人工知能とテレビドラマ

life tips & 雑記 禅とライフティップ 旅と歴史 スポーツとアート 本とTVと映画と音楽 本ブログのナビ

人工知能とテレビドラマ

以前wiredの記事で、企業経営や政策立案において進むべき方向を見極めるためのシナリオ作りをSF作家に依頼するケースが増えており、ビジネスとして成り立ち始めているとの記事を読んだ。将来にどのような技術が必要になるかを予測するために、現存の技術の積み重ねだけではなく、実際のユースシーンを含めてフィクションの世界からインスピレーションを得ることは重要ではないかと思う。

小説の世界だけではなく、最近のTVドラマにおいて(特に欧米のドラマ)、脚本の製作時にテクノロジーのスペシャリストが入り単なる夢物語ではなく、もう少しするとこれは現実のモノになるのでは?というようなシナリオが多々見られるようになった。人工知能ITの世界で言うと、2011〜2016まで放送された「Person of interest」や2015〜2019まで放送された「Mr Robot」がそれに当たる。

person of interest(POI)は孤独な億万長者のコンピューターの天才が作り出した”マシン”とその”マシン”に対抗する”サマリタン”という二つの人工知能が登場するドラマである。元々テロを未然に防ぐ為に作られた”マシン”がテロ以外の普通の犯罪計画も検知するようになり、億万長者が政府と離れてテロ以外の普通の犯罪を阻止する活動を行うと言う設定だが、現実の世界でも先述のSemanticWeb技術を活用したPISTAと呼ばれるEmail,渡航情報等のDBをつなげて統合してテロに関係する事物を特定するシステムが構築されたり、同じくSemantciWeb技術の一部であるオントロジーを活用してテロ対策や犯罪捜査などに利用可能なGOTHAMと呼ばれるシステムを販売している米国Palantir社が、2020年で約5億ドルの売り上げをあげたり、現実とフィクションの世界がオーバーラップし始めている。

POIのドラマの中での最新技術としては

(1)インフラ内に流れている音声・画像・動画を解析(機械学習)してネットワークデータ(知識データ)として再構築。更にそれらのデータを時間軸上で推移するネットワークデータとする。

(2)(1)の結果を用いて、将来の出来事をシミュレーションにより予測。

(3)音声を用いた人とのインタラクション

(4)分散コンピューティングによる超大容量スケール/高速処理

(5)データの超圧縮

(6)超強力なコンピューターウィルス

等があるが、(1)の非テキスト情報のパターン抽出は正に今DNNで行われているものであり、それらをネットワークデータに再構成することはSemanticWebの世界でも検討されている。現実の課題としてはネットワークに時間軸を加えた時のasyncな情報処理をどのようにして行うか?と言うところだろうか。それぞれ異なった時間軸/粒度で推移するネットワークデータは同期的には処理できない、これをいかにして適切に処理するか?と言うところが現時点では答えがないものと考えられる。(3),(4),(5),(6)に関しては機会があれば別途記述するとして、現時点での課題として最も興味深いものは(2)のシミュレーションにある。

現在の機械学習技術の課題の一つとして、学習データの量がなければ高精度な結果を得られないと言うものがあり、現実世界への人工知能の適用を考える上では、この課題が最も大きいものであり、これを解決するための技術の最有力候補としてシミュレーションがあるものと考えることができる。

機械学習としてのシミュレーションは、技術の方向性としてはDNN的なアプローチであるGANや、確率的アプローチであるベイズ推論等幅広いアプローチがある。今後これらの技術について述べていければと思う。

次回は、技術の話に戻り、前回述べたElasticsearchの体裁の調整であるCSSについて述べる。

コメント

  1. […] 次回は少し箸休めして、人工知能とテレビドラマについて述べる。 […]

  2. […] 以前紹介したテレビドラマのperson of interestでもデータ圧縮技術はキーの要素として扱われていた。人を支配しようとするAIと人を助けようとするAIの戦いで敗れた方が自分のデータを圧縮してスーツケースの中のメモリに逃れたり、人工衛星の中のメモリに逃れたりしていたのだ。また日常生活の中でもzip圧縮やJPEG,MP3等圧縮技術に触れない日はない。 […]

  3. […] 行動心理学をコンピューターでシミュレートするアイデアは古くからある。例えばアシモフのファウンデーションシリーズに出てくる心理歴史学や、近年のテレビドラマにも数々現れる。 […]

  4. […] 人工知能とテレビドラマ […]

  5. […] 以前、企業経営や政策立案において進むべき方向を見極めるためのシナリオ作りをSF作家に依頼するケースがあることについて述べたが、サイエンスフィクションを読むことで、技術の […]

  6. […] 人工知能とテレビドラマ […]

  7. […] ブルックリン橋は以前”人工知能とテレビドラマ“でも述べたパーソンオブインタレストにもしばしば登場するニューヨークを代表する景勝の一つとなる。 […]

タイトルとURLをコピーしました