面から一定の規則性でバイアスをかける
むしろ自然だった中心極限定理の話
中心極限定理は元々は二項分布から正規分布への話で考えられたもの
経済予測にとってそれがどれほど有難いか
多種多様な確率分布を加えると、光を足していくと白色になるのと同じように単純な正規分布に戻る
「最後に笑う」のは正規分布

3. ブラウン運動とブラック・ショールズ理論

ブラウン運動と正規分布
「酔歩満策」=ランダム・ウォーク
正規分布を2次元平面に拡張したもの
ブラウン運動は正規分布のバリエーション
いくつかの誤解の解消
ブラウン運動では時間とともに空間的に拡散していく
正規分布のどこに対応しているのか
標準偏差σが時間とともに拡大していく
現実の系だと拡散は有限なので正規分布とは少し違う形となる
ブラウン運動での拡散の半径の拡大は、時間というより「ジクザグの回数」が増えることで起こる
「時間に比例してジクザグの回数が増える」という基本設定がないと拡散は起きない
パチンコの台の例だと釘の数が決まっているので拡散は限定される
釘の数が増えるものだと拡散していく
コイン投げでは何が時間的に増大するか
コインの表を+1点、裏を-1点として何回もコインを投げて合計点が何点になるか
十分な長い時間をやればゼロに近く
ブラウン運動の拡散のモデルと何が違うのか
50回投げるのを一つのセットとする
ブラウン運動ではセットの回数が増えていくイメージ(500回、5000回)
賞金を絶対値とすると時間とともに確実に増加する
ブラックショールズ理論
2種類の相殺メカニズム
サンプルをたくさん集めれば、バラツキが相殺されて0になる
相殺メカニズムには2種類ある
バラついたサンプルの「数値の大小」のバラエティそれ自体に依存する
数値の大きさが「3」とか「7」とかのようにバラバラであることで互いに凹凸が相殺される
+とーの二曲相殺
ガスの分子のバラツキ
絶対値ゲームでは第二のメカニズムがオフになっているので増えていく
理系系のアプローチ それが時間とともにどう変化するか?
それが√tになることの直感的イメージ
位置の時間的な拡散は時間の平方根(√t)に比例する
ブラウン運動のメカニズム
最初に半径Rの円の上にいる
平行経路rでジグザグ運動を繰り返す
半径rの範囲で動く
Rの円で考えると外側の扇が遠く(+)、内側が近く(-)となる
面積的には外側が大きいので、外へ向かう方が確率は高い
外側に広がっていく
Rが大きくなるとr/Rの比が小さくなる
動きが鈍くなる
Rの円が大きくなると、外側/内側の比率が1に近く
外に広がる動きが鈍くなる
ベクトル的な見方だと、出る①と入る②とそれらの平均が③
③にしみだしのメカニズムが集約
③、④だけが繰り返されると簡略化できる
①、②のグループと③、④のグループに分ける
①、②のグループは±ゼロ
③だけでベクトルの変化を見る
R1 = √(R02 + r2)
R12 = R02 + r2
R22 = R12 + r2 = R02 + r2 + r2
T秒後のRtは
Rt2 = R02 +tr2
Rt =√t ・r
√tに比例する
拡散は2次元でも3次元でも同じ形になる
写像イメージ
経済での1次元( 絶対値)の話の場合
ある数の絶対値を求めるにはどうすれば良いか
その数を一旦2乗してその平方根を取る
絶対値幅も√tで拡大する
例:コイントス3回投げる
A = a1 + a2 + a3
|A| = √(a12 + a22 +a32)
|A| = √(a12 + a22 + a32 +2(a1a2 + a2a3 + a3a1))
aが+aか-aのとき
最初の3つはどれもa2
後ろの3つは組み合わせで+や-になりランダムが混じる
Nを増やしても同様
Nが大きくなるとランダム項はゼロに近く
よって|A| = √t・a
ウィーナー過程
中心極限定理との関連
ジグザグをつなげる
N個のジグザグでは√n倍になる
標準偏差は√n・σ
ジグザグをつなげる=たくさんの確率分布をつなげる
標準偏差は√n・σ
文系側からのアプローチ- 絶対値ゲームをどう作るか
現実の株や債券の世界で絶対値ゲームの部分を見つけれれば、一方的に利益は増える
戦時国債で損をしない方法
リスクヘッジ
静的に行うのでなく、連動するものを売ったり買ったりする方法を決める
航空機メーカーにとっての選択
連動が上向きの曲線なら「絶対値ゲーム」が作れる
リスクが消える基本原理
無リスクポートフォリオ
「曲線的な連動性」が鍵となる
連動性は未知量ではない
確率部分をメカニズムドリブンの部分と純粋確率部分ら分けられれば
確率部分は絶対値ゲームを組むことができる
ブラックショールズ理論の本質
中心極限定理でたくさん集めれれば正規分布に近く
この理論をパノラマ図で一挙に理解する
理解の整理
一定方向に動く部分「トレンド」
ランダムに動く部分「ポラリティ」
実際の使われ方

4. 教養としてのブラック・ショールズ理論

これを一般常識として知る必要性
この話の違和感とかこの類似物
農業経済
天候が不作であれば富は生まれない
貿易経済
天候が不作でも地域に価格差があれば富は生まれる
商業国vs農業国
「資本主義の終焉」の中でのブラックショールズ理論の意外な役割
将来の資本主義の新しいビジョン
「ポラリティ型」への移行は起こるか
ブラックショールズ理論で眺める資本主義と江戸経済
ブラックショールズ理論で眺めるイスラム金融
侵入する指数関数増大のメカニズム
直線型か指数関数型か
この話の真の価値

第3章 上級編

1. 伊藤のレンマと確率微分方程式

ガウスの基本思想を引き継いだ確率微分方程式
確率微分方程式
𝒅𝓍 = 𝑨𝒅𝓉 + 𝑩𝒅𝓌
X(t) = A・t + Bw(t)
物の動きは、 一定方向に動いて人間が予測できる部分と、 ±どちらの方向にもランダムに動いて確率に束ねるしかない部分に分かれる
𝒅𝓍
微小変化量
𝑨𝒅𝓉
微小時間𝒅𝓉での移動
𝑩𝒅𝓌
正規分布のパターンに従う
この学問は具体的に何をやりたいのか
xが独立変数で、 xの影響で動くyという量があって、 yの時間的な振る舞いを知りたい
Y = F(x)
dy = F(dx)
独立変数のxの時間的な振る舞いは dx =Adt
ジグザグ運動を入れた場合の修正
dx = A1dt + B1dw
dy = F(dx)
dy = F(A1dt + B1dw)
Fを外してdtやしてで表そうとすると、 式が複雑化してdtとdwが混じる
綺麗に分けるものが伊藤のレンマ
文系から見た伊藤のレンマの目的
dx = A1dt + B1dw
A1dt
株の場合はアナリストが「トレンド」として傾向を予測できる部分
B1dw
ランダムに動く「ポラリティ」の部分
経済学の中のテイラー展開
テイラー級数
F(x) = a0 + a1x + a2x2 +・・・
a1やa2はFをそれぞれ1回、2回と微分していくことで求めた定数
ある関数Fのx0での値をF(x0)とした場合
そこからdxだけずれた「x0 +dx」の点での値が
dxは微小なのでdx2,dx3などの部分はゼロに近くなって無視できる
Fが未知だと使えない
テイラー展開のカラクリ
dx2、dx3以降の項を無視する
図での確認
x0の点でのFの値はF(x0)
dxだけずれたx0+dxでのFの値F(x0+dx)
三角形の高さは、底辺の高さdxに傾斜率をかける
傾斜率
dF(x0)/dx
多段のテイラー級数のブロック重ねのイメージ
どのオーダーの項なら捨てて良いか
実際の計算では3次の項(dx3)から先は無視される場合が多い
2次の項(1/2d2F/dx2・dx2)の出番が訪れるケース
何らかの形で第一項(1次の項)がうまく使えない場合
伊藤のレンマやブラックショールズ理論では 2次の項が主要的な役割を果たす
第2項だけが非常に重要になってくる
どういった場合に小さいとして無視できるか?
オーダー(桁数)の違うものを足し合わせる時には、小さいものが無視できる
伊藤のレンマとx2の項
Yとの連動性がy=F(x)あるいはdy=F(dx)で与えられている
dx=Adt+Bdwと書かれているならば
dy=F(Adt+Bdw)と書ける
テイラー級数を使うと
dtではオーダーを考えて2次の項以降は無視できる
dwの場合はdtとは異なる
最終的な式
いくつかの疑問点の解消
残った疑問点
伊藤のレンマの式
伊藤のレンマの意義(1) ジクザグ運動を持つ問題の画期的ツール
伊藤のレンマの意義(2) 無リスクポートフォリオの作り方
今の話の整理
中級編の話との整合
理系と文系の間の問題
基礎部分にもある思想的な問題点
微分は連続的なものしか使えない
ルベーグ積分の適用
確率微分方程式の思想的基礎

2. 実際のブラック・ショールズ理論

実際のブラックショールズ理論との違い
ブラックショールズの方程式
ブラックショールズの公式の難しさ
ブラックショールズの公式の数学面での2つの難所
①なぜこの問題にフーリエ級数が出てくるのか
②ブラックショールズの公式のN(*)の記号は何を意味するのか?
最後に-確率統計の根源

第4章 測度とルベーグ積分

測度とルーベク積分

確率に動きの入った確率過程で必要になる
測度論は位相空間の概念の延長線上にある

これらの概念が要求された経緯

マクロ経済学での「位相」について
ある品物と別の品物はどれだけ「近いのか」といった曖昧な言葉でしか表せないものに 「集合」の考えを使ってその間の仮想的な「距離」を導入する
「測度」について
距離ではなく面積や体積について、曖昧なものを扱う際に、 「集合」の考え方を使ってうまく定義する
不連続なものに対する積分的対応
例:分子の衝突する際の加速度
飛び出た点は無限小となる
無限小部分の面積を扱うツールとして「測度」が必要
それらを使った積分がルベーグ積分
不連続に突然0から1にジャンプしてしまうような、 滑らかでない関数を扱うにはどうすれば良いか
連続でないので微分ができない
確率では「期待値を計算する」ことが重要
期待値の計算では積分が必要

アナログ量とデジタル量

物理の世界ではアナログ的なものが大半だが、 経済の世界ではデジタル的になる
確率の世界でも「ある問題が起こる/起こらない」のデジタルで表現される世界
確率の世界ではデジタルからアナログの変換を経て積分等が行われる

アナログ量の期待値とその積分計算

例:宝くじの期待値
棒グラフの面積が期待値
例2:宝くじの期待値
同じ確率(棒の横軸が同じ)で様々な当たりがある
同様に期待値は全体の面積

「測度」の考え方

数の代わりに集合を代入する関数を準備
集合を代入すると「長さ」などを表示する
例:サイコロ
出来事や事象の側を一種に集合と考える
サイコロを投げた時に1の目が出るという事象
集合A1
サイコロを投げた時に2の目が出るという事象
集合A2
集合関数P(A)によって、 A1やA2などの抽象的な集合が 「確率値1/6」というアナログ値に変換される
抽象化するにはある程度限定された性質を持つものに限られる
サイコロの場合は当てはまる
「1が出る確率」+「2が出る確率」=「1または2が出る確率」
P(A1) + P(A2) = P(A1 ∪ A2)
A1 ∩ A2 = 𝟇(空集合)

ルーベク積分とはどんなものか

測度を使って積分するもの
従来型の積分
リーマン積分

「有理数の点ではf=1となるがそれ以外の無理数の場所ではf=0になる」関数を考える
有理数
xの小数点以下が有限の数で止まっていたり、 あるいは一見無限に続いていても、それが循環小数になっているもの
無理数
無限に続く小数点以下が循環小数になっていないもの
直線上のほとんどの点で無理数
有理数は特殊な点だけである
「これを積分したら 0になるのか 一定の有限値になるのか、 それとも無限大に発散するのか
有理数の「1」の部分は区間内に無限にある
個々の微小幅は無限小なので、積分するとかけ算で両者が相殺されるかどうかわからない
ルベーグ積分を使うとこれが0だとわかる

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