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こんにゃく
“街道を行く 蜀と雲南の道“ではこんにゃくと唐辛子について述べられている。
こんにゃくは、サトイモ科の植物、あるいはその球茎から製造される食品である。植物としてのコンニャクを表記する場合は「コンニャク」、食品などの加工品としてのコンニャクを表記する場合は「蒟蒻」として区別されたりしている。
コンニャクは、芋の部分を食用にできるがサトイモ科の多くの植物同様シュウ酸カルシウムの毒性が強く生食は不可であり、食用とするためには茹でてアルカリ処理を行うなどの毒抜き処理が必須となる。
基本的な毒抜きと蒟蒻の製法は芋を粉砕して粉にし、水とともにこねた後に石灰乳(消石灰を少量の水で懸濁したものを、水酸化カルシウム水溶液)、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)水溶液、または草木の灰を水に溶いたものを混ぜて煮沸して固めたものが蒟蒻として食用にされている。
この作成方法は、日本だけでなく中国やミャンマーもほぼ同じで、元々はそちらの料理であったものが日本へは伝来したものと見られている。コンニャクが日本に到来した時期は諸説あり、”街道をゆく 韓のくに紀行“に述べているように飛鳥時代に医薬として仏教と共に伝来した説や縄文時代に伝来した説もある。鎌倉時代までには食品として確立し、精進料理に用いられるようになったと見られている。
中国におけるコンニャク料理
中国におけるコンニャク料理は、伝統的な中華料理の中で多様に使われており、コンニャクは、「魔芋(mó yù)」または「蒟蒻(jǔ ruò)」と呼ばれ、そのゼリー状の質感と低カロリーの特性から、さまざまな料理に取り入れられている。中国の代表的なコンニャク料理としては以下のものがある。
1. 麻辣コンニャク(麻辣蒟蒻): 四川料理の一部で、辛味としびれる麻の風味が特徴で、コンニャクを細かく切り、唐辛子や花椒(ホアジャオ)とともに炒めたり煮ている。
2. コンニャクの冷菜(凉拌蒟蒻): コンニャクを薄くスライスし、酢、醤油、ごま油、にんにく、唐辛子などで和えた前菜で、さっぱりとした味わいで、特に暑い季節に人気があるものとなる。
3. コンニャク入り火鍋(火锅蒟蒻): 火鍋の具材としてコンニャクがよく使われており、特に四川火鍋では、辛いスープで煮込むと独特の食感を楽しむことができる。
4. コンニャクと鶏肉の煮込み(蒟蒻炖鸡): 鶏肉とコンニャクを一緒に煮込んだ家庭料理で、鶏肉の旨味がコンニャクに染み込み、食べ応えのある一品になる。
5. コンニャクの炒め物(炒蒟蒻): 野菜や肉と一緒に炒めるシンプルな料理で、例えば、ピーマンや豚肉と一緒に炒めることで、栄養バランスの取れた料理になる。
6. コンニャクの砂糖煮(糖蒟蒻): 甜品(デザート)としても利用されることがあり、コンニャクを砂糖水で煮て、冷やしてから提供することがあります。甘さとゼリー状の食感が特徴のものとなる。
これらの料理は、コンニャクのヘルシーな特性とユニークな食感を活かしつつ、さまざまな風味を楽しむことができ、中国の各地域や家庭で異なる調理法が存在し、その多様性が魅力となっている。
日本におけるコンニャク料理
日本におけるコンニャク料理は、古くから健康食材として親しまれており、さまざまな形で食卓に取り入れられている。以下に日本の代表的なコンニャク料理について述べる。
1. おでん: おでんは、ダシで煮込んだ日本の伝統的な煮物料理で、コンニャクはその定番具材の一つとなる。三角形や俵形に切られたコンニャクが、大根や卵、練り物とともに煮込まれ、ダシの旨味を吸い込んで風味豊かになる。
2. 刺身こんにゃく: 刺身こんにゃくは、酢味噌やポン酢で食べる前菜で、薄くスライスしたコンニャクに、わさびや柚子胡椒を添えて食べることが一般的なものとなる。その冷たい食感とさっぱりとした味わいが特徴的である。
3. 煮物: コンニャクは、根菜や豆腐とともに煮物に使われる。例えば、筑前煮や肉じゃがには必ずと言っていいほどコンニャクが含まれており、具材の旨味を引き立てる役割を果たす。
4. 炒め物: コンニャクは、炒め物にも使われている。例えば、糸こんにゃくを使った「きんぴらごぼう」や「すき焼き」などがあり、コンニャクが他の具材と絡まり、味がしっかりと染み込んで美味しく仕上がる。
5. 田楽: コンニャク田楽は、コンニャクを串に刺して焼き、味噌ダレをかけて食べる料理となる。味噌の甘辛い味とコンニャクのもちっとした食感が絶妙に合う。
6. こんにゃくゼリー: デザートとしても人気のこんにゃくゼリーは、低カロリーで健康的なスイーツとして広く親しまれている。フルーツの風味を活かしたさまざまなフレーバーがあり、子供から大人まで楽しめるものとなる。
7. 刺しこんにゃく: 串に刺して焼いたり、煮込んだりするシンプルな料理で、特に屋台やお祭りで見かけることが多く、手軽に楽しめる一品となる。
8. サラダ: ダイエット食品として人気が高いコンニャクは、サラダの具材としても使われている。海藻サラダや野菜サラダに加えることで、食感のアクセントとヘルシーさをプラスする。
日本におけるコンニャク料理は、その低カロリーで健康的な特性から、伝統的な和食から現代のヘルシー志向の料理まで、幅広く活用されている。各家庭や地域で独自のレシピがあり、バリエーション豊かな料理を楽しむことができる。
唐辛子
唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実あるいは、それから作られる辛味のある香辛料で、栽培種だけでなく、野生種が香辛料として利用されることもある。
トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシには様々な品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。
唐辛子の辛味成分はカプサイシン類であり、痛みを与える。この痛みが「辛味」の正体であるが、唐辛子の場合は刺激が強く、人により好みが分かれる。
トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってクリストファー・コロンブスがヨーロッパに持ち帰ってからであり、以降、ヨーロッパ全域に広まっている。
中国における唐辛子を使った料理
中国へのトウガラシの伝来については不明な点が多く、以下の3つのルートが推測されている。
- 陸路で中央アジアから”シルクロードと平原の歴史“で述べているシルクロードで中国西部の新疆を経て、西安にたどり着いた。
- 海路で原産地のメキシコから太平洋を横断し、フィリピン経由で大陸にたどり着き、”街道をゆく 中国・雲南のみち“に述べている雲南経由で伝達。
- 海路でポルトガル人は植民地ゴアを拠点に東南アジア、新たに植民地にしたマカオを経て、”街道をゆく 中国・江南のみち“で述べているように中国南部の広東省や広西チワン族自治区あたりに上陸した。
1578年の料理本『本草綱目』にはまだトウガラシは見えず、文献上は明末の高濂(1620年没)の『草花譜』および『遵生八牋』(1591年刊)、および清初の陳淏子『花鏡』(1688年刊)に「番椒」の名で見えるものが古い。初期においては主に観賞用であったらしい。四川料理で使われるようになったのはさらに時代が遅れる。18世紀の李化楠・李調元『醒園録』は四川料理に関するもっとも古い書物だが、まだトウガラシは使われておらず、1800年前後になって初めて四川でトウガラシを栽培したという記録が見られる。したがって、長江中流域の料理が辛くなったのは19世紀初めと考えられている。
中国の唐辛子料理は、地域ごとの特色や調理法によって多彩なバリエーションがあり、特に四川省や湖南省、貴州省などの地域では、唐辛子をふんだんに使った辛い料理が有名なものとなる。以下に代表的な唐辛子料理について述べる。
1. 麻婆豆腐(Mápó Dòufu): 麻婆豆腐は、四川料理の代表的な一品で、ひき肉と豆腐を唐辛子や花椒(ホアジャオ)を使った辛いソースで煮込んだ料理で、辛味としびれるような麻の風味が特徴的なものとなる。
2. 辣子鶏丁(Làzǐ Jīdīng): 辣子鶏丁は、一口サイズの鶏肉を大量の乾燥唐辛子とともに炒めた料理で、辛さと香ばしさが際立ったもので、鶏肉のジューシーさと唐辛子の辛味が絶妙にマッチしている。
3. 水煮魚(Shuǐzhǔ Yú): 水煮魚は、魚の切り身を唐辛子や花椒、その他の香辛料で作った辛いスープで煮た料理で、魚の柔らかい食感とスパイシーなスープが特徴で、ご飯との相性も抜群な料理となる。
4. 香辣牛肉(Xiāng Là Niúròu): 香辣牛肉は、牛肉を唐辛子、にんにく、しょうがなどと一緒に炒めた料理であり、辛味と香りが強く、食欲をそそる一品となる。
5. 麻辣火鍋(Málà Huǒguō): 麻辣火鍋は、四川風の火鍋で、唐辛子と花椒をたっぷり使った辛いスープが特徴で、薄切り肉や野菜、豆腐などを辛いスープで煮込み、さまざまな具材の味を楽しめるものとなる。
6. 酸辣湯(Suān Là Tāng): 酸辣湯は、酢と唐辛子を使った酸っぱくて辛いスープで、きのこや豆腐、竹の子などが入っており、爽やかな辛さと酸味が特徴的なものとなる。
7. 干煸四季豆(Gān Biān Sìjì Dòu): 干煸四季豆は、インゲン豆を唐辛子やにんにくと一緒に強火で炒めた料理となる。豆のシャキシャキ感と唐辛子の辛味が相まって、非常に美味しい一品となる。
8. 湖南泡菜炒め(Húnán Pào Cài Chǎo): 湖南省の料理で、発酵唐辛子(泡菜)を使って炒めた料理となる。辛味と酸味が特徴で、ご飯と一緒に食べると美味しい。
9. 貴州酸汤魚(Guìzhōu Suān Tāng Yú): 貴州省の料理で、酸辣スープで魚を煮込んだ料理となる。唐辛子の辛さと発酵トマトの酸味が特徴で、独特の風味が楽しめる。
10. 紅油抄手(Hóng Yóu Chāoshǒu): 紅油抄手は、四川風のワンタンで、辛い紅油(ラー油)ソースで味付けされている。ワンタンの皮の滑らかさとピリ辛のソースが絶妙な組み合わせとなっている。
これらの料理は、唐辛子を巧みに使って独特の辛味と風味を引き出し、食欲をそそる一品となる。これらの各地域の特色を反映した唐辛子料理を楽しむことで、中国料理の多様性と深い味わいを堪能することができる。
日本での唐辛子
日本への伝来には諸説ある。日本に伝来した初期は食用として用いられず、観賞用や毒薬、足袋のつま先に入れて霜焼け止めとして用いられた。
歴史に現れるものは、15世紀になってクリストファー・コロンブスがヨーロッパに持ち帰ったものが、”街道をゆく 唐津・平戸・佐世保・長崎への道“に述べられている南蛮貿易により九州に伝えられたものとなる。
日本では、唐辛子を使った料理が地域ごとに異なる特色を持ち、多彩なバリエーションがある。以下に日本の代表的な唐辛子料理について述べる。
1. 辛子明太子: 辛子明太子は、唐辛子を効かせた調味液に漬け込んだスケトウダラの卵で、福岡を代表する名産品であり、ご飯のお供やお酒のつまみとして人気がある。
2. 鰹のたたき: 高知県の郷土料理である鰹のたたきには、刻んだ唐辛子を添えて食べることがある。特に、薬味として使われる「赤唐辛子」が、鰹の風味を引き立てる。
3. 辛味噌ラーメン: 辛味噌ラーメンは、味噌ラーメンに唐辛子を加えたスープで、辛味とコクが楽しめるラーメンで、札幌をはじめ、全国各地で人気がある逸品となる。
4. ピリ辛きんぴら: きんぴらごぼうやきんぴらレンコンに唐辛子を加え、ピリ辛に仕上げた料理となる。ごぼうやレンコンのシャキシャキした食感と唐辛子の辛味がマッチする。
5. 麻婆豆腐: 日本でも四川料理の麻婆豆腐が親しまれており、辛さの調整ができるようにアレンジされている。家庭でもよく作られる料理で、唐辛子や豆板醤が使われる。
6. 鶏の唐揚げ(スパイシー): 鶏の唐揚げに唐辛子を加えてスパイシーに仕上げることがある。唐辛子粉や七味唐辛子を使うことで、ピリッとした辛味がアクセントになる。
7. 七味唐辛子: 七味唐辛子は、唐辛子を主成分とし、山椒、ゴマ、麻の実、陳皮、青のり、けしの実などをブレンドした調味料であり、うどんやそば、鍋料理に振りかけて使われるものとなる。
8. 柚子胡椒: 柚子胡椒は、唐辛子と柚子の皮、塩を混ぜ合わせた調味料で、九州地方の名産となる。焼き鳥や鍋料理、刺身などに添えて使われている。
9. ピリ辛炒め: 豚肉や野菜を唐辛子と一緒に炒めた料理で、例えば、ピーマンと豚肉の炒め物に唐辛子を加えることで、ピリッとした辛味が加わり、美味しさが増すものとなっている。
10. 辛子高菜: 辛子高菜は、高菜を唐辛子で漬け込んだもので、福岡をはじめとする九州地方の特産品で、ご飯のお供やラーメンのトッピングとして親しまれている。
日本の唐辛子料理は、辛さだけでなく、食材の風味を引き立てる役割も果たしており、地域ごとの特産品や家庭料理に取り入れられ、バリエーション豊かな料理を楽しむことができるものとなっている。
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