確率と不確実性とランダム性の関係

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確率について

確率とは、ある事象が起こる可能性の程度を数値化したものであり、具体的には、ある事象が発生する確率は、その事象が起こる場合の数(好ましい結果)を、全体の場合の数(可能な全ての結果)で割ることによって計算される。

確率は、0から1までの範囲で表され、0に近いほど、その事象は起こりにくく、1に近いほど起こりやすいとされている。例えば、コインを投げると表が出る確率は0.5(50%)であり、サイコロを振って1が出る確率は1/6(約16.7%)という形となる。

確率は”ベイズ推定の概要と各種実装“で述べているベイズ推定のように主観的な要素や経験に基づいて推定される場合もあるが、確率論では統計的な手法や数学的なモデルを用いて確率を計算し、性質や振る舞いを解明するアプローチをとっている。

確率にはいくつかの基本的な性質がある。例えば、任意の事象の確率は0以上であり、全体の事象(確実事象)の確率は1。また、二つの互いに排反な事象(同時に起こり得ない事象)の起こる確率は、それぞれの事象の確率を足したものになる(加法定理)。さらに、二つの独立な事象の両方が起こる確率は、それぞれの事象の確率を掛けたものになる(乗法定理)。

確率は、さまざまな応用分野で利用されており、統計学では、データの確率分布を推定したり、仮説の検定において確率を用いたりしている。機械学習では、確率を用いたモデルやアルゴリズムが広く使われ、また、リスク評価や金融工学、信号処理、ゲーム理論などでも確率の概念が重要な役割を果たしている。

確率と不確実性

この確率と密接な関係を持つ不確実性は、似たようなものとして認織されることが多いが、厳密には確率と異なる概念を持つ。

確率は、前述したようにある事象が起こる可能性の程度を数値化したもので、0から1までの値を取り、0に近いほどその事象が起こる確率が低く、1に近いほど起こる確率が高いとされ、統計的な手法や数学的なモデルを用いて計算されるものであり、確率の計算は、事象の過去の出現パターンやデータからの推定、または事象の性質や仮定に基づいて行われる。

これに対して、不確実性は情報の不完全さや予測の困難さを指すものであり、正確な結果や出来事の結果が予測できない状態を表す。不確実性は、新たな情報の入手、未知の要素の存在、複雑な相互作用などの要素によって引き起こされ、事前に確定的に予測できないため、決定や意思決定において課題をもたらすものとなっている。

確率は数学的に扱うことが可能なアプローチであるため、これを使って不確実性のある状況や情報に対して、数値化や予測を行うアプローチが取られることがある。このようなアプローチでは、確率は不確実性を扱う上での指標やモデルの一部として使用されるが、確率自体が不確実性ではないため、確率を不確実性に適用する際には以下のような注意が必要になる。

  • 確率の解釈: 確率は、事象が起こる可能性を数値で表したものであり、通常は0から1の範囲で示される。しかし、この数値をどのように解釈するかが重要で、確率が高いからといって必ずしも事象が起こるとは限らないし、確率が低いからといって起こらないとも限らない。
  • 確率の根拠: 確率を計算する際の前提やデータがどれだけ信頼できるかを確認する必要がある。サンプルサイズが小さかったり、データが偏っていたりすると、得られる確率も信頼性が低くなる。
  • 確率と頻度: 確率はしばしば長期間の頻度として解釈されるが、単発の事象においては必ずしもその通りに観測されるわけではない。例えば、コインを投げる場合、理論的には表と裏がそれぞれ50%の確率で出るとされるが、数回の投げでは偏りが生じることがある。
  • 確率の過信: 確率が高いからといって、その結果に過度に依存するのは危険で、特に、リスクの高い決定や大きな影響を伴う決定においては、確率以外の要因も慎重に考慮する必要がある。
  • 確率とリスク: 確率が示すのは「何が起こりうるか」の一面であり、リスクは「その結果がどのような影響を持つか」を示す。確率が低いとしても、結果の影響が甚大である場合には、リスクは高いと考えるべきである。
  • 確率の伝え方: 確率を他者に伝える際には、誤解を招かないように注意が必要で、確率の数値が何を意味するのか、どのように解釈すべきかを明確に説明し、不確実性を誤って伝えないようにする必要がある。
ランダム性と確率

シミュレーションとデータサイエンスと人工知能“で述べているシミュレーションを行う際には、ランダム性を用いることが重要となる。このランダム性と確率もは密接に関連している。

ランダム性は、事象が予測不可能であり、結果が偶然に左右される性質を指すのに対して、確率は、ある事象が起こる可能性の程度を数値化したものであり、不確定性を表現する手段の一つとなる。そのため、ランダム性は、確率的な要素によって引き起こされる場合もある。

ランダム性が存在する場合、事象の結果は確率的であり、事前に正確な予測ができない。例えば、サイコロを振るとき、どの目が出るかは予測できないが、各目が出る確率は均等であり、ランダムな結果として期待される。このような場合、確率的なモデルや確率論を使用して、ランダムな結果を予測することが一般的となる。

一方、確率が与えられた場合、ランダム性に基づいて結果が決まる。例えば、公正なコインを投げた場合、表が出る確率は0.5です。この場合、確率が与えられているため、ランダム性に基づいて結果が決まるが、それぞれの結果が互いに独立であり、予測可能なランダム性と言える。

このように、確率はランダム性を数学的に扱うためのツールであり、ランダム性は確率的な要素によって引き起こされる現象や結果の性質ということもできる。確率の数学的側面は、ランダム性を理解し、予測し、モデル化するための枠組みを提供している。

確率の数学的アプローチ

確率論(かくりつろん)は、不確定な出来事や現象を数学的に扱う学問の一つであり、確率論は確率という概念を用いて、不確実性やランダム性を記述し、その性質や振る舞いを解明することを目的としている。

確率は、一般的に、「事象が起こる場合の数(好ましい結果)」を「全体の場合の数(可能な全ての結果)」で割ることで計算される。そのようなアプローチは、要素の集合やそれらの組み合わせを扱うための体系的な枠組みである集合論の枠組みで表現することができる。

具体的には、確率論では、事象の集合を「標本空間」と呼ばれる特定の集合として定義し、その中の部分集合を「事象」として扱う。例えば、コインを投げた場合、標本空間は{“表”, “裏”}という要素を持つ集合となり、その中の部分集合、例えば{“表”}や{“裏”}を個々の事象として扱うことができる。

このような集合論の概念を用いることで、確率の計算や性質を明確に表現することが可能になる。たとえば、確率の和や積、条件付き確率などは、集合の和や積、条件付き集合の概念を利用して理解される。

また、確率論では確率空間という概念も使用され、確率空間は、標本空間とそれに関連する確率関数からなる組み合わせであり、集合論の考え方を用いて形式化される。確率空間は、事象の確率を定義するための数学的な枠組みを提供している。

集合論は確率論の基礎として重要な役割を果たしており、確率の概念を明確に定義し、操作するための道具となっている。確率論の法則や公理を集合論の言葉で表現することで、確率論の体系的な理解と応用が可能となり、”確率論入門 読書メモ“で述べている古典的な確率論の教科書も集合論が重要なウェートを占めている。

このような数学的な道具を持つことで、確率論では、加法定理、乗法定理、条件付き確率、ベイズの定理などの、確率の計算や性質に関する法則や公理を持ち、これらの法則を用いることで、さまざまな確率的な現象や問題を解析することを可能としている。

確率論は、統計学や機械学習、金融工学、信号処理、通信工学、ゲーム理論など、さまざまな応用分野で活用されています。例えば、確率論は、不確実なデータを統計的に扱い、意思決定や予測を行うための手法として統計学と密接に関連していたり、また、機械学習アルゴリズムの開発や評価においても確率論が重要な役割を果たしたりしている。

参考情報と参考図書

確率を使ったアプローチについては、”機械学習における数学について“、”確率的生成モデルについて“、”ベイズ推論とグラフィカルモデルによる機械学習“等で詳細を述べているそちらも参照のこと。

確率・統計の理論や歴史に対する参考図書としては、”はじめての確率論 読書メモ“、”確率論入門 読書メモ“、”人間と社会を変えた9つの確率・統計物語 読書メモ“、”世界を変えた確率と統計のカラクリ134話 読書メモ“を参照のこと。また具体的な実装と活用については”pythonによる統計モデリング“、”Clojure/Incanterを用いた統計解析と相関評価“、”確率的生成モデルに使われる各種確率分布について“等を参照のこと。

ベイズ推定の参考図書としては”異端の統計学 ベイズ

ベイズモデリングの世界

機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門

Pythonではじめるベイズ機械学習入門“等がある。

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