哲学と社会ムーブメントとITについて

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哲学と社会のムーブメント

哲学は、さまざまな問いに対する深い思索と理論的な考察を行うアプローチであり、哲学という言葉は、明治時代の学者である西周が英語のフィロソフィー(philosophy)に対してあてた漢字で、フィロソフィー(philosophy)という言葉は、古代ギリシャ語の「philosophia(φιλοσοφία)」に由来し、文字通りには「知識を愛する」や「知恵を追求する」といった意味がある。

哲学の中には、”特別講義「ソクラテスの弁明」より「哲学とは何か」“等で述べているように、”何が存在するのか?”や”現実はどのように構成されているのか?”など、存在に関する基本的な問いに焦点を当ている「存在論」、”知識はどのようにして得られるのか?”や”真実は何か?”といった知識や認識に関する問いである「認織論」、”良い行為とは何か?”や”善悪の基準は何か?”など、道徳や倫理に関連する問題を探求している「倫理学」、”正義とは何か?”や”政治権力の正当性はどこに基づくのか?”といった政治に関する問いを扱っている「政治学」、”美とは何か?”や”芸術の評価基準は何か?”など、美や芸術に関する問題を追求している「美学」など、広範で多岐にわたるテーマに対する問いかけが含まれている。

哲学はこれらの分野を通じて、論理的な思考、問題解決能力、倫理的判断力などを養い、社会を変革する上で重要な役割を果たしてきた。哲学に基づく社会変革のムーブメントは、以下に示すように様々な形で現れ、社会の構造や価値観に影響を与えてきている。

1. 啓蒙時代(Enlightenment): 17世紀から18世紀にかけての啓蒙時代は、理性、自由、平等の原則に基づく哲学的な運動であり、思想家たちが啓蒙の原則に従って専制的な権威に対抗し、個人の権利を強調した時代でもある。この時代の影響は、フランス革命やアメリカ独立戦争など、大規模な社会変革につながった。

2. マルクス主義: カール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスによって提唱されたマルクス主義は、歴史的唯物論と階級闘争の視点から社会変革を追求し、労働者階級による革命を通じて、資本主義社会から共産主義社会への移行を目指した。これは20世紀の社会主義運動に大きな影響を与えた。

3. 非暴力と公民権運動: マハトマ・ガンディとマーティン・ルーサー・キング・ジュニアなどの指導者たちは、非暴力と公民権の哲学に基づいて社会変革を提唱した。ガンディのインド独立運動やキングのアメリカの公民権運動は、差別撤廃や平等の追求に大きな影響を与えた。

4. フェミニズム: 哲学的な枠組みに基づいたフェミニズムは、性別に基づく不平等への挑戦を目指している。第二波フェミニズムは、社会構造やジェンダーのあり方に対する批判を通じて、女性の権利と平等を求めた。

これらのアプローチは、既存の社会の概念に対して、哲学が新たな視点を提供することで発生し進化していった。

哲学とIT

現代の日本の哲学者である東浩紀は、このような哲学によるムーブメントの一つとして現代のITの進化があるのではないかと述べている。スティーブ・ジョブズやグーグルの創業者たちを含めたコンピューターシステムを構築してきた人々の思想は、エンジニアとかお金の話ではなく、人間観とか社会観に対して、大きな変革を強いて、マルクス主義よりもはるかに世界を変えているのではないか、と彼は言っているのである。

ITと哲学の結びつきとしては、例えば「クラウド」という言葉は、元々英語では「雲」を表すことばで、GoogleのCEOであるエリック・シュミットにより2006年に提唱されたものだが、この当時は具体的なサービスとしてのクラウドコンピューティングは広く使われることはなく、すべてのコンピュータやネットワークや通信の能力が低過ぎ、限定された実装と試験サービスに留まっていた。

それに対して、コンピューターパワーが発達し、大規模なクラウドサービスが利用可能になった現在では、それらを利用した組織の作り方や情報の共有の仕方までを含めた意味を持つようになり、哲学的革命性、「新しい概念」を生み出していると彼は述べている。

また同様にITが生み出した新しい概念としては「オープン」や「フリー」という言葉がある。このような日常用語までが、インターネットができたことにより、意味が変わってしまい、それこそが哲学的な現象だということができる。ITのインフラが出てきたらことによって、いろいろな分野で新しいオープン、新しいフリーを考えながらビジネスを進めたり、物を作ったりしている人たちがいて、その人たちが共有している世界観こそが、新しい哲学であるといえるのではないかと東浩紀は述べている。

次の世代の新たな哲学

では、スティーブ・ジョブズやグーグル等のムーブメントの次に来るものは何なのか?”特別講義「ソクラテスの弁明」より「哲学の出発点」“でも述べているように、哲学の出発点であるソクラテスの哲学的な対話は、”これはもう少し違った角度から考えてみようよ”とか”逆の考え方もできるね”等の、相手の頭を撹乱してリフレッシュすることから始まっている。

彼が対話していたのは、学者ではなくて実務家であり、ものごとをトップダウンではなくボトムアップに考えることができる人々となる。現在は専門化が激しくなり、実務化が真価して少しでもその領域から離れてしまうと、一般的な層に対して言葉が共有できなかったり、何もしゃべることができない状況になっている。

そのようなケースで、言葉を撹乱したり、専門用語を一切使わずに話すことで、概念をリビルドしていく。そのような活動が必要になってくるのではないかと考えられる。

今後これらに役立つ哲学的な視点についても述べていきたいと思う。

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