意味とは何か(1)哲学入門

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意味とは何か(1)哲学入門

戸田山 和久「哲学入門」をベースとして。意味とは何か?

本書では、「意味ってあるのか、意味とは何か、どういう仕方であるのか」という問いに対する答えについて、まず「意味を理解するロボットあるいはコンピューターを作るにはどうすればよいか」というフレーム問題から更に一歩踏み出した問いからスタートしている。

このようなロボットを考えることは、物理法則だけに従うモノにすぎないロボットが「意味の理解」を実現できるなら、意味がモノだけの世界にどう書き込めるかという問いに答えるヒントが得られるということにつながることが期待できる。

ここでロボットの例として、命令に応じて環境の中で行為する家電ロボットを考える。例えば「部屋を掃除しておいてくれ」と頼むと掃除してくれ、「冷蔵庫からビールを持ってきてくれ」と言われればビールを持ってくるようなものをイメージする。その時、命令の中の「部屋」とか「ビール」をこのロボットが正しく認織して動作していれば、記号が何を意味しているかということを理解しているという解釈ができ、このロボットはある種の意味を理解していると見ることができる。

あるシンボルがあり、それが現実に存在するものと明確に対応付けされていれば、それによりシンボルの「意味」が担保されると考えることができる。それでは現実に存在しないもの抽象的なシンボルに対してはどうすれば良いのか、これに対する一つの考え方は「現実に存在する=表現されたシンボルの論理値が真(true)となる」と抽象化して解釈し、表現されたシンボルの論理値が真になる場合にそのシンボルが意味を持つと考えるものとなる。このロジックを用いると全てのシンボルに対して意味するということを担保することができる。このアプローチは以前述べた形式意味論のアプローチそのものとなる。

上記のアプローチは非常にシンプルで、数学的な抽象化も可能であることから多世界意味論等様々な理論的拡張が検討されている。ここまでの議論はシンボルが意味を持つのはどういうことか?というものであり、本当にロボットが意味を理解していると考えるか?という問題とは別の課題になる。

ここでシンボルが意味を持つというアプローチをさらに発展させ、抽象化したシンボルへの適用しを考える。これは例えば、りんごといちごに共通するものとして「赤」という抽象概念があり、ボールとりんごに共通する抽象概念として「丸い」があり、更にそれらが「色」とか「形」といったものに抽象化していくような以下に示すようなものを考える。

上図で示すように、それぞのシンボルの間は何らかの関係性で結びついていると考えることができる。これらの関係性は数学的には関数として表す(抽象化する)ことができ(参考「構造とアルゴリズム」)形式的に操作(証明/推論)できる。また、前述の議論の延長線上で考えるとその関係性が真(true)であれば意味があり、偽であれば意味がなく、この真偽(意味があるかどうか)も形式的に操作できることが容易に推論される。

戸田山はこのシンボルの結びつきによる「意味」を更に発展させて、「意味を理解する」ということに対して議論を進めている。具体的にはこの関係性について更に分析を進め、モノだけの自然界のなかにある基本的な相互作用である因果関係をベースとした因果意味論(Casual Semantics)(表象XがAを意味している↔︎Aが、そしてAだけがXを生み出す要因である)や、目的論的意味論(シンボル間の関係性が何らかの目的により定義される)をベースに議論を進めている。

目的論的意味論の根本にある「目的」の根源は生物の生存するという意思から生じるもので、それが理解するという心の問題につながるという発想は、意思と心の問題への一つの方向性にも見え、例えばAIにもそのようなアルゴリズムを導入すると意思のとか理解のようなものができるような感じもする。

工学者の観点としては、まずは形式的なアプローチであるシンボルの関係性まで戻り答えを見つけていければと思う。

コメント

  1. […] ここで自然言語処理での「意味」を扱う方法論の一つに「分布仮説(distributional hypothesis)」がある。これは1950年台に提案された仮説で「単語の意味はその単語が出現した際の周囲の単語によって決まる」というものになる。これはword2vecで述べた「文脈」という言葉でも置き換えられる。 […]

  2. […] 前回ロボットを介した「意味とは?」について述べた。 […]

  3. […] 意味とは何か?(1) 意味、シンボルへの哲学的アプローチ […]

  4. […] これは、「意味とは何か(1)哲学入門」や「ソシュールの言語学」でも、観測事象の基本構成要素であるシンボルの意味は、それ単体では構成されず、別のシンボルとの関係性により定義されると述べられていることからも分かる。 […]

  5. […] 意味とは何か?(1) 意味、シンボルへの哲学的アプローチ […]

  6. […] 意味とは何か 哲学入門 […]

  7. […] 以前”意味とは何か(1)哲学入門“でも述べた戸田山 和久「哲学入門」では「目的手段推論」という言葉が述べられている。 […]

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