混合整数最適化(Mixed-Integer Optimization)について
混合整数最適化は、数理最適化の一種であり、連続変数と整数変数を同時に扱う問題のことを指す。この分野は、さまざまな産業やビジネス領域で現実的な問題を解決する際によく用いられ、混合整数最適化の目標は、目的関数を最大化または最小化する際に、制約条件の下で最適な変数の値を見つけることとなる。
混合整数最適化問題を数理モデル化するためには、次の要素を定義する必要がある。
- 変数(Variables): 問題に含まれる決定変数としては、連続変数と整数変数の両方が含まれる。連続変数は実数値をとることができる変数であり、例えば、時間や長さなどのような連続的な値を表す変数が含まれ、整数変数は整数値のみをとることができる変数であり、例えば、数量や人数など整数で表される問題に適用されるものとなる。
- 目的関数(Objective Function): 最小化または最大化を目指す関数は、決定変数を使って表され、最適な値を持つように設計される。
- 制約条件(Constraints): 問題に対する制約条件は、決定変数の許容範囲や問題の要件を表す不等式や等式の形で表現されるものとなる。
混合整数最適化問題の一般的な数理モデルは、以下のように表現される。
一般形の混合整数最適化問題:
目的関数: maximize f(x,y)
制約条件:gi(x,y)≤bi,i=1,2,…,m
変数の定義:x∈Rn
y∈Zpここで、f(x,y)は最大化または最小化したい目的関数であり、xは連続変数ベクトルで、内の値をとり、yは整数変数ベクトルで、 内の値をとる。また、制約条件は不等式制約(等式制約も含む)で表現され、はxとyの関数であり、それらの制約条件を表す。 は制約条件の右辺の定数となる。 は制約条件の数を示す。
混合整数最適化問題の目的は、目的関数を最大化または最小化する際に、制約条件を満たすxとyの値を見つけることであり、ここで、xは連続変数であるため、通常の数理最適化問題と同様に、非線形性や連続性を考慮する必要があるが、yが整数変数であるため、問題は特に難しくなる。
混合整数最適化問題のアルゴリズムについて
混合整数最適化問題は、整数変数と連続変数を同時に扱うため、一般的な最適化問題よりも複雑であり、厳密解法が効率的に大規模な問題を解決することは難しい場合がある。そのため、実用的なアプローチとしては、以下のようなアルゴリズムや手法が一般的に用いられている。
- 分枝限定法(Branch and Bound): 分枝限定法は、混合整数最適化問題をより小さな部分問題に分割して、部分問題ごとに最適解を見つける方法となる。分割された問題の上界や下界を推定して、最適解が見つかる可能性が低い部分問題は枝刈りすることで計算量を削減する原理であり、商用およびオープンソースのソルバーの多くが分枝限定法をベースにしている。
- カットプレーン法(Cutting Plane): カットプレーン法は、連続緩和問題(整数制約を取り除いた連続変数だけを持つ問題)の解を求めることから始め、整数制約を満たすための条件(カット)を導入して問題を縮小する手法となる。カットプレーン法は、このプロセスを繰り返し、整数解を見つけることを試みる。
- ダイナミックプログラミング(Dynamic Programming): ダイナミックプログラミングは、問題を小さい部分問題に分割し、それらの部分問題を効率的に解きながら、最適な解を構築する手法であり、部分問題の解はメモ化(記憶化)され、同じ部分問題が再度現れた場合に再計算せずに再利用されるものとなる。
- 列生成法(Column Generation): 列生成法は、通常、大きな制約条件のセットと多数の変数を持つ混合整数最適化問題に適用される手法で、初期の数列を選択し、追加の変数を必要に応じて動的に生成する方法を取る。この過程は、最適な解が見つかるか、もしくは十分に近い近似解が得られるまで繰り返される。
- メタヒューリスティクス: メタヒューリスティクスは、他の最適化アルゴリズムを包括する高レベルのアプローチであり、例えば、遺伝的アルゴリズム、粒子群最適化、焼きなまし法などが混合整数最適化問題に適用されることがある。これらのアルゴリズムは近似解を効率的に見つけることができるが、最適解を保証するものではない。
- ヒューリスティクス: ヒューリスティクスは、経験的な観点から設計された問題解決手法となる。この手法は、局所的な最適解を見つけるのが得意で、一般的に計算時間が短いが、最適解を保証するものではない。混合整数最適化問題には、GRASP(Greedy Randomized Adaptive Search Procedure)、ローカルサーチ、シミュレーテッドアニーリングなどのヒューリスティクスがよく使用されている。
- 直感的アプローチとルールベースの方法: 特定の問題に対して直感的なアプローチやルールベースの方法を使うこともある。これは、特定の問題の特性に基づいたカスタムソリューションを開発する手段となる。
混合整数最適化問題はNP困難な問題であるため、多くの場合、効率的なアルゴリズムによる厳密解は見つけることが難しい。そのため、問題の規模や性質に応じて、適切なアルゴリズムやヒューリスティクスを組み合わせて、近似解を求めることが一般的なアプローチとなる。商用のソルバーやオープンソースのライブラリも利用可能で、多くの場合、これらを使用することで効率的な解を得ることができる。
混合整数最適化を行う為の手順について
混合整数最適化を行うための一般的な手順について述べる。
- 問題の定式化: 最適化したい問題を数理モデルとして定式化する。目的関数と制約条件を数式で表現し、最適化したい変数(連続変数と整数変数)を定義する。
- 最適化ソルバーの選択: 商用またはオープンソースの混合整数最適化ソルバーを選択する。問題の規模や性質に応じて、適切なソルバーを選ぶ。
- 初期解の生成(オプション): 問題の複雑性によっては、初期解を提供することでソルバーの収束性を向上させることができる。初期解を生成する方法は問題によって異なる。
- 最適化の実行: 問題を数理モデルに変換し、選択したソルバーを使用して最適化を実行する。ソルバーは問題の数理モデルを解析し、最適解を求めるためのアルゴリズムを適用する。
- 解の解釈と評価: 最適化結果を解釈し、目的関数値が最適解に対してどれくらい良いかを評価する。また、制約条件を満たしているかどうかも確認する。
- 感度分析(オプション): 問題のパラメータや制約条件の変化に対する解の変動を評価するために、感度分析を実施する。これにより、最適解のロバスト性やパラメータの重要度を理解できる。
- 解の改善(オプション): 最適解が十分に良い場合でも、問題によっては解を改善するための追加の手法を適用することがある。
- 結果の適用: 最適化結果を実際の問題に適用する。これには、最適な計画の実装、意思決定のサポート、システムへの統合などが含まれる。
混合整数最適化問題に用いられるライブラリやプラットフォームについて
混合整数最適化問題を解くために、さまざまなライブラリやプラットフォームが存在する。これらのツールは商用やオープンソースのものがあり、問題の規模や要件に応じて選択することが重要となる。以下によく使われる混合整数最適化ライブラリやプラットフォームについて述べる。
- IBM CPLEX: IBMが提供する商用の最適化ソルバーであり、混合整数最適化問題を高速かつ効率的に解決することができるものとなる。PythonやJavaなどの主要なプログラミング言語と連携することができる。
- Gurobi: 商用の最適化ソルバーであり、高度な最適化アルゴリズムを備えている。Python、C++、Java、.NETなどの言語で使用できる。
- SCIP: オープンソースの最適化ソルバーであり、商用ソルバーに匹敵する性能を持っている。C++で開発されており、APIを介して他の言語からも利用可能となる。
- COIN-OR: オープンソースの最適化ソルバーのプロジェクトであり、COIN-ORの一部としていくつかのソルバーが提供されている。例としてCBC(COIN-OR Branch and Cut)がある。
- PuLP: オープンソースのPythonライブラリであり、CPLEXやGurobiなどの商用ソルバーと連携して混合整数最適化問題を解くことができる。シンプルな構文で問題を定義できるのが特徴となる。
- Pyomo: オープンソースのPythonモデリング言語であり、CPLEXやGurobiなどのソルバーと統合して最適化問題を解くことができる。
- AMPL: 商用の最適化ソフトウェアであり、高度なモデリング言語として広く利用されている。AMPLはCPLEXやGurobiなどのソルバーと連携可能となる。
これら以外にも、Xpress、GLPKなど、様々な混合整数最適化ソルバーが存在し、それぞれのソルバーは、問題の規模、制約条件、目的関数の性質などによって異なった特徴を持つ。
これらのライブラリやプラットフォームは、数理モデルの定義や問題の解析、最適化アルゴリズムの実行などをサポートしており、混合整数最適化問題の解決に役立つ。商用ソルバーは高度なアルゴリズムとパフォーマンスを提供するが、オープンソースのソルバーやライブラリも多くあり、柔軟性やカスタマイズ性を重視する場合に選択肢となる。
混合整数最適化問題の適用事例について
混合整数最適化問題は、さまざまな産業やビジネス領域で様々な問題に適用されている。以下に代表的な適用事例について述べる。
- 製造スケジューリング: 製造業では、生産計画や製造工程のスケジューリングが重要となる。生産ラインの最適なスケジュールを決定する際に、機械の利用率や製品の納期を満たすための混合整数最適化問題が使用されている。具体的な目的としては、生産量を最大化するか、製造コストを最小化するか、納期遅延を最小化するかなどがあり、制約条件としては、製造ラインの能力、リソースの制約、納期要件などがある。
- 物流最適化: 運送ルートや輸送計画を最適化する際に、車両のルート、適切な輸送手段、倉庫の配置などを最適化する混合整数最適化問題が適用されている。具体的な目的としては総輸送コストを最小化する、輸送時間を最小化する、顧客への到着遅延を最小化するなどがあり、制約としては、輸送容量の上限、倉庫の収容能力、時間窓(顧客への到着時間の範囲)、制約リソースなどがある。
- 電力システム計画: 電力供給の最適化は、再生可能エネルギーの導入や送電網の最適化、電力需要の管理などで重要です。混合整数最適化問題は、電力供給の効率を向上させるために使用されます。具体的な目的としては、電力供給コストを最小化する、再生可能エネルギーの導入を最大化する、送電ロスを最小化するなどがあり、制約としては、電力供給の上限と下限、送電網の容量制約、電力需要の制約、再生可能エネルギーの制約などがある。
- 在庫最適化: 小売業や製造業では、在庫レベルを最適化して在庫コストを削減し、同時に顧客の要求に迅速に応えるための混合整数最適化問題が適用されます。具体的な目的としては、在庫コストを最小化する、在庫不足を最小化する、在庫廃棄を最小化するなどがあり、制約としては、在庫の最大容量、在庫の最小必要量、製品の需要と供給のバランス、保管コスト、受注納期などがある。
- プロジェクトスケジューリング: プロジェクトマネジメントでは、リソースの割り当て、タスクのスケジューリング、プロジェクトの期間短縮などを最適化するための混合整数最適化問題が使用されます。具体的な目的としては、プロジェクト期間を最小化する、リソースの使用量を最小化する、遅延を最小化するなどがあり、制約としては、タスクの前後関係(依存関係)、リソースの制約、作業時間の制約などがある。
- ネットワークデザイン: 通信ネットワークの設計や交通ネットワークの最適化など、異なる場所間の接続や経路の選択を最適化する問題に混合整数最適化が利用されます。具体的な目的としては、通信ネットワークの帯域幅を最大化する、輸送ネットワークの運送コストを最小化する、ネットワークの信頼性を最大化するなどがあり、制約としては、リンクの容量制約、通信ノードの設置制約、輸送ルートの制約などがある。
- ポートフォリオ最適化: ポートフォリオ最適化問題は、投資家が投資する資産の配分を決定する問題であり、資産の配分には、様々な制約条件があり、それらを考慮した最適なポートフォリオを求めるために混合整数最適化が用いられている。具体的な目的としては、ポートフォリオのリスク(分散や標準偏差)を最小化し、期待収益を最大化するなどがあり、制約条件としては、投資金額の合計が上限を超えないようにする、資産の割合が一定範囲内に収まるようにする、特定の業種や地域への過度な偏りを避けるなどがある。
Pythonを使った混合整数最適化の実装例
Pythonを使った混合整数最適化の実装例として、PuLPを用いた例について述べる。
PuLPは、Pythonで記述された混合整数最適化問題を解くことができるオープンソースのソルバーであり、PuLPを使うことで、簡単に混合整数最適化問題をモデル化し、ソルバーによって解くことが可能となる。
以下は、PuLPを使った混合整数最適化問題の例となる。この問題は、2つの変数x、yを最大化する問題であり、x、yはそれぞれ0以上の整数である制約条件がある。PuLPを使用するためには、事前にpip install pulp
などでPuLPをインストールしておく必要がある。
from pulp import *
# 最大化問題を定義する
problem = LpProblem('example', LpMaximize)
# 変数を定義する
x = LpVariable('x', lowBound=0, cat='Integer')
y = LpVariable('y', lowBound=0, cat='Integer')
# 目的関数を定義する
problem += 5*x + 3*y
# 制約条件を定義する
problem += x + y <= 10
problem += x <= 4
# 混合整数最適化問題を解く
status = problem.solve()
# 結果を出力する
print(f'status: {LpStatus[status]}')
print(f'x: {value(x)}, y: {value(y)}, obj: {value(problem.objective)}')
このコードでは、PuLPを使って最大化問題を定義し、変数x、y、目的関数、制約条件を定義している。最後に、PuLPのsolve()関数を呼び出すことで、混合整数最適化問題を解くことができる。この問題の解は、x=4, y=6, 目的関数の値=32となる。
混合整数最適化問題によるスケジューリングの最適化のpythonによる実装例
混合整数最適化問題による製造スケジューリングの最適化のPythonによる実装例について述べる。ここでは、サンプルとしてジョブショップスケジューリング問題を取り上げる。ジョブショップスケジューリング問題は一般的な製造スケジューリング問題の一つで、複数のジョブが複数の機械で処理される場合に、全てのジョブを完了するための最適なスケジュールを見つける問題となる。
以下は、PuLPを使用したジョブショップスケジューリング問題を解く簡単な実装例となる。
import pulp
# ジョブと機械の数
num_jobs = 3
num_machines = 3
# ジョブの処理時間
processing_times = [
[2, 3, 2], # ジョブ1の処理時間
[1, 2, 1], # ジョブ2の処理時間
[4, 2, 3] # ジョブ3の処理時間
]
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Job_Shop_Scheduling", pulp.LpMinimize)
# 変数定義
# 変数x[i][j][k]は、ジョブiを機械jでk番目に処理する場合に1となるバイナリ変数
x = [[[pulp.LpVariable(f"x_{i}_{j}_{k}", cat=pulp.LpBinary) for k in range(num_machines)] for j in range(num_machines)] for i in range(num_jobs)]
# 目的関数
prob += pulp.lpSum(x[i][j][k] * (k + processing_times[i][j]) for i in range(num_jobs) for j in range(num_machines) for k in range(num_machines))
# 制約条件
# 各ジョブは異なる機械で同時に実行されないように制約
for i in range(num_jobs):
for j in range(num_machines):
prob += pulp.lpSum(x[i][j][k] for k in range(num_machines)) == 1
# 各機械は同時に複数のジョブを実行しないように制約
for j in range(num_machines):
for k in range(num_machines):
prob += pulp.lpSum(x[i][j][k] for i in range(num_jobs)) <= 1
# 各ジョブは前の機械で処理が終了してから次の機械で実行されるように制約
for i in range(num_jobs):
for j in range(num_machines - 1):
prob += pulp.lpSum((k + processing_times[i][j]) * x[i][j][k] for k in range(num_machines)) <= pulp.lpSum(k * x[i][j+1][k] for k in range(num_machines))
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適スケジュール:")
for i in range(num_jobs):
for j in range(num_machines):
for k in range(num_machines):
if x[i][j][k].varValue == 1:
print(f"ジョブ{i+1}を機械{j+1}で{processing_times[i][j]}時間から{processing_times[i][j]+k}時間にかけて処理します。")
この例では、ジョブショップスケジューリング問題のサンプルをPuLPを使用して最適化している。
混合整数最適化問題による物流最適化のpythonによる実装例
混合整数最適化問題による物流最適化のPythonによる簡単な実装例を示す。物流最適化では、輸送経路や配送スケジュールなどを最適化することで、コストの最小化や効率の向上を図る。以下の例では、簡単な輸送問題をPuLPを使用して解く方法について示す。
import pulp
# 輸送経路とコストのデータ
# 輸送経路は辞書形式で示す (工場, 倉庫)
routes = {
('Factory1', 'Warehouse1'): 10,
('Factory1', 'Warehouse2'): 20,
('Factory2', 'Warehouse1'): 15,
('Factory2', 'Warehouse2'): 25,
}
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Transportation_Problem", pulp.LpMinimize)
# 変数定義
# 変数x[i][j]は輸送経路(i, j)を利用する場合に運送量を表す変数
x = {(i, j): pulp.LpVariable(f"x_{i}_{j}", lowBound=0, cat=pulp.LpInteger) for i, j in routes}
# 目的関数
prob += pulp.lpSum(routes[i, j] * x[i, j] for i, j in routes)
# 制約条件
# 工場からの供給量が需要に等しい制約
demand = {
'Warehouse1': 15,
'Warehouse2': 20,
}
for j in demand:
prob += pulp.lpSum(x[i, j] for i, _ in routes if j == _[1]) == demand[j]
# 倉庫への輸送量が供給に等しい制約
supply = {
'Factory1': 25,
'Factory2': 30,
}
for i in supply:
prob += pulp.lpSum(x[i, j] for _, j in routes if i == _[0]) == supply[i]
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適な輸送計画:")
for i, j in routes:
print(f"輸送経路({i}, {j})を利用して {x[i, j].varValue} 単位輸送します。")
この例では、簡単な輸送問題をPuLPを使用して最適化している。実際のタスクに適用するには、物流最適化問題に応じて制約条件や目的関数を適切に定義する必要がある。物流最適化は、複雑な問題になる場合が多く、リアルな問題に適用する際には、より多くの制約条件や変数が含まれることが想定される。そのような場合は、より詳細なモデリングが必要になるが、PuLPをはじめとする最適化ライブラリを活用することで、効率的に問題を解決することができる。
混合整数最適化問題による電力システム計画最適化のpythonによる実装例
電力システム計画最適化は非常に複雑な問題であり、実際の電力システムでは多くの制約条件や変数が存在している。以下の例では、3つの発電所(火力、風力、太陽光発電)があり、それぞれの発電所の出力を最適化して、需要を満たす場合のコストを最小化するものについて示している。
import pulp
# 需要
demand = 100
# 発電所の情報(発電コストと最大出力)
plants = {
'Thermal': {'cost': 50, 'max_output': 80},
'Wind': {'cost': 20, 'max_output': 60},
'Solar': {'cost': 30, 'max_output': 40},
}
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Power_System_Optimization", pulp.LpMinimize)
# 変数定義
# 変数x[plant]は発電所の出力を表す変数
x = {plant: pulp.LpVariable(f"x_{plant}", lowBound=0, upBound=plants[plant]['max_output'], cat=pulp.LpContinuous) for plant in plants}
# 目的関数
prob += pulp.lpSum(plants[plant]['cost'] * x[plant] for plant in plants)
# 制約条件
# 需要を満たす制約
prob += pulp.lpSum(x[plant] for plant in plants) >= demand
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適な発電所の出力:")
for plant in plants:
print(f"{plant}: {x[plant].varValue} MW")
この例では、3つの発電所(火力、風力、太陽光発電)の出力を最適化して、電力需要を満たす場合の最小コストを求めている。実際の電力システム計画最適化では、さらに多くの制約条件(例:瞬時の電力バランス、送電容量制約、環境制約など)が必要になる。複雑な電力システム計画最適化には、商用の最適化ソルバーも利用可能であり、商用ソルバーはより高度なアルゴリズムや高速な計算能力を持っており、より大規模かつ複雑な問題に対応できる場合がある。
混合整数最適化問題による在庫最適化のpythonによる実装例
在庫最適化は、在庫レベルを最適化する問題で、需要と供給のバランスを取ることを目指すものとなる。在庫を適切に管理することで、コストの削減やサービスレベルの向上が期待できる。ここでは、在庫最適化の簡単な例として、1商品の単一期間在庫最適化をPuLPを使用して実装している。
import pulp
# 需要と初期在庫
demand = 30
initial_inventory = 10
# 製品の製造コストと在庫保持コスト
production_cost = 5
holding_cost = 2
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Inventory_Optimization", pulp.LpMinimize)
# 変数定義
# 変数xは製造量と在庫量を表す変数
x = pulp.LpVariable("x", lowBound=0, cat=pulp.LpInteger)
inventory = pulp.LpVariable("inventory", lowBound=0, cat=pulp.LpContinuous)
# 目的関数
prob += production_cost * x + holding_cost * inventory
# 制約条件
# 需要を満たす制約
prob += inventory + x == demand + initial_inventory
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適な製造量:", x.varValue)
print("最適な在庫レベル:", inventory.varValue)
この例では、在庫最適化の簡単な問題をPuLPを使用して解いているが、実際の在庫最適化問題では、より多くの商品や期間、複数の制約条件などが考慮されることがあり、また、需要予測や在庫制約などの要素も組み込むことが一般的となる。
混合整数最適化問題によるネットワークデザイン最適化のpythonによる実装例
混合整数最適化問題によるネットワークデザイン最適化の例として、整数変数を含むネットワーク設計問題をPuLPを使用して実装する。ここでは、与えられたネットワーク上でリンクを選択し、最小のコストで全てのノードを接続する問題について考える。
import pulp
# ネットワークの情報(ノードとリンクのコスト)
nodes = ['A', 'B', 'C', 'D', 'E']
links = [('A', 'B', 10), ('A', 'C', 5), ('B', 'C', 2), ('B', 'D', 4), ('C', 'D', 8), ('C', 'E', 3), ('D', 'E', 6)]
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Network_Design_Optimization", pulp.LpMinimize)
# 変数定義
# 変数x[e]はリンクeを使用するかどうかを表すバイナリ変数
x = {e: pulp.LpVariable(f"x_{e[0]}_{e[1]}", cat=pulp.LpBinary) for e in links}
# 目的関数
prob += pulp.lpSum(e[2] * x[e] for e in links)
# 制約条件
# 全てのノードが接続される制約
for node in nodes:
prob += pulp.lpSum(x[e] for e in links if node in e) >= 1
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適なリンク:")
for e in links:
if x[e].varValue == 1:
print(f"{e[0]} -> {e[1]}")
この例では、与えられたネットワーク上でリンクを選択して全てのノードを最小のコストで接続する問題をPuLPを使用して解いている。実際のネットワークデザイン問題では、さらに多くの制約条件や変数が含まれることがある。
混合整数最適化問題によるポートフォリオ最適化のpythonによる実装例
ポートフォリオ最適化は、与えられた資産の中から適切な割合で投資することで、リスクを最小化または収益を最大化する問題を指す。ここでは、簡単なポートフォリオ最適化の例として、2つの資産からなるポートフォリオをPuLPを使用して実装してみる。
import pulp
# 資産の情報(収益率とリスク)
assets = {
'Asset1': {'return': 0.05, 'risk': 0.1},
'Asset2': {'return': 0.08, 'risk': 0.15},
}
# PuLPの問題定義
prob = pulp.LpProblem("Portfolio_Optimization", pulp.LpMaximize)
# 変数定義
# 変数x[asset]は資産の割合を表す変数
x = {asset: pulp.LpVariable(f"x_{asset}", lowBound=0, upBound=1, cat=pulp.LpContinuous) for asset in assets}
# 目的関数
expected_return = pulp.lpSum(assets[asset]['return'] * x[asset] for asset in assets)
prob += expected_return
# 制約条件
# ポートフォリオの割合の合計が1になる制約(100%を投資)
prob += pulp.lpSum(x[asset] for asset in assets) == 1
# リスクの制約(リスクを最小化する場合はこれをコメントアウトする)
target_risk = 0.12
portfolio_risk = pulp.lpSum(assets[asset]['risk'] * x[asset] for asset in assets)
prob += portfolio_risk <= target_risk
# 求解
prob.solve()
# 結果表示
print("最適なポートフォリオ割合:")
for asset in assets:
print(f"{asset}: {x[asset].varValue:.2f}")
print("予想リターン:", pulp.value(prob.objective))
print("ポートフォリオのリスク:", pulp.value(portfolio_risk))
この例では、2つの資産からなるポートフォリオをPuLPを使用して最適化している。実際のポートフォリオ最適化では、より多くの資産や制約条件、リスク対応などが考慮されることがあり、また、リスク対応などの要素を加えることで、実際のポートフォリオ管理に適した最適化モデルを構築することもできる。
参考情報と参考図書
数理最適化の詳細に関しては、”オートマトンと状態遷移/ペトリネットと自動計画“、”人工知能技術の理論と数学とアルゴリズム“等に述べている。そちらも参照のこと。
参考図書としては、”
“
“
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